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大阪シンフォニカー交響楽団 第79回定期演奏会

ため息の出そうなオルガン交響曲の第1楽章第2部戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第79回定期演奏会
2002年3月5日(火) 17:00 ザ・シンフォニーホール

城之内ミサ: 委嘱作品: 空華U〜クハプシュパ   二胡と中国琵琶のための
   中国琵琶 :邵容(シャオ・ロン)
   二胡   :劉鋒(リュウ・フォン)
リヒャルト・シュトラウス: 「ドン・ファン」
サン=サーンス: 交響曲第3番
   オルガン : 鈴木隆太

指揮:曽我大介

大阪シンフォニカー交響楽団の東京公演(3月3日)と同じプログラムを持ってきた定期演奏会。 東京公演の前日には浜松でも同じプログラムを行っていたこともあり、色々な面において余裕も感じさせる演奏内容だったが、一番感心したのは、サン=サーンスのオルガン交響曲の第1楽章第2部。 オルガンの和音に支えられ、弦楽器がビロードのように奏でる。 柔らかいピチカートの弾ける音をも柔らかく包み込むような透明感ある演奏に陶酔し、優しく静かな時間が流れていった。 これまでのシンフォニカーにはなかった響きで、本当に素晴らしい演奏だった。 オルガン交響曲は、全体的に抑制がよく効いて充実した音楽となっていたのだが、ドン・ファンは気負い過ぎていて全くいただけなかった。 また委嘱作品は、これといったインパクトはなく、これらの落差はいったい何だったのか、ちょっと不思議な感じを持って会場を後した演奏会であった。

城之内ミサさんの新曲、良くいえば癒し系だが、悪く言えば平明で、良くも悪くも映像のバックグランド・ミュージックのような音楽のようだった。 インパクトがないのを狙った(さまよえる魂の)曲としては、こんな落ち着かせかたしかないのだろうか。 曲の構成は、オーケストラ演奏のあと、二胡の独奏、琵琶の独奏、二胡と琵琶の共演、そこにオーケストラが戻ってきて盛り上がって静まり、また二胡の独奏、琵琶の独奏・・・ と同じパターンが繰り返される。 不可解なのはちょうど中間あたりの祭り囃子があるところで、これはちょっと浮いた感じにとらえてしまった。 構成的にこれと対応するのだろうかフィナーレもタイコの音でクライマックスを築いて盛りあがって終わった。 シルクロード音楽紀行ってところでしょうか。 会場からは、熱狂的ではないが、温かい拍手が贈られていた。 まぁこんなものでしょうか。
R.シュトラウスのドン・ファンは、(悪い意味での)シンフォニカーらしい爆裂演奏でうんざりで、 何よりもティムパニの轟音が音楽の流れを完全に断ち切っていたのが、僕にとってはもう言語道断。 この曲、ティムパニ協奏曲のような演出にしたかったのだろうか。 とにかく、冒頭からティムパニとオケがこんなに速く・強く演奏できるぞ、って言いたかのような猛烈なスピードで突進していった。 そんな冒頭、弦楽器には多少潤いを感じはしたものの、こんなに速く演奏させては、可哀想にスカスカに響いてしまっていた。 途中何度も現れる管楽器の各ソロ奏者については、相変わらず巧いなぁ、とは思ったけれど、オケが総奏となって勢い込んで突進するさまを見ると、そりゃぁ演奏している方は熱演をやってる気分で楽しいかもしれないけどなぁ・・・ とやっかみたくなるほど、どっと疲れを感じた演奏となってしまった。 こうなると、エンディングの前に、音楽を見事にスパッと切り捨てたあと、ちょっと長めの空白でタメ込んでいたのも、単にカッコつけていたという感じにしかとれない。 「おもしろい」と思う人もいるとは思うけれど、僕には全く受け付けない演奏であった。
さて、休憩後のサン=サーンスの交響曲第3番は、ドン・ファンの演奏とは違って豊かな潤いを感じた演奏となった。 予想では、この曲も飛ばしていくのではないか、とちょっと危惧していたのだが、意外と(言っては失礼だが)抑制のよ効いた充実した演奏であったと思う。 特に第1楽章第2部が秀逸。 オルガンの和音に支えられて、ゆったりとした弦楽器がビロードのように奏でていく、それら弦楽器の響きは柔らかいピチカートの弾ける音となり、続いてアルコとピチカートが交互に響きあい混ざりあっていくあたりが実に素晴らしい。 全てを柔らかく包み込むようなオルガンの温かい響きと弦楽器の透明感の高い演奏に陶酔し、優しく静かな時間が流れていった。 これまでのシンフォニカーには感じられなかった新しい響きだ。 本当に素晴らしい演奏であった。 第2楽章も暖かみのある弦楽器とティムパニの重い音の出だしから、息もつかせぬほどの急速で軽やかな展開がくりかえされ、せめぎあっていくさまに息をのむほどだった。 第2部のオルガンの荘厳な和音はちょっと控えめな音量(もうちょっと迫力が欲しかった)だったが、ピアノの分散和音が水の流れの輝きにも似て印象的で、音量よりも徹底的に綺麗に演奏したいということだったのだろうか。 これも理解できるような芳醇な弦楽器の響きにより終結部に向って登りつめていった。 ファンファーレも抑制がよく効いていて突出しないし、木管の響きも実に綺麗だった。 じっくりと全員一丸となったクライマックスでようやくこらえきれないように熱く爆発して頂点を迎えたのがまたよかった。 ちょっと迫力に欠けたかな、と感じたのはいつもの調子のシンフォニカーの燃え方を意識しすぎていたからかもしれない。 とにかく良い意味で期待を裏切られた。 とても充実した演奏だった。 そして弦楽器の充実ぶりは、大阪シンフォニカーの更なる飛躍を期待させるのに十分であった。