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大阪シンフォニカー交響楽団 第2回いずみホール定期演奏会

喋るような村瀬さんのクラリネット、ドライブ感のある驚愕戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第2回いずみホール定期演奏会
2002年6月27日(木) 19:00 いずみホール

ハイドン: 交響曲第94番 ト長調Hob.I-94 「驚愕」 より 第1楽章
モーツァルト: クラシリネット協奏曲 イ長調 K622
モーツァルト: クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 より 第1楽章
ハイドン: 交響曲第94番 ト長調Hob.I-94 「驚愕」 より 第2〜4楽章

独奏: 村瀬 司 (Cl)

クラリネット五重奏合奏:村瀬 司 (Cl),釋 真司(Vn1),小畠雅美(Vn2),ザザ・ゴクア(Va),野村朋亨(Vc)

指揮:曽我大介

大阪シンフォニカー交響楽団の第2回いずみホール定期演奏会。 前回同様のプログラム編成で、最初に驚愕交響曲の第1楽章のみを演奏し、続いてモーツァルトのクラリネット協奏曲で前半終了。 後半にモーツァルトのクラリネット五重奏曲の第1楽章をやってから、ハイドンの驚愕の残りの楽章を演奏する。 ちょっと違和感はあるが、これも作曲当時を感じさせる趣向のうち。 演奏はクラリネット協奏曲第3楽章の村瀬さんの明るく伸びやかで、まるで語りかけ喋りかけてくるようなクラリネットのテクニックが素敵。 交響曲は軽快さと強靭さを併せ持ったドライヴ感のあった終楽章が特に素晴らしかったと思う。 第3回の戦時のミサも期待したい。

ステージ上に小編成オケの座席が並べられたなかに曽我さんが登場してスピーチが始まった。 前回同様にプログラムや響きについての話のあとに、次回の「戦時のミサ」のオーディションで選ばれたのソリスト2名の紹介。 それぞれに抱負を述べられてから演奏開始。
まずハイドンの驚愕交響曲の第1楽章。 オケの配置は通常配置だが、中央最後列には左からホルン、フルート、オーボエ、ファゴットと管楽器が一列に並び、ティムパニは第1ヴァイオリンの後ろ、トランペットだけがティムパニとホルンの間に位置する。 ラッパの直接音を嫌っての配置なのだろうか・・・と思っているうちに、演奏が始まった。 曽我さんは指揮台のない中央で、指揮棒を持たずにゆったりと音楽を始められる。 今回もやや手探りな感じがする始まりで少々ぎこちない感じ。 やや古楽器っぽいヴァイオリンの響きが感じられたのは、コンサートマスターの釋さんの響きだろう。 主題もゆったりと演奏しているが、ちょっとしめっぽい感じがする。 良く言うとまったりとした感じなのだろうが、そうなってきたのは後半。 前半のちょっと手探り状態から徐々に調子をあげていった感じだろうか。 大きくふわっと曲を閉じた。 前回同様、交響曲の第1楽章を序曲のようにもってきたのだが、オケの調子が出ないのか、悪くはないが良くもないといった感じ。 多分続けて最後の楽章まで演奏したなら後半のノリの良さにこんな印象も消されてしまうのかもしれない。 2回目だが、そんな気がした。
続いて村瀬さんが登場されてのモーツァルトのクラリネット協奏曲は、第3楽章が秀逸。 明るく伸びやかな音色と、まるで語りかけてくるようなテクニックの素晴らしさに舌をまきました。 惜しむらくはオケのクールさが欲しかったことだろうか。 第1楽章は、オケの愛らしい澄んだ響きによる開始で、先ほどまでのオケとはかなり違った印象を持った。 フルートの響きも弦楽器によく溶け込んでいてモーツァルトらしい可憐な響きで嬉しくなった。 そしてクラリネットのソロがもっと優しい音色で登場。 単に「優しい音色」というだけでは勿体ないような気品のある高音と包みこむような低音、上手く表現できないが、しばし聞き惚れてしまう。 しかし、曲が進むにつれて耳に入ってくるオケの響きがどこか型どおりっぽい。 きちんとサポートしています、という感じに聞こえてきた。 もうちょっと閃きのあるような伴奏であって欲しいと、そこまで聴く余裕が出てきたみたい。 第2楽章は、ソロとオケがゆったりと歩調を合わせて始まったが、ここでもオケだけになると音が太く・熱くなるのが気になった。 この楽章は特に最晩年の諦観を現した楽章である(と勝手に自分では思っている)だけにもうちょっとクールに演奏してもらいたいところであった。 青年の若々しさを持った演奏だったみたい(モーツァルト最晩年といっても36歳なのだから充分に若いと言えるのだけれど)。 さて、村瀬さんはここではしみじみと演奏しているかと思ったのだけれど、途中で楽器にフッと息を吹きかけたら途端に響きが透るようになったのに吃驚した。 楽器の調子が今一歩だったのだろう。 それから、ちょっと出にくい音を頑張って出しているようにも思えるようにもなったこと、またあいかわらず熱の下がらないオケとともに聴き手の自分としてはちょっと集中力を欠いてしまった(すみません)。 さて、楽器の手入れをして臨んだ第3楽章はもう見違えるように軽やかに響きになり素晴らしい演奏になった。 オケは相変わらずやや熱っぽい響きであるが、オケとのかけあいもきちんと決まっていて、フレーズを喋るように、さえずるように、また時には雄弁に語りかけるようにとクラリネットのソロが次々と繰り出されてくる。 村瀬さんのクラリネットは明るく伸びやかで、もう千変万化。 同じメロディも微妙に吹き分けられて、こんなにも沢山の響きがこの曲に詰まっていたのか、と改めて感心させられた。 じつに素晴らしい演奏だった。 そんな自在なテクニックを駆使したクライマックスも軽やかに決めて曲を閉じた。 会場から、またオケの中からも大きな拍手が贈られていた。

休憩をはさんで曽我さんが登場。 モーツァルトのクラリネット協奏曲やクラリネット五重奏曲はシュタードラーを想定しており、クラリネット五重奏曲を聞くことでクラリネットに対するモーツァルトのイメージが分かるのではないか・・・と言われてから始まった第1楽章だが、繊細で妙なる響きをもって始まった。 クラリネットのまろやかな響き、ちょっと独特な釋さんのヴァイオリン、感情を精一杯込める野村さん、各人の個性・響きが見事に溶け合って感じられ面白ろく聴かせてもらった。 特に中ほどあたりで短調で緊張感のある旋律のやりとりをしたあと主題にさっと戻るところの緊張から緩和への移行が見事だったのが印象に残った。 声高では決してないが十分に聴き応えのある演奏で、続く楽章も聴きたくなった。
村瀬さんと曽我さんのトークは、一晩にコンチェルトと室内楽を演奏したのは始めての経験で、ありがとうございました、とのこと。 いえいえ、こちらこそ有難い企画に感謝しています。
さて最後になったハイドンの驚愕交響曲の残りの楽章の演奏前、曽我さんによると「びっくり」交響曲が出来る前のスコアが残っており、それをまず演奏してから、通常の演奏を行うとのこと。 その初校時の演奏は、聞き馴染みのある旋律に落差がないもので、実に淡々としたものだった。 演奏自体も特に工夫もみられずインテンポでとつとつとした風で、フルートが綺麗に響いていたのが印象に残った程度。 なるほどこれではもうひとつ・ふたついった感じだろう。
続いて演奏された本番の第2楽章は、響きが凝縮された実に素晴らしい演奏が展開された。 例の「びっくり」の部分の落差も大きいが、全体の響きがきちんと整理されていてメリハリのある演奏でぐいぐい惹き込まれていった。 第1楽章はちょっとしめっぽくも感じたのと大違い。 ヴァイオリンの響きには透明感があるし、管楽器も全体の響きによくマッチしていてオケ全体に調和した響きを醸し出していた。 そして速度が上がっても、締まった響きはそのままで、ウィットに富んだ軽やかさと弾力の良さが光っている。 よく練り上げられた変奏だった。 第3楽章は、豊かな響きのメヌエットとなった。 先の楽章よりもちょっと押しの強さを感じ、よりメリハリをはっきりさせたようだ。 聴き応えのある弾力をもった演奏と、ヴァイオリンと朴訥としたファゴットのかけあいも素適だった。 終楽章は生き生きとした活気にあふれた音楽が流れ出てきたとたんに、こいつはイイと直感。 軽快さと力強さが入り混じり、身体を自然に動かしたくなるようなドライヴ感をもった演奏だった。 会場を見渡すと自分と同様に身体の一部を使ってリズムをとっている仲間もいた(笑)。 曲が進むにつれて熱が入ってきた中低弦、これを軸に弦の分奏もきちんと描きわけられ、抑制のよく効いた管楽器と、要所をコンパクトに締めるティムパニも一体となってぐっと燃えたクライマックスからすっとかわして熱を冷まして落ちついたフィナーレとなった。 十分なドライブ感を持たせた演奏から引き際の見事さも感じさせた素晴らしい演奏だった。
次回のモーツァルトのフルート協奏曲とハイドンの戦時のミサも大いに期待したい。