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東京大学音楽部管弦楽団 サマーコンサート

泥臭くなく句読点をきっちりつけた巧い演奏戻る


東京大学音楽部管弦楽団 サマーコンサート
2002年8月4日(日)18:30 なら100年会館大ホール

ベートーヴェン: 歌劇「フィデリオ」序曲
R.シュトラウス: 交響詩「ドン・ファン」
リムスキー=コルサコフ: 交響組曲「シェエラザード」

指揮: 三石精一

非常に整った演奏のドン・ファンと、ちょっと線は細いが艶やかで清潔なソロとアンサンブルを綺麗に纏めあげたシェエラザード。 会場の音響的な問題はあったと思ったが、そんなことも忘れさせるとても上手い演奏にびっくりした。 これが大和郡山城ホールだと、もうちょっと濃厚な感じも出て印象が変わったかもしれないのだけれど、とにかく学生オケらしく泥臭さがなく、句読点をきっちりとつけたとても巧い演奏だった。

フィデリオ序曲はとてもストレートに演奏した感じがした。 最初はちょっとざわついた感じもあったが、後半はよくのってきたと思う。 ただしホールの音響もあってか、チェロやコントラバスがあまり響いてこない。 ティムパニは強く叩いていたと思うが響きがちょっと鈍く感じたのもそのせいかもしれない。
管楽器奏者が入れ替わり、コントラバスも3本増強されて7名となったドン・ファンは、冒頭から元気良く飛び出して最後まで駆け抜けた、そんな感じの演奏だった。 素晴らしかったのは木管楽器群のアンサンブル。 どのフレーズをとってもよく歌い込まれていて聴きごたえがあった。 特にフルートとオーボエを特筆しておきたい。 また弦楽器とくにヴァイオリンの響きに潤いが増した感じがしたし、低弦は増強されたこともあって先よりも力を感じるようになった。 ラストのホルン5本の斉奏もよく揃ってタイトに決まった。 三石さんはよく音を整理している感じで、オケもよく揃って音切れがとても良くシャープな演奏。 フィナーレになってもまるで焦るようなことがなかったのは三石さんの懐の深さだろう。 とにかく学生らしくきちんとよく纏まった巧い演奏だった。
休憩のあとのシェエラザードは、とくにソロ・ヴァイオリンの巧さが光った。 またオケ全体もドン・ファンよりも重厚であったし、また各楽器のソロ演奏も巧かった。 これだけきちんと纏めた演奏が繰り広げられるとかえって泥臭さが欲しくなるのは僕が天邪鬼だからだろう。 とにかく期待以上の演奏に少々驚いた。 第1楽章は重厚な出だしだったがどこか爽やかさがある。 ヴァイオリンの切り返しが一斉に揃って素早いので音切れがいいからだろうか。 金管のファンファーレもよく締まっていた。 しかし圧巻はソロ・ヴァイオリンだろう。 やや線は細いが響きに艶があるし何より安定感がある。 またオケ全体のクールな響きにもよくマッチしていた。 クライマックスはオケ全体にだんだんと熱が入ってきたが、やはり音をきちんと揃えてあくまでもクールさを感じさせる巧さがあった。 第2楽章もまたソロ・ヴァイオリンと木管楽器のソロを堪能させてもらった。 ファゴットはちょっと甘くせつないような響きだった身体をくねらせての熱演。 オーボエはよく透る響きできっちりとこなして弦楽器に引き継いでいたし、クラリネットやフルートも熱演だった。 弦楽アンサンブルもよく揃っていて気持ちがいいしピチカートも弾力があった。 第3楽章は、爽やかな弦楽アンサンブルが素敵。 上品な演奏で泥臭さを感じさせない。 フルートのソロと弦楽楽器も自然に絡んでいたし、全体的にも弦楽器に合いの手を入れる木管との呼吸も自然でよかった。 惜しむらくはヴァイオリンのソロの入る前後の静かな部分でヴァイオリンとヴィオラの奏者が相次いで肩当を落としたことだろうか・・・事故というほどでもないのだけれど、こんなことが続いて起きたのは初めてだったのでちょっと気になった。 終楽章はアタッカで入って一気に熱気を増した。 ヴァイオリン・ソロも少々熱っぽかった。 コントラバスやチェロが弓を動かす所作もこれまでよりも大きく感じたのは気のせい。 音量は大きくなったが、締まった音楽はそのままで荒れたり乱れたりしない。 金管楽器も充分にタイトに締めているし、打楽器もこれみよがしに打ち鳴らさない。 きちんとオケの音が整理されて、音は大きくなっても句読点をきっちりとなぞっていくような感じ。 学生オケらしく練習を積んでいるのだろうなぁ。 ぐぃっと盛り上げたあと、集中力をそのままにしっとりと終わった。 会場からはブラボーも出ていたが、どこまでも巧くやるなぁ・・・ そんな感じがした演奏会だった。