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吹田市交響楽団 サマーコンサート

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吹田市交響楽団 サマーコンサート
2002年8月25日(日) 14:00 吹田市文化会館「メイシアター」大ホール

世界ご当地音楽ア・ラ・カルト
〜ジャズピアニスト・松永貴志さんを迎えて〜

第1部
ヴェルディ: 歌劇「運命の力」序曲(*1)
J.シュトラウス2世: ワルツ「春の声」(*1)
ヤコブ・ガーデ(編曲:米山信):タンゴ「ジェラシー」(*2)
伊福部昭: SF交響ファンタジー第1番(*1)

第2部
Let's Try −−− あなたも名指揮者!

第3部
ガーシュウィン: ラプソディ・イン・ブルー(*3)

松永貴志(p)---(*3)
指揮:新谷 武(*1)
指揮:米山 信(*2,*3)

4年連続の吹田市交響楽団のサマーコンサート。 今年は「世界ご当地音楽ア・ラ・カルト」というテーマで、ラストには高校生ジャズ・ピアニストの松永貴志さんがノリノリのピアノで自作のカデンツァを弾いたラプソディ・イン・ブルーはもう圧巻でした。 また冒頭の「運命の力」序曲から充実したオケの響きによる演奏が繰り広げられていて、第1部最後の伊福部昭「SF交響ファンタジー 第1番」での迫力満点の演奏も実に素晴らしいものでした。 しかし何より今年の演奏が素晴らしいと感じたのは、どの曲に対しても、演奏する側の共感がとてもよく感じられたことですね。 気軽に楽しめるコンサートではあるのだけれど、プロオケの演奏会では(残念ながら)あまり感じることができない演奏する曲への思い入れのようなものがとてもよく感じられたことです。 こういったことこそがアマオケ音楽の最大の魅力ではないのかな・・・などと(偉そうに)思いながら帰ってきました。 とにかく今年のコンサート、これまでに僕が聴いた吹響のサマーコンサートの中では一番充実していた演奏会だったように思いました。 またお客さんも年々少しづつではあるけれど増えてきているのではないでしょうか。 また来年も楽しませてください。

第1部:定刻になり、米山先生が出てこられてのお話。 4年前は(失礼ながら)眠いなぁ・・・と思ったけれど、今年は世界の音楽には色々とあってとアフリカのピアノの音を聞かせてもらったりカエルの音を模した楽器を演奏されてから、そのごく一部だけれど世界の音楽を、とのことでヴェルディの「運命の力」についての軽い解説。 そして3つの音については「またあとで」と・・・掴みもよかったし、ひっぱりも入れて、新谷さんによる演奏が始まりました。
「運命の力」序曲の冒頭の金管ファンファーレは豊かで張りを感じさせる音が素敵でした。 そしてこのあとの不安をかきたてるような弦楽器の響きには中音弦の和音が豊かに響いていてぐっとくるものがありました。 素晴らしかったです。 このあとの木管楽器のソロも難なくこなして、とっても集中力の高い演奏が最後まで繰り広げられました。 最初の曲からオケは絶好調という感じで、今日はいい演奏会になるな・・・という感じがしましたが、結構こおいうのは当たるものです。 たかが序曲、されど序曲といった感じでしょうか。
さて、シュトラウスの「春の声」。 こちらもちょっと重厚な感じのする熱演だったように感じました。 ただこの曲は熱演が似合わないからちょっとやっかいです。 別におかしな演奏ではなかったのですが、アマオケに洒脱さを求めるのは酷だと思うのですけどね(すみません)耳がそう馴染んでしまっているので・・・。
アルゼンチンで生まれたタンゴがヨーロッパ大陸に渡ってコンチネンタル・タンゴになったとのこと解説でした。 そしてこの曲はそのコンチネンタル・タンゴの代表作と言われるものだそうです。 演奏は、切れがとてもよくって統制されて整っているのですが、演奏することに対する「ひたむきさ」というものを熱く感じました。 なぞるだけ、なんとか似せるだけのタンゴ演奏などではなく、演奏する各自のひたむきな情熱があって、それが結集して格調の高さに結びついたような感じといえば言いすぎでしょうか。 演奏後にブラボーが飛んだのには納得するものがありました。
次に日本の伊福部昭の曲ですが、彼がゴジラなど東宝特撮映画のために書いた作品をメドレー風に編曲にしたもので、3部作の第1番にあたるこの曲は次の12の部分で構成されているとのことでした。 1.ゴジラの動機、2.間奏部、3.ゴジラのテーマ、4.「キングコング対ゴジラ」タイトルテーマ、5.「宇宙大戦争」夜曲、6.「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」バラゴンの恐怖、7.「三大怪獣 地球最大の決戦」ゴジラとラドン、8.「宇宙大戦争」タイトルテーマ、9.「怪獣総進撃」マーチ、10.「宇宙大戦争」タイトルテーマ(アップテンポヴァージョン)、11.「怪獣総進撃」マーチ、12.「宇宙大戦争」戦争シーン。 子供の頃に怪獣映画で育った僕としては、これはもう理屈抜きに楽しめる内容なんですが、オーケストラの中を眺めていても、楽器を弾きながら大きく身体を動かしながら演奏している人、嬉しそうに演奏している人が散見されました。 嬉しいですね。 なんか共感が熱く伝わってくるようです。 ところで、このような曲を演奏するのって意外と難しいのではないでしょうか。 コントラバスは4本でしたけれどヴィオラ、チェロも含めた中低弦と打楽器群が一体になって、きちっとした音楽の土台を構成していましたし、そんな土台の上にしっかりと乗った迫力があって、金管のファンファーレ(トロンボーン5本がそろって大きくヴィブラートをかけるような部分など)も伸び伸びと演奏してて、単に派手に勢いだけで演奏しているのではなく、充足感を感じさせる見事な演奏でした。 ブラスバンドで鍛えられたアマオケの皆さんによる経験も大きく役立っているのかな、などとも思うところがありました。 とにかく月並みですが、よかったです。

第2部:お馴染みの指揮者コーナーの前に「3つの音」についてのお勉強の時間。 適度にユーモアが混じって(ド忘れもあったが)フムフムと聞いてしまいました。 また指揮者コーナーのお題にはならなかったが、マーラーの交響曲第5番の冒頭のラッパの音が艶やかでとても巧かったのが印象的でした(惚れ惚れするほどでした)。 実際の指揮者コーナーのお題は3つの音にちなんで、メンデルスゾーンの結婚行進曲、シュトラウスの春の声、ベートーヴェンの運命の冒頭、でしたが、やはり運命は難しい曲なんだな、というのを再認識しました。 冒頭に休符が入っているのは知っていたけど、音の響きが他の曲に比べて圧倒的に少ない(洗練されている?)ので、いわゆるイキが合わないとメタメタなのね。 ベートーヴェンの偉大さを感じてしまいました。

第3部:北野タダオ氏に師事し、彼のアロージャズオーケストラとの演奏で活躍する松永貴志さん(というよりも「クン」と言うほうがぴたりする感じなので、以降は「クン」付けにします)は1986年生まれ。 どんな人が出てくるのかな〜と思っていたら、ニタニタ笑ったちょっと小柄なオトコのコが出てきた。 お辞儀してもまたニタニタ笑っているので、会場からもつられて笑いが出たほど。 バカにしてんの? かというとそうではなく、逆におい大丈夫かい? という感じのする松永クンだったのですが、これがピアノを弾き始めるとどうしてそこまでリラックスしてバリバリ弾けるの? という感じでした。 テクニックには全く問題なく(ジャズっぽく適当に誤魔化して崩して弾くのではなく)って、色彩感のあるきちんとしたピアノの響きに時々足でステップ踏む音も混じったノリの良さ加わって、こんなに楽しいラプソディ・イン・ブルーを聴けるとは思ってもいませんでした。 途中のカデンツァが自由自在な感じで延々と続き、あれぇ〜こんな曲やったかな、オケとうまく合わせて元に戻れるかな・・・とちょっと心配になってしまうほどでしたが、きちんとお馴染みの旋律にアレンジしながら戻ってきたので安心するのと同時に旋律の持ってきかたの巧さにへぇ〜と感心してしまいました。 あとで聞いてみるとこれは自作のカデンツァとのこと。 ステップを踏んで楽しそうに弾いていたのを思い返すにつけ、その豊かな才能に改めて参りました。 なおオケも冒頭からダルな感じがよく出ていたし、ここでもブラスバンドで鍛えられたであろうアマオケの皆さんによるノリの良さで実に楽しい演奏に仕上がっていました。 オーケストラのCDでは時には騒くも感じたりするし、またちょっと杓子定規で面白みに欠けるようにも感じる曲なのですけど、これは文句無く楽しませてもらいました。 演奏終了後、ロビーでやはりニタニタ笑っている松永クンでしたが、お客さんと一緒に写真を撮られたりしているのを見ても、ごく普通の高校生以上にシャイな明るさを持った感じのするコに思えました。 これからが楽しみです。

今年のサマーコンサートは、色々な意味でリラックスして聴けましたし、このようなカジュアルさがとても大切だと思います。 そして何よりもアマチュア・オーケストラの音楽の魅力というものを強く感じた演奏会だったように思いました。 お客さんも年々少しづつですけど増えてきているようですし、この調子でまた来年も楽しませてください。