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関西学院交響楽団第100回定期演奏会

美しいアンサンブル・熱い想いのラフマニフに感涙戻る


関西学院交響楽団第100回定期演奏会
2003年1月25日(土) 15:00 ザ・シンフォニーホール

ブラームス: 大学祝典序曲(*)
ブラームス: ハイドンの主題による変奏曲
ラフマニノフ: 交響曲第2番 ホ短調

指揮:下野 竜也、津田 卓哉(*:学生指揮)


第100回の記念演奏会、そしてこの時期4回生にとっては学生最後の演奏会ということもあって、シンフォニーホールはクワイア席を除いて1・2階はほぼ満席。 そのホールに学生オケらしく真摯で熱いラフマニノフの交響曲第2番が響き渡った。

下野さんは、甘くなりがちなこの曲を、的確なコントロールで振り分け、オケもまた各セクションが有機的に結び付き、下野さんに忠実に応えていたようだ。 そして勢いがついてもオケが野放図になることなどなく、終始ぎゅっと締まったような真摯な演奏に感動した。 音楽が大きく呼吸しているかのようなラフマニノフの交響曲で、どこをとっても素晴らしい演奏だったと思うが、個人的には第2・3楽章が秀逸だったと思う。 特に第3楽章の有名なクラリネットのソロ(学生らしく端正なソロだった)のあと、弦楽セクションによる遥かな想いをいっぱい満たした美しいアンサンブルにホルンが加わってきて最高潮に達したあたり、涙が出そうなほどだった。

大きく熱くそして集中力がまったく途切れることなく迎えたクライマックスまで全員一丸となっての素晴らしい演奏に、棒が振り降ろされたあと、ホールは大きな拍手と、さかんにかかるブラボーで埋め尽されていた。 カーテンコールが繰り返されて、各セクションが紹介されるたびにいつまでも拍手は鳴り止なかったが、アンコールが無く、そのまま終わったことも良かったと思えたほどの素晴らしい演奏だった。


簡単に演奏会を振り返ってみる。

ラフマニノフの交響曲第2番はロマティックな曲であるが、下野さんと関学オケは、集中力の高い演奏で甘さよりも真摯で熱い演奏を聴かせてくれた。

第1楽章の冒頭からぎゅっと引き締まった演奏で、チェロ・コントラバスが芯となってズシリと響いてくるなかに、透明感のあるヴァイオリンがささやきかけるよう。 大きく音楽が呼吸するかのように進んでいった。 長大な楽章であるけれど、集中力は途切れることなく、新鋭指揮者と学生オケという組み合わせらしく、都会的で真摯な音楽であり、クライマックでも野放図に鳴り響くことのないセンスの良さを感じさせてくれた。

第2楽章の冒頭はとにかく速かった。 しかし弾き飛ばしたりせずスマートだが熱い想いようなものを感じさせ、気力が気迫になるような熱演だったと思う。 音キレも良くて緩急の対比も見事、巧い演奏だった。

第3楽章は、大きな身振りの下野さんの振りからうねるような音楽がほとばしり出てきたみたい。 クラリネットによる長いソロも端正でうまかったが、このバックを支えていたファゴットやホルン、そしてコントラバスのピチカートなども特筆しておきたい。 そしてこの歌が弦楽器のアンサブルにつながって遥かな想いをいっぱい満たして延々と歌われ、さらにホルンが加わって最高潮に達したときにはもう美しさのあまり涙が出そうになった。 本当に素晴らしかった。 下野さんの清新さと学生オケの誠実さがとてもよくマッチしていた瞬間だったと思った。

終楽章は明るく開放的な響きで飛び出したように感じたが、だんだんと気迫がこもってきて、大きくうねるように主題が回想されていった。 割り込んできた踊りの主題には迫力と弾力があった。 バシっと揃っていて思い切りもよく見事。 とにかく弦楽器が分厚くしかもきちっと鳴っているために熱くなっても音楽は明晰だし、金管楽器をきちんと受けとめている。 正攻法でぐいぐいと音楽をクライマックスに向けて進めていくような感じ。 タイトなホルンの斉奏も要所で見事に決り、力強く凝縮した音楽のまま全員一丸となったエンディングでぐわぁんと盛りあがって幕となった。

これに先だって演奏された、学生指揮者によるブラームスの大学祝典序曲は、ゆったりとしたテンポのなかに若さや清新さを感じさせてくれた誠実な演奏であり、後半の盛り上がりは自然な流れから熱い演奏となって曲を閉じたあたり巧かった。 またこの後の下野さんの指揮による同じくブラームスのハイドンの主題による変奏曲は、暖かく明るい主題の提示から、春の陽光を感じさせてくれるような演奏だった。 落着いていて、重く引きずることのない、こちらも誠実な演奏で、ともに若い学生オケらしいきちんとした感じのするブラームスだった。

しかしこの日の演奏は、ラフマニノフの交響曲第2番が総てといっても過言ではないだろう。 この時期でもあり、オケのメンバーの中には卒団される方もいらして(中には終演後に涙ぐんでおられる方も散見したが)、この曲に総てを賭けていたであろうこともまた容易に想像される。 そのような熱い想いが各セクションを有機的に結びつけ、素晴らしい演奏として結実したのではないだろうか。

卒団される方におかれましては、これからも場は違っても、ご活躍を期待します。 そして素晴らしい演奏をありがとうございました。