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芦屋交響楽団 第59回定期演奏会

お見事の一言で感想おわりってな感じ戻る


芦屋交響楽団 第59回定期演奏会
2003年5月18日(日) 16:00 ザ・シンフォニーホール

ヴェルディ: 歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲
レスピーギ: 交響詩「ローマの祭」
サン=サーンス: 交響曲第3番 「オルガン付き」

アンコール: ドリーブ: 「シルヴィア」より「バッカスの行進」

独奏: 片桐 聖子(org)

指揮: 松尾 葉子


ザ・シンフォニーホールでの芦響の定期演奏会。 前回はブラームスのドイツ・レクイエムという渋いプログラムでしたが、今回は音の洪水ともいえる演奏に圧倒されっぱなしでした。 正確な音程でしかも自信を持ち、全くブレることなどない金管の音がビシッと飛んできます。 また弦楽器も腰の強さにコクや透明感まであって本当に綺麗に揃っていました。 冒頭の序曲から全開なので唖然としてしまいましたが、続くローマの祭はもうお見事の一言で感想おわりってな感じでした。 サン=サーンスはオルガンがオケの楽器のひとつに感じられるほど一体感のある演奏で、とにかくオケのパワーの豊かさに圧倒されました。 

とにかく松尾さんと芦響コンビの凄いところは、いくら全開であってもイケイケドンドン的な演奏にならないところです。 出てくる音に自信があって余裕すら感じさせる点など彼らをアマチュアと呼ぶのがちょっと憚られるようにも感じた演奏会でした。 とにかく久しぶりに凄いオーケストラを聴いた、これだけで感想は十分でしょう。


ちょっとだけ頑張って簡単に演奏会を降り返ってみたいと思います。

20分ほど前にホールに到着し、2階席の2列目に身体を滑り込ませました。 昨日のメイシアターはゆったりしていて良かったなぁ、と思えるほど1・2階席ともにほぼ満員の客席でした。

にこやかに松尾さんが出て来られて始まった「シチリア島の夕べの祈り」は冒頭からこんなに飛ばして大丈夫か、とも思えたほどの圧倒的なコーダによって締めくくられました。 醸しだされるような響きだった序奏からタイトで迫力のある第1主題、そして見事に揃ったチェロによる豊穣な第2主題など表情の描き分けにまったく曖昧さがありません。 じつに機能的な演奏だったのですが、響きの冷たさなど微塵も感じさせない力強く巧い演奏に冒頭から参ってしまいました。

「ローマの泉」は、オルガンの横にトランペットが3名立ちました(第1曲目のみ)。 そして舞台上では打楽器奏者が最後列を占拠しているのはなかなか壮観な眺めでした。 そしてここから迸るように出てきた音の洪水にのみこまれてしまいました。 決してCDでは味わうことのできない真迫力とともに、このオケの金管楽器の圧倒的なテクニックに完璧に参ってしまいました。 そんな第1曲「チルチェンセス」の冒頭はオルガン横に立った3名のトランペットから始まりました。 呼応するオケのトランペット4名とが中心になっていきなり音の洪水です。 すごい迫力なんですが、きちっと揃っているのでやかましくありません。 巧いなぁ〜って感心するばかりの演奏でした。 第2曲「50年祭」では、どこか現代音楽風にも響く巡礼の祈りなど内的な表現も豊かでした。 とにかく弦楽器なども各パートが自信を持って弾ききっていますので、曖昧さをまったく感じさせません。 第3曲「10月祭」のホルン6名による斉奏が1本に聞こえるほど力強くタイトでびしっと揃っていたのが印象的でした。 あとマンドリンも実に可憐な響きでアクセントになっていました。 第4曲「ベファーナ」は打楽器が大活躍の乱れ打ち、トランペットもミュートを付けたり外したりと大忙しの演奏なのですが、これとて見事に統率された音楽の一部でしかありません。 見世物小屋の雰囲気もよく出ていたし、まさしく非の打ち所の無い演奏ってこんなことを言うのだろうなぁと思った演奏でした。

休憩をはさんでサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」は、パイプオルガンとオーケストラが一体となった演奏でした。 パイプオルガンの自己主張が弱いってことではなく、オーケストラがまるでオルガンのように鳴っていたというのが近いように思いました。 第1楽章は繊細な響きの導入部から丁寧に音を重ねて盛り上げていきました。 弦楽器の透明感がとても高かったのが印象に残りました。 そしてクライマックスでは豪快に盛り上がりますが、音が綺麗に揃っていて、弦楽器など響きが湧き上がるな感じでした。 後半は豊かなパイプオルガンの響きとやさしい弦楽器の響きが一体となって感じられ、心休まる時間が流れていきました。 一音一音丁寧に紡くような美しさでした。 オルガンは殊更に自己主張しないので弦楽器などと有機的なからんで全体にとてもよくマッチした響きになっていました。 最後はそんなオルガンの響きを長くのばして終わりました。 第2楽章は、タイトに締まった響きで始まりました。 重量感もあるし、本当に曖昧さを感じさせない響きです。 主題がさらに大きくなって戻ってきたあと、最後はトロンボーンのコラールでしょうか、巧いものですね。 後半パイプオルガンが華やかに登場するんですが、このあとのオケのまたなんと力強いこと。 オケの楽器がまるでオルガンのように鳴っていますね。 対等というかそれ以上に渡り合っているといった感じでした。 もちろん豪快なだけではなく、ピアノがキラキラと煌めくと呼応する弦楽器も繊細だし、チェロから始まってヴィオラ、ヴァイオリン、コントラバス、管楽器とテーマが持ちまわる部分なども各パートがきちっと揃っていて巧いものです。 そしてトドメは凄い速さとなった力強いエンディングで締められれば会場からは割れんばかりの拍手・拍手・拍手・・・ とにかく凄い演奏会でした。

なお、アンコールはドリーブの「シルヴィア」から「バッカスの行進」。 思いっきり演っているって感じでイケイケドンドン的なんですけど、要所はきちっと締めていて、まるで横綱相撲やな、と思ってしまったほどの演奏でした。 とにかくもうお腹いっぱいってな感じでホールをあとにしました。