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豊中市民管弦楽団 第29回定期演奏会

響きのひとつひとつに注意が払われた演奏戻る


豊中市民管弦楽団 第29回定期演奏会
2003年10月26日(日) 14:00 豊中市民会館・大ホール

ニコライ: 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
シューベルト: 交響曲第7番ロ短調「未完成」D.759
チャイコフスキー: 交響曲第4番ヘ短調 作品36

アンコール: L.アンダーソン: プリンク・プレンク・プランク
アンコール: チャイコフスキー: バレエ音楽「くるみ割り人形」より「トレパーク」

指揮:谷野 里香


しばらく行っていないな、と思って調べてみたら、なんと2年ぶりでした。 2001年10月の第25回定期以来の豊中市民管の演奏会は、以前よりもぐっと巧くなったように感じました。 シューベルトの未完成では、ほの暗い雰囲気としっかりした構成感が見事にマッチした素晴らしい演奏でしたし、チャイコフスキーの交響曲第4番は白熱した演奏で幕となりました。 この曲の終楽章、ありがちな勢いをつけた演奏では決してなく、常に響きのひとつひとつに注意が払われた素晴らしい演奏でした。 そうして響きがきちんと重ね合わせられたサウンドは重心が据わっていて、指揮者の谷野里香さんは派手なアクションひとつせずに自然に白熱した音楽にしてゆきました。 いつもながらのコンパクトな振りによる誠実な演奏に加え、今回は迫力満点のサウンドにも大満足。 これまでに聴かせたもらった3回の演奏会の中では一番充実した演奏会だったように思いました(聞き逃した前回のブルックナーの交響曲第7番とベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は惜しかったかな)。 あとアンコールがとても楽しかったのも良かったですね。 L.アンダーソンのプリンク・プレンク・プランクでは勢い余ってコントラバスを回しすぎた暴走もあったようですが(笑)・・・ 
とにかく演奏も素晴らしかったし、最後には明るい気分を持たせてもらって会場を後にすることができた演奏会でした。


さて簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。
会場の豊中市民会館には10分ちょっと前に到着しました。 1500人は入るホールに4割だったでしょうか、ちょっと寂しい感じもするのですが、両隣りはいないし前の席も空いていたので・・・すみません、お行儀悪いのですがクツを脱いでリラックスして聴かせてもらいました。 でもこのオケの演奏会も近所の方々の社交の場となっているのでしょうね、あちらこちらで挨拶が交わされていて、和気藹々とした雰囲気で和んでいます。 まだ3歳くらいの小さなお子さんの姿も見かけるのですが、演奏中に騒ぐこともなく立派でした。 それよりも演奏中に入ってきたり、大人の方の雑音がちょっと多かったかも・・・ま、個人的にはいずれも気にはしていませんけれど。

第1曲目はオットー・ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲。 演奏の前、出て来られたオケのメンバーの方々を見てアレって思ったのは、第1ヴァイオリンよりもチェロ奏者のほうが多いことでした。 数えてみたら(間違いがあるかもしれませんが)、第1ヴァイオリンは9名、以下第2ヴァイオリン7名、ヴィオラ8名、チェロ10名、コントラバス7名となっていたようです。 中低弦にシフトした体制のようです。 その効果からでしょう、豊かな響きのチェロとヴィオラがポイントになった音楽を楽しませてもらいました。 テンポもちょっとゆったりしていたように思いますが、全体としてまったりとした感じの序曲だったように思います。 抑制のよく効いたお洒落な金管楽器も加わって、最後は楽しく盛り上がってフィニッシュを決めていました。 なるほどね〜 こんなシフト体制があったのかとちょっと感心したしだいです。

第2曲目はシューベルトの未完成交響曲。 こちらはコントラバスが3名減って4名となりましたが、あとは同じ体制だったようです。 しかしこの中音弦の多い体制による効果はここでも顕著だったと思います。 構成感がとてもしっかりしていましたし、この曲の持つほの暗さもよく出たとても素晴らしい演奏でした。 失礼ですが、こんなに素晴らしい未完成を聴けるとはちょっと予想だにしていませんでした。 大収穫でした。 第1楽章の冒頭、チェロとコントラバスによる主題の呈示は、数が多いこともありますが、きちっと揃っているのですっと曲に入り込めましたし、このあとのオーボエのメロディも見事でした。 ここからもうシューベルトの世界にどっぷりと浸かっていました。 さっきの序曲ではちょっとアンサンブルが弱いかなと思える面もあったのですが、ここでは弦の分奏がきちんとしているためクライマックスになっても芯の強さがあります。 またトロンボーンがタイトなカッコ良い響きを演出していたのも印象に残りました。 そんなこんなで展開部以降はもう惚れ惚れとして聴いていました。 再現部で主題が戻ってくると一回り大きな熱い音楽でしたね。 終始構成感のはっきりとした音楽で、素晴らしく充実した演奏に大満足でした。 
第2楽章は、冒頭の中音弦がくっきりと浮かびあがり、コントラバスのピチカートが柔らかく添えられていました。 谷野さんは実に端正にこの曲を進行させていました。 クライマックスになってもコンパクトに曲を纏めていて、一つ一つの響きを丹念に積み重ねているような演奏に終始しています。 素晴らしかったですね。 後ろ髪をひかれるようなエンディングで、ちょっと拍手をするのも躊躇するような感じで静かに響きが消えてゆきました。 

休憩をはさんでメインのチャイコフスキーの交響曲第4番。 第1ヴァイオリンに2名、第2ヴァイオリンに1名が追加され、コントラバスに3名がもどってきました。 管楽器も増強されていました。 しかし人が多くなっても音楽の端正さや誠実さは変わることがありません。 シューベルトのところでも書きましたが、一つ一つの響きを丹念に積み重ねているような演奏でした。 特に終楽章は見せかけだけの派手な演奏とは全く一線を隔したもので、ぎっしりと響きの詰った白熱した演奏が見事でした。 指揮者の谷野さんは派手なアクションひとつせずに自然に盛り上げていて、ドライブ感もあって感動しました。 
第1楽章、ホルンのタイトな響きのあとトランペットを始めとする輝かしい響きで運命の動機が呈示されました。 これに応える弦楽器も弾力を感じさせるもので上々の滑り出し。 主題の旋律はややストイックになりすぎていたでしょうか、もうちょっと粘り気が欲しいような気がしましたが、ちょっと欲張りかもしれませんね。 第2主題のクラリネットはちょっと太い響きに哀愁があって良かったし、このあとの管のアンサンブルそしてチェロと愛らしい旋律が持ちまわされたあと、劇的に盛り上がってゆきました。 しっかりと地に足をつけたような演奏で見事でした。 谷野さんはここでも変にミエをきったりせず、丹念に音を重ねる作業に従事していたようです。 重心の低い音楽でフィナーレを迎えました。 
第2楽章は、冒頭のオーボエが魅惑的な音色でした。 この旋律が変形しながら繰り返されます。 真摯な音楽なんですが、ここでももうちょっと粘り気があったらもっと素晴らしいものになっていたかもしれません(やっぱり酷ですかね)。 調が変わって明るくなると若干オケの響きが拡大していたのも印象に残りました。 ただちょっと緊張が途切れる場面もあったようですけど無難に乗り切ったようです。 
第3楽章のピチカートは聴き応えありました。 リズミカルだったし響きの深さとキレがあってすばらしかったですね。 このあたり谷野さんは指揮棒を持たずに指示を出していましたが、オーボエの清澄な響きが入ってくるところから棒を持ちました。 このあたりちょっとゆったりと演奏していたでしょうか、金管楽器も柔らかく絡んできたあと、また弦楽器も混ざり合ってきましたが、いずれもタイトな響きでドライブ感を持っていたのも魅力的でした。 本当に音を丁寧に重ねていたのが良かったですね。 
そして一瞬の空白をとったあとアタッカで終楽章に突入。 重心の低い熱い音楽がバシッと決まってとてもカッコ良い。 タイトな金管の響きに耳を奪われて見てみると、最後列のトランペット、トロンボーンの皆さんは顔が真っ赤でした。 気合が入ってましたね、こちらも熱くなってきました。 谷野さんはやはり派手なアクションはなく実に淡々と振り分けています。 場面転換も見事に決めて、オケとも息がぴったりと合っていました。 オーボエによる第2主題の部分、ここではぐっと速度を落としたようです。 このあたり緩急による対比を際立たせていたのでしょうか。 しかしだんだんと速度を上げて金管楽器のファンファーレをバシっと決めます。 響きの余韻をしっかりと楽しませてくれる繰り返し、しっかりとタメを計算していましたね。 とってもクールな指揮なんですけど迸り出て来た音楽は非常に熱いのが印象的です。 もうあとは怒涛のようなフィナーレですが、ここもしっかりと決めた大熱演で幕。 ブラボーも飛び出していましたが、これもよく頷けるような見事なフィナーレでした。 

前半こそ時に集中力を欠いた面もあったようですが、終始重心を低くした演奏で終楽章の迫力満点のサウンドにも満足しました。 これまでに聴かせたもらったこのオケの演奏の中では一番迫力があったように思います(ブルックナーを聴けなかったのが今となっては残念です)。 
あと個人的には、シューベルトの未完成交響曲の素晴らしさを特筆しておきたいな。 決して派手ではありませんが、見事な演奏だったと思います。

さてこれらの熱演のあとのアンコールは実に楽しいものでした。 ルロイ・アンダーソンのプリンク・プレンク・プランクではコントラバスが大活躍。 一段と大きなピチカートの響きを出したあと、楽器をくるりと廻して胴の裏側をキュっと鳴らす大サービス。 勢い余って廻しすぎた人もいたようですがこれもご愛嬌ですね。 くるみ割り人形の音楽も抑揚があってとても楽しく聴かせてもらいました。 とても明るい気分になって帰路につくことができました。 
ところで次回は運命が予定されているようです。 難曲ですけれど今日の未完成の出来からすると期待できそうな予感がします。 次回がとても楽しみです。