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橿原交響楽団 第11回定期演奏会

しっかりとした表情を持った演奏戻る


橿原交響楽団 第11回定期演奏会
2003年11月16日(日) 13:30 奈良県橿原文化会館大ホール

J.シュトラウス2世: 喜歌劇「こうもり」序曲
グリーグ: ピアノ協奏曲イ短調 op16
ドヴォルザーク: 交響曲第9番ホ短調 op.95

独奏:矢崎 真理(p)

指揮:池田 俊


このところ降り続いた雨のあと急に寒くなってしまいましたが、久しぶりの良い天気に誘われて、大和八木の橿原文化会館まで橿原交響楽団の定期演奏会に行ってきました。 これまでにも何度か行こうかな、と思ったことはあったのですけど、用事や他の演奏会などと日程がかちあってしまって聴くことが出来ませんでした。 ようやく聴く機会に恵まれました。 また指揮者の池田俊さんも初めて聴く方なんですが、大阪フィルのトランペット奏者から指揮者に転身された経歴については以前から耳にしていましたので、池田さんの指揮もまた楽しみでした。
さて演奏は、その池田さんの巧みなリードによって橿響の持てる力が遺憾なく発揮されていたようです。 ドヴォルザークの新世界、聞きなれた曲なのですけれど、池田さんは各楽器にスポットライトを当て、そしてそれを支える他の楽器を巧みにコントロールすることで充実した音楽を作っていました。 特に第2楽章のコールアングレによる家路のメロディの部分、これだけでも巧い演奏だったのですが、ファゴットを始めとする木管楽器や弦楽器のトレモロをしっかりと絡ませているために軽薄な感じになりません。 またメンバーが全員が一丸となって演奏されていたのが終楽章でしょうね。 力強さもあったし、すっと退く潔さもあって見事なフィナーレでした。 なおグリーグのピアノ協奏曲もまた、オーソドックスだけれども気持ちのよくこもった音楽が素敵でした。 ピアノの矢崎さんは、適度な深みをもった響きでキレも感じさせました。 オケの誠実なサポートがついていて、拾い物と言っては失礼かもしれませんが、見事な演奏に満足しました。
いずれの演奏も誠実なんですが、どこかに華やかさを感じさせる演奏になったのはトランペット奏者でもある池田さんのリードによるところが大きいのでしょう。 ま、若干ヴァイオリンの数が少ないために全奏になると金管に偏りがちになってしまうバランス上の問題もあったかもしれませんけどね。 そんなことはともかくとして、オケ全体として、しっかりとした表情を持った演奏であったことは確かです。 満足して帰ってきました。


さて簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

初めて聴くオケはわくわくするものですが、電車の中から刈り入れの終わった田圃や畑を眺めながら、ちょっとしたハイキング気分で大和八木まで行きました。 そして駅を出たとたん、ホールの場所を確かめていないことに気付きました。 え〜って感じですね。 いきなりドキドキしてしまいました。 近鉄百貨店のほうにあったはず、なんていうおぼろげな記憶を頼りにアーケードの下を進んでいくと、ここは以前新宮行きの急行バスに乗って星のくにに行ったことを思い出しました。 懐かしい気持ちもあったのですが、足早に近鉄百貨店に向かう地下道に入ったらありました、ホールへの表示板。 ここで一安心。 しかし地下道を出ると何もないではありませんか・・・ここでまた、え〜って思ってちょっと歩いたら見えたので安心しました。 ホールの前が広大な空き地になっているんですね。 奈良県文化会館といい、この橿原文化会館といい、ホールの前に広大な空き地があるってのが面白いところですね。
さてこのホールに入るのも初めてなんですが、奈良県文化会館国際ホールよりも古い感じがするもののキャパが大きいようですね。 それに何より音響も良さそうな感じがしました。 オーソドックスなホールらしいホールって感じですものね(かえって分かり難いかな・・)。  どこか良さそうな席はないかとキョロキョロしたあと、中央の後ろから10列目くらいのところに座りました。 座席や座席間隔が広いのがありがたいですね。 ゆったりと座って音楽を楽しめますからね。 この位置、カメラマンのおじさんがちょっと邪魔だったんですけども、ま、これも仕方ないところでしょう。

いよいよ定刻となって、池田さんがにこやかに登場されて「こうもり」序曲。 元気よく弾けるようなブラスの響きを伴ってスタートしました。 ちょっとヴァイオリンの数が少ないせいでしょうね(第1ヴァイオリンは8名編成)、流麗というよりも華麗に進むといった感じでした。 全体として楽しさを基調にした演奏だったようですね。 池田さんは、大きくゆったりと動き、また身体をくねらせたりしながら表情をつけていました。 オケもそれに合わせてよく奮闘していたのが印象に残りました。

さて、オケのメンバーが一部退いてピアノを出してグリーグのピアノ協奏曲です。 ピアニストの矢崎さん、遠目ながら美形な方だと拝見しました(って何を見ているのやら・・)。 ティムパニがトレモロでクレッシェンドしてきて、ピアノが硬質なタッチで冒頭を見事に演出。 集中力の高い演奏に痺れました。 そしてこのあと、弦の響きにも深みがあって、前曲の演奏とはちょっと見違えました。 「こうもり」はちょっと練習不足だったでしょうかね。 纏まり感に乏しい場面も散見されましたけど、グリーグのピアノ協奏曲は万全のサポートでした。 矢崎さんは冒頭こそ硬質な響きにしていましたが、全体的には深みを感じさせる響きを持っていて、オケと対峙するのではなく、一体感を醸し出すような演奏でした。 ちょっと地味かもしれませんが、誠実にサポートするオケとともにとてもよく纏まった演奏に満足しました。
第1楽章は先にも書いたような感じで始まったあとピアノがちょっと響きを深めにとって主題を弾いてゆきました。 クライマックスはピアノとオケが自然に盛り上がる感じとなり、チームワークがとれていてカッコ良かったですね。 フィナーレもまたそうやって力強く締めくくった終結だったせいか拍手が贈られました。 楽章間の拍手には肯定的な感じを持っていますので、ここでの拍手、充分に納得するものを感じていました。 
第2楽章は、暖かい感じがそこはかとなく漂っていましたね。 ホルンやチェロのソロも全体のなかにきちっと納まっています。 そして情感を細やかに表現していたピアノ。 しみじみとした感じでこの楽章を締めくくったあともまた拍手。 う〜ん、この気持ちはわかるけど、ここはアタッカで入るのでちょっと・・・ でもオケはこんなことには動じず、さっと譜面をめくって、終楽章をスタートさせました。 
響きに太さを持ったせたピアノにオケもまた力強く応えていましたね。 ティムパニが重くて堅い音で曲の芯になっていたようです。 一転し、叙情的なピアノが流れ出すと、すぅ〜と落ち着いた気分になります。 矢崎さんにはこのような表現の方が似合っているのかもしれませんね。 しばし情感のあるピアノの演奏を楽しませてもらったあと、また気合の入ったクライマックスに突入。 ここでは金管ファンファーレを渋い響かせ方をし、ティムパニはクレッシェッドをかけた盛り上がりでフィナーレを飾っていました。 必要以上に刺激的にならず、オーソドックスだけどとても気持ちのこもった音楽でしたね。 拾い物と言っては失礼かもしれませんけれど、とても見事な演奏に満足しました。

休憩をはさんでメインの新世界交響曲。 このオケの定期演奏会では第2回からの再演とのことです。 といってもオケのメンバーも入れ替わっているでしょうし、とにかく超有名曲ですからね、どんな感じに演奏されるのかが楽しみでした。 そしてこの演奏も、指揮者の池田さんのコントロールにオケがよく付いてゆき、オーソドックスだけれども充実した音楽を作りあげていました。 池田さんは終始とても分かり易い振りで、各楽器にスポットライトを当てているんですが、それを支える他の楽器も巧みでした。 特に第2楽章のコールアングレによる家路のメロディの部分、ファゴットを始めとする木管楽器や弦楽器のトレモロをしっかりと絡ませていました。 そして何よりオケのメンバーが一丸となって演奏しているからでしょうね、力強さもありましたし、すっと退く潔さも見事でした。 気持ちがのっていないとこうはならないでしょう。 あと、全体的に誠実な演奏なんですが、演奏にどこかに華やかさを感じたのはトランペット奏者でもある池田さんのリードによるところが大きいように思えました。 とにかく池田さんに導かれて橿響の持てる力が遺憾なく発揮された演奏で、しっかりとした表情を持った音楽に満足しました。
第1楽章はゆったりとした低弦、ホルン、木管が進んだあと、スパっと止めて、力強く覇気のある響きで始まりました。 メリハリの効いた音楽で一気に曲の中に入り込めました。 オケの弦の響きにもこれまでよりも伸びやかさ、拡がりが出ていました。 次第にノッてきたのでしょうかね、徐々にテンポアップしていったようですけど、フルート・ソロのあたりでちょっとまたテンポを落としていたようです。 このあと金管をタイトに響かせたりと、抑揚をつけながら曲を進めていたようです。 
第2楽章も、力強く盛り上げてからコールアングレの家路のメロディにすっと繋げてゆく。 この響きに痺れますが、よく聴くとファゴットを始めとした木管楽器がきちんとサポートしていますし、弦楽器もトレモロでしっかりとこれに絡ませてました。 このため耳慣れてしまった軽薄な感じにならなかったのが実によかったですね。 素晴らしい見せ場(聞かせ所)でした。 大満足。 このあとも感情のよく入った演奏が続き、ゆったりとした表情の音楽を楽しむことができました。 
第3楽章、タイトで力強く始まりました。 主題にちょっと纏まり感が無くなったようにも感じたのですが、ティムパニがやや強く叩いて纏めあげたようですね。 次第にオケもこなれてきたようで、池田さんに導かれた楽しい気分の踊り(スケルツォ)となりました。 とにかく池田さんは終始分かり易い棒さばきに身体の動きまで加えてオケに指示し、メンバーをノセていました。 ただ、オケの力量不足からでしょうかね、ややついて来れずにちょっと旋律をはしょり気味になるような場面もあったりするのですが、そこはそれとなくテンポを落とす配慮も見せていました。 
そして終楽章、深みのある弦の響きと力強いファンファーレ、ちょっと突き抜けるトランペットの響きが華やかさを感じさせました。 池田さんは各楽器にスポットライトをあて、音楽をずんずんと進めてゆく気持ちの良さを演出していたようですね。 あと少しですしね、もう全員一丸。 気合も充分に入っていて、すっと潮を引かせたあと、各楽器を歌わせ、そして全体を纏めあげたフィナーレ。 巧いもんです。 最後のトランペットの響きは艶がのっていましたね。 ここのフェルマータの部分はちょっと短めだったかな、ケレン味なく終わりました。 小澤/サンフランシスコ響のCDだとココはずぅーと延ばすのですけどね・・・ま、そんな変わった解釈もちょっと期待してたんですが(これは余分でしたね、すみません)。  オーソドックスながら実に巧く聞かせた新世界交響曲の演奏でした。
全体的に思ったことなのですけれど、若干ヴァイオリンの数が少ないせいか全奏になると金管に偏りがちになるバランスとか、全員がついて来れずにちょっと旋律をはしょり気味になるような場面もあったりはするのですが、そんなことで演奏にケチがつくような感じではありませんでした。 そんなことよりも、しっかりとした表情を持った演奏内容に満足して帰ってきました。 皆さんお疲れさまでした。