BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
奈良女子大学管弦楽団 第34回定期演奏会

音楽がよく呼吸をし歌う気持ちのいい演奏会戻る


奈良女子大学管弦楽団 第34回定期演奏会
2003年11月30日(日) 13:30 奈良県文化会館国際ホール

ブラームス: 大学祝典序曲 作品80
ワーグナー: ジークフリート牧歌
ブラームス: 交響曲第3番ヘ長調 作品90

アンコール: ブラームス: ハンガリー舞曲第6番

指揮:牧村 邦彦


スケジュールが合わなくて1年半ぶりの奈良女オケの演奏会。 その時のシューベルトのグレートの演奏には大いに感銘を受けましたが、いやぁ〜今回はもっと巧くなりましたね。 奈良女オケらしい真摯さ・清新さが、オペラ指揮者である牧村さんの棒によって歌うフレーズとなり、音楽がとてもよく呼吸をしていたようです。 確かに演奏上の事故やミスもあったりするのですが、音楽を聴いていると気持ちがスカっとしたり、爽やかな気持ちになったり、熱いものを感じたりするんですね。 技術ももちろん大切ですが、技術を超えて音楽で伝えたいという気持ちがよくのっていた演奏だったように感じました。 ミスのない演奏を聴いていても、ただ巧いだけで気持ちをあまり感じないことだってありますけどね、ミスはあっても演奏そのものを充分に堪能させてもらいました。 今回の演奏会の中でどれか1曲というなら、個人的にはジークフリート牧歌でしょうか。 柔らかい響きが特徴的でした。 清楚でまろやか、聴いていると爽やかな気持ちになりましたものね。 この曲をこれまでにこんなに新鮮な気持ちで楽しめたことはなかったように思います。 もちろんブラームスの交響曲第3番も熱気があったし流れるような気持ちのいい演奏でしたけどね。 難しい選択ですけども。 ま、とにかく、このところ出張が続いて疲れ気味だったけれど元気をいただいて帰ってきました。 ありがとうございます。 とにかく気持ちのいい演奏会でした。
あと蛇足ですが、学生オケだから毎年ちょっとづつ人が入れ替わってゆきますよね。 技術の向上もさることながら、いまのような音楽に向う姿勢を次ぎにくる人たちに毎年残していってもらえたなら、きっと良い伝統になると思っています。 コレ期待したいな。 そして4回生の方にとっては最後の演奏会だったかもしれませんね、ご苦労さまでした。 卒業されてもどこかでいつも歌う気持ちを大切した音楽を続けていってくださいね。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

まず今週は火曜日に町田日帰り出張をしたあと、木曜日の昼前から2泊3日でまた町田出張というハードスケジュール。 おまけに先週末に受けたインフルエンザの予防接種の影響でしょうね、体力が落ちてしまって風邪をひいてしまい体調は絶不調でした。 土曜日の夜遅くに帰宅したものだから、日曜日はゆっくり休んでいたい、そんな気持ちも正直少しありましたけどね、演奏会に行ったら元気をもらえるかも、と思い直して演奏会場に足を運びました。 
奈良女オケの演奏会は1年半ぶりですね。 ご無沙汰してしまいました。 前回は昨年のスプリングコンサートでしたが、いやぁ〜、あの時のシューベルトのグレートはホント素晴らしかったですね。 冒頭でミスがあってどうなることか、と思いましたけど、ぐんぐん良くなって、最後はかなりのハイペース。 僕の好きなテンポや解釈ではなかったけれど大きな感銘を受けた演奏となりました。 確かに型にはまったキレイな演奏ではなかったけれど、伝えたいものがビンビンと伝わってくる演奏に参りました。 アマオケによる音楽の醍醐味といったものを改めて感じ、心が大きく動きました。 それからですね、演奏会での音楽の聴き方が変わったように思います。 そんな奈良女オケの演奏会もそれ以降ずいぶんとご無沙汰してしまい申しわけありませんでした。

最近おじゃましていないので今回は窓口で500円払ってチケット買う有料(優良とも書きます)入場者。 さっそく2階席最前列の中央に陣取りました。 2階席は人がまばらだし、最前列は足を伸ばしてゆったりとした気分でくつろげますものね。 最終的には1階席は5・6割は入っていたでしょうかね、これまでよりもちょっとお客さんも増えたかな。 なんて考えながらプログラムを読んでいたら、コントラバスに西出先生の名前があるのを発見しました。 懐かしいですね。 大阪シンフォニカーで頑張っておられたのは10年ほど前かな。 今では時々アマオケの演奏会でお名前を拝見しますが、今でも若者に混じって楽しそうに弾いておられるなんて素敵ですね。 それとプログラムに書かれていた「ご挨拶」もいい文章でしたね。 そんなこんなで演奏会への期待も大きく膨んでいきました。

さて、定刻になって牧村さんがにこやかに登場してブラームスの大学祝典序曲。 プログラムに「大学という場所がもつ自由で開放的な雰囲気や集う若者たちの学びの舎に対する誇りがありありと感じられます」と書かれていましたが、まさしくそんな感じの演奏でした。 弾力のあるコントラバスの響きが芯になった充実した開始から各楽器とも抑制がよく効いていました。 響きが内に向っている感じなので、聴いていると充足感があります。 ぐっと惹きこまれましたね。 緊張からか最初の学生歌の部分がちょっとバラけ気味だったのはちょっと惜しかったけど長調に転じて挽回。 素晴らしかったのは、新入生の歌を高らかに歌いあげたところでしょうね。 ここ、本当に気持ちがスカっとするような演奏でした。 若いっていいことだなぁなんて思いながら(まだ若いつもりだけど)惚れ惚れとして聴いていました。 コーダでは管楽器、打楽器ともきちんと抑制を保ったまま、牧村さんはヴァイオリンには煽りを入れて曲を締めくくりました。 

オケメンバーがいったん引っ込み、オケを絞り込むために座席を前の方に詰めてコントラバスが前に出てきました。 オケの編成は Vn1,Vn2,Va,Vc,Cb は 10,8,6,5,4 となったかしら。 これでワーグナーのジークフリート牧歌の準備は完了です。 この曲、優しく静かな響きが特徴的なのですが、けっこう眠くなってしまったりするのですね。 でも今回は柔らかな響きが特徴的でした。 清楚でまろやか、聴いていると爽やかな気持ちになりました。 管楽器のフレーズが最後まで持ちこたえられない場面もありましたけど、個人的にはそんなことなど全く気になりません。 それよりもこの曲をこんな新鮮な気持ちで最後まで楽しませてもらったことは初めてじゃないかな。 とにかく音楽がとてもよく呼吸をしていましたし、よく歌う音楽でもありました。 このあたりは牧村さんの手腕によるところが大きいでしょう。 音楽を堪能させてもらいました。
冒頭のとても柔らかいヴァイオリンの響きにまず驚きましたね。 そして中低弦の響きが曲をしっかりと支えているので安定感もあります。 牧村さんは終始ヴァイオリンに向って、棒を流れるように巧みに使った表情付けをしていましたが、そのような繊細なアプローチによって、朝の爽やかな気分になってきました。 木管楽器がちょっと控えめに入ってきたあと、オーボエ、ヴァイオリンのトリルとなって主題が登場するあたりもまた見事でした。 聴いている僕自身の気持ちがすっ〜と和んでゆくんですね、それがわかるなんて実に幸せな気分でした。 このあとも主題がオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと移っていきましたがいずれも押し付けがましさなど微塵もありません。 じわじわと盛り上げたあと、ホルンの楽句が朗々とホールに響いたのもカッコ良かった。 この後で主題を弾くチェロパートが浮かびあがって聞こえたりもして、退屈するなんてとんでもありません。 最後までほんと惚れ惚れとして聴いていました。 すべてにわたって音楽が流れるように呼吸をしていて、よく歌う音楽でした。 やはりオペラ指揮者である牧村さんの手腕によるところ大だったでしょうね。 ワーグナーというと、豪快だったり、艶っぽかったりするイメージがあるのですけれど、奈良女オケらしい若さや初々しさ、爽やかさを存分に感じさせたこの演奏はとても魅力的でした。

さて休憩を挟んでメインのブラームスの交響曲第3番。 耳に馴染んだ曲ですが、これまでの演奏と同様に流れがあって音楽がよく呼吸をしていましたね。 ドイツ風の堅牢な交響曲の演奏ではないけれど、色々な情景を感じさせた音楽となったのはやはり牧村さんの解釈でしょう。 奈良女オケにとてもよく似合った解釈だったように思います。 そしてフィナーレも熱くなったあとじっくり歌い込んで纏めていたのも見事でした。
第1楽章の冒頭、金管のファンファーレから弾力があってコンパクトなティムパニによる導入部、ちょっとした緊張感も感じてなかなか見事でしたね。 主題はやや遅めのテンポ設定だったでしょうか、ゆったりと音楽を呼吸させながらメロディを発展させていったあと主題の繰り返しを実施しました。 この繰り返しで音楽が一回り大きくなったようでした。 展開部でも音楽を大きく呼吸させる牧村さんにオケもよくついてゆきましたね。 ブラームスらしいくすんだ感じもよく出ていて、なんだか物語を聴いているような気分のになって聴いていました。
第2楽章の始まる前、木管楽器の手入れが入念に行われていました。 そして、本当にようやく、といった感じでこの楽章が始まったのですが、待たせただけの事はありましたね。 とても柔らかいクラリネットの響きがホールに流れていました。 堪能。 そして第2主題のクラリネットとファゴットも物寂しくて素敵でした。 コントラバスのピチカートが心地よく響いてて、管と弦の響きがよく混ざり合っていました。 牧村さんはやはり大きく流れるような動きで、この楽章を歌わせていたようです。 おごそかなトロンボーンの響きから柔らかくて見事な調和を保ったフィナーレとなっていました。
第3楽章の冒頭、ちょっとアセったのかしら、ズレてしまったまま開始。 ああっ、と思って見ていましたが、止ることなくそのまま続行。 牧村さんはヴァイオリンのテンポを落としたあと揃えて事なきを得ましたね。 しかこれとて積極性の現れでしょう。 パートまるごとズレてましたものね。 さてそんなアクシデントはあったものの、この後はまったく尾をひかずきちっとした演奏でした。 演歌のような泣きのメロディも、スマートな牧村さんらしく、また奈良女オケらしい清新さでしみじみとした感じで曲は進行します。 そして見事だったのはホルン・ソロ。 実に柔らかくい素敵な響きがホールに響いていました。 このあとのオーボエ・ソロもまた可憐な響きでしたね。 その後も木管楽器のメロディにチェロとコントラバスのピチカートが優しく寄り添い、情感はたっぷりとあっても都会的なスマートな音楽でした。
終楽章は熱気を充分に内に秘めて気合のこもったスタートから力強く熱いオケが一丸となったタイトな音楽が流れ出てきました。 音楽は熱くなって流れを大切にした演奏は変わらず力まかせににはなりません。 いつも音楽が呼吸しています。 トロンボーンとホルンの掛け合いのあとびしっとティムパニが入ってきたあたり、素晴らしかったですね、僕の身体も熱くなったようです。 牧村さんはオケを燃えさせても、つねにオケを歌わせることを主体としているから力が入っても音楽がブツ切れにはなりません。 オケも見事にそれをやっていましたね。 この曲は静かに終わるので、パワーが勝るとちょっと尻切れトンボみたくなってしまうんですけど、この演奏では最後までじっくりと歌いながら絞り込んでゆく見事な終結でした。 僕も最後まで音楽の流れにのって楽しませてもらいました。 最後の響きが消えたあと、大きな拍手を送りました。 耳慣れた曲なんですが、聴いたあとの充足感で元気をもらった気分になりました。 とにかくお疲れさまでした。
最後に、4回生の方にとっては最後の演奏会だったかもしれませんね、ご苦労さまでした。 卒業されてもどこかでいつも歌う気持ちを大切した音楽を続けていってくださいね。