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吹田市交響楽団 第57回定期演奏会

情熱的な悲愴交響曲戻る


吹田市交響楽団 第57回定期演奏会
2004年1月25日(日) 14:00 吹田市文化会館メイシアター・大ホール

プロコフィエフ: 組曲「キージェ中尉」(*)
クーセヴィツキー: コントラバス協奏曲嬰ヘ短調 Op.3 (*)
チャイコフスキー: 交響曲第6番ロ短調 Op.74 「悲愴」

アンコール: チャイコフスキー: 弦楽セレナーデより第3楽章エレジー

独奏:James Wu(cb)

指揮:米山 信(*)、新谷 武


奈良では朝10時頃から降り出した雪が少々降り積もっているなか、吹田市交響楽団の定期演奏会に出かけました。 こんな雪じゃぁお客さんの入りはどうかな、と少々心配だったのですが、杞憂でした。 会場のメイ・シアターの1階席には8割近く入ったでしょうか。 そして演奏もまたとても熱気にあふれていました。 特に悲愴交響曲にはブラボーも飛ぶほどの熱い演奏で、皆さん熱い感動を持って会場を後にしたんではないでしょうか。
その悲愴交響曲、若い指揮者らしくかなり情熱的に仕上げられた演奏でした。 音楽を前に前にと進めているようで、正直なところ、僕はもうちょっとタメが欲しいような気もしました。 しかしオケの各パートがぎゅっと纏まってましたからね、音楽がさっさと進んでいっても軽薄な感じが全くありません。 情熱的に演じきった、そんな演奏でした。 なお、「悲愴」と訳されている「pathetic」には、痛ましい、哀れな、哀れを誘う、感傷的という意味とは別に、感動的なという意味があるそうです。 まさに後者を狙った演奏ではなかったでしょうか。
なおこれに先立って演奏されたクーセヴィツキーのコントラバス協奏曲では、2階席から1階席、しかも前から3列目に移動し、コントラバス・ソロの響きを堪能させてもらいました。 ソリストのWuさんは熱演で、演奏終了直前、オケの演奏がまだ残っているのに自分のソロが終わったところで嬉しくなったのかぱっと笑顔がこぼれていたのが印象的でした。 演奏のあとそれまで居た2階席にまた戻っていったんですが、後ろの席の女性2人組が「α波が出ていたみたい・・・」と話し合ってました。 やはり気持ちよくなって眠ってしまっていたようですね。 ほんとその気持ちよく分かります。 不思議な響き・雰囲気をもった曲なんですものね。 この曲は目の前で聞くのが正解でしょう。
さて冒頭のプロコフィエフのキージェ中尉。 映画音楽もとにした組曲で、しかも風刺の効いたストーリ。 楽しい雰囲気に包まれたの演奏に満足しました。 特に終曲となるキージェの葬儀では管楽器と弦楽器が別のリズムで演奏する部分もあるんですが、ここも見事にこなしていました(後ろの女性達は演奏後「弦楽器と管楽器、メチャメチャ巧いんちゃう」と驚いてましたよ)。 とにかく聞いている方は楽しくてもオケの皆さんは大変だったのではないでしょうか。 なおバンダで吹かれたコルネット(?)によるキージェ中尉のテーマは巧かったし、サキソフォンもいい雰囲気を醸し出してましたね。 耳にする音楽そのものが楽しく感じられる素適な演奏でした。 このような楽しい曲、もっと知られてもいいんじゃないかな・・・そんな風にも思えた演奏でした。 外は寒かったけど、ホールでは常に熱い雰囲気の漂っていた演奏会でした。


さて簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

奈良では朝10時頃から雪が降り始めたでしょうか、出かけるころには少々積もっていて、近所の子供達が雪合戦や雪だるまを作っていました。 まだ雪はチラついているし、風も冷たくて、こんな天候じゃぁお客さんの入りはどうかな、と少々心配しながら駅に向かいました。 しかし、トンネルを抜けて大阪になると晴れ間も見えています。 やっぱり奈良は田舎なんやな・・・と思いつつ会場のメイ・シアターに到着。 開演35分前でした。 開場まで5分ほどメイ・シアターの中をうろうろしましたが、吹田市交響楽団の演奏会にこんなに早く来たの初めてじゃないかしら。 いつも間際に飛び込むんですよね。 それでも今回は早めに着きそうだったので、わざわざ南方まで行って阪急電車に乗ったんですけどね、かえって接続も良かったみたいです。 ま、こんなこともありますけどね。
行列の人並みが無くなったころ(他のオケの行列に比べると短いのでほんの数分でした)入場し、2階席の最前列を確保しました。 このホール、2階席の方が音の纏まり感があって好きなんですよね。 それにオケの中もよく見えますし。 パンフレットを読みましたが、時間がまだあったのでボケっ〜と上から1階席を眺めていました。 車椅子のお年寄りや、手押し車(?)を押しているお年寄りの方も楽しみに来られていますね。 上から見ているとシルバーの方が結構多いみたいです。 もちろん小さいお子さん連れのお客さんもいらっしゃるのですけれど、平均年齢はけっこう高いかもしれません。 でもいいですよね。 手押し車で階段のステップ一つを昇るのもやっというお年寄りがクラシック音楽を聴きに来られているなんて。 それに車椅子の方の隣には、付き添いの方用の補助椅子を客室案内係の団員の方が持って来るという配慮もさすがです。 老若男女、みな一緒に音楽を楽しむことができるのが所謂市民オケの良いところだと思って見ていました。
さて定刻、1階席は中央から後ろにはかなり人が入っているようです。 だいたい7割くらいでしょうか(演奏終了時には8割くらいに増えていたようです)。 思ったよりもお客さんが多く入っているようですね。 オケ団員も登場、照明がちょっと強いせいか、ステージ上に漆黒のスーツと金や銀の金管楽器が映えてとても綺麗。 期待も膨らみました。

ゆっくりと米山さんが登場。 第1曲目はプロコフィエフのキージェ中尉です。 この組曲、映画音楽もとにしたもので、しかも風刺の効いたストーリらしく、終始楽しい雰囲気に包まれたの演奏に満足しました。 特に終曲となるキージェの葬儀では管楽器と弦楽器が別のリズムで演奏する部分も見事にこなしていました(後ろの女性達は演奏後「弦楽器と管楽器、メチャメチャ巧いんちゃう」と驚いてましたよ)が、聞いている方は楽しくてもオケの皆さんは大変だったのではないでしょうか。 色々なソロがありましたが、何といってもバンダで吹かれていたコルネット(?)によるキージェ中尉のテーマ。 ちょっと甘くて丸い感じのする響きが素適でした。 それにロマンスやキージェの結婚などでのサキソフォンがいい雰囲気を醸し出してました。 とにかく耳にする音楽そのものが楽しく感じられる素適な演奏に満足しました。
1曲目のキージェの誕生、バンダのコルネット(?)の優しい響き、スネアドラムからオケも加わってきましたが緻密な音楽・・・というか全体的にちょっと緊張気味だったんでしょうかね。 しかし弦楽器の豊かな響きから楽しい雰囲気が漂い出てきたので、音楽に身を委ねていました。 最後はまたバンダのコルネット(?)によるキージェのテーマで密やかに締めくくりました。 が・・・米山さんの手がまだ降ろされる前にコントラバスの後ろのプルトの人たちが次の譜面をめくるために動いたのはフライングですね。 ここはいただけませんでした。
2曲目のロマンス、中低弦の厚い響きが主になって始まり、コントラバスやヴィオラのソロもあるのですが、これらはちょっとしみじみとした感じだったかな。 ちょっとソロが全体の中に埋没しかけていたり、合奏にも全体にやや纏まり感が乏しくなっていたように感じた部分もありましたけれど、サキソフォンの瞑想的な響きが何より素適だったことを特筆しておきたいと思います。
3曲目のキージェの結婚、雄大な音楽をちょっとゆったりめで演奏していました。 やや抑え加減だったかな。 相変わらずソロ楽器が巧いんですが金管ファンファーレと交互に楽しい音楽が増幅されていきました。
4曲目のトロイカはキージェの結婚から休み無く始まったみたいです(ちょっと記憶が定かでない)。 とにかくここでは抑えた打楽器の表現が全体によくマッチしていましたね。 ほんとトロイカっていう感じで(ちょっと意味不明)、とにかくソリにぶら下げて鈴の音などが愛らしかったですね。 トロンボーン、サキソフォンなどもリズム感よく明るく盛り上がっていました。
5曲目のキージェの葬儀は、また舞台裏からコルネットによるテーマが吹かれて、ちょっとしんみりした感じの音楽から始まります。 こおいう時のサキソフォンはほんと瞑想的でいい感じがしますし、ヴァイオリンもすすり泣いているようでした。 しばらくすると音楽に明るさが戻ってくるんですが、ここでは木管のチャーミングなソロと弦楽器のコミカルな動きが面白い。 そして管楽器と弦楽器が全然違うリズムで整然と演奏が進んでいくんですね。 上から見ているので、聴いていると面白いのですけれど・・・ね、やっているほうは大変なのかもしれませんね。 そんなこと思いながら聴いていました。 そして最後はまたキージェのテーマが吹かれて静かなエンディングまで楽しませてもらいました。
とにかく、このような楽しい曲、もっと知られてもいいんじゃないかな・・・そんな風にも思えた演奏でした。

舞台の照明が暗転している隙に大急ぎで1階席に移動。 クーセヴィツキーのコントラバス協奏曲のために走りました。 上から見てて目星をつけていた右ブロックの前から3列目、通路側の席(う−25)に滑り込みセーフ。 オケのチェロの後ろのプルトが目の前にいる感じです。 こんなに前でオケの音楽を聞くなんて、某オケで熊本マリさんが出演されたピアノ協奏曲以来じゃないかしら。 なお今回のソリストは男性なんですけどね、コントラバス協奏曲ですから2階席ではあまり音が聞こえないという想定のもとです。 昨年の神戸市民交響楽団(KCO)の定期演奏会がそうでしたしね。
前の方にいるのでオケの中の様子がよく見えないのですが、第1ヴァイオリン6人、チェロ3人、コントラバス3人の編成は見えました。 ソロ・コントラバス用の雛壇が用意されていました。 なお今回の演奏ではトランペットとティムパニが加わっている版による演奏ですが、通常よく演奏されるのはこれらが加わっていない版だそうです。 KCOでは加わっていなかったように記憶しています。 だからどうだ、ってことまで言えないのですが一応記録として書いておきたいと思います。

ソリストのJames Wuさんが登場。 スポーツ刈をちょっと長くしたような感じの大柄のお兄ちゃんでした。 「兄ちゃん、ええ身体してるな、自衛隊に入らへん?」と勧誘されてもおかしくんないような感じ、といっては失礼かもしれませんね(すみません、すぐ変なこと考えちゃって)。
さて演奏ですが、中盤以降ずいぶんとノッてきたのでしょうか。 またこちらも耳に響きが馴染んできたせいもあると思いますが、甘い響きに魅了される場面が出てきましたし、終盤では速いパッセージもこなしつつオケとも呼応した演奏は熱演でした。 そのせいか演奏終了直前、オケの演奏がまだ残っているのに自分のソロが終わったところで嬉しくなったのかな、ぱっと笑顔がこぼれていたのが印象的でした。
第1楽章、ホルンが威勢よく吹き、弦も呼応して活力ある開始でした。 そしてコントラバスのソロ。 ちょっと耳慣れない音が出てきましたが、これ高音弦、しかも高い音程で弾いているんですね。 間近で見て分かりました。 耳慣れない響きということもあるせいでしょう、しっかり聴こうとしていたせいか自然と奥歯を噛みしめながら音楽を聴いてました。 いかん、音楽はリラックスして聞かないとね・・・ ソロのあとは威勢のよい伴奏、トランペットもよく響いてきてますが、この席ではバランスのことなどよく分かりません。 そんなのが何度か繰り返されたあと、やや堅さもとれたのか、耳にも馴染んできたのでしょうね、コントラバスの響きに豊かさが感じられるようになりました。 このたありから第2楽章だったのでしょうか(続けて演奏されるので、どこが切れ目なのかよく分かりません)。 木管楽器の響きがオケの後ろのほうから柔らかく響いてきます。 クラリネットが優しい感じです。 チェロの合奏のあとコントラバスのソロがじつに甘く響いていたのが印象的でした。 第3楽章の前でインターヴァルを取りました(ふつうは3つの楽章を続けて演奏するようですが)。 ここで気合を入れなおし、第1楽章と同じくホルンが威勢よく吹き、弦も呼応して活力ある音楽のあと、コントラバスから音を絞り出すようにして高音弦から響きを出していました。 曲が進み、速いパッセージも的確にこなし、オケとも呼応した演奏は大熱演でした。 そのせいもあって演奏終了直前、オケの演奏がまだ残っているのに自分のソロが終わったところで嬉しくなったんでしょうかね、ぱっと笑顔がこぼれていたのが印象的でした。

休憩時間となったのでまた2階席に戻りましたが、後ろの席にいた女性2人組は先の演奏について「α波が出ていたみたい・・・」と話し合ってました。 やはり気持ち良くなって眠ってしまっていたようですね。 ほんとその気持ちよく分かります。 2階席ではえもいわれぬ不思議な響き・雰囲気をもった曲に聞こえていたように思います。 やっぱり目の前で聞いたのは正解だったでしょう。

さて休憩時間が終わってメインの悲愴交響曲。 指揮者は副指揮者の新谷さんが担当します。 以前は、前プロを新谷さん、メインプロを芸術監督の米山さんだったのですが、このところそれが入れ替わっているみたいです。 
さてその若い新谷さん、どんな悲愴交響曲になるのかな、と思っていたんですが、とても情熱的に仕上げられた演奏でした。 終演後にはブラボーも飛んでいました。 個人的にはもうちょっとタメが欲しいような気もしました。 しかしオケの各パートがぎゅっと纏まってましたからね、音楽がさっさと進んでいっても軽薄な感じが全くないのが素晴らしいですね。 とにかく指揮者・オケ一丸となって情熱的に演じきった、そんな演奏でした。 なお、「悲愴」と訳されている「pathetic」には、痛ましい、哀れな、哀れを誘う、感傷的という意味とは別に、感動的なという意味があるそうです。 まさに後者を狙った演奏だったように思いました。
第1楽章、コントラバスの深い響きのあとファゴットの陰鬱な響きによる開始、これにヴィオラが加わりどこか荘厳な感じもしました。 主題が進んでテンポが上がると情熱的に扱われていくようでした。 ぐっと速いテンポで力強くタイトな金管で盛り上げたあと、ややあっさりと退いてゆく感じ。 退く部分はちょっとテンポを落としていたみたいです。 一生懸命に演奏しているのはよく分かるのですけどね、なんかちょっと平板な感じにも思えました。 クラリネットがやさしく静かに吹き、それが自然にファゴットに引き継がれて深い響きに変化したあと、力強い音、やや荒削りとも思えるほどの強い音で一気に突進。 金管楽器がよく揃って透っているし、ティムパニもコンパクトながら強い打音でピークを形成していました。 音楽を静めたあと、今度は踏みしめるような感じでした。 強い音がほとばしり出てきますが、各パートが無防備に吹き散らしたりしていない、むしろぎゅっと一つに纏まっています。 ホルンの斉奏などほんとタイトで気持ち良かったですね。 大きく盛り上げてさっと退くことが繰り返される意欲的な音楽でした。 熱い響きのピチカートにのって、情熱的にこの楽章をとじました。
第2楽章のワルツもまた熱い。 生き生きと、やや速いテンポだったでしょうか。 ここでも各パートを存分に鳴らしているのですが、これらがよく揃っているし、抑制がかかっているのでまったく荒くは聞こえません。 巧いもんですね。 ただ音楽が前に前に・・・と進んでいくようでした。 聴き易くて分かり易い音楽なんですけどね、メロディに感傷的な気分を感じさせる間を持たせずにどんどんと音楽を進めていくような感じにも思えました。
第3楽章もまた熱く威勢良い音楽でした。 この楽章を一気に盛り上げて、第4楽章の深い悲しみと対比させる・・・そんな感じなので、ここはもうノリノリに近い感じで盛り上がっていきましたね。 輝かしい金管、大太鼓が地響きを感じさせ、弦の分奏もしっかりしていて、自信を持って歩み続ける行進曲、そんな感じ。 フィナーレはさらに一段と強く一丸となって盛り上げて終わると・・・案の定、ここで拍手が・・・それもちょっと大きめの拍手。 う〜んんん、仕方ないですけどね。 事前のアナウンスとかがあっても良かったかな。 いつもそう思うですよね。 
新谷さんがにこやかに笑いながら振り返り、拍手を制止し、気分を変えてから終楽章の開始です。 ホルンの響きに弦楽器の悲しげな主題。 深い悲しみ、そんな音楽なんですが、まだどこかに熱気が残っているような感じがしました。 しみじみとした悲しみではなく、抑えきれない熱い想いを伝えられないという悲しみ、そんな感じかしら。 この弦による主題ももうちょっとアクセント付けるなりしたら雰囲気が変わったかも・・・なんか真っ当にストレートに音楽を進めていく感じがしましたけどね。 そして情熱的に盛り上げたあと、スパッと決めて、弦の響きに繋ぐ、メリハリをつけてエンディングに向かっていきました。 ホルンの響きが弦の響きの彼方から聞こえるように響き(ここ素適でした)、ティムパニの連打を伴ったタイトな盛り上がりを経て銅鑼が密やかに鳴り、トロンボーンの響きが物憂げでした(ここも素適だったな)。 最後はコントラバスが心臓の鼓動のように響きながら静かに曲が閉じられました。 色々と書いてきましたが、この最後の集中力の高さはほんと素晴らしいものでしたね。 見事なエンディングでした。 ブラボーの声がかかったのも頷けました。 

とにかく指揮者・オケ一丸となって情熱的に演じきった、そんな演奏でした。 なお、「悲愴」と訳されている「pathetic」には、痛ましい、哀れな、哀れを誘う、感傷的という意味とは別に、感動的なという意味があるそうです。 まさに後者を狙った演奏だったのではないでしょうか。 
皆さんお疲れさまでした。