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第28回大阪フィルの夕べ

力強さと緻密が同居した大阪フィル戻る


第28回大阪フィルの夕べ
2004年3月4日(木) 18:30 フェスティヴァルホール

ワーグナー: 楽劇「ニュールンベルグの名歌手」第1幕への前奏曲
チャイコフスキー: ロココ風の主題による変奏曲 作品33
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番ニ短調作品47「革命」

アンコール: ブラームス: ハンガリー舞曲第1番

独奏: 横坂 源(vc)

指揮: 保田 信義


久しぶりの大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会。  「第28回大阪フィルの夕べ」、大阪府教職員互助組合が主催する公益事業で、会員や退職会員とその家族・大阪府民が無料招待されるものでした。 この公演で空きが出たのでしょうか、僕のところにもお誘いがきました。 本当にありがたいことです。 空いているのかな、と思って会場に着いてみると、なんとほぼ9割は入ったでしょうか。 続々と人が入ってきて吃驚しました。 ちょっと人の多さに酔ってしまいそうでしたので、勝手に2階席の最上段に移動して聴くことにしました。
この位置から見るとフェスって本当に広いなぁ〜って実感しますね。 でも結果的に、音がビンビンと届いてきました。 しかも各パートが混濁せずにぎゅっと纏っていて、明快なサウンドでした。 音楽監督が大植さんになってから大阪フィルは緻密に鳴らすオケに変貌したと聞いていたのですけど、そのことを強く感じましたね。 もちろん従来の押しの強さも健在です。 
ところで、指揮者の保田さんという方。 始めて聞くお名前の方です。 動きはダイナミックなんですが、理知的な感じのする演奏をされていました。 ショスタコーヴィッチでも思い入れをあまり持たないような曲運びでしたね。 かといって脳天気でもないんですけどね(ちょっと難しい)。 いずれにしても演奏全体として、大阪フィルの力強さに緻密さが加わり、纏まり感のある演奏だったのが素晴らしかったと思います。 けっこうノリの良い音楽だったので、ショスタコーヴィッチの終楽章での会場のウケはよかったようです。 個人的には、全体を通じてもうちょっと音量レヴェルを下げるべきところは下げ、弱音のほうにも幅を広げていったなら、もっと大きな感動に繋がったんじゃないかなぁ〜 なんて生意気にも思いました。 
あとチェロの横坂 源さん。 この方も始めて耳にする名前です。 1986年生まれだから、まだ現役の高校生(今度3年生になるみたい)。 しかし若いのに立派な演奏でしたね。 とにかく音がよく届いてきました。 特に低い方の音には力強さだけじゃなく艶ものってました。 この響きにちょっと魅了されました。 なかなかの大器ではないでしょうか。
最後に、いつもアマオケを聞いているからでしょうか、こんな巧い演奏を耳にすると、ふん・ふん・・・って次々に聞いてしまうんですよね。 でも聞きながら、巧い=プロ=当たり前、っていう数式が浮かんで、じゃぁいったい何なのかな〜って思ってしまいました。 ドキドキ感がないからかな。 巧いからいいじゃない、って言われるとおしまいなんですけどね。 贅沢なのかもね。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

久しぶりのプロオケの演奏会です。 火曜日の夜にメールでお誘いをお受けたあとインターネットで調べてみたんですが、大阪フィルのホームページにも、フェスティヴァルホールのホームページにも演奏会情報が載っていません。 なんか怪しい。 ちょっとムキになって検索キーを色々と変更して検索してみてようやく見えてきました。 大阪府教職員互助組合が主催する公演でした。 公益事業として、会員や退職会員とその家族・大阪府民を無料招待するもので、招待されるには事前に往復はがきで申し込むことになっていたようです。 ところでこの公演、フェスティヴァルホール(約2,600人)で2日間とも同じプログラムでした。 つごう5,200人の募集ですから、大阪在住でクラシック音楽を聴いてみようと思う人間を5,200人も集めるなんて大変なことでしょう。 だから座席に空きが出て僕のところにもお誘いがきたようです。 しかしありがたいことです。

それでこの演奏会、6時半開演、通常の演奏会よりも30分早いスタートですね。 慌てて仕事を切り上げて会場のフェスティヴァルホールに向かいました。 久しぶりのフェスです。 昔はここしか演奏会場がなかったけれど、今では大半のコンサートがシンフォニーホールに移ってしまいました。 大阪フィルの定期演奏会、大阪シンフォニカー交響楽団の名曲コンサートもそうですね。 久しぶりやなぁ〜って、懐かしい気分を抱き、どうせ人がまばらなんだろう・・・って思って会場に着いてみて吃驚。 続々と人が入ってきます。 最終的には9割は入っていたでしょうか。 取り置きしていただいたチケットの座席が2階の左側で真中あたりの座席だったのですが、人がどんどんと入ってくると窮屈でしょ、人の多さにも酔いそうだったので、2階席中央の上段に勝手に移動しました(我侭で済みません)。 だけどそこにも人がどんどんと押し寄せてきました。 最後には最上段にまで移動することに。 1曲目が終わったとき、その一つ手前の列まで人がやってきたのには、正直ちょっとドキッとしました。 ここまでやってくるとは・・・ しかし、この2階席から眺めていると、ほんとフェスって大きいのがよく分りますね。

ところで、どなたかが、フェスに入ると大きな老舗旅館の風格を感じると言われてました。 ほんとそんな感じがしますよね。 赤い絨毯にロビーには大きなソファーがいくつも置いてありますし。 今回、2階席に上がるとき、そのソファーに座って、小学生のお子さん二人とお父さんらしき人がお弁当やパンを食べているのを見ました。 大急ぎでやってきたのでしょうね。 でもいいですよねぇ〜 こんなことができるのもフェスの余裕でしょう。 シンフォニーホールでは、ソファーに座って飴玉を口に入れても「飲食禁止ですから」と係員が飛んで来ますものね。 当然、ペットボトルのお茶なんて飲めません。 困ったもんです。 なおシンフォニーホールでは楽屋でも飲食禁止だそうですね。 あるアマオケでは、演奏会終了後、撤収する際にはオケの団員が楽屋のゴミ箱をさぐってペットボトルが入っていないかどうかを確認する話を聞いたことがあります。 ほんと徹底してますね。 綺麗なホールなんですけど、お高くとまった感じがするのがちょっといただけません。

さて定刻になりました。 フェスでは、ちょっとスリ切れかかったようなテープの音で小鳥が囀る音が流れます。 随分とステージが遠いのですが、チューニングの音が真っ直ぐに飛んできました。 けっこう小さな音もよく届くから不思議ですね。 だからフェスの最上階は意外と音が良い、なんて言われるのでしょう。
チューニングも終わり、ゆったりとした足取りで指揮者の保田信義さんが登場。 全く始めて聞く名前の指揮者です。 インターネットで検索してもヒットしません(ということは、この感想文が公開されてしばらくすると、このページだけがヒットするのかな)。 経歴を読むと、アメリカで教鞭をとられている方のようです。 指揮者としてはミネソタ管弦楽団で2年間副指揮者をされていたのが光っています。

そして第1曲目は、ワーグナーです。 マイスタージンガーの第1幕への前奏曲。 いつもアマオケを聞いているのせいではないでしょうが、オケがとても巧いのに驚きました。 プロなんですから驚くほどのことではないのでしょうけど・・・。 でも大阪フィルというイメージはちょっと泥臭く押しの強いオケっていうイメージをしてしまうのですけど、ホールの響きのかげんからでしょうか、各パートの分離がすこぶる良いのに耳を奪われました。 コントラバスなんか、力強くグイグイと鳴らしているんですけど、まるで1本の楽器のように纏まって聞こえてきました。 後半では、第2ヴァイオリンが一体となり、見事に浮き上がって聞こえてきたのも印象的でした。 木管楽器は緊密なアンサンブルが見事だったし、金管楽器も絶叫調にはならず叫ばずして主張を明快に伝えた音楽でした。 そしてフィナーレ、ここでは熱っぽく力強い音楽になっていったのですけど、最後まできちっと各自がポジションを守り、纏まり感の高い演奏で幕を閉じました。 で、巧いのはよく分かったけど、いったい何だったのかな〜って思ったことも事実です。 巧いからいいじゃない、と言われるとおしまいなんですけどね。 各パートの響きが混ざり合い、響き合っていたならばもっと感動を伝える何かが含まれたのかもしれません。 なんか生意気ですみません。

2曲目は、チェロの独奏者として横坂 源さんが登場。 この方も始めて耳にする名前です。 1986年生まれだからまだ現役の高校生(今度3年生になるみたい)。 結論から言ってまだ若いのにとても立派な演奏でした。 音もよく届いてきましたしね。 このホールで以前に聞いたことのある(他の人の)ドヴォルザークのチェロ協奏曲など、かなり響きが減衰していたような記憶があっただけに危惧していたんですけどね、まったくの杞憂。 特に低い方の音には力強さだけじゃなく艶ものっていたのにちょっと魅了されました。 なかなかの大器ではないでしょうか。
さてオケは絞り込んでコントラバス8本から4本に半減。 チャイコフスキーらしい甘い響きによる開始でした。 ソロもまた甘く艶のある響きに勢いが感じられました。 ちょっと緊張していたのかな、特に高いほうの旋律では堅さが残っているようにも思いました。 またこれはホールトーンの影響かもしれませんね。 第2変奏ではオケとの対話でも引けを取りません。 堂々としたもんでした。 特に第6変奏で曲が短調になると、立派な演奏が展開されて、空気がガラっと変わったみたいです。 オケは終始的確なサポートぶりだったのではないでしょうか。 フルートやオーボエの響きに清潔感が感じられたし、ピチカートもよく揃ってました。 ここでも緻密に鳴る大阪フィルやなぁ〜って思ったしだい。 フィナーレはリズミカルな演奏で徐々に盛り上げてゆき、エンディングは大きな音楽で纏めるのかなって思ったんですが、ちょっとこじんまりと終わってしまった感じ。 なんか惜しかったなぁ。 ゴール手前でちょっと力尽きたか、ちょっとあせって駆け込んだようにも感じちゃいました。 ま、とにかく高校生でこれだけ聴かせるなんて凄いもんですよ。 すごい。

さて15分間の休憩のあと、お待ちかねのショスタコーヴィッチの交響曲第5番。 これもホールトーンの影響かもしれませんが、理知的な感じのする演奏だったと思います。 保田さん、なんか深刻な思い入れをあまり持たないような曲運びでした。 かといって脳天気でもないんですけどね(ちょっと難しい)。 とにかく面白いな、と感じたのは第2楽章ですね。 ここを鋭角的なリズム運びで、しかもちょっと変ったイントネーションをつけていたみたいです。 カクカクした感じで面白かったなぁ。 第4楽章ではフレーズを早めに切り、力を内包させた音楽としてストレートに盛り上げていました。 前の席の女性などけっこうノリノリで聴いていました。 だからでしょう、演奏終了後には会場はけっこう盛り上がっていました。 ただ個人的にどうかなぁ〜と思ったのは、第1楽章や第3楽章での淡々とした曲運びでした。 保田さんって基本的に明るいキャラの持ち主なのかなぁ、なんて思いながら聴いていました。 いずれにしても演奏全体としては、大阪フィルの力強さの他に緻密さが加わり、纏まり感のある演奏が素晴らしかったと思います。 保田さんの指揮はダイナミックでノリの良い音楽なんですけどね、もうちょっと音量レヴェルを下げて、弱音のほうにも幅を広げていったなら、もっと大きな感動に繋がったんじゃないかなぁ〜 なんて生意気にも思いました(すみません、ほんと生意気ですね)。

第1楽章の始まる直前、携帯電話が鳴りました。 ちょっとひやひやもんですね。 これが鳴り止むのを待ってから演奏開始。 保田さんがチェロに向かって叩きつけるような感じで力強く手を振り下ろした気合の入った音楽の開始でした。 今度はヴァイオリンの方を向いて透明感の高い音楽を導きだします。 テンポはちょっとゆったりめだったでしょうか。 変な思い入れを感じさせない淡々とした音楽ですね。 ラッパが入って音楽に緊張感が高まりますが、全体としてサクサクっと音楽が進んでいく感じ。 コントラバスがうごめくような感じに入ってくる部分も低い音でゴウゴウと鳴っているんですが、なんか深刻さをあまり感じません。 保田さんは、大きな身振りで、横方向の大きな動きに加えて、身体全体をやや上下運動させ、流れるような曲つくりをしていたみたいです。 ピアノの音が入って、ホルンの斉奏、ラッパの斉奏と続きましたが、熱っぽくは感じるんですけど、スマートに纏めているって感じかな。 パーカッションがタイトに入ってきて、ぐっと力が漲ってきました。 小刻みなリズム、このあたり大阪フィルの機動力がよく出ていたのではないでしょうか。 ただ、何度も書きますが、粘りとか拘りみたいなのを感じなんですね。 ここのクライマックスが去ったあとのフルートも明るい音色で、ヴァイオリンのソロは透明感のあるものでした。 保田さんって、明るいキャラの持ち主なのかな、なんて思って聴いていました。

第2楽章、チェロとコントラバスの強靭な響きがストイックに響いてきました。 このあともフレーズを短く切り、しかも音の終わりを鋭角的に切り落したみたいで、しかもリズミックに曲を進めていきます。 ちょっとカクっカクってな感じで面白い。 保田さんは上体を折り曲げて、ちょっと油の切れた機械人形みたいな動きでこれを演出していました。 ヴァイオリンのソロとフルートのソロを愛らしく歌わせたあと、またリズミカルな曲運びになって、とにかく面白かったですねこの楽章。

第3楽章、保田さんが第2ヴァオリンの後ろの方を見てゆったりと振り始めました。 チェロやコントラバスも加わってきましたが、いずれも透明感の高い音楽。 情念よりも透徹した哀しさっていうのかな、とにかく綺麗な響きでした。 テンポをちょと遅めにとってたかな。 それでもやっぱりドロドロとした感じをさせませんね。 スタイリッシュな音楽といってもいいかもしれません。 クライマックスもそんな感じで洗練された響きで盛り上げてました。 これを越えたあとのハープの響きがしみじみとした感じでなかなかよかったです。

アタッカで第4楽章に突入。 大阪ではお馴染みのメロディでしょう(部長刑事のテーマ曲)。 前の席の女性など軽く頭を動かしてリズムをとりながら聞いてました。 ここでは句読点をしっかりととった演奏で、テンポは速くなかったように思います。 次第にテンポアップしていくんですが、計算された音楽しょう。 我武者羅さはありません。 こおいうところでも大阪フィルは機能的なオケになったのかなぁ〜なんて思って聞いてました。 さて、静かになると、これまでとちょっと違って音楽をよく歌わせていたように感じました。 それまではけっこうあっさりと曲を運んでいる風だったのですけどね。 で、スネア・ドラムが入って緊張感がぐっと高まるかと思ったんですが、ここもまた淡々と盛り上げていったみたい。 う〜んん、僕がちょっと曲に思い入れがありすぎるのかも。 いよいよフィナーレ。 ここでも句読点をはっきりと付けた音楽でタイトに盛り上げてゆきました。 ホルンなどもっと豪放な感じで吹き散らしてもいいんじゃないかな〜って思いましたけど、タイトな響きできちっと纏めていました。 そしてエンディングはティムパニと大太鼓の重い響きで締め上げました。 力の入った演奏だったと思いましたが、不要な汗はかかないって感じもして、理知的な演奏じゃないかと思いました。

なお、アンコールは、これとは正反対。 やりたい放題みたいな感じで抑揚つけていたのが印象に残りました。 これはオマケですからね、特に言うことはありませんが、あまりにも違っていたので付け加えておきます。