BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
関西医科学生交響楽団 第11回定期演奏会

チームプレーに徹した巧さ戻る


関西医科学生交響楽団 第11回定期演奏会
2004年3月28日(日) 14:00 京都コンサートホール大ホール

グラズノフ: 祝典序曲
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番
バルトーク: 管弦楽のための協奏曲

独奏: 林 久美子(p)

指揮: 江田 司


巧いオケでした。 関西医科大学交響楽団、関西の医学生を中心にした、言葉は悪いですが、寄せ集めのオケなんですけれど(毎回演奏会にエントリーする人を集めているそうです)、そのような片鱗はどこにも見いだせませんでした。 弦のパートは前から後ろまでビシっと揃っていますし、管楽器の響きも全体の音色によくマッチしてて、浮いたような感じなど皆無でした。 個人プレーよりもチームプレーに徹しているっていう感じの巧さで、ホルンなど、タイトな渋い音色が綺麗に揃っていて、ほんと巧かったです。 相当に練習を積まれたのか、腕自慢の人が集まってきたような感じでしょうか(たぶん両方じゃないかな)。
グラズノフの祝典序曲は、柔らかい響きが魅力的でしたし、ラフマニノフのピアノ協奏曲ではコントロールのよく効いたしっかりしたサポートぶり。 林さんの凛としたピアノと一体となった見事な演奏でした。 そして、バルトークのオケコンでは、何よりアンサンブルの巧さが光っていました。 天邪鬼な僕ですからね、こんなに巧く演るよりも、ちょっとくらいハラハラさせてくれたほうが面白かったよなぁ、なんて感じたほどです。
いずれの曲も指揮者の江田司さんによるバランス感覚の良さが強く出ていたのかもしれませんね。 とても充実した演奏会でした。


さて、簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

朝起きたら風邪気味だし頭痛がして体調不調だったんですけど、暖かい日差しを浴びていたら体調も上向いてきたみたいです。 家でゴロゴロしてても仕方ないのですものね、思い立ったら吉、京都コンサートホールまで出かけることにしました。 インターネットで調べてみたら(便利な世の中になりました)、12時30分過ぎの電車なら開演10分前にはホールに到着できそうです。 
慌てて家を飛び出したんですが、そのかいがあったのでしょう。 最寄駅で1本前の電車に乗ることができました。 しかもこれがラッキーなことに、大和西大寺で京都国際会館行きの急行に接続していました。 そこまではインターネットでは読めませんでした。 ぽかぽか陽気の電車に揺られて、予定より15分ほど早く会場に到着することが出来ました。 しっかし西大寺から北山までほぼ1時間。 やっぱ遠いですわ。 特に竹田から地下鉄になったら景色も変らないし・・・電車に乗っているのにも飽きたころ、やっと到着したって感じです。

ところで、この関西医科学生交響楽団。 僕はこれまで全く意識していなかったのですが、その名の示すとおり、医学生の交流を深める目的で作られたオケだそうです。 全国組織として、全日本医科学生オーケストラ連盟というのがあって、こちらは24年を数えるようですが、関西では今年11年目とのこと。 ただし、医学部の学生さんだけでオーケストラを編成するのが難しいそうなので、演奏会を開催するにあたって広くエントリーをもとめ、毎回1からオーケストラを作り直しているそうですね。 プログラムには、大阪大学、大阪医科大学、大阪市立大学、京都大学、京都三大学(京都府立医科大学、京都府立大学、京都工芸繊維大)、滋賀医科大学、兵庫医科大学を中心として、その他の大学生や、OBなども参加されていることが記されていました。 各大学オケの腕っこきが集まってきているのでしょうねぇ。 どんなんやろ・・・なんだか興味が湧いてきました。

会場の京都コンサートホール。 ここに来たのは3回目かしら? スロープをぐるっと回って大ホールの入口へ。 チケットを切ってもらって入ったロビーはガラス張りで暖かな光が充満しています。 新しいだけあって綺麗なホールに入るとほんと嬉しくなりますね。 
このホールでも、いつもどおり3階席の正面に向かいました。 運良くここの最前列が空いてましたので、右ブロックの中央寄りに陣取ることができました。 どこに行っても、遠くから舞台を見渡せるところにばかり居るようですね。 
さて、人がどんどんと入ってきて、1階席はほぼ8割近く入っていたでしょうか。 このホールの2階席は両サイドだけなんですが、5割ってところかな。 けっこう入っているのではないでしょうか。 さすがに学生さん、しかもアベックが多い感じですね。 春休みだからかな、どこかのんびりした感じのする会場にオルゴールのようなチャイムが鳴り、演奏が始まる旨のアナウンスがありました。

1曲目はグラズノフの祝典序曲。 始めて聴く曲のように思います。 華やかな気分にさせる曲でしたね。 でも演奏は、とてもしっかりしていて、華やかなんだけど派手さをきちんと抑制していました。 後半は都会的なセンスも感じさせた演奏でした。
まず何より、弦楽器がよく揃っていたことと、弦楽器の響きに透明感とともに余裕を感じました。 そして管楽器はいずれもオケ全体の響きによくマッチしていました。 音が綺麗に溶け込んだ感じですね。 クライマックスでは、トランペットの甘い響きとか、トロンボーンの軽やかなステップとか、爽やかさに暖かさも感じさせるアンサンブル。 そして、チェロに遥かな感じのする、どこかロシアの大地を思わせるような旋律が出てきたんですが、学生オケだからってこともあるでしょうね、まったく泥臭くありません。 かえって都会的なセンスみたいなものを感じました。 エンディングは、大きくゆったりと全体をしめくくっていました。 なかなかいい曲を教えてもらったような気がしました。

2曲目は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。 真紅のドレスを着た林久美子さんが登場しました。 一礼して椅子に腰掛けたあと、ちょっと高さが合わないみたいで、座ったまま椅子の調整をしていました。 それにちょっと手間取ったような感じにも見受けたんですけど、そんな様子をじっと見ていたら、林さん、ちょっと腕試しをするような感じで、パラン・・パラン・・と弾き始めました。 ほんと、最初は腕試しかな、と思ったほど無防備な感じで始まりました。 そして、それがだんだんと音楽を強固にしていった感じで、オケの伴奏が入る時には確固たるラフマニノフの音楽となっていました。 ちょっと不思議な体験でした。 全体としては、バランス感覚に優れてコントロールのよく効いたオケによる伴奏をともない、潔く強いタッチで凛をした響きが魅力のピアノとが合体した見事な演奏だったと思います。 個人的には第2楽章などもうちょっとロマンティックに演ってもらったほうがいいかな、なんて思ってしまいましたけど。 学生オケらしくスマートでカッコ良かったですね。

第1楽章は、上記にも述べたような始まりで、ちょっと聴く準備が追いつかなくて慌てましたけど、深くてよく締まった響きは、ピアノとオケともによく似た感じの熱い始まりでした。 濃厚なロマンティシズムっていう感じもするんですけど、芯がビジっと通っているような強靭さを感じました。 徐々にテンポを上げていったようですが、クライマックスにかけてはテンポをやや落としたかな、粘るようなティムパニの打音が魅力的でした。 ホルンのソロもちょっと聴くと長閑な感じがするんですけど、筋が通っててしっかりした響きですね。 先のグラズノフでも思ったのですけど、このオケ、ソロが突出した感じがしないんですよ。 全体のなかに綺麗におさまっているような感じです。 エンディングはたたみ掛けるように進めたあとすっと引いて終わりました。 オケの響きがエコーになって残ってました。

第2楽章は、中低弦の響きが厚く聞こえたスタートのあと、ピアノがしっとりと歌い始めます。 ここ甘くならなかったですね。 スローなところは、淡々と演っているというか、しみじみとした感じで弾いて、速度が上がる部分では潔くぐっと盛り上げるって感じですね。 オケも見事にこれに併せて、盛り上がる部分ではヴァイオリンが綺麗な響きでサポートしてました。 大きな音を出してもソロを響きの中に埋没させない感じです。 よくあるのが、ソロの部分は音量を絞って、オケだけの部分では張り切る、そんな感じではまったくないです。 いずれのときも均一な響きで曲を進めていますね。 巧いもんです。

第3楽章はアタッカで入り、ここでも中低弦が芯になった厚みのあるオケの響きと、強いタッチのピアノが呼応していました。 タイトに盛り上げ、ホルンなど大音量ではないものの熱っぽく吹いてました。 ピアノは粒立ちのよく、情熱的に盛り上げていったあとはちょっとゆったりとした表現で、緩急をうまくつけていたようです。 僕は終始オケの音量コントロールの巧さに聞き惚れてました。 江田さんの指揮も始めてだと思うのですけど、無理のない的確な指示とコントロールで演奏を見事に操っていますね。 そして遅くしていてテンポが徐々に上がってゆき、エンディングでのピアノが華麗に決め、熱い音楽としてフィナーレを盛り上げてこの曲を終えました。 とても見事な演奏で、会場からも熱い拍手が贈られていました。

20分の休憩時間。 なぜかお腹の調子が悪くなってきました。 じつは本番前にもそんな感じがしたんですけど、我慢できるみたいだったのでそのまま音楽を聴いていたんですね。 素晴らしい演奏だったこともあって、演奏中にはお腹の痛みなんか全く気にならなかったのですけど、う〜んん、ちょっと今度はダメみたい。 トイレで用足しをし、万全の体調でメインプログラムに望むことにしました(苦笑)。 しっかし演奏会でお腹痛くなるなんて始めての経験じゃないやろか・・・

さてメイン・プログラムのバルトークの管弦楽のための協奏曲。 こちらもとにかく巧い演奏でした。 ソロイスティックに巧いこともありますが、アンサンブルとしての巧さがより光っていました。 これまでで述べたこのオケの良いところがすべて盛り込まれていた感じがします。 よく揃った弦楽器には透明感がありましたしね、前から後ろまでビシっと揃っていて余裕も感じました。 管楽器の響きはオケ全体の音色によくマッチし、綺麗に全体の中に溶け込んでいます。 そしてこれらがとてもバランスよく配分された演奏になっていて、むろんパワーもありました。 ただし、ここまで巧いとなると、天邪鬼な僕ですからね、ちょっとくらいハラハラさせてくれたほうが面白かったよなぁ、なんて感じてしまったのでした。 やはり素人の悲しさで、我武者羅さがもっと目に見えないと面白く感じないのかもしれません。 あ、付け加えておきますけど、巧いだけで生気のない演奏だった、なんて全然思っていませんからね。 各楽章の性格の描き分けなんかもほんと見事だったと思っています。 第2楽章「対の遊び」なんか、ほんと音楽が地に足がついているって感じがして面白かった。 物足りないと感じたのは、指揮者の江田司さんによるバランス感覚の良さが強く出ていたからかもしれませんね。 とにかく本当に見事な演奏でした。

第1楽章「序奏」、チェロとコントラバスの方を向いた江田さん、ゆったりと円を描くようにして音を引き出します。 次にヴァイオリンの方を向き、そしてフルートに指示を与えて序奏部が始まりました。 よく練られた音楽が、繰り返される度に音楽が大きくなってゆきます。 そして主部、ヴァイオリンとこれに対するチェロとコントラバスがうごめくように対峙、ほんと巧いですねぇ。 一気に引きずり込まれていきました。 そして第2主題のオーボエはもちろんのこと、他の木管アンサンブルもきちんと決めています。 金管楽器のファンファーレもまた、各楽器のテクニックも巧いと思うのですが、全体できちんと合わせようという意思の方を強く感じました。 とにかくオケ全体に機動力があります。 スパっと切ってあと切り返すような動きも見事なんですよ。 でももっと凄いのは、それで全然冷たい感じがしないところでしょう。 どこかに人間的なぬくもりを感じさせるアンサンブルでした。

第2楽章「対の遊び」、この楽章好きなんですよ。 分かり易いってこともありますけどね。 とにかくここではリズム感がよかった。 パーカッション、弦楽器のピアチカート、ファゴット、オーボエ、クラリネット、フルート、トランペットと旋律が歌い継がれていくんですが、常にリズム感が感じられました。 弦楽合奏もまた雄弁だし、音楽がきちんと地に付いているような感じがします。 オケ全体として聴き応えのある演奏にとても満足しました。

第3楽章「悲歌」、コントラバスに向かって大きく丸く振ったあと、熱っぽい音楽が進んでいきました。 熱っぽいといってもきちんと計算された演奏で、統制というか、抑制がきちんとかかっています。 弓を強く弦に押し付けて弾く部分もきちんと揃っているんですが、よく揃っていても生気を失わないんですよね。 若さが勝っているからかな。 最後はピッコロの響きが、どこか和楽器にも似た感じで不思議な雰囲気を漂わせて終わりました。

第4楽章「中断された間奏曲」、うねるような感じですが、ここもよく揃ったヴァイオリンのあと、オーボエ、クラリネット、フルートとよく歌っていました。 楽しくなるようなクラリネットやチューバのあとぐっと盛り上げて、ヴァイオリンの優しいメロディ。 性格の描き分けもほんと見事でした。

第5楽章「終曲」、ホルンの斉奏が巧かった。 スピードをあげてゆく弦楽器に、柔らかいティムパニが裏打ちをし、オケ全体がノっている感じで盛り上げていきました。 江田さんは、こんな時でも振りが大きくなるとか激しく振ることはなく、オケの自主性に任せているような感じ。 とても自然に盛り上がっていきますね。 トランペットの明るい旋律のあと、コントラバスのメンバーが身体でリズムをとって弾いていました。 フィナーレに向けて音量、スピードともに上がっていきますが、若さがあるのでしょうね、余裕を感じます。 でもね、とって付けたような派手さはなく、ほんときちんと統制のとれている音楽が崩れません。 江田さんはここでも必要以上の指示は与えていないみたいでした。 最後はタイトに盛り上げたあと右手を左から右上にさっと振り上げて音楽を投げ飛ばすようにして終えました。 

会場からブラボーの声がすぐにかかり、大きな拍手に包まれていました。 チームプレーに徹した巧さ、本当に見事な演奏でした。