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大阪センチュリー交響楽団 第92回定期演奏会

熱い感動を孕む爽やかで流麗なブラームス戻る


大阪センチュリー交響楽団 第92回定期演奏会
2004年4月9日(金) 19:00 ザ・シンフォニーホール

ブラームス: ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15
ブラームス: 交響曲第1番 ハ短調 作品68

独奏: 弘中 孝(p)

指揮: 広上 淳一


広上さんの指揮は、派手でよく動き、しかも機械仕掛けの歯車がガタガタと動くみたいな感じに見えるのですが、真摯で熱いブラームスを充分に演出していました。 クライマックスではストレートに盛り上げ、反面暖徐部分では流麗に歌わせる。 とても濃厚な音楽なのだけれども、爽やかであっさりした感じにも聞こえたのはセンチュリー交響楽団の特質でしょうか。 重厚な響きで押しまくるといった感じではなく、ちょっと小ぶりだけれど非常に聴き応えのあるブラームスでした。
ピアノ協奏曲第1番は、端正でストレートに進んでいった感じでした。 弘中さんのピアノは透明感のある煌びやかな響きなのですが、反面虚飾を排した端麗さが持ち味だったでしょうか。 オケとピアノが一体となり、点画をはっきりつけた音楽で、まさにピアノ付き交響曲といった感じでした。 ただオケの響きを抑えていたせいでしょうか、熱い音楽がまっすぐにむかってきても、余韻が響き渡らないようにも感じました。 しかし、常に内面には熱い感情が息づいていた音楽でした。
交響曲第1番は、基本的なアプローチはピアノ協奏曲と同じなのですが、オケの響きが増し、熱い感動を孕む音楽が迸(ほとばし)り出ていました。 緩急をつけ、タメを作ってから盛り上げたりもするんですが、わざとらしさというのをあまり感じません。 ツボに綺麗にはまっているからでしょうか。 かえって即物的な印象さえ持つほどの熱さで、先にも書いたようにオケの特質でしょうか、爽やかで流麗なブラームスでした。 聴いていて、とてもわくわくした演奏でした。
演奏終了後、盛大な拍手を浴びて楽屋に引き揚げる広上さん。 失礼ですが、髪の毛が寂しくなった小太りのおじさんといった風貌で、しかも頭を左右に振って歩く姿は・・・土木作業でも終えたおじさんみたい。 「今日はいい仕事やったぞ、さぁ酒でも呑むかぁ〜」そんな感じにも見えてしましたが、とにかくそのような心意気が伝わってきた演奏でした。 
そんな広上さんって、僕よりも一つお若いということを後で知りました。 僕もおじさんですけど(否定しません)、技術や芸を持たないおじさんってほんと寂しいですね・・・それにひきかえ広上さんはエネルギッシュで本当に素晴らしかった。


さて、簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

今日は長女の入学式で会社はお休み・・・なんですけど、昼すぎに会議があったので会社に出勤。 まぁその会議自体はスムーズに終えたんですけど、そのあと神経をちょっと逆なでするようなメールがまたやってきましたよ。 憂うつですね。 仕事なんかやりたくない・・・ほんと正直そう思ってしまうこの頃なんです。 そんな暗ぁ〜い気分を引き摺ったまま会場に到着しました。 今回、急な話だったのですが、友人が行けなくなった日本フルハップの招待チケットを頂いていました。 気分が暗いのにブラームスはどうかな、なんて思ったのですけどね、声をかけてもらえるなんて有難いことですし、勿体無いですものね。 気を取り直して受付で座席交換をして2階席中央EE列に座ることにしました。

1階席、2階席はほぼ9割近く入っていたでしょうか。 2階サイドには若干空席が目立つブロックもありましたけど、そこは招待用の区画かもしれませんね。 空いている席がうらやましいのは、このところアマオケ演奏会に多く通っているからで、人の多い演奏会、しかも指定席って苦手になってしまいました(苦笑)。 ところで、気分が重いなぁ〜って思っていましたけど、少し鼻水も出てきました。 咽喉もいがらっぽいしな、風邪気味なのかもしれませんね。 係員に見つからないように咽喉飴を舐めてスタンバイ。 定刻になりました。

広上さんといえばノールショッピング響。 その言葉の響きからスマートなイメージがあったのですけど、意外と背が低く、しかも頭の毛が少なくなった小太りなおじさんだったのに少々驚きました。 弘中さんは、ど根性ガエルに出ていた先生みたいな感じで・・・って、どちらも良い表現でなくてごめんなさい。 いずれも今回始めて聴かせていただきます。 さて・・・

ブラームスのピアノ協奏曲第1番。 2台のピアノのためのソナタを書くつもりが、第1楽章を交響曲に書換えようとして失敗。 このピアノ協奏曲になったそうですけど、まさしくピアノ付きの交響曲といった感じの演奏でした。 弘中さんのピアノは透明感のある煌びやかな響きなのですけれど、反面、虚飾を排した端麗さが持ち味でしょうか。 オケも端正でストレート、点画をはっきりつけた音楽でしっかりサポート、というかオケとピアノが一体になっていましたね。 ただしオケの響きを抑えていたせいでしょうか、熱い音楽がまっすぐにこちらにむかってきても、余韻が響き渡らないようにも感じました。 しかし、常には熱い感情が息づいていた音楽で、熱演でした。

第1楽章、力強い鋭角的な響きで開始、ティムパニの響きには弾力がありました。 主題を奏でる弦は力強いけれど響きがちょっと薄い感じがします。 プロオケですからね、よく揃っているのは当たり前なんですけどね、ちょっと線が細い感じがしました。 かえってアマオケのほうが大編成で、しかも時差があったりするので響きにボリューム感が出るのかもしれませんね。 木管と弦によるなだらかな旋律の部分はなめらかで美しく、やや軽めの響きともあいまって北ドイツ的な冷んやりとした感じにも受けとりました。 冒頭の主題が熱く戻ってきますが、点画をはっきりさせた音楽でストレートに盛り上がった感じ。 弘中さんのピアノは、透明感のある煌びやか響きで主題を弾きはじめました。 とても自然な感じで曲を進めていきます。 端正というかな、端麗といったほうがいいかもしれませんね。 フルートやオーボエが入ってきますが、これらの響きも甘さを抑えた素朴な感じで歌い上げていきます。 そういえば弦の響きも余韻があまり感じられない感じです。 センチュリー交響楽団の特性でしょうかね。 いきなりピアノがキンカン・キンカンといった甲高い感じで入ってきて展開部かな。 主題が戻ってきて、オケとピアノが一体となった音楽となって進んでゆきます。 まさしくピアノ付き交響曲ですね。 でもなんかステレオ効果が乏しい感じに思えるのは、この曲本来の持ち味かもしれませんけどね、広上さんの情熱はよく伝わってくるものの、出てくる音楽は実にオーソドックス、どこか渋い響きにも感じました。 終結部、ここもやはり点画をはっきりつけた音楽で、弦のフレーズをバシッ、バシッと切り捨て、タイトに盛り上げたフィナーレでした。 とても熱く終わったのと、とにかく長い楽章でしたからね、指揮棒が下ろされてから、会場のいたるところでため息のようなのや大きな咳払いが出ていました。

第2楽章、先の楽章が長丁場でしたからね、オケの皆さんの楽器の手入れも入念に行い、ちょっと長いインターヴァルのあとゆったりとした感じで演奏が始まりました。 情熱を秘め、美しさと熱さを兼ね備えた旋律を歌わせたあと、しっとりとピアノが入ってきます。 ここもとても自然な感じでした。 凝縮された音楽が途切れることなく流れてゆくのですが、しみじみとした感じで歌いまわされてゆきます。 そのせいか、周りにはけっこう目をつぶっている方が多くいらっしゃいましたね。 でも音楽は弛緩しているってわけではありません。 一瞬ぐっと盛り上がったあたり、ヴァイオリンに透明感があってとても綺麗でしたしね。 このあとオーボエ、クラリネットがそれぞれファゴットを伴って現れますが、媚びない音色で抒情的に曲を進めてゆきました。 ピアノが熱っぽく鳴らしたあと、その熱気はオケにも引き継がれますが、やがてピアノ独奏による冷んやりとした空気が漂ったあと、おだやかになって曲をしめるとそのままアタッカで第3楽章に突入しました。

第3楽章、強靭なタッチで主題をピアノが弾くと、オケもタイトな響きでそれに呼応します。 広上さんの指揮は、両手を広げ、長い指揮棒を持つ右手と左手を上下に揺する動作と、身体全体を使って指揮台の上を左右に流れるような動作が基本みたいですね。 速いパッセージのときは前者、遅い旋律のときには後者でフレーズを滑らかに歌わせるような感じではないでしょうか。 しかし時には後者の流れのなかで突然反対方向を向いて指示を出し、そのあとまた元の方向に向き直して流れの続きを行うような目まぐるしさもあります。 アマオケだと音がブツブツと切れてしまうかもしれませんが、さすがセンチュリーは音楽がたゆたうように流れていてびくともしませんね。 最初の主題を点画をはっきりつけて端正に盛り上げたあとスパッと切り、カデンツァはヴィルトォージョ的。 ホルンが芯のある柔らかい響きで入り、明るく少々おどけたような感じにも思えたあとじわじわっとフィナーレを築きます。 ここでも広上さんはオケのフレーズをバシッ、バシッと切り捨てて、弘中さんのピアノが威厳をもって応え、力強いエンディングでこの曲を纏めました。 
演奏が終わると、ブラボーもかかり熱い拍手に包まれていました。 広上さんも盛んに拍手をされて弘中さんの演奏を称えていらしたのも印象的でした。

20分間の休憩。 やはり身体は少々熱っぽいようですね。 センチュリー交響楽団の演奏会のチケットを買おうかな・・・なんて思ってみたりもしましたけど、あまり元気もないのでおとなしく座っていました。 2回くらい大きなくしゃみが出てしまい、演奏中なら大変なんで、またもや咽喉飴のお世話になりましたよ。 ちょっとヤバイ感じですね。 とにかく待ち時間の表示が消え、いよいよ定刻です。 オケのメンバーが入ってきましたが、ホルンが1名増強されて(1アシ?)5名体制になっていました。

ブラームスの交響曲第1番。 基本的なアプローチはピアノ協奏曲と同じだったのですが、オケの響きが増しました。 熱い感動を孕む音楽が迸(ほとばし)り出てきました。 緩急をつけ、タメを作ってから盛り上げたりもするんですけど、あまりわざとらしさというのを感じません。 ツボに綺麗にはまっているからでしょうか。 逆に即物的な印象さえ持つほどストレートで熱い音楽になっていましたが、ここでもセンチュリー交響楽団の特性でしょうね、爽やかで流麗なブラームスという感じにも思えました。 しかし、広上さんの演奏は聴いているとわくわくするような演奏で、とても素晴らしいブラームスでした。

第1楽章、軽く弾ませるようなティムパニの持続音にのせてゆったりと、かつ、あっさりとした感じで曲を進めていきました。 とても自然な呼吸で、自然に音楽を進めているような感じですね。 主部の手前のオーボエの旋律、広上さんは上を向いて音を練り上げるようにしていました。 そしてアレグロの主部、力強くタイトなティムパニとホルンによって幕が切られ、とても情熱的なんですが、ここでも音切れが良くて、すっすっと進んでゆきます。 低弦の響きはよく締まっているうえに、響きもよくのっていて、ピアノ協奏曲のときは全く違いますね。 広上さんはオケを煽るようなことはせず、自然に曲を盛り上げてゆくケレン味のない音楽を作っていました。 ドルソンさん率いるホルンがタイトでカッコ良いのもセンチュリーの魅力でしょうね。 あと奥田さんもコントラバスを引き摺るように弾いていて気合入ってました。 広上さんはフィナーレでも鋭角的な曲の運びをし、タメもちょっと作り、ぐっと盛り上げたりしていましたね。 コーダは熱っぽい音楽として着地しました。 

第2楽章、やや大きな音で抑揚をつけた開始でした。 緩急をつけた熱い音楽で、低弦の響きが心地良かったですね。 オーボエのソロは少々粘り気は感じるもののあっさりとした媚びない響き。 広上さんの動きは、機械のようで、しかも歯車がカタカタ動いているような動作をするのですが、音楽はとても流麗なんですよね。 リズムを取り易いからでしょうか。 とにかく巧いオケだから当たり前なのかもしれませんけど、よく揃っていて、しかも滑らかな音楽でした。 コンマスのセデルケニさんのソロも美音で清潔感があります。 静かに熱く流れてふわっと着地しました。

第3楽章、暖かいクラリネットの響きが牧歌的ですが情熱を秘めているようです。 ピチカートも心地良く、全体的にまろやかな響きで曲を進めてゆくんですが、だんだんと熱さが表面に出てくるような感じ。 ここでもとても自然に盛り上がってゆき、トランペットが明るく横に広がった響きで応えました。 太くて弾力のあるピチカートのあと主題が戻るあたりも印象的。 熱さを一回り大きくし、ぐるぐると腕をまわして曲を閉めたあとアタッカで第4楽章に突入しました。

第4楽章は、タイトなティムパニで決めたあと、ピチカートが凄かった。 最初はゆったりとした導入から、しだいに速度を速めてゆくのですけど、ここのリズム感というか、アクセントの取り方がちょっと変わっていて、会場もまたすごい集中力で耳を澄ませ、固唾を飲むような感じで聴いていました。 そしてホルンの旋律、芯のあるまろやかで艶やかな響きはドルソンさんの見せ場ですね。 フルートが清楚で綺麗な響きで歌い継いだあと、トロンボーンがゆったりとしかも清潔な感じで引き取ったのがとても素晴らしかったですね。 ここのトロンボーンは本当によかった。 これでこのあとのホルンの力強さもまた一段と増したと思います。 主部、弦はゆったりとし、押しつけがましさなく、あっさりとした始まりでした。 しだいに力を増してゆき、盛り上げてゆくのはこれまでどおり。 ティムパニがタイトに締め上げて、要所はたたみ掛けてくるんですが、情熱的なんだけど、押しつけがましさとかをあまり感じないんですね。 このあたりになると、ひたすら広上さんの指揮する姿を追いかけて聴いていました。 メリハリをつけ、単に重厚さで勝負するのとは全く違った魅力的な熱い音楽です。 やはりここでも、一瞬のタメを作ってぐっと盛り上げるようなこともしていましたけど、厭味に聞こえない真摯さがありましたね。 そしてコーダでは、一段と音量が上がって精力的な高揚感のなか、またスパッ、スパッとフレーズを切り捨ててゆき、ホルンの強奏も交えた堂々としたエンディング。 最後は右手を頭の上でくるっと一回転させて音を切りました。 ブラボーが飛び、盛大な拍手が沸きあがっていました。

盛大な拍手のなか、満足そうな表情で楽屋に引き揚げる広上さん。 失礼ですが、髪の毛が寂しくなった小太りのおじさんといった風貌なんですね。 しかも頭を左右に振って歩く姿はまるでおじさん。 それも土木作業を終えたおじさんが「今日はいい仕事やったぞ、さぁ酒でも呑むかぁ〜」みたいな感じにも見えました。 とにかく、そんな心意気に溢れた演奏だったと思います。 しかし、そんな広上さんって僕よりも一つお若いということを後で知りました。 僕もおじさんですが(否定しません)、技術や芸を持たないおじさんってほんと寂しいなぁ・・・広上さんはエネルギッシュでほんとうに素晴らしかったですね。