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オーケストラ千里山 第8回定期演奏会

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オーケストラ千里山 第8回定期演奏会
2004年7月11日(日) 14:00 伊丹市立文化会館 いたみホール

ムソルグスキー(R=コルサコフ編): 交響詩「禿山の一夜」(*)
ブラームス: ハイドンの主題による変奏曲
チャイコフスキー: 交響曲第6番「悲愴」

指揮:船曳圭一郎、藻川繁彦(*)


曲に立ち向かう真摯な態度、素晴らしい盛り上がり、そして熱い終楽章。 いずれも新生オーケストラ千里山の門出を飾るのに相応しい悲愴交響曲でした。
とくに第3楽章のエンディングでの壮大な盛り上がりは凄かった。 このオケを聞いたのはまだ2回目ですけれど、これがオケ千、と思うほど気合が入っていました。 単に力でぐいぐいと押すダイナミックさだけの演奏ではなく、弦楽奏者は懸命に弾きながらもリズミカルな弓捌きで粘りを入れることを忘れず、管楽器奏者は決して絶叫調にならず、打楽器奏者も抑制を効かせたタイトな響きで、真摯な演奏に感動しました。 とにかく素晴らしい盛り上がりでした。
また聴いていたお客さんの態度もとても素晴らしかった。 第3楽章のあとに拍手が沸き起こらなかったこともそうなのですけれど、終楽章のエンディングのあとに絶妙のブラボ! 船曳さんが両手を胸の前にもってきて、まるで祈るような仕草で曲を終えたあとの静寂。 この静寂を味わったあと、ベスト・タイミングでの掛け声、そして盛大な拍手が良かったですね。 きちんと音楽を聴き、また味わっているのがよくわかるようでした。
実は、第3楽章のあとの拍手には諦めがありました。 プロオケの演奏会でも経験していますし、今回は演奏が始まった直後、ファミリーシートになっている2階席から小さなお子さんの声も少し聞こえていましたので。 でも皆、じっと舞台を見ていて、コトリとも音がしません。 船曳さんが手を降ろすまでのジリジリとした緊張感、そして手を下ろしたあとの、ふぅ〜という重い溜息。 このあとのインターヴァルはちょっと長かったような気はしましたけれど(オケの方の休み時間は必要ですものね)、抑えがたい熱い思いを込めた終楽章もまた素晴らしいものでした。 そして前述のような素適なエンディング。
今回はオケ千としては始めてプロ指揮者を迎えての定期演奏会でした。 相当練習を積まれたのではないでしょうか。 また、プログラムにも書かれているように、色々な議論が団内ではあったようです。 でも結果的には大成功だったのではないでしょうか。 新生オーケストラ千里山の門出を飾るのに相応しい悲愴交響曲を堪能しました。 これからの発展がますます楽しみです。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

ちょっと早めに家を出て参議院選挙の投票(国民の義務ですものね)を済ませてから伊丹に向いました。 最寄駅で待たされたので、開場時間ギリギリに伊丹駅に着くかな〜って思っていたのですけど、結果的に予定よりも随分と早く着いちゃいました。 JR大阪駅で丹波路快速を捕まえることが出来たためです。 早く着いたし暑いので、用も無いのに関西スーパーに入ったりして涼みながら(笑)開場5分前に会場のいたみホールに到着しました。 けっこう人が集まってきていましたけど、皆さん列を作って並ぶでもなく、にこやかに談笑したり、ブラブラしながら開場を待ってました。

開場時間、ホールに入ると2階席はファミリーシートでした。 今回も1階席だなぁとざっと見渡してから後ろから2列目に陣取ることにしました。 1階席の後ろといってもけっこうステージが近いんですよね、このホールは。 多少騒々しいのかもしれないけれど今度はファミリーシートに潜り込んでみようかな〜 なんて思っていたら、後ろからロビーコンサートの音楽が漏れて聴こえてきました。 とても柔らかい響きでした。 聴きに行こうかな、と一瞬思いましたけど、続々とお客さんが入って来られるでしょ、人を押しのけてまでロビーに出るのが憚かられ、じっと開演を待つことにしました。 最終的には1階席は9割のお客さんが入っていたように思います。

定刻、団内指揮者の藻川さんがにこやかに登場。 禿山の一夜が始まりました。 亡霊が棲むという恐ろしい禿山、そんなおどろおどろしさよりも、丁寧に音楽を仕上げ、端正で真摯な曲の運びが見事でした。 冒頭の弦の響きには透明感があって冷んやりとした感じ。 タイトなブラスが呼応してメリハリをきちんとつけています。 端正な音楽つくりですね。 クライマックスもぐっと引き締まって大きく盛り上げたあと、すぅと退いて夜明けを告げるチューブラベル。 そして冷ややかな弦の響き。 このあたり藻川さんは入念に表情をつけていたようです。 オケもまたよく呼応していました。 しみじみとした音色のクラリネットやフルート、ヴィオラのトレモロ、コントラバスのピチカート、清楚なエンディグまで、実に見事にコントロールが効いた音楽でした。

いよいよ客演指揮者の船曳さんの登場。 船曳さんは、神戸市民交響楽団、グリーン交響楽団、奈良交響楽団など、他にもあったと思いますけど、最近あちらこちらで指揮されているのを聴いています。 今回どのようにオケ千と相対するのか、ちょっと興味をもっていました。 まずはブラームスのハイドンの主題による変奏曲。 こちらは緊張感からか、ノリの良かった部分とそうでなかった部分がハッキリと分かれたように感じました。 逆に悲愴交響曲は、相当に練習を積まれたのではないでしょうか、緊張感が良い意味で昇華された大変な熱演になっていたように思いました。

まずハイドン・ヴァリエーション。 
主題、明るく柔らかな木管の響きにチェロとコントラバスのピチカートも的確。 ちょっと慎重かな、と感じましたけど、全体的には大きくまろやかな演奏でした。 上々のスタートでした。 
第1変奏、元気よく始まりましたが、丁寧な曲の運びです。 指揮はひたすらタイムキープしているような動き、オケもせっせと合わせているような感じだったでしょうか。 ちょっと堅いな、という印象。 
第2変奏、ここでも打点を明確にした音楽でした。 
第3変奏、船曳さんは大きな表情をつけようとしていたようですけど、全体的にじわじわっとした感じの演奏になっていたみたいです。 
第4変奏、ゆったりと音楽を流し、ピチカートも柔らかく、憂色の音楽といった感じだったでしょうか。 
第5変奏、各パートはそれぞれしっかり演奏しているのですけどね、どうも纏まりが無いように感じてしまいました。 主題呈示からここまでずっと皆さん懸命に演奏されていますし、船曳さんも真面目といってはナニですけれど、しっかりとした指揮をされています。 でもグッとくるものを感じられず、ここまで聴き進んできた感じです。 
第6変奏、躍動感のある音楽、そうそうこうでなくっちゃね。 船曳さんは感興にのせてぐんぐんと盛り上げるのが合ってますね。 あまり好きなポーズではありませんけど、船曳さんの左足が爪先立ちになっていたので本領発揮っていうところでしょうか。 そうそう冒頭のホルンの響きも素適でしたよ。 
第7変奏、船曳さんは指揮棒を置いて抑揚をつけていました。 肌さわりの良い音楽で、各パートの響きがよく溶け合っていました。 
第8変奏、棒を持っての指揮でしたが、やや雑然とした感じの開始だったかしら。 あれよあれよという間に終わってしまった感じでした。 
終曲、まず中低弦の厳かな響きが素晴らしかったですね。 この上にちゃんと高音弦や木管がかぶさってきます。 充実した響き。 クライマックではちょっとまた雑然とした感じも受けましたけど、聖アントニーの主題が戻ってきてからぐんぐんとまたのってきたようでした。 そして最後はぱっと翻ったかのようなフィナーレ。 カッコ良く全体を締めました。

いろいろと書きましたけど、オケのメンバーは常に真摯に曲に立ち向かっていたのは客席からよく見えていました。 でも、どこか纏まり感のある箇所とそうでない箇所が際立っていたようです。 纏まり感のないところは指揮者の統率力なのかな〜って感じで聞いていました。 でもけっこう難しいですもんね、この曲をきちんと聞かせるのは。

15分の休憩のあと、いよいよメインの悲愴交響曲。 
こちらも難しい曲みたいですね。 かつてトーマス・ザンルリンクさんが大阪シンフォニカーの芸術監督だった時。 定期演奏会で第4番そして第5番を採り上げ、いずれも素晴らしい演奏を披露したのですけれど、第6番「悲愴」は難しいのでまだダメだ(まだ演奏できる実力がない)と言ってなかなか演奏されなかったことを思い出します。 第3楽章と第4楽章の対比が難しいのが理由だったと記憶していますが、詳細はよく分かりません。 確かにここの落差を大きくつけることで、聴き応えが随分と違ってくるのは分かるような気がします。

おまけに実演では、この楽章間の拍手が厄介ですよね。 通常の曲なら、楽章間での拍手は全く気にしないし、逆に、良いと思ったらもっと拍手してもいいんじゃない、なんて思っているのですけど・・・この曲に関しては、この落差を味わいたいので静かにしていて欲しい気持ちが強くあります。 
実は今回、演奏が始まった直後に諦めていました。 ファミリーシートになっている2階席から小さなお子さんの声が少し聞こえていましたしので。 でも杞憂でした。 皆、じっと舞台を見ていて、コトリとも音がしません。 船曳さんが手を降ろすまでのジリジリとした緊張感、そして手を下ろしたあとの、ふぅ〜という重い溜息。 このあとのインターヴァルはちょっと長かったような気はしましたけれど(オケの方の休み時間は必要ですものね)、抑えがたい熱い思いを込めた終楽章もまた素晴らしく、素晴らしいエンディングもあって、実に見事でした(演奏者もお客さんともにね)。 とにかく素晴らしい演奏でした。

第1楽章、コントラバスが地の奥底深くから湧き出てくるような響きを奏でると、暗く陰鬱なファゴットの響きがホールに響きます。 続くヴィオラの響きがまたとても熱い。 見事な始まりでした。 このあと熱い音楽となって展開されていくのですけど、要所要所でのヴィオラの響きがとても健闘していたのが印象的でした。 船曳さんは、例の爪先立ちのスタイルで感興にのせてクライマックスをぐんぐんと盛り上げてゆくのですけど、抑制の効いた金管、タイトな打楽器、いずれも暴走せずきちんと持ち場をこなしています。 静かな場面での木管楽器も暖かい響きが素適でした。 また一転してクライマックになると、弦と管楽器の対比、合奏がきちんと決まっていて迫力も満点。 そして退くときはサッと潔い。 相当に練習を積まれたいたのではないでしょうか。 まさに一丸となった音楽でした。 とにかく迫力はあっても端正な響きは決して崩れません。 最後はトロンボーン、チューバ、ティムパニによる厳かな終結でした。

第2楽章、チェロによる暖かなワルツが始まり、豊かなロシアの音楽が会場に満ちました。 柔らかな木管、ホルンもよかったですね。 船曳さんはヴァイオリンにもっと抑揚をつけるように指示していました。 このあとも船曳さんはヴァイオリンを中心にした演出をしていたようです(ほとんど右側の低弦楽器を見ないんですね、よくある船曳さんのパターンです)。 ティムパニが太い響きでいったん終結したあと、またワルツが戻ってくると音楽もより華やかになります。 ピチカートの柔らかい響き、とても素適でしたね。

第3楽章、精緻に組み立てられた音楽が始まりました。 既に熱い思いが秘められていたようです。 この楽章では船曳さんは中低弦に指示を与えながらぐんぐんと盛り上げていきました。 クラリネットの野太い響きが魅力的です。 この楽章はひたすら終結部に向かってクライマックスを築いてゆくのですけど、ヴァイオリン奏者など懸命に弾きながらもリズミカルな弓捌きで粘りを入れています。 要所をきちんと締め、オケをリズミカルにのせてゆきました。 大太鼓の音、ズシンと太く重く響きます。 船曳さんはこのあとの盛り上がる場面、両手をだらんと下げ、身体でリズムを取るだけの仕草でオケに演奏を委ねるような仕草もありました。 オケも一丸となり、頂点に向かってどんどんと登りつめてゆきました。 金管楽器は絶叫調ではなく、シンバルも派手には響かせません。 十二分に力を蓄えた行進曲、オケ全体の響きに一体感があってとても見事でした。 そして懸命に弾くヴァイオリンの弓捌きにもリズミカルさが失われていません。 力で押すだけでない見事な盛り上がり方で、壮大なクライマックスでは更に音量アップして終了。 一気に静寂がホールに戻ります。 船曳さんの手が下りるまで、ジリジリとした緊張感。 会場の皆舞台を注目し、息も呑むほどの憚られるようでした。 ようやくその手が下りたときもまた、この静寂を壊してはいけないような、ふぅ〜という重い溜息を吐く音が密やかかに聞こえてきました。

このインターヴァルはちょっと長かったような気はしましたけれど(オケの方の休み時間が必要ですから仕方ないですけどね・・・CDやレコードで聴いているのではないですから)、指揮棒を置いた船曳さんの指示により第4楽章が始まりました。
やや想いが強いのか、先の楽章の余韻が残っているのか、ちょっと大きな音で始まったような気がしました。 重くうごめくような響きには、熱い感情がふつふつと湧いているようでもありました。 ファゴットが実にいい感じで入ってきます。 ホルンに導かれ、透明感を持ったヴァイオリンに引き継がれると熱い思いが迸り出、それを断ち切るかのようにスパっと切る。 しかしまた遥かな想いへと繋がってゆく。 この後も、抑えがたい想い、高ぶる感情とその抑圧、そのような葛藤が見事に音楽で表現されていたように思います。 素晴らしい音楽でした。 そしてエンディングは、コントラバスに出を指示して太い音を要求したあと、チェロを見ながら、船曳さんは両手を胸の前にもってきて、音を自分の心臓に集め、それで祈りを捧げるかのようにして終えました。 そしてしばしの静寂がまた会場を包みます。 そしてベストタイミングで「ブラボ!」の掛け声。 それで我にかえったようになり盛大な拍手へと変りました。
きちんと音楽を聴き、また味わっているのがよくわかるようですね(演奏者もお客さんともにね)。

何度かのカーテンコールのあと、アンコールはありませんでした。 今回は始めてプロ指揮者を迎えての定期演奏会。 この曲についてアンコールの練習も惜しむように相当練習を積まれたのではないでしょうか。 また、プログラムにも書かれているように、色々な議論が団内ではあったようですね。 でも結果的には大成功だったのではないでしょうか。 新生オーケストラ千里山の門出を飾るのに相応しい悲愴交響曲を堪能しました。 これからの発展がますます楽しみです。