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待兼交響楽団 第16回定期演奏会

若々しく熱い演奏を堪能戻る


待兼交響楽団 第16回定期演奏会
2004年9月19日(日)14:00 池田市民文化会館(アゼリアホール)

イベール: モーツァルトへのオマージュ
モーツァルト: 交響曲第31番ニ長調「パリ」K.297
チャイコフスキー: 交響曲第6番ロ短調「悲愴」作品74

(アンコール)プッチーニ: 交響的前奏曲 作品1

指揮:井村誠貴


よく踊る井村さんは、全身で音楽を表現。 あるときは音楽をちぎって投げるようでもあり、ある時は感情の襞をそっと撫でるようでもありました。 オケもそんな井村さんにとてもよく応え、若々しく熱い演奏で全体を盛り上げていました。
イベールのモーツアルトへのオマージュ。 リズミカルで溌剌とした演奏。 いつもながらの井村さんの分かりやすい指揮から、木管は伸びやかに金管も煌いてて楽しい曲想がよく出た佳演だったと思います。
モーツァルトの交響曲「パリ」は若さ溢れた演奏。 終楽章はとても熱い演奏で、ジュピター交響曲の終楽章を想像するようなエモーショナルな感じを受けました。 ただ第2楽章などもっと退いてもよかったんじゃないかな、やや一本調子っぽく感じられた部分もありましたけど、誠実な演奏には好感が持てました。
チャイコフスキーの悲愴交響曲。 こちらも大変気合の入った演奏でした。 強弱だけでなく、押しや退きも感じられた熱演でした。 クラリネットが巧かったですね。 あと、コントラバス奏者の方がけっこう気合入ってて目だってました。 そっとメンバー表で確認すると団長さんみたいですので、思わず納得。 高音弦も綺麗でしたけれど、後ろで聞いていたせいもあるためか、終楽章などもう少し弦に粘りがあると更に良かったのになって思いました。 深みを感じさせる部分がなんとなくサラっと流れたようにも思えて・・・でもコンミスの方を始め、相当に気合の入った演奏をされていたのは見ていてよく分かっています。 単純にもう少し人数が欲しかったなぁ、という感じ。 とにかくとても情熱的な演奏には違いなく、素晴らしい演奏でした。
アンコールは、プッチーニの作品1番の「交響的前奏曲」。 井村さんらしい情景が感じられた演奏でした。 井村さんの指揮されるオペラの序曲は、たとえ観たことのないオペラであっても不思議と情景が浮かぶのです。 この曲はオペラの序曲ではないのですけれど、やはりどこか風景的なもの、歌をよく感じました。 
とにかくどの演奏でも歌うのが井村さんの演奏の特長でしょう。 堪能しました。 


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

午前中は池田の五月山公園に一家で遠足です。 残念ながら動物園ではウォンバットを見つけられませんでしたけど(隠れていたのかな)、「てるてる家族」のオープンセットを見つけて頬を緩めてました。 舞台になった本物のサカエ町商店街も明るくっていい感じですね。 今度アゼリアホールでコンサートがある時は、もうちょっと余裕を持って散策し、逸翁美術館にも行ってみたいな、なんて思いながら池田駅に戻ってきました。

午後1時すぎ、電車で一駅戻って石橋駅に到着。 実はアゼリアホールって初めて行くホールなのです。 池田駅からの電車の中でホールを見つけたときは安心しました。 一家4人で迷子になったらシャレになりませんものね(不平不満の渦、とまでは言わないけれど)。 改札からだいたいの方角を決め、商店街を抜けるコースをたどってホール裏手に到着。 ぐるっと回って正面に出るとまだ開場前でした。 仕方ないので市民会館の中に入って休憩。 子供達にジュースを買って一息ついていると開場となりました。

一家4人でぞろぞろとホールに入ると、いつもどおり2階席・・・と思って階段を登って入ったところは1階席の後方でした。 まぁいいや、どうせ子供連れなんで人気の少ないところでのんびり構えましょう。 6人分の席をいただいて4人でゆったりと鑑賞です。
ところで中央通路より1つ前の席にゆらむぼさんを発見。 実はホールに到着したときからお見受けしていたのですけど、家族連れで落ち着かないので声はかけませんでした。 ホールに入って落ち着いたので非礼を詫びてご挨拶。 丹波からわざわざ池田の演奏会まで来て下さるとは有り難いことです。

ブザーが鳴って演奏会の始まりです。 この開始を告げるブザー音、最近ではチャイム音やテープ音が流れるのが多いせいか、かえって懐かしい感じがします。 それにしても音がちょっと大きかったので吃驚しましたけど。 会場はほぼ6〜7割の入りってところでしょうか。 オケメンバーが登場して暗転して始まりです。
チューニングの後、にこやかに井村さんが登場。 会場に向かって一礼したあと翻ってすぐに音楽開始。 この間髪を入れない1曲目の始め方、井村さんのやり方ですね。 いきなり音楽の世界にグィっと引き込まれます。

イベールの「モーツァルトへのオマージュ」。 オマージュとは讃歌とのこと。 1956年のモーツァルト生誕200年記念のためにフランスの放送局より委嘱されたそうです。 初めて耳にする曲ですけど、曲のいたるところにモーツァルトのフレーズが登場していました。 いつもながらの動きの大きな井村さんの分かりやすい指揮から、リズミカルで溌剌とこの曲を演奏していました。 木管は伸びやかで、金管も煌いていて、楽しい曲想がよく表現された佳演だったと思います。
冒頭は軽やかな感じ、しばらくしてフルートの伸びやかなフレーズが爽やかでした。 このあとオーボエ、ファゴットなどが続きますけど、いずれもチャーミング。 ホルンも柔らかい響きで金管アンサンブルは派手ではないけど煌くような感じ。 抑揚を持たせた楽しい曲想が続くのはやはりモーツァルトですね(当たり前か)。 最後、井村さんは右手で大きくすくいあげるようにして思い切りよく曲を閉じました。

管楽器メンバーが入れ替わり、本家モーツァルトの交響曲「パリ」。 モーツァルトが就活(最近の若者は就職活動のことを就活と言うらしいです)のためにパリに滞在していたとき、パリの人々の好みに合わせて作曲した曲です。 
快活で元気のある音楽になっていました。 終楽章はジュピター交響曲の終楽章を彷彿とさせるほどエモーショナルな演奏でした。 全体的に熱演でしたけど、第2楽章などはもうちょっと退いてもよかったんじゃないかな、やや一本調子っぽく感じられた部分もありましたけど、どの楽器も繊細な感じがして誠実な演奏は好感が持てるものでした。

第1楽章、力強く快活で勢いのある音楽で始まります。 要所では力を入れていますけど、優しく歌わせる部分はチャーミングに。 メリハリを付けていました。 でも曲が進むにつれて、だんだんと音楽が熱くなってきたようです。 やや押し気味な曲の進め方は若さ溢れるってところでしょうか。

第2楽章、やや熱気の残った感じのアンダンテ。 井村さんはヴァイオリンに表情を要求していますけど、ちょっとまだ懸命に弾いているといった感じ。 誠実な演奏なんですけどね、裏返すとどこか一本調子みたくも感じました。 難しいところですね。 フルートが柔らかく吹いていたのが印象に残りました。

アタッカで入った終楽章、勢いのある音楽でした。 ヴァイオリンに左手ですくうようにして気合を入れ、ぐぃぐぃと曲を進めていきます。 木管楽器も加わって、なんかジュピター交響曲の終楽章を聴いているようなエモーショナルな気分です。 オーケストラが井村さんに合わせ、熱い音楽を懸命に演奏して駆け抜けた感じでした。 

20分間の休憩のあと、いよいよメインの悲愴交響曲。 この曲、とても難しいのだそうです。 以前会員になっていた大阪シンフォニカーの芸術監督だったトーマス・ザンデルリンクさんによると、定期演奏会で大好評だった第4番、第5番の交響曲に続いて、第6番「悲愴」を望む声に対し「難しいのでまだダメだ」と答えたそうです。 現実に2年位演奏会にはかかりませんでした。 難しいのは第3楽章と第4楽章の対比のさせ方だったと記憶していますけど、何がどう難しいのか安田には分かりません。 でもこの曲を聴くたびにここには注目するようになっています。

さて今回の演奏、こちらも大変気合の入った演奏でした。 強弱だけでなく、押しや退きも感じられた熱演でした。 随所で聴かせたクラリネットが巧かったですね。 あと、コントラバス奏者の方がけっこう気合入ってて目だってました。 そっとメンバー表で確認すると団長さんみたいですので、思わず納得。 高音弦も綺麗でしたけれど、後ろで聞いていたせいもあるためか、もう少し弦に粘りがあると更に良かったのになって思いました。 深みを感じさせる部分がなんとなくサラっと流れたようにも思えて・・・でもコンミスの方を始め、相当に気合の入った演奏をされていたのは見ていてよく分かっています。 単純にもう少し人数が欲しかったなぁ、という感じ。 とにかく情熱的な演奏には違いなく、素晴らしい演奏でした。 で第3楽章と第4楽章の対比、今回もよく分かりませんでした。 安田には永遠の課題かも(苦笑)

第1楽章、コントラバスが2名増強されて6名。 井村さんは始まる前にじっと下を向いて気力を充実させてから、コントラバスのほうを向き、ゆっくりと振り始めます。 地を這うような響きに続きにうごめくようなファゴットの低音、ここにヴィオラの響きがかぶさってきてゾクゾクっとする開始でした。 ちょっと間合いをとって主題の呈示。 しだいに音楽は熱くなってゆきます。 金管が咆哮する最初のクライマックスをタイトに決めたあと、また間合いをとってからなだらかに演奏。 ちょっと遅めだったかしら。 メリハリをつけた音楽運びを繰返します。 クラリネットからファゴットへの旋律がしみじみとしてていいなぁ、と思っていると、井村さんの足音とともに展開部の強烈なクライマックス。 いやぁ、速い速い。 全身を使い、音楽をちぎっては投げるようにも見えます。 このあとはオケ全体を歌い上げるようにして、どこか解決しない思いを残しつた感じで静かに終えました。

第2楽章、豊かなチェロによるワルツの開始。 井村さんはいつもどおり指揮台の上でステップを踏んでます。 そのこともあってヴァイオリンなどよく歌っています。 ティムパニの柔らかい持続音に乗せてじっくりとした感じで音楽が進み、オケの自主性に任せるように音楽を流したあと、再現部を徐々に盛り上げて明るいトロンボーンで頂点を築くと、やさしく主題の繰り返して、最後は息づいたピチカートにて終わりました。

第3楽章、軽快な導入部からだんだんと熱が篭もって、シャープな金管に続いてティムパニの強打。 クラリネットのソロがここでもとてもいい感じ。 あとオーボエも情緒的でよかったです。 ここでの音楽は、余力を持ちつつ緻密かつストレートで、ただ1点、終結部へ向かって進んでいくようでした。 行進曲風の音楽はオケが一丸。 中でもコントラバス奏者の方ですごい勢いで弾いていらっしゃる方が目立っていて、そっとメンバー表を見たら団長さんのようです。 納得しました。 一層熱い音楽が迸り出て、力強くタイトなクライマックスが築くと、井村さんの右の拳が高々と挙げられて終結。 とても激しく高揚した音楽は凝縮感があって素晴らしいエンディングでした。 惜しむらくはこのあとパラパラっと拍手のあったことですけど、これは致し方ないことでしょう。

ちょっと長めのインターヴァルをとってから終楽章。 大きく舟を漕ぎだすような開始でした。 想いのたけを込めたような音楽。 深い音楽ですけれど、それでもどこか明るさを感じたのは指揮者のキャラのせいでしょうか。 ファゴットのしみじみとした音色が素適でした。 井村さんはヴァイオリンにもっと歌うようにと左手で指示、曲を情熱的に歌いあげてゆきます。 そして幾度となく音楽に間合いを取ってメリハリを付け、悲しみをより深く大きなものとしていました。 音楽が大きく高揚してもタイトに引き締まった音楽は崩れません。 ただ、これを聞いていたら、もう少し高音弦に粘りが欲しい気がしました。 なんかサラサラと流れていくようです。 ここでも弦楽奏者の方は弦に強く弓を押し付けるように懸命に弾いてらっしゃるのは見ていてよく分かります。 もう少し人数がいたならもっと深々とした響きになったことでしょう。 でも充分すぎるほどの敢闘賞もんです。 ストレートに若い悲しみを演出したあと、井村さんはコントラバスの方を向き、両手をだらんと降ろしながら深い底に沈んでいくかのようにして曲を閉じました。

盛大な拍手に応えたアンコールは、プッチーニの作品1番の「交響的前奏曲」。 以前、けいはんなフィルの演奏会でも演奏されていた曲です。 こちらは井村さんらしい情景の感じられた演奏でした。 井村さんの指揮されるオペラの序曲は、たとえ観たことのないオペラであっても不思議と情景が浮かぶのです。 この曲はオペラの序曲ではないのですけれど、瑞々しいほどの速いパッセージやゆったりと大きく歌いあげる部分など、どこか風景的なもの、歌を感じながら聴いていました。 
やっぱりオペラ関係の曲がもう1曲欲しかったなぁ・・・なんて思いつつ会場を後にしました。