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橿原交響楽団 第12回定期演奏会

しなやかで強靭、気持ちのいい演奏戻る


橿原交響楽団 第12回定期演奏会
2004年11月21日(日) 13:30  奈良県文化会館 大ホール

ブラームス: 大学祝典序曲 作品80
シベリウス: カレリア組曲 作品11
        第1曲:間奏曲、第2曲:バラード、第3曲:行進曲
ベートーヴェン: 交響曲第3番変ホ長調 作品55 (ベーレンライター版)

指揮: 朝倉 洋


恣意的、刺激的とは対極を成す演奏はしなやかで強靭。 どの曲も上品な雰囲気を漂わせながらも要所をキリッと締めた気持ちのいい演奏でした。
大学祝典序曲は、ちょっと小ぶりながらエレガントで集中力の高い演奏。 刺激的な響きやフレーズはまったく無し。 朝倉さんはメリハリをきちんとつけて盛り上げ、また細かなニュアンスにもオケはよく応えていたのが印象的でした。
カレリア組曲、この演奏も響きの柔らかさが特徴的でしたけれど、より中低弦の響きが充実していました。 間奏曲から明るく楽しい気分で曲を始めた上々の滑り出し。 バラードでは弦楽アンサンブルが見事でした。 柔らかくたっぷりと響き、しかも北欧らしい冷やかさも感じられました。 そしてオーボエの瞑想的な響きもとても素敵だったことも付け加えておきます。 そして行進曲の明るく爽やかな音楽にしびれました。 ティムパニのロールを核にしたパーカッション、ホルンの遥かな吹奏、トロンボーンやチューバの芯のある響き、いずれの響きも柔らかく制御されています。 弦楽器も左右の響きが呼応しあって実に気持ちの音楽。 休止で息を合わせて、充実したフィナーレもまた見事でした。
メインのベートーヴェンの英雄交響曲。 重厚なドイツ風ではなく、時には軽妙さも併せ持ったオーストリア調でしょう。 すべての繰り返しを忠実に守った(はず)ベーレンライター版による演奏ですけれど、新奇的な面はまったく感じません。 それよりも、緩徐部分では上品に歌わせ、クライマックスでは集中力を高めた演奏。 やはり音楽は小ぶりながら、充分に聴き応えある演奏に仕上げていました。 ただ丁寧な演奏で繰り返しを実行していたせいでしょうか、少し冗長に感じた部分もなくはなかったですけれど、朝倉さんの指揮に忠実に応えていたオケは清々しさでいっぱいでした。 そしてフィナーレでは優しく音を紡いだあと端正に盛り上げ、ぐっと大きく纏めたのも素晴らしかった。 充実した音楽を堪能しました。
昨年聴かせて頂いたときの演奏でも気持ちのよさを感じましたけど、今回はバランスも良かったし、技術的な面でも格段に上達していたように思います。 特に英雄交響曲には相当に練習を積まれたのではないでしょうか。 そのためなのかアンコール無しでお開き。 お客さんの中にはちょっと不満そうな方もいらっしゃいましたけど、どの曲も清々しく充実した演奏に満足し、会場を後にしました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

慌てました。 14時開演だと思い込んでいたのですけど、13時30分開演に気付いて、慌てて家を飛び出しました。 何故か奈良の演奏会って、奈良フィル、奈良交響楽団、奈良女子大管弦楽団、いずれも13時30分開演が多いようです。 奈良県の文化会館を使うと、この時間設定なのでしょうか。

とにかく10分前にホールに到着。 前回やって来た時にはどこにホールがあるのかドキドキして探しましたけど、今回はちゃんと見つけられました。 
でも文化会館の入口からホールの受付の方向、受付を抜けてホールの入口は、まだちょっと手探り状態。 自信なく、こっちかな、って感じで歩いてホールに入って驚きました。 別に驚くことは何もないのですけれど、自分の中でイメージしていたホールと随分印象が異なっていたのです。 印象とか記憶って本当にいいかげんなものだな、とつくづく思いました。 

左側のブロックで中央通路側、ステージからホール3分の2くらいの距離の席を選択しました。 後ろは通路で、な-20と19の2席を確保。 今回もゆったりと鑑賞できます。
ホールにはだいたい7割近くのお客さんが入ったでしょうか。 シックで落ち着いた雰囲気のなか、プログラムを確認していると、中年(僕より若いけど)女性4人組が前の列に陣取ったらやけに騒がしくなりました。 チューニングしててもお喋りをしてますので、演奏中もこれだったら席を移動しようと考えたのですけど、それは杞憂でした(英雄交響曲では寝てらしたみたい)。
とにかくチューニングは終了。 袖を出て指揮台に向かう途中、客席を見て軽く会釈してにこやかに朝倉さんが登場。 いよいよ始まります。

大学祝典序曲、オーケストラ・メンバーの構成もあって(Vn1,Vn2,Va,Vc,CBの順に 9,8,6,8,6名)ちょっと小ぶりながら、エレガントで集中力の高い演奏でした。 刺激的な響きやフレーズはまったく無し。 朝倉さんはメリハリをきちんとつけて盛り上げ、また細かなニュアンスにもオケがよく応えていたのが印象的な演奏でした。

冒頭、柔らかくそっと始まると、ふわっと膨らみます。 ホルンの響きも抑えがよく効いて、まろやかな感じの開始でした。 トランペット、ホルンによるテーマは慎重に吹いた感じ。 明るくなっても抑制をよく効かせた盛り上がった響きも当たりの柔らかいものでした。 そしてゆったりと柔らかく進めますけど、クライマックスではキチッと要所を締めます。 けっしてユルい演奏ではありません。 響きのあたりが柔らかいのです。 木管楽器も綺麗でした。 ファゴットが明るくテーマを吹き、オーボエも軽やかにからみます。 力を増し、ティムパニの打音も重く自然な流れで盛り上がった感じ。 とにかく終始まろやかな響きで恣意的な感じが全くありません。 力を漲らせても同じ。 もうちょっとヴァイオリンの数が欲しいのは欲張りでしょうね。 でも中低弦の響きも数の割に分厚く感じず、バランスはきちんと取れています。 エレガントな演奏という言葉がふっと頭をよぎりました。 エンディングは、パーカッションを抑制し、エレガントな響きをたっぷりと持続させ、ぐっと集中力を高めたあと、左手を左下から右上に振り上げて響きを解き放つようにして終えました。

一部打楽器メンバーなどの配置換えをし、2曲目のカレリア組曲。 この演奏も響きの柔らかさが特徴的でしたけれど、より中低弦の響きが充実していました。 間奏曲から明るく楽しい気分で曲を始めた上々の滑り出し。 バラードでは弦楽アンサンブルが見事でした。 柔らかくたっぷりと響き、しかも北欧らしい冷やかさも感じられました。 そしてオーボエの瞑想的な響きもとても素敵だったことも付け加えておきます。 そして行進曲の明るく爽やかな音楽にしびれました。 ティムパニのロールを核にしたパーカッション、ホルンの遥かな吹奏、トロンボーンやチューバの芯のある響き、いずれの響きも柔らかく制御されています。 弦楽器も左右の響きが呼応しあって実に気持ちの音楽。 休止で息を合わせて、充実したフィナーレもまた見事でした。

第1曲:間奏曲、中低弦のトレモロにホルンの響きがとてもカッコ良い。 これが一段と大きくなって、ホルンも甘い響きで呼応する見事な滑り出し。 オケの力が増しても、軽快なトランペット、柔らかい響きの打楽器と、じわじわっとくる音楽作りで曲を盛り上げてゆきます。 明るく楽しい気分になりました。 音楽が大きく盛り上がったあと、すっと退いてまた柔らかいホルン。 ちょっと苦しい場面もあったようですけど、全体としてはとるに足らないことです。 とても素適で、とにかく気持ちが良くなりました。 

第2曲:バラード、クラリネットとファゴットがちょっと瞑想的なアンサンブルでの始まり。 ここに優しくヴァイオリンが入ってきて、コントラバスのピチカートが寄り添います。 中弦もまろやかな響きで、とても充実したアンサンブル。 ブラームスでは、数は多いけどちょっと影の薄かったような気がした中低弦がたっぷりとしています。 朝倉さんも感情を込めるように振り、オケもそれに応えます。 柔らかさに加えて北欧らしい冷んやりとした感じもよく出ていました。 音量を絞り、十分に小さく絞り込んでから、朝倉さんが大きく両手を回して、またふわっと音楽を浮き上がらせる。 そして自然に減衰したかと思うと、音楽が波打つよう。 そして低弦ピチカートからオーボエのソロがとても瞑想的な響きで魅了されました。 素晴らしかった。

第3曲:行進曲、ちょっと音量を絞り、明るく爽やかな行進曲の開始。 低弦のピチカートも軽やかです。 ヴァイオリン、そして中音弦が加わって勢いがついてゆきますけど、響きの柔らかさは失いません。 トランペット、柔らかで明るい響き、トロンボーンとホルンも自己主張しますけど柔らさは不変。 木管のフルート、ピッコロは明るくストレートで、クラリネットも明るい響きだったかしら。 音楽はさらに勢いがついて、柔らかなティムパニのロールを核にしたパーカッション。 ホルンの遥かな吹奏、トロンボーンやチューバの芯のある響き・・・いずれの響きも見事に制御されていました。 弦楽器も左右の響きが呼応しあって実に気持ちの音楽。 明るく爽やかな音楽に痺れました。 エンディングは、休止で息を合わせてから充実したフィナーレに結びつけたのも見事でした。 素適な音楽を十分に堪能しました。 

20分(たぶん)の休憩。 休憩時間を告げるアナウンスのあと祝電報告がありましたけど、何分かの休憩かは放送されません。 大らかですね。 みなさん気にすることなくゆったりと休憩に入ります。
5分前を告げるブザー。 ちょっと長い時間鳴っていたら、音程が変わりました。 壊れるのでは・・・なんて期待した人もいたでしょうか。 クスッと笑い声があったようです。
そんなことはともかく、いよいよメインの英雄交響曲が始まります。 パンフレットにはベーレンライター版と書かれてありました。

そのベートーヴェンの英雄交響曲。 重厚なドイツ風ではなく、しなやかで時には軽妙さも併せ持ったオーストリア調でしょう。 充実した音楽を堪能しました。 
演奏は、すべての繰り返しを忠実に守った(はず)ベーレンライター版による演奏ですけれど、新奇的な面はまったく感じません。 それよりも、緩徐部分では上品に歌わせ、クライマックスでは集中力を高めた演奏。 音楽はやはりちょっと小ぶりながらも、充分に聴き応えある演奏に仕上げていました。 ただ、丁寧な演奏で繰り返しを実行していたせいでしょうか、やや冗長に感じた部分もなくはなかったですけれど、朝倉さんの指揮に忠実に応えていたオケは清々しさでいっぱいでした。 そしてフィナーレでは優しく音を紡いだあと端正に盛り上げ、ぐっと大きく纏めたのもとても素晴らしいものでした。 個人的にも、重厚で分厚い演奏よりも、しなやかな演奏が好きなので、存分に楽しませていただきました。 

第1楽章、朝倉さんが胸の前で小さく振って、弾力のある音が飛び出します。 この部分、重厚で打ちつけるような迫力のあるものでないとダメ、という方も多いと思いますけれど、そのような方には物足りなかったかもしれません。 でも僕は個人的にはこのような弾力を持たせたスマートなのが好きです。 弦楽器がよく纏まっていて集中力の高い演奏はとても充実していました。 柔らかなトランペットからグッと盛り上がりますけど、ここも緻密に鳴っている感じで騒々しくありません。 もちろん木管楽器もチャーミング。 朝倉さんは小さく振りつつオケを纏めます。 決して大仰な指示でリードすることはなく、常に細かな配慮の伺える指揮ぶりです。 弦の分奏もこれまでよりもよりはっきりとしています。 特に中低弦が雄弁です。 もちろん何度も書いていますけど、柔らかさが基調。 クライマクッスになって力が篭っても朝倉さんの動きは常にスムーズで流れるよう。 音楽が途切れることなど皆無。 エレガントでしなやかです。 エンディングも滑らかに熱く燃えたあと、きちっと揃えて、ふわっと着地しました。

第2楽章、ゆっくりと静かに語り始めた葬送行進曲。 オーボエの響きには哀切の色のようなものを感じます。 巧い。 オケは集中力を高めて音量を上げますけど、余計な堅さを感じません。 相変わらず木管楽器が綺麗。 このような演奏が好きです。 ゆったりとチェロにメロディを歌わせたあと、朝倉さんが珍しく大きく棒を右から左へと泳がせて音楽を歌わせると、オケもまたきちんとついてきます。 木管にちょっとしたミスがあったみたいですけど影響なし。 素適な歌を堪能しました。 しだいに力が入ってきて、綺麗によくそろった盛り上がり。 ヴァイオリンをやや鋭角的に弾かせて力を込めます。 トランペットが渋い響き、ホルンが力強く吹奏。 熱の篭った演奏は集中力があります。 高音弦の断続音、フレーズの後ろを少し伸ばすような感じ。 情感を込めて主題を戻します。 そしてこの楽章の終結ではちょっとヴァイオリンが乱れたかしら。 チェロとコントラバスのピチカート、じっくりと閉めました。

第3楽章、息づいて軽快なスケルツォ。 ここでもオーボエの美音。 盛り上がりはグッと力を込めます。 フルートも綺麗で、ティムパニも小気味良く絡みます。 これが繰り返されたあと、ホルンのトリオ。 雄大で明るく吹きます。 フレーズの最後がちょっと惜しかったみたいですけど、とても立派でした。 丁寧でいて気持ちのよく乗った演奏です。 冒頭の部分に戻って、息づいた弦楽器。 最後はティムパニの強靭な響きを伴って楽章を締めくくりました。

第4楽章、少し息を揃えてから突入。 ちょっと軽めの響きで入ります。 ピチカート、よく揃っています。 管楽器との呼応もバッチリ。 しかしこのあとの弦楽器のアンサンブル、ちょっと慎重すぎたかしら。 でも、木管楽器が入ると大きく歌いはじめ、躍動感が出てきます。 トランペットの朗々とした響きが冴えます。 オーボエはちょっと控えめな感じだったかな。 フルートのソロもやや控えめかな。 しかし一丸となった音楽で盛り上がります。 若干ヴァイオリンの数の少なさを感じなくもありませんけど、エレガントで明るく充実した音楽でクライマックス。 音楽の流れが変わり、オーボエのソロにファゴットが絶妙に絡み、木管楽器が第2主題を歌います。 素敵な音楽です。 徐々にそれが徐々にスケールの大きな音楽へ。 ホルンが柔らかく吹きます。 とにかく長いソロ、最後の着地の部分にほんの少し乱れが出たみたいですけど、じつに見事なソロでした。 ワルツ風の旋律を優しく音を紡いだあと、また感情が高まり、ここでのホルン斉奏はタイトで力強くて立派。 輝かしいトランペットも入り、中低弦の当たりは柔らかいけれど芯のある響きで実に堂々とした音楽。 優しく音を紡いだあと、朝倉さんのハナ息とともに端正な盛り上がりで駆け上りますと、ティムパニが重い響きでタイトに打ってぐいぐいと進めます。 そして最後は朝倉さんの左手が音楽を掴むようにして幕。 充実した音楽を堪能しました。

昨年聴かせて頂いたときの演奏でも気持ちのよさを感じましたけど、今回はバランスも良かったし、技術的な面でも格段に上達していたように思います。 特に英雄交響曲には相当に練習を積まれたのではないでしょうか。 そのためなのかアンコール無しでお開き。 お客さんの中にはちょっと不満そうな方もいらっしゃいましたけど、どの曲も清々しく充実した演奏に満足し、会場を後にしました。