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第29回 大阪フィルの夕べ

濡れたヴァイオリンの響きに感激戻る


第29回 大阪フィルの夕べ
2005年3月3日(木) 18:30  フェスティヴァルホール

ロッシーニ: 歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
チャイコフスキー: 交響曲第4番ヘ単調 作品36

(アンコール)チャイコフスキー: バレエ音楽「白鳥の湖」より曲目失念

独奏:滝 千春(vn)

指揮:円光寺 雅彦


滝千春さん、桐朋女子高等学校3年在学中だから18歳、彼女の才能を大いに楽しみました。
若いヴァイオリニストだからキリッと引き締まった演奏か、と思っていたら見事に裏切られました。 柔らかく艶やかで濡れたようなヴァイオリンの響きに魅了されました。 しかも第2楽章では切々と情感をこめて歌い込んで会場に凛とした空気が漂っていましたし、終楽章では弓が弦にしっとりと絡みつくような感じとなって魅力的かつ雄弁。 オケも的確なサポートぶりで、素晴らしいメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を堪能しました。
さて、円光寺さん指揮の大阪フィル。 抑制をきちんと効かせた好調さを強く感じました。
特にチャイコフスキーの第4番の交響曲など、冒頭から渋い響きがタイトで決まっていましたし、木管楽器のソロは遅いテンポでゆったりと演奏させ、クライマックスではタイトで走り込んで盛り上げることを繰り返す。 これをあざとさには感じさせず、逆に抑制をきかせた上品さとして伝えたのは円光寺さんの特質でしょう。 どの場面においてもきちんとしたソロで纏めたあたりオケの巧さもまたさすがです。 ただし、巧いなぁと思う反面、心を震わせるような強い感動に結びつきにくかったのは、技量よりも意気込みが勝っているアマオケの演奏を多く聴いていることもあるでしょうね。 音楽に対する求め方の違いのようなものも感じた演奏でした。 だから冒頭のセヴィリアの理髪師の序曲など手堅い演奏といった印象が勝ってしまっていました。
しかし、久しぶりの大阪フィルの演奏会。 巧い演奏を楽しみました。


簡単に演奏会をふり返ってみたいと思います。

大阪府教職員互助組合の公益事業の演奏会です。 対象が教職員やその家族の方を想定しているためでしょうね、18時半開演と通常の演奏会よりも30分早くなっています。 この30分早いのけっこうツライのですけど、なんとか10分前に到着。 
昨年のこの「大阪フィルの夕べ」以来のフェスティヴァルホールだし、大阪フィルの演奏になります。 このところアマオケ主体ですから。

座席交換された席が1階C列L−19、前から3列目ですね。 げ〜って思いながらも1階フロアに入ってゆきましたけど、途中で引き返しました。 近すぎます。 せっかくなので、こんな前で聴きたくありませんから、2階席の最後列に移動。 Q列R−5、中央の最後尾に陣取りました(でも後半はここにも人がやってきたので、R−16に移ることになりましたけれど)。

メンバーの方は既に自由入場し始めており、各自思い思いに練習をされています。 オケは通常配置で弦の編成は 16-14-12-8 だったでしょうか。 大きな編成ですけど、さすがにステージが広いのでこじんまりと纏まって見えます。
定刻を1〜2分過ぎた頃かな、照明が落ちてチューニングのあと、円光寺さんが出てこられていよいよ始まりますけど、ほんとステージ広いなぁと感じました。

ロッシーニのセヴィリアの理髪師序曲。 第1曲目ということあるでしょうが、実に手堅い演奏という印象。 可もなく不可もなし、って言うと偉そうでしょうか。 でも型どおりっていう印象がぬぐえませんでした。
芯を感じさせる2つの和音、そして木管と弦による豊かな響きのあとオーボエとホルンも手堅く決めて始まりました。 主題も丁寧に紡いでゆき、各ソロがこれまた手堅く奏でて、クライマックスではガツンと盛り上げます。 このとき少々太鼓の響きが大きかったように思えたのは聞いている場所のせいでしょうか。 弦にもとの旋律が戻り、これまでの部分が繰り返されますけど、ここでも各ソロが判を押したようにきちっと演奏(当たり前かもしれませんけど)。 徐々に音量を上げてゆきます。 今度は太鼓の響きも抑制されていたみたい。 金管楽器も渋く抑えこんだ響きで終結部を形成していますけど、きちっと揃えて型どおり盛り上げてのThe END 。 明るい雰囲気もよく出ていましたけど、ワクワク感をあまり感じない演奏に思えました。

弦のメンバーが少し抜けて、14-12-10-8-6 になったようです。 コントラバスがひな壇を下りて前に詰めました。 あと木管楽器のメンバーも一部入れ替わったようです。
ソリストの滝千春さん、桐朋女子高等学校3年在学中だから18歳ですね。 エンジ色のドレスにて登場。 最後尾から見ているので可愛いお顔がよく見えないのが残念です。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。 若いヴァイオリニストだからキリッと引き締まった演奏か、と思っていたら見事に裏切られました。 柔らかく艶やかで濡れたようなヴァイオリンの響きに冒頭から魅了されました。 しかも第2楽章では切々と情感をこめて歌い込んで会場に凛とした空気が漂っていましたし、終楽章では弓が弦にしっとりと絡みつくような感じとなって魅力的かつ雄弁。 オケも的確なサポートぶりで、素晴らしいメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を堪能しました。 豊かな才能を楽しませていただきました。 今後もまたとても楽しみです。

第1楽章、キレにいい響きで入ってくるかと思っていたら、柔らかく濡れたような響き、しかも泣きの入ったメロディで入ってきたのに吃驚しました。 オケが主題を力強く歌ったあと、ヴァイオリンも力が入っているのですけど、響きは柔らかいままです。 柔らかいぶん少々音キレにまどろっこしさを感じないこともありませんけど、ゆったりとしたソロでは情感を漂わせて想いを込めて見事。 円光寺さんは身体をちょっと滝さんのほうを向いて的確にサポートしてゆきます。 そしてカデンツァ、弓が弦にまとわりつくような感じの深い響きが特長的。 じっくりと歌わせ、会場は固唾を飲むようにシンと静まり返ってました。 まだ18歳ですよね、えっ〜ていう感じで耳を奪われてしまいました。

第2楽章、ファゴットの持続音が端正に響いて残り、ヴァイオリンも繊細に入ってきて、ここでもしっとりと歌います。 時折、止まりそうなほどテンポを落としながら切々と情感を込めてゆきます。 円光寺さん、低弦のピチカートとか木管を巧くあしらって手馴れたサポートぶりで彼女を引き立てます。 そして滝さんもまだ18歳ですから、透徹した哀しみまで求めるのは酷ですけど、凛としていて聴く者の耳を惹きつけてやみません。 彼女もまた聴かせるツボをよく知っているような感じです。

第3楽章、ほんの少し止まってアタッカで入ります。 ここでも泣くような独奏ヴァイオリン。 軽やかですけど、艶やかで濡れそぼっていて軽軽しくありません。 終楽章なので気合がちょっと入ったせいでしょうか、ちょっとフレーズの終わりが荒っぽく感じた面もありましけど、すぐに挽回。 伸びやかに歌い始めました。 屈託のなさ、雄弁でもあり、巧いですね。 オケもまた彼女に合わせて気合を入れたサポートぶりで豊かに歌います。 主題が戻ってまた少々力強くなりました。 ちょっと縦ノリ気味に力を込めて弾いたあと、フィナーレはオケと一体になって艶やかに歌いあげたエンディング。 とても見事な演奏で、彼女の才能を大いに楽しみました。

15分の休憩。 またちょっと人が入ってきました。 そして最上段のR5の席も追い出されることになり、隣のブロックのR16に移動。 フェスでの2日公演、ほんとよく人が入っています。
さて定刻のちょっと前からメンバーが自由入場しています。 また 16-14-12-10-8 の編成に戻ったようです。

チャイコフスキーの交響曲第4番。 聴かせ上手な緩急をつけた演奏でした。 冒頭から渋い響きがタイトで決まっていましたし、木管楽器のソロは遅いテンポでゆったりと演奏させ、クライマックスではタイトで走り込んで盛り上げることを繰り返す。 これをあざとさには感じさせず、逆に抑制をきかせた上品さとして伝えたのは円光寺さんの特質でしょう。 どの場面においてもきちんとしたソロで纏めたあたりオケの巧さもまたさすがです。 ただし、巧いなぁと思う反面、心を震わせるような強い感動に結びつきにくかったのは、技量よりも意気込みが勝っているアマオケの演奏を多く聴いていることもあるでしょうね。 音楽に対する求め方の違いのようなものも感じた演奏でした。

第1楽章、渋いホルン、輝かしいトランペット、いずれもタイトに締まってスパッと切り落とす。 充実した開始でした。 さすが大阪フィル、余裕も感じます。 弦楽器が歌い始めますと、ちょっと独特な間合いをとっているみたいでした。 ストレートな金管の咆哮、うねるような弦楽器のあと、木管のソロが実にゆったりと奏でます。 かなりテンポを落としてましたね。 このあとに気付いたのですけど、木管のソロ部分は概してテンポを落とし、クライマックスは速めのテンポでサクっとタイトに決めて対比させていたみたいです。 あとクライマックスではティムパニが目立っていましたね。 シャープでタイト、マレットを持ち替えて、見事に聴かせてくれました。 緩急をつけて、ちょっと一筋縄ではいかない感じ、良い言葉ではないけど、手練手管を使って聞かせた感じのした楽章でした。

第2楽章、ゆったりとオーボエが哀感を漂わせた旋律による開始。 端正な響きでした。 そしてヴィオラでしんみりとさせヴァイオリンがゆったりと大きく、円光寺さんが旋律を紡いでゆきます。 でも、うねるうねるような感じではなく、各楽器にスポットライトを当てつつ、割合に淡々と進めていったようです。 ここでもさすが大阪フィル、巧さが光っていて耳を惹き付けてやまないのですけど、それが感動に結びつくかというと、そうでもないんですよね。 テンポを落としたクラリネットのソロ、コントラバスのピチカートがため息をつくかのようにゆったりとこの楽章を閉じました。 
実にゆっくりと静かに終わったぶん、会場からの咳払いがかえって多く耳に入ってきたように思います。

第3楽章、弾力を感じさせるピチカートが見事。 左から高音弦、右から中低弦の響きがステレオで、しかも強弱がきちっとついていて、おおっ、てな感じで耳を奪われました。 オーボエが端正に入ってきたあと木管楽器群もよく纏まってて巧い。 金管が十二分に抑制をかけて吹くのも安定感があります。 って大阪フィルだから当たり前なんでしょうけどね。 明るく楽しい音楽、瑞々しいピチカート、華やかでもあって、交響曲というよりもバレエ音楽のノリようなの感じもよく出ていました。

第4楽章、一瞬止まってから集中力の高い開始。 タイトに決めているものの余裕もあって艶やかさも感じます。 タイトに鳴るクライマックスであっても上品さを感じるのは円光寺さんの特性でしょう。 オーボエが端正に吹いたあと、ぐっと盛り上がったトロンボーンとチューバがよく締まって素晴らしい。 このあたりまでくるとオケの機動力の見せ場でしょう、無理せず、力強く盛り上がって巧い。 そしてまた弦のメロディになってゆったりと歌わせますけど、すっと退いて、またすぐに熱くなって、変幻自在。 ファンファーレが輝き、タイトに打ち据えてから、ホルンが渋く応えるなど、好調大阪フィルを感じ入りました。 フィナーレは、明るくなって盛り上がるけど、無駄な汗はかきませんよ的に上品さを醸し出し、タイトでかつスピーディだけど一糸乱れないエンディグを決めました。

久しぶりの大阪フィルの演奏会。 滝千春さんの濡れたようなヴァイオリンの妙技、オーケストラの巧い演奏を楽しませていただきました。