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スプリング・コンサート 〜喜びと感動のハーモニー〜

月並みな言葉ながら、いいコンサートでした戻る


堺市文化振興財団設立10周年記念
スプリング・コンサート 〜喜びと感動のハーモニー〜
2005年3月6日(日) 15:00 堺市民会館大ホール

【第1部】
 ホルスト: 組曲「惑星」より「木星」
 ストラヴィンスキー: 組曲「火の鳥」より「王女たちのロンド」「魔王カスチェイの踊り」「子守歌」「終曲」
 チャイコフスキー: 弦楽セレナーデより「第1楽章」
【第2部】
 J.シュトラウス2世: 美しき青きドナウ(合唱つき)
 北川文雄作曲/北川康宏作詞: 合唱とオーケストラのための「季節と旅人」

(アンコール)いずみたく作曲/永六輔作詞: 「見上げてごらん夜の星を」
(アンコール)J.シュトラウス: ラデツキー行進曲

管弦楽:堺フィルハーモニー交響楽団
合唱:さかいスプリング合唱団

指揮:井村誠貴

司会:黒谷昌子


月並みな言葉ながら、いいコンサートでした。
合唱曲はもちろん、オーケストラ音楽でも皆が力を合わせることは素晴らしいことだな、ということがよく伝わってきたコンサートでした。
今回の演奏会の白眉は、なんといっても堺市文化振興財団設立10周年記念として、一般から公募された149編の歌詞から選ばれた北川康宏さんの作品に曲を付けた「合唱とオーケストラのための「季節と旅人」」でしょう。 半年かけて練習された合唱は、気持ちが実によく伝わってくるものでした。 そのなかでも児童合唱が巧く取り込まれた「秋」。 可愛らしい子供達の声が新しい生命の息吹にも感じました。 そして終結部、オーケストラと一体となり、「私は愛を見つけます 私は未来を信じます」と熱く高らかに歌い上げたエンディングも素晴らしいものでした。 オーケストラの響きもまた第1部とはまるで違い、艶ののった素晴らしい演奏で曲を盛り上げていました。
第1部で特筆するならば、チャイコフスキーの弦楽セレナーデより「第1楽章」ですね。 井村さんの大きな指揮に煽られたかのような弦楽アンサンブル。 多少ガサついた響きがしないではないのですけど、中低弦がしっかりとした土台になっていて、熱い想いが上滑りすることなくビンビンと伝わってきた音楽でした。 聴いている我々の気持ちもどんどん熱くなってくるようで、思わず身を乗り出して聴いていました。
生意気なようですけど、オーケストラ音楽については、第1部と第2部では練習量の差が出ていたように感じました。 しかしそのような状態の第1部であっても、オケ全体に気を配って音楽を整えるだけでなく、要所で抑揚をうまくつけてオケを乗せ、どの曲も聴き応えのある音楽に仕上げていた井村さんの手腕の確かさには、改めて感心した演奏会でもありました。
もちろん指揮者が一人で頑張っていても音楽は成り立たないのですから、それに反応したオーケストラの皆さんの頑張りがあればこそ。 そのような意味でも皆が力を合わせることは素晴らしいことだなと感じたしだいです。 とにかくみなさんお疲れさまでした。


簡単に演奏会をふり返ってみたいと思います。

堺東の駅を出て、さて堺市民会館はどっち・・・? 駅前のイメージがまるで違っていたので一瞬頭が真っ白になってしまいました(別の駅と勘違いしていたようです)。 地図を印刷してこなかったので、ホームページで見た地図を思い浮かべ、方向を決めて歩き始めました。 初めての場所なので緊張します。

このあたり、と思ったところのちょっと引っ込んだ位置に堺市民会館がありました。 見つけられなくて、一瞬オヤって思いましたけど、それにも増してホール前の長蛇の列には驚きました。 開場5分後なのでズルズルと人並みは動いているのですけど、どんどん人がやってきていました。

ホールに入ったら2階席に直行。 既にここも半分くらいの人が入っていて(最終的には2階席もほぼ満席)、ぐるっと見渡したら中央通路の後ろの席の足もとが広いみたい。 ここに決めたいけど、中央付近は既に人で埋まっているので中央の右側に陣取りました(カ-35)。 しかしホール内は暑い。 セータも脱いで開演を待ちした。

アナウンスのあとオーケストラが整列入場。 弦楽器の編成は 13-12-10-9-8 でしょうか。 司会者が登場し、開演の挨拶と簡単な曲の紹介。 井村さんも紹介されてにこやかに登壇し、いよいよ始まります。 でも続々と人が入ってきます・・・

ホルストの惑星より「木星」、ストレートな響きながら巧く抑揚をつけた演奏は、聴くことを楽しくさせるような感じでした。
冒頭から丁寧に音を紡ぎ、抑揚をつけながら進みます。 いい言葉でいうとワイルドな響き、悪い言葉でいうとザラついた感じがします。 外れているというわけではないのですけど、どこかしら響きが合ってないような感じなのですね。 ソロも微妙な感じで事故っていましたし。 でもノリノリになって前半を終え、井村さんは中間部では指揮棒を置き、手でゆったりと弦のメロディを歌わせます。 雄大な感じがよく出ていました。 そして元の旋律が戻ると、最初は緻密に演奏、徐々にグィグィと盛り上げてゆきます。 それが弾むようになったあと力を込めたフィナーレで締めました。 こういったドラマティックな曲の展開が井村さんには合っているような気がしました。 聴き所をうまく聞かせた感じですね。

管打楽器メンバーが退場、一部のヴァイオリンメンバもプルト変更をしたようです。
司会者がこの世にこんな美しい音楽があるのか、と言って期待を持たせます。

そのチャイコフスキーの弦楽セレナーデの「第1楽章」、司会者の期待を遥かに超えた熱い演奏でした。 井村さんの大きな指揮に煽られたかのような弦楽アンサンブル。 ここでも多少ガサついた響きがしないではないのですけど、中低弦がしっかりとした土台になっています。 このため、熱い想いが上滑りすることなくビンビンと客席に伝わってきていました。 聴いている我々の気持ちもどんどん熱くなってくるような演奏で、思わず身を乗り出して聴いていました。

冒頭、大きく振りかぶってからハナ息とともに熱い想いが一杯詰まった響きが溢れ出てきました。 中低弦が豊かに響いてきます。 先ほどの惑星でもこれらの響きが芯になっていましたけど、ここではより重要なポジションを演じています。 指揮棒を持たない井村さん、大きな身体と大きな手で、音楽をすくいあげるようにして響きを紡ぎだしてゆきます。 振幅の大きな音楽。 オケにはもうちょっと艶やかさが欲しい、そんな気もするのですけど、それよりも中低弦の響きを核にした迫り来る音楽に圧倒されてしまいました。 気迫のこもった演奏、聴いているこちら側の気持ちも熱くさせます。 素晴らしい。 身を乗り出して聴き入っていました。 そしてエンディング、井村さんがヴィオラに指示を出して力を込めさせたあと、グィとすくいあげるようにして曲を締めました。 とにかく熱い演奏に満足しました。

管打楽器メンバーが加わり、第1部最後のプログラム。
井村さんが指揮されたストラヴィンスキーの「火の鳥」は、2002年3月2日の宝塚市交響楽団第34回定期演奏会での名演奏が頭にまだ残っています。 

その「火の鳥」、バーバリスティックな感じにも思わせた演奏でした。 オーケストラはこれまでも書いているとおり響きがザラつく感じですし、ソロも微妙な感じで事故ってしまったりもして(大崩しないのですけど)、ちょっとガクってきた面もありまsたけど、逆に初演された1910年とか1919年頃の野性的な感じが出された演奏になっていたようです。 とにかく難しい曲ですから、集中力を切らさず、しかも要所で抑揚をつけた演奏にして全体として印象を深くさせた井村さんの奮闘ぶりを堪能しました。 決して合わせることにだけ終始しないところが嬉しいところです。

「王女たちのロンド」、慎重に合わせるようにした出だしでした。 しかし各ソロや繋ぎの部分で微妙にズレるというか響きの質に統一感があまり感じられなかったのですけど、集中力を切らさず粘って曲を進めて徐々に音楽に熱気が感じられるようになりました。 しかしそうなってもまた微妙にソロが軽く事故ってしまったり・・・惜しいなぁ、てのがあるのですけど、とにかくゆっくりじっくりと曲を進めていました。

「魔王カスチェイの踊り」、力をこめた大太鼓の迫力満点の開始。 オケの金管がストレートな咆哮で応えます。 井村さん、冒頭ではオケをドライブするよりも整えているといった印象。 でも次第にバーバリスティックな感じで熱気をこめてゆきます。 大きく振りかぶって迫力を付けて盛り上げる。 我慢すべきところはしっかり我慢して、要所を盛り上げて大迫力で惹き付ける。 そんな巧さを感じました。

「子守歌」、一転ゆったりと瞑想的な感じ。 指揮棒を置いて手で指揮する井村さん。 ファゴットのソロがいい味を出していました。 あとオーボエもしみじみとしてよかったな。 ヴァイオリンの透明感が高くなったようです。 しめやかな感じでした。

「終曲」、弦のトレモロに淡々としたホルンのあとハープの響きで柔らかな陽が差し込んできたようです。 徐々に音量を増し、ティムパニが入って雄大に。 井村さん左手に力を込めて振り下ろし、オケに力を注入。 大太鼓も迫力満点。 最後、金管を大きくゆったりと吹かせてから、すぅ〜と響きを絞り込んだあと大きな弾力をつけての終結。

個々の部分部分ではう〜ん惜しいなぁという箇所がありましたけど、こうやって全体を聴いてみると、印象としては決して悪く思えなし演奏で聴き応えありました。 井村さん始め、皆さんが奮闘しているのがよく伝わってきたからではないでしょうか。 

20分間の休憩。
暑いのでロビーに出てちょっと散歩してクールダウンして席に戻ります。 予鈴のあと合唱団の方が入場開始。 車椅子の男性の方もいらっしゃいましたね。 オケの準備も整うと井村さんが登場して第2部が始まりました。

「美しき青きドナウ」の合唱付き版、冒頭こそちょっと固い感じがしましたけど、ゆったりとして伸びやかな演奏で、最後は高らかに歌い上げて見事でした。

会場がまだちょっとザワついている感じが残っているなかからゆったりとしたスタート。 ホルンがちょっと手探りっぽく吹き始めましたけどすぐに柔らかく伸びやかになりました。 合唱は日本語の歌詞。 井村さん、高い背を更に背伸びするかのように大きく伸びやかに振ってリードしています。 最初、女声がちょっと固いというか律儀な感じがしたのですけど、井村さんの柔らかく抑揚をつけたリードともあいまって固さも取れてきたようです。 そして後半、気合が入って声が熱っぽくなってきました。 井村さん、軽くジャンプするような場面もあり、ぐっと盛り上げて最後は高らかに歌い上げたエンディングでした。

いったん井村さんが引っ込んだあと、司会者が出てきて表彰式。
堺市文化振興財団設立10周年記念として、一般から公募された149編の歌詞から選ばれた作者の北川康宏さんが登壇。 理事長の難波利三さん(てんのじ村が有名ですね、好きですこの作品)より表彰状が贈られました。

そしてその北村康宏さんの作品、堺市在住の作曲家北川文雄さん(同じ北川姓でも関係ないそうです)が曲を付けた「合唱とオーケストラのための「季節と旅人」」は素晴らしい演奏でした。 半年かけて練習された合唱は、さすがに気持ちがよく伝わってきました。 そのなかでも個人的には児童合唱が巧く取り込まれた「秋」が気に入りました。 可愛らしい子供達の声が新しい生命の息吹のようにも感じました。 そして終結部、オーケストラと一体となって「私は未来を見つけます」と熱く高らかに歌い上げたエンディングもとてもよかったですね。
またオーケストラの響きの質が第1部とはまるで違いました。 艶ののった響きによる素晴らしい演奏でこの曲を盛り上げていたことを付け加えておきたいと思います。

「春」、井村さんが大きく振りかぶると、オケの豊かな響きがホールに満ちました。 オケの響きの精度が第1部とまるで違います。 練習量の差でしょうね、きっと。 弦のアンサンブルなど第1部ではガサついたなんて書きましたけどここでは実に艶っぽく、音程もピタッと決まっていたようです。 もちろん中低弦の響きも芯になっているのは同じでとてもいい感じです。 
合唱が「爽やかな色のそよ風が」と入ってきました。 こちらも伸びやかな声、暖かさを感じる声です。 相当に訓練されたのがよく伝わってきました。

「夏」、夏らしく熱く「煌めきの色の太陽が」と歌い始めました。 それが一転してしっとりと語りかけるような合唱になるなど見事にコントロールできています。 素晴らしい。 そしてまた熱く高らかに夏を歌いあげたあと、ゆったりと閉じました。

「秋」、秋らしい穏やかなヴァイオリン、そしてクラリネットのソロによって始まりました。 ここでは何といっても児童合唱が可愛かったですね。 子供達の透き通るような声が新しい生命の誕生そのもののような感じがしました。 ゆったりと伸びやかに歌われるなかに、児童合唱が実に巧みに彩られていたのに感激しました。

「冬」、おごそかなホルンの吹奏が決まり、中低弦の響きからぐっと盛り上がります。 男声の「冬・冬・・」の声がロシア民謡ぽい感じだなと思っていたら、女声がそっと入ってきました。 速度が上がって力を増した合唱とオケ、カンタータみたいな厳かな感じがしました。 大きく熱く歌いあげて終結部へとなだれこみます。

終結部、タンバリンが入ってちょっと行進曲ぽい始まりからぐんぐんと進みます。 トランペットが甘い響きで絡んできました。 とてもいい感じです。 ここまでくるとステージ上に熱気が渦巻いているのが見えるよう。 合唱が「私は愛を見つけます 私は未来を信じます」と高らかに歌うとオケもそれに呼応。 音楽が更に熱くなり、井村さんが両手を大きく挙げて全曲を結びました。

半年間かけて作り上げた合唱、演奏、とても素晴らしいものでした。 皆が力を合わせることは素晴らしいことだなと率直に感じた演奏でした。

この感動を客席でも一緒に味合おうとする企画でしょう、アンコールとしてパンフレットにはさみ込まれた「見上げてごらん夜の星を」を客席も一緒になって合唱。 いつもは鼻歌程度でのおつきあいなのですけど、さすがに先ほどの感動があったので一緒に歌っていました。

更にアンコールのラデツキー行進曲では手を打ち、オケ、合唱、客席の一体感を更に高めてお開きに。
皆が力を合わせることは素晴らしいことだなと改めて感じ、月並みな言葉ながら、いいコンサートでした。 皆さんお疲れさまでした。