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芦屋交響楽団 第63回定期演奏会

芦響らしい演奏に圧倒戻る


芦屋交響楽団 第63回定期演奏会
2005年5月7日(土) 18:00  ザ・シンフォニーホール

ショスタコーヴィチ: 交響曲第15番イ短調op.141
芥川也寸志: オルガンとオーケストラのための「響」
芥川也寸志: 交響曲第1番

(アンコール)芥川也寸志: 「赤穂浪士」テーマ曲
(アンコール)芥川也寸志: 交響管弦楽のための音楽より第2楽章

独奏:片桐聖子(org)

指揮:本名徹次


じつに芦響らしい演奏に圧倒されて帰ってきました。
このオーケストラ、アマオケだとバカにしてかかったらとんでも無い事は分かっていますけれど、毎回のようにビタっと合った音程、それに加えてパワフルでエネルギッシュな演奏には舌を巻くばかりです。 もちろん個人プレイも安定していて怪しげなところもありません。 巧いの一言で終わってしまいそうです。
そして今回のプログラミング、ショスタコーヴィッチの交響曲第15番、芥川也寸志のオルガンとオーケストラのための「響」と交響曲第1番。 20世紀、しかも戦後の曲を集めた意欲的なものです。 こちらは逆にアマオケでないとなかなか実現が難しいプログラミングもまた音楽ファンには嬉しいところです。
しょっぱなにショスタコーヴィチの交響曲第15番をぶつけてきたのには驚きましたが、もうそこからいきなり全開といった感じ。 細かなところをチマチマ聴くのが勿体無く思われ、ひたすら出てくる音に身を任せていました。 そして今回もまた、アンコール曲も含め、出てくる音楽すべてを堪能させていただきました。
とにかくあまりに巧すぎですね。 しかも技術的な巧さだけじゃなく音楽を聴かせる巧さが満載された素晴らしい演奏でした。 今回の感想文も「巧かった」で終わってしまいそうです。


それでもちょっと頑張って簡単に演奏会を降り返ってみたいと思います。

今回もまた30分前にホールに到着して当日券を購入しました。 前売券の座席引換えの窓口にはまだまだ長蛇の列が伸びていましたが、招待状・当日券のところでは2〜3人待つだけです。 それに何より、当日券を購入すると座席表を見て好きな席が選べるのが嬉しいところです(招待状での入場と同じシステム)。 迷わず2階席正面の前から3列目(CC-36)を捕獲しました。 早く来ればもっと真中の良い席も取れたのでしょうけどね、家庭持ちにはこの時間が限界でしょうし、この席ならまったく文句はありません。

さて、舞台上のオケは対向配置。 コントラバスは8本で、既にステージ上で練習されていました。 席に落ち着いてプログラムを見て吃驚。 なんとまぁショスタコーヴィッチの交響曲第15番が前座プロなのですね。 この曲がメインとなんとなく思っていただけに驚きました。 しかしよく考えてみると、このオケの音楽監督だった芥川さんの曲をメインに据えるのは当然なのかもしれません。 開演10分前、チェロや木管のメンバーも出てきてからどんどんと練習する人たちが増えてきました。 気が付くと定刻を5分ほど過ぎたところで場内アナウンス。 でも練習の音が大きくてよく聞き取れませんでした。 ホールはほぼ9割程度の入りでしょうか。 しばらくしてコンミスが登場してチューニング。 落着いたところでコツコツと靴音も高らかに本名さんが元気よく出てきました。 いよいよ始まります。

ショスタコーヴィッチの交響曲第15番、いきなり全開といった感じのタイトで引き締まった見事な音楽でした。 第1楽章の途中から細かなところをチマチマ聴くのが勿体無く思われたほど。 ひたすら出てくる音に身を任せて聴きました。

第1楽章、冒頭のグロッケンに続き温かみを感じさせたフルートによる主題の呈示。 弦楽器が主題を引き取ると、その響きの艶やかさに早くも圧倒。 音程がビタっと合っているのでしょうね、曖昧さが微塵もなく弾力を感じさせる見事な合奏です。 ファゴットも巧かったのですけど、なんだが一つ一つのことを細かく考えながら聞いているのが勿体なく感じました。 だからここで考えるを止め、繰り出されてくる音楽にひたすら身を任せることに・・・ 本名さん、いつもながら折り目正しくもエネルギッシュな指揮で切れ味よく演奏を進めていました。

第2楽章、金管コラールが厳かに奏されたあと独奏チェロが切々と旋律を物語りますが、深みのある艶を感じさせて実に見事でした。 コントラバスがその独奏をそっと支えていたり、トロンボーン、ヴァイオリン、フルートなどのソロもこれまた見事。 かなり長いアダージョ楽章なのですけど、頭が冴えて眠気なんかもよおわせません。 クライマックスでの粘りつくような響きのあと、しめやかに演奏してチェレスタやヴィブラフォンの響きもまた神秘的でした。 しんみりと終わった・・・と思うと切れ目なく

第3楽章、おどけるようなクラリネットで始まり、集中力の高い演奏となって進みました。 パンフレットには「12音技法によるこのテーマは、なんとも不安定な印象のするフレーズ」と書かれていますけど、聴いているほうとしては、難しいパッセージを危なげなくこなしてゆく見事なアンサンブルといった印象。 とにかく集中力の切れない真摯な演奏でした。
この楽章が終わったあと、さすがに会場内は咳払いの音も大きく聞こえました。

第4楽章、厳かなファンファーレと抑制の効いたティムパニによる開始から惹き付けられました。 このあとの弦楽器による主題のアンサンブルも実に綺麗でしたし、木管アンサンブルだって素晴らしかった。 とにかく総て見事としか言いようがありません。 とにかく、いずれも引き締まった表現なのに響きが実に柔らかく、かつ、うねるように音楽が流れてゆきました。 クライマックも強靭に決め、コーダでの打楽器群の演奏も見事に決めて(パンフレットには猛練習されたそうです)全曲を閉じました。
この曲はかつて大阪シンフォニカーで実演を聴いていますが(第44回定期:1995/10/2、T.ザンデルリンク指揮)、今回ほど集中して聴いた(聴かされた、というのが正解か)記憶がありません。 目が冴えるような見事な演奏でした。

20分の休憩。 チェレスタを引っ込めて、パープとピアノを出してきました。 あとコンガでしょうか、ヴィブラフォンを引っ込めてティムパニの横に並べたりしていましたけど、詳細はよく分かりません(楽器の名称をよく知らないこともあるし、歳なんでだんだんと目が見え難くなってきて往生してます)。 とにかく準備完了、後半のプログラムに移ります。

芥川也寸志さん作曲の「オルガンとオーケストラのための「響」」、サントリーホールの開場記念にして芥川さん最後のオーケストラ曲とのこと(何でも「オスティナート・シンフォニカ70」にオルガンを加えた改作らしいですが)、こけら落とし、劇場建築時の木の削りかすを落とすとの意味から落成、劇場の初興行という意味ですが、文字通り木屑も落ちてきそうなパワフルな音楽でした。 オルガンのインプロヴィゼイションのように強奏するソロ、オケの金管もガンガン演奏して音でホールを埋め尽くした感がありました。 しかし音が濁らないところがまた凄いところです。

グロッケンの響きのあとの炸裂音に吃驚しました。 ミュートを付けた金管、木管が鳴ったかと思ったら、オルガンの強奏が延々と続きます。 これに圧倒されましたけど、オケがまた音を洪水のように溢れ出してきて、どこまで続くのかって感じ。 すると打楽器がバーバリスティックなリズムを刻み始めました。 ここにオケが参入、金管も加わって大音量でガンガン演奏しているのに、不思議と耳を覆いたくなるような感じじゃないんですね。 これが収まると、オルガンが神秘的なソロのあとフルートの3重奏だったかしら、そこにハープ、そしてもう1本もフルートが加わって4重奏の不思議な音楽空間。 フルートが最後は尺八のような響きとなったあと、徐々にまた盛り上がってきて、オルガンの独奏。 打楽器、金管のファンファーレも加わって頂点は大太鼓の2発の強打が爆発のよう。 このあと徐々に静まったかと思ったら、大きくまた盛り上がり、最後は本名さんが両手両足を大の字に広げて音を解き放つかのようにしたエンディング。 とにかく音・音・音の洪水でした。

メンバーがシフトしたり入れ替わり、ちょっとメンバーも増強されたかしら。 準備が完了していよいよメインの交響曲第1番が始まります。
その芥川也寸志さんの交響曲第1番。 各パートが響きあったまさしく交響曲、終楽章などどことなくアイロニカルなショスタコーヴィッチのような音楽も垣間見えましたけど、全体的にパワフルな印象を持った演奏には充実感を感じました。

第1楽章、弦のトレモロにクラリネットの深い響き、オーボエもどこか神秘的で厳かな感じのした開始。 音楽がおおきくゆったりと歌い上げるかのように、何度か盛り上がっては、どこか懐かしい旋律が聞こえてきます。 寄せては反すかのようでした。

第2楽章、弦のアンサンブルが走り、管楽器もこれに加わって軽快な感じもしますけど、タイトな音楽造り。  リズミックかつ、切れ味も鋭く、そして力強くもあり、とにかく各パートが響きあって、まさしく交響曲ですね。 ホルンの斉奏をバシっとき目、よく揃ってこの楽章を駆け抜けて終わりました。

第3楽章、一転して陰鬱な感じの弦アンサンブル。 ファゴットの響きも深く、抑えた打楽器が後ろに付いています。 しかし徐々に音量が上がってきて、金管が加わりティムパニと大太鼓の強打でピークを築きますが、また陰鬱な弦のアンサンブルにもどります。 中低弦がしっかりして充実していますし、フルートとオーボエの奏者も頭を寄せ合うようにして響かせ合っているのを確認しながら演奏しているようでした。 そんな真摯な演奏は何度か寄せては反すようにしたあと、すっと着地しました。

第4楽章、音楽が走り始めました。 トランペット、木管楽器、そしてスネアドラムなど、どこかアイロニカルなショスタコーヴィチのような音楽。 音楽が走る走る。 そして大太鼓、ティムパニのロールのあと、ホルンがベルアップして音の洪水とカッコ良く決めたあと、収まったオケの響きの中にハープが垣間聞こえたのが印象的。 そして音楽はまた走る。 ブラス入って木琴が跳ねる感じ。 ふわっとした緩やかな音楽に変わったあと、ティムパニの連打でまた走ってタイトな音楽によるクライマックスを築いたあと、本名さんが両手を斜め上にパッと広げて音楽を止め、全曲を纏めました。 
力の入った演奏が終わり、オケの団員の方も嬉しそうな表情をされていたのもまた印象的でした。

アンコールも芥川也寸志さんの曲。 「赤穂浪士」テーマ曲と、 交響管弦楽のための音楽より第2楽章。 これでもか、といった感じの力の入った演奏でした。 
なお「赤穂浪士」テーマ曲では、1mはある拍子木を叩くのですけど、そこいらの板で出来ているとは思わないのですけど(でもそんな感じ)、叩く度に壊れてきて、最後は折れそう。 演奏終了後に客席から笑いも起こってました。 本プロではないせいか演奏には余裕も感じられてそれもまた見事でした。 どこまでも芦響らしい演奏に圧倒されました。