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吹田市交響楽団 第60回定期演奏会

プレーヤ全員が主人公の充実した演奏戻る


吹田市交響楽団 第60回定期演奏会
2005年5月21日(土) 18:00  吹田市文化会館「メイシアター」大ホール

ブラームス: 大学祝典序曲 op.80(*)
グリーグ: ピアノ協奏曲 イ短調op.16(*)
バルトーク: 管弦楽のための協奏曲 Sz.116

(アンコール)マスカーニ: 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

独奏:宮本聖子(p)

指揮:新谷 武、米山 信(*)


充実したバルトークの管弦楽のための協奏曲、文字どおりオケのプレーヤ全員がソリストになった充実した演奏を楽しみました。
当日朝まで行けるかどうかヤキモキしていましたが、行けることになりました(というか半ば無理やり行ったに近いかも)。 しかし、そうやって期待して行った演奏会だけど・・・なんてこともよくあるのですが、今回は正直行けて良かった演奏会でした。
オケコン、ソロ部分を危なげなく見事にこなしたこともとても素晴らしいのですが、トゥティもまた素晴らしかった。 金管楽器全体にはパワーが感じられ、聴かせどころをしっかりと演出していましたし、木管楽器や弦楽器、打楽器など各パートを緻密に絡みあわせての熱演の数々。 耳を奪われました。 そしてそのなかでも弦楽器、各パートがよく纏まっており、この難しい曲の土台をしっかりと築いていたことが聴き応えのある素晴らしい演奏に結び付いたのではないかと思います。 メンバー全員で曲を作り上げた感じのした素晴らしい演奏でした。
またグリーグのピアノ協奏曲、こちらは非常に興味深い演奏に感心しました。
ソリストは宮本聖子さん、柔らかいタッチながら煌くように放射する高音がとても魅力的。 柔らかく詩情たっぷりに歌い上げるソロなのですが、オケはザッハリッヒにぐいぐいと気合の入った伴奏で曲を進めていました。 普通に考えるならば、ソリストとオケのミスマッチ的な要素となるのでしょうが、しかし補完しあうような感じ。 このようなアプローチも面白いなぁと感じ入ったしだいです。 聴き応えある演奏になっていました。
なおこれに先立って演奏されたブラームスの大学祝典序曲、ブラームスらしい纏まりの良さも身上ですが、そこに若々しさや艶やかさ、雄大さをも感じさせた好演でした。
いずれも第60回の定期演奏会を飾るのに相応しい演奏の数々を堪能しました。 繰返しになりますが本当に行けてよかった、そんな演奏会でした。


簡単に演奏会を降り返ってみたいと思います。

家庭の事情により今後土曜日の演奏会は無理かも・・・なんていう事態になってしまい、どうしたものか、と当日朝まで行けるかどうかヤキモキしていましたが、行けることになりました(というか半ば無理やり行ったに近いかも)。 
それでも家事をこなし、子供の面倒を見てから家を飛び出して、少々慌てながらホールに到着したのが開演15分前。 経路をショートカット(堺筋本町から地下鉄乗り入れの阪急電車を利用)したことで間に合いました。 梅田経由より160円ほど高くなるんですけどね。

ホール入口で顔見知りのラッパのTさんに挨拶して入場、さっそく2階席に駆け上がりました。 あっ、右側の最前列が空いている・・・と、落ち着いたものの、やはり足元が狭いので窮屈です。 普段どおり中央通路の後ろの席に移動しました。 そ-34、ド真中ですね。 ここは足元に余裕があってとても楽ちんです。 音楽を聴くのには、こういった楽ちんさが重要な要素なのですけど、演奏側にしてみれば、お客さんの入りが良くないことは困った問題ですね。 しかも今回、プログラムのせいでしょうか、前回よりもちょっと少ないみたいです。 1階席はよく見えませんが7割位かな、2階席は2割ってところでしょう。 オケの実力からして、もっと入ってもいいのですけどねぇ。

定刻、ステージが明るくなるとともに客席の照明が落ちてオケのメンバーが整列入場。 上手からトロンボーン、下手からトランペットがタイミングを合わせ、文字通り整列して入場し,
ステージの奥から詰めて座ってゆく感じです。 弦楽器の編成は通常配置で 13-10-8-9-6 でしょうか。 コントラバスは上手側に6人がズラリと1列で並んでいます。 入念なチューニングを終え、米山さんが登場して始まります。

ブラームスの大学祝典序曲。 ブラームスらしい纏まりの良さも身上ですが、そこに若々しさや艶やかさ、雄大さをも感じさせた好演でした。
落ち着いた音楽の開始時から重厚さを感じました。 トランペットによるファンファーレ「我らは立派な校舎を建てた」は陽が差すような輝きに厳かさが同居したような感じ。 オケもまた威厳をもった響きでこれを引き継ぎます。 音量が増しても端正にしっかりと演奏されているのは、米山さんによるきちっとした音楽運びだからでしょうね。 ファゴットによる「新入生の歌」は快活、若々しさや艶やかさも充分に備わった音楽にもなっています。 「ガウデアームス」なども雄大でありながらも明るい輝きを放ち、熟成された音楽の趣きを感じました。 高音弦が左側、低音弦が右側から、これらがしっかりと響きあった纏まりのよい音楽となってのフィナーレを形成して締めくくりました。 冒頭から充実した音楽を楽しみました。

ステージは暗転、舞台下手側のメンバーが退くと、メンバー自らがイスを寄せてピアノを出します。 準備完了。 今度は 10-8-6-6-5 の編成だったかな(よく覚えていませんが)、ちょっと弦楽器を絞った編成になりました。

宮本さんがエメラルド・グリーンのドレスで登場。 ドレス生地の下には濃い赤色の生地も見え隠れ、光の加減もあって落ち着いた雰囲気を漂わせていますが、まだお若い方のようです。
そうそう、このオケの第50回定期演奏会(2000年1月23日)においてベートーヴェンの皇帝協奏曲の素晴らしい演奏を聴かせてくださったピアニストの大竹道哉さんのお姿も2階席にありました(あとで調べたら、東京音大、ベルリン芸術大学の先輩後輩であるようです)。

グリーグのピアノ協奏曲。 非常に興味深い演奏に感心しました。 宮本聖子さん、柔らかいタッチながら煌くように放射する高音がとても魅力的。 柔らかく詩情たっぷりに歌い上げるソロなのですが、オケはザッハリッヒにぐいぐいと気合の入った伴奏で曲を進めていました。 普通に考えるならば、ソリストとオケのミスマッチ的な要素となるのでしょうが、しかし補完しあうような感じ。 このようなアプローチも面白いなぁと感じ入ったしだいです。 聴き応えある演奏になっていました。

第1楽章、ティムパニの打音がクレッシェンド、ピアノが煌くような光を放つ開始。 充実した響きで劇的な幕開けをカッコ良く決めました。 しかしこの後、ピアノは柔らかなタッチで進めます。 でも響きの奥底から射す光が感じられるのが特徴的。 どちらかというと軽めの響きでしょうね。 低音に力が足りないような気もするのですけど、高音では魅力ある光を放っています。 オケの伴奏も充実していました。 冒頭の木管など情緒ありましたけれど、ちょっとぐいぐいと演奏して曲を進めているような感じです。 ややオケの音量が勝っているようにも思えました。 しかし宮本さん、力技でオケに対抗するのではなく、あくまでもマイペース。 要所を決めながらも、時にテンポを落としたりしながら歌い込むようなソロを演じています。 特にカデンツァでは詩情豊かな世界を見事に演出。 柔らかく、時にはビロードのような響きにも聴こえました。 この後、短いコーダを締まったオケの響きを絡めてタイトにこの楽章を閉じました。

第2楽章、柔らかく豊かな響きを持ったオケの開始。 うつらうつらと瞑想的で、豊穣な夢を見ているような感じで進めます。 ピアノがしっとりと歌いながら入ってきます。 柔らかな響きの奥から煌くような高音が冴えています。 やはり低音部分は力まかせにせず、ソフトに盛り上げ、歌い上げるよう。 ホルンが素適な響きで絡んできました。 最初はタイト、そのあとは夢の続きのような魅惑的なフレーズ、とても見事でした。 そしてゆったりと絡みあいながらこの楽章をそっと終えました。

第3楽章、スコアのページをめくってすぐにスタート。 チャーミングな木管の響きに続いて、軽快な響きのピアノが登場。 勢いのついたオケがタイトに盛り上がってゆきます。 ピアノも要所を明快に決めて曲を進めてゆきますが、決め所以外の部分はこれまでどおりの柔らかな響きでもって歌っているようです。 トランペットがカッコ良く割って入りました。 ピアノも力を込めてピークを形成するかと思いきや、ここも終始柔らかな感じで登り詰めます。 フルートが透明感をもった響きで田園風のフレーズを吹いて清涼剤のよう。 そしてそっと休止。
ここからピアノがまた歌いはじめます。 深い響きの奥から煌くような響き。 オケはザハリッヒで的確なサポートぶり。 ピアノの押しがちょっと足りないと感じる部分をオケが補完しているような感じでしょうか。 カデンツァからワルツのリズムに乗って歌い込んでゆくあたり、ここも宮本さんのピアノがとてもよく歌っていたと思います。 そしてオケはここから変身。 米山さんが大きく振って、フィナーレまでゆったりと歌い上げるような演奏として全曲を閉じました。

この曲、もっとタイトに決める演奏が好きだったのですけど、このように歌い込むようなアプローチも面白いなぁと感じました。 非常に興味深い演奏に感心しました。

15分の休憩。 またもやオケのメンバーが大勢出てきてイスを寄せ、ピアノを戻します。
タイコの人が第2楽章「対の遊び」の部分を練習し始めました。 コントラバスの方も出てこられて楽器を並べて練習、ハープの方はお二人とも出てこられました。 さすがに皆さんメインの曲には並々ならぬ想いがあるようですね。
さて、ハープの方を除いてメンバーの方が袖に下がってゆきます。 最後に残ったコントラバスの人が袖に下がると同時にステージが明るくなってメンバー全員が再度整列入場。 今度は 13-10-8-10-6 の編成のようです。 チューニングを終え、指揮者の新谷さんが登場して始まります。

バルトークの管弦楽のための協奏曲、文字どおりオケのプレーヤ全員がソリストになった充実した演奏を楽しみました。 ソロ部分を危なげなく見事にこなしたこともとても素晴らしいのですが、トゥティもまた素晴らしかった。 金管楽器全体にはパワーが感じられ、聴かせどころをしっかりと演出していましたし、木管楽器や弦楽器、打楽器など各パートを緻密に絡みあわせての熱演の数々。 耳を奪われました。 そしてそのなかでも弦楽器、各パートがよく纏まっており、この難しい曲の土台をしっかりと築いていたことが聴き応えのある素晴らしい演奏に結び付いたのではないかと思います。 メンバー全員で曲を作り上げた感じのした素晴らしい演奏でした。

第1楽章「序奏」、新谷さんがチェロ、コントラバスの方を向いて振り始めると、充実したとしか言いようのない響きが出てきました。 今度はヴァイオリンの方を向いて振ってトレモロを導き出し、フルートが意味深長な響き、これらが繰返されるともうバルトークの世界にどっぷりと浸かっていました。 弦楽器の分奏がきちっと決まっていて見事です。 トランペットの厳かな響きから徐々に音量が上がってきて、休止。 新谷さんのハナ息で切れ味鋭く音が立ち上がります。 このあたり、新谷さんちょっと気合入りすぎたのでしょうか。 動きの大きさの割にオケが付いてきていないようにも思えた場面もありましたけど、オケのパートは煽られず、じっくりと音楽を進めているようでした。 ソロイスティックなパッセージを見事に決めながら音楽を進めます。 フィナーレに近づくとオケも新谷さんのドライブに応じる余裕も出てきたみたい。 渦巻くように盛り上がり、勇壮な音楽としてこの楽章を閉じました。

第2楽章「対の遊び」タイコのよく通る音、ファゴットの深い響き、ピチカートの音も深く響いてここも充実した開始。 木管楽器の見事なアンサンブルを堪能しました。 ここではコントラバスのピチカートが音楽を支えていて、本当に各パートが有機的絡んでいることが分かる素晴らしい音楽でした。 とにかくこの楽章、タイコの響きも印象的ですけど、抑制の効いたトランペット、弦アンサンブルなどの各パートがしっかりしていて音楽を全員で作っている感じ。 魅了されながらこの楽章を聞き終えました。

第3楽章「悲歌」、重厚で静かなコントラバスの響き、厳かな音楽が始まりました。 木管と弦楽器による幽玄な響きの世界、そんな感じ。 そこに金管楽器が入ってきて、うねるように盛り上がってゆきます。 落ち着いていながらも躍動感を感じさせる音楽。 新谷さん、とても気合入れて指揮されていましたね。 ヴィオラの響きとヴァイオリンの響きとの掛け合い、パートが揃っているのでステレオ効果も抜群。 タイトに要所を決めながら曲を進め、時折ゆったりと大きく歌うように序奏の旋律聴かせます。 最後はピッコロがやはり幽玄の世界を印象付けて終わりました。

第4楽章「中断された間奏曲」、新谷さん、勢いよく振ってぐいっと引き付けてから木管楽器の柔らかく明るい響きがとても美しい。 ヴィオラがゆったりと素朴な旋律を奏でると弦アンサンブルが豊穣な響きで発展。 コールアングレかな、微妙に絡んできていてどこか不安気な要素もしっかりありました。 クラリネットのおどけた音楽、トロンボーンに迫力ありましたね。 オケ全体が楽しく遊んでいるように盛り上ってドンチャンやったあと、夢見心地のような音楽にすっと戻して違和感ありません。 ソロイスティックなフレーズも見事に演奏、これを新谷さんが左手を回して打ち切るようにこの楽章を閉じます。

第5楽章「終曲」、ホルンの斉奏がカッコ良い出だし、そしてタイトな音楽が駆け出しました。 中低弦がピチカート、高音弦が軽やかに走っています。 リズミカルなティムパニ、ファゴットがのどかな響きを垣間見せたりしながら、どの楽器も要所をキチンと決めて気持ちの良い音楽が走っています。 トランペットのソロが軽やかに流れると、気持ちいいですね。 だんだんと音量が上がってオケの力も増しますけど、全員が一丸。 緻密に絡みあいながら曲を進めてゆく感じです。 ここでは弦の各パートがソリストでしょうね、見事に絡みあっています。 まさしく管弦楽のための協奏曲、オケの全員がソリスト。 しかし一人として突出することなく、自分の持ち場をきちんとこなしたうえで互いを支えあっている。 そんな感じがびんびんと伝わってくる演奏です。 だから聴いていると気持ち良くなってくるんだよなぁ〜なんて思いながら聴き進んでいると、一段と集中力が高まって、新谷さんの右手が斜め下に降ろされて音楽を切り裂くようにして全曲を終えました。

正直あまりバルトークを聴くことはないですし、オーケストラの楽器の細かなテクニック的なことは全く分かっていませんが、素晴らしく気持ちのよく乗った演奏だったことは確かです。 終始身を乗り出すようにして聴かせてもらいました。 とにかく皆さんお疲れさまでした。 次回以降もまた楽しみにしています。