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学園前アンサンブル 初秋コンサート

清々しい初秋、でも残暑のような熱い思いも戻る


学園前アンサンブル 初秋コンサート
2005年9月3日(土) 14:00 学園前ホール

グルック: 歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲(モーツァルト版)
モーツァルト: ピアノ協奏曲第20番ニ短調KV466

(アンコール)J.S.バッハ: パルティータ第1番・プレリュード

ヴィヴァルディ: 協奏曲集「調和の霊感」より合奏協奏曲ニ短調 op3-11 [*]
レスピーギ: リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲

(アンコール)J.S.バッハ: アリア

独奏: 辻 琢音(p)
    [*] 新村友美子(1st.vn)、堀江彩子(2nd.vn)、竹内嘉浩(vc)

指揮: 辻 俊彦


初秋らしく清々しく、でも残暑のような熱い思いも感じた演奏会でした。
パンフレットによると、お酒の席の勢いで始まった弦楽合奏団の構想により、昨年11月に発足した合奏団だそうです。 主宰者としてお名前の出ている菅納さんは奈良交響楽団のヴィオラ奏者ですね。 この方以外にも名前を知っている方が数名出ておられました。 また指揮者の辻さん、以前は奈良交響楽団の団内指揮者をされていて、聴かせていただいたこともあります。 第1回の演奏会とはいえ親近感を抱いた演奏会でもありました。
さて演奏ですが、冒頭にも書いたとおりです。 辻さんの気合の入った指揮ということもありますけれど、前半はかなり熱い演奏。 後半は清々しい弦楽合奏といった感じでした。
なお、パンフレットには今回の演奏会には2つのコンセプトがあるそうです。 実際の演奏とは前後しますが、そのひとつが、前半の若く才能あふれる指揮者辻さんの中学2年生のご子息のコンチェルト・デビュー。
モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の熱い演奏。 いやぁ〜お世辞抜きで巧いですねぇ。 同い年の長女もピアノを習っていますけど、比較にもなりません。 ミスらしいミスもなく、なんていうのは当たり前。 明晰な打鍵から、端正でかつ熱く語りかけ、聞かせるピアノです。 これに加齢からくる深みを伴えばもっと感じ入ることの出来た素晴らしい演奏になったでしょう。 また父親の指揮によるバックの演奏も熱いサポートぶり。 親子でモーツァルトに真っ向勝負、そんな感じもしました。
そしてもうひとつのコンセプトが、団員の方がお世話になった故・木谷さんの追悼。
残念ながら木谷さんのことは存じ上げませんが、木谷さんがこよなく愛されたのがヴィヴァルディの合奏協奏曲とレスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲とのこと。 こちらは清々しいアンサンブルでした。 アンサンブルの精度も前半とは比べ物にならないほどしっかりとし、端正できちっと纏めながらも想いがよく伝わってきたヴィヴァルディ。 レスピーギは、さらに伸びやかさも加わり、響きの綾が織り成す熱い合奏で、時にしっとりとさせしながらも想いを乗せて歌うパートが交互に現れては有機的に絡みました。 そしてその最後はやはり熱気の篭った演奏で幕とし、大きな拍手に包まれました。
菅納さんやそのお隣の堀江さんなど目をしばたかせていたのは、演奏会をやり終えた歓びだったのでしょうね。 清々しい演奏会でした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

学園前ホール、300名キャパの綺麗ないいホールです。 ここで学園前アンサンブルという団体の演奏会があることを、精力的にあちらこちらのアマオケに参加されている方よりお聞きしました。
学園前アンサンブルって耳にしたことないな・・・と、思ってネットで検索をかけてみたのですが、打楽器奏者前川さんのサイトに記載があった程度。 この団体に関する記事がひっかかりません。 演奏会を教えてくださった方のメールによりますと、奈良交響楽団のOBや現役の方が集まっておられるとのことです。 もとより地元の名前のついたアンサンブルですから、どのような人たちが集まっているのかな、そんな興味も抱きつつ喜んで伺うことにしました。

開場時間をちょっと過ぎてホールに到着。 自宅を出たのが開場10分前だから、歩いて15分ってところでしょうか。 期待もありますので早足で歩いていましたけれど。
無料の演奏会です。 受付でパンフレットをいただいてホールに入り、中央ブロックの真中よりちょっと後ろ I-10 の座席を確保して落着きました。 このところ残暑が戻ってきていますしね、持参の扇子をパタパタとやってクールダウン。 頂いた手作り風のA4上質紙を二つ折りにしたパンフレットを確認します。

主宰者としてお名前の出ている菅納さんは奈良交響楽団のヴィオラ奏者ですね。 この方以外にも名前を知っている方が数名出ておられます。 チェロで今回ソロもされる竹内さん、千里山のオケで活躍されていますけれど、菅納さんと竹内さんのご両人には、我が子供たちはピアノの発表会で併せてもらったことがあったりします。 ほんの少しなんでご本人たちは覚えてらっしゃらないと思いますけれどね。

またパンフレットによりますと、お酒の席の勢いで始まった弦楽合奏団の構想だそうです。 昨年11月に発足したそうですけれど、実際に演奏会を実現してしまうのには大変な労力があったとことと思います。
そしてパンフレットには今回の演奏会には2つのコンセプトがあるとのことです。 ひとつは音楽仲間であり、今なお心の支えでもある故・木谷さんの追悼。 あいにく木谷さんのことは存じ上げませんが、この方による手書きの写譜を使って練習されたそうですので大切な方への想いがこの演奏会で結実されるのですね。
そしてもうひとつが、若く才能あふれる指揮者辻さんの中学2年生のご子息のコンチェルト・デビューとのこと。 前者が過去なら、後者は未来を見据えて進むということでしょうね。 そのピアノを弾く辻琢音(たくと、と読むそうです)くんの経歴などを読みながら開演を待ちました。 ほぼ7割以上の人が入っているようです。

定刻、開演前のアナウンスがあり、照明落ちて整列入場します。 通常配置で、弦楽器の編成が 6-5-3-5-2 でしょうか。 これに2管の管楽器編成が加わっていて、しかもステージ奥にはピアノも置いてあるので鮨詰め状態です。 チューニングを行い、詰襟の服を着た指揮者の辻さんが登場。 いよいよ始まります。

歌劇の創始者グルックの「アウリスのイフィゲニア」序曲、いささか緊張されているせいか几帳面に感じた部分もありましたけど堂々と歩みを進め、低弦の響く重厚な音楽として曲を纏めました。

ゆったりとした開始。 ちょっと手探りかなって感じもしましたけど、深い響きのヴィオラが入って落着きました。 重い響きを芯にして重厚な音楽になります。 ホールが小さいこともあるでしょうね、金管は抑え気味ですけど、ホールが小さいのでよく透ってきます。 直接音が多く聴こえてくる感じかな。 それをすっと抑えて軽やかなヴァイオリンを主体にした弦楽合奏。 これらが交互に繰り返されてゆきます。 でも、ヴァイオリンの合奏が不安定な感じも受けるのですけどね、ヴィオラが安定していて下支えをしっかりしています。 辻さんが丁寧に音を紡ぎながら曲を進め、堂々とした音楽へとしてゆきます。 最後は、低弦の響く重厚な音楽となり、堂々とした歩みを進めて曲を纏めて締めました。

団員の方が自ら席を寄せ、ピアノの通路を作って準備をします。 手作りの演奏会って感じがいいですね。 ピアノが真中にくると、管楽器がほとんど見えなくなり、鮨詰めが余計にひどくなったみたいですけど、これで準備完了。 まだあどけさなさの残る辻琢音くんが出てきて始まります。

モーツァルトのピアノ協奏曲第20番。 熱い演奏でした。 辻琢音くんのピアノ、いやぁ〜お世辞抜きで巧いですねぇ。 ミスらしいミスもなく、なんていうのは当たり前。 明晰な打鍵から、端正でかつ熱く語りかけ、聞かせるピアノです。 これに加齢からくる深みを伴えばもっと感じ入ることの出来た素晴らしい演奏になったでしょう。 また父親の指揮によるバックの演奏も熱いサポートぶり。 親子でモーツァルトに真っ向勝負、そんな感じもするほどで、リズムにのって畳み掛けたフィナーレなどかなり熱い演奏、終始ソロとバックが一体となって曲を纏めました。

第1楽章、じっくりとした出だしから徐々に気力が漲ってきた序奏。 覇気のある演奏で始まりました。 そこにピアノが明晰な響きで入ります。 少々緊張もあると思いますけど、そんな感じは微塵も受けず堂々と弾きこなしてゆきます。 中学生ですからね、少々生真面目な感じも受けますけども、じつにしっかりとした演奏です。 オケも力をこめたサポートぶりで演奏を盛り立てます。 徐々にノってきたのでしょう。 煌くような感じや、踏み込みも見事に決めたピアノの響き、聴かせます。 ペダル操作も余計なことはしていないようで、真っ向勝負って感じがします。 オケもまた熱くなり、ぐっと力を込めた響きで纏めてカデンツァに突入。 ベートーヴェンのお馴染みのカデンツァを端正に弾き始めます。 左手に気合をこめながら徐々に熱く演奏してカデンツァを纏めますと、オケもさらに熱く入ってきて楽章を盛り上げたあと、ふわっと着地しました。

第2楽章、端正で明晰な感じのピアノによる開始。 オケも明るく暖かなサポートぶり。 確かに、ここはふっと力を抜くように、とか、このフレーズの最後を歌わせて、なんて思ったりもしますけどね、以前に会員になっていた某プロオケでよく聴いていた音大出身者による協奏曲の夕べなどのソリストと比較しても遜色ないどころか、余程しっかりした演奏です。 これで中学生ですものね。 曲が短調になると、タッチも強くなってより端正になります。 オケもストイックになって、音をスパスパっと切って進めてゆきました。 ホルンの響きが被ってきたのが印象的でした。 そして曲調を元にもどし、やや淡々とした感じながら、指揮者がソリストを見て、息を合わせてこの楽章を閉じました。

第3楽章、ピアノソロによる開始ですけど、ほんの少し気負いもあったかしら。 でも強い音楽がサポートされて音楽は進みます。 ピアノとオケが一体になり、要所を的確に決めて進んでゆきます。 ただし少々疲れも見えてきたのかな、今まであった踏み込みやキレの良さが少々影を潜め、淡々と進めているような感じも覚えます。 でもオケが低弦にリズムを乗せて熱くサポート。 カデンツァ、ここもやや型どおりな感じでしたけど力を徐々に増し、最後は力を頼みにして演じきった感じ。 気合入ってますね。 オケもまたスピードをぐいぐいと上げ、ピアノもそれに応えて、リズムにのって畳み掛けたフィナーレ。 全曲を閉じました。

さすがに演奏終了後、疲れたぁ〜っていう表情があどけない顔にも出ていましたね。 色々と書きましたけど、これに加齢からくる深みを伴えばもっと感じ入ることが出来る素晴らしい演奏になると確信しました。 とにかく熱いモーツァルトでした。 真っ向勝負の潔い演奏に熱い拍手を贈りました。

アンコールは、バッハのプレリュード。 いいですね。 モーツァルトは少々背伸びという感じもしましたけど、こちらは手中に収めているという感じがしました。 将来が楽しみです。

15分間の休憩、オケの方がされているピアノの片付けや次の演奏の準備を眺めていましたけど、しばらくしてトイレに行って戻ってきました。 トイレから遠く若草山も望め、いい景色なのでここでちょっと一息ついてました。
さて定刻、後半のプログラムは弦楽合奏のみ。 オケの編成は、5-4-3-5-2 。 これにヴァイオリン2本とチェロの独奏が付きます。 そういえばチェロ独奏の竹内さん、自ら率先して後片付けと準備をされてましたね。

ヴィヴァルディの合奏協奏曲ニ短調、アンサンブルの精度は前半とは比べ物にならないほどしっかりとしたものでした。 ソリストも端正できちっと纏めながらも、合奏と一体となって想いがよく伝わってくる演奏でした。

第1楽章、2本のヴァイオリンによる深い響き合いに惹き付けられます。 チェロ2本に引き継がれたあと、辻さんのハナ息からオケの柔らかく透明感のあるアンサンブル。 これまでの精度とはちょっと違いますね。 充実しています。 そしてチェロとコントラバスのしっかりした響きを芯に、ヴィオラの響きが重なり、第2ヴァイオリン、そして第1ヴァイオリンと響き重ねてゆきました。 しかも凛としたヴァイオリンの響きには温もりも感じます。 充実した音楽を楽しみました。

第2楽章、ゆったりと大きく呼吸する開始。 中低弦が締まっています。 2本のヴァイオリンのソロ、端正ながらも濡れたような響きの1stヴァイオリン、しっかりと支える2ndヴァイオリンの響きが心に沁みます。 辻さん、背を屈めるようにしながら、丁寧に慈しむように音楽を紡いでゆくリード。 すっとその背を伸ばして中低弦に指示を与え、音楽の流れをかえて快活にしてこの楽章を締めました。

第3楽章、2本のヴァイオリンのソロに、チェロも加わります。 チェロの端正で深い響きがいいですね。 するとヴァイオリンのソロも歌い出してきて充実したアンサンブルを展開。 指揮者の辻さんも力を込めます。 気持ちの素晴らしくよくのったアンサンブルで曲を進めたあと、辻さんが右手を大きくまわして熱気の篭もった演奏を幕としました。 最後はかなり熱い演奏でした。

奏者の方がまた自ら後片付けをして、最後の曲に望みます。 ヴァイオリン独奏されたお二人は2ndヴァイオリンのトップとトップサイドに。 ここのトップにしていらした方が1stヴァイオリンの後ろのプルトに移動。 あとで気付いたのですけど、このとき2ndヴァイオリンの奏者の方がお一人、ヴィオラにシフトしていたようです。 これで 6-4-4-6-2 という編成になりました。

レスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲。 アンサンブルはさらに洗練されて伸びやかさも加わりました。 響きの綾が織り成す熱い合奏。 しっとりとしながらも想いを乗せて歌うパートが交互に現れては有機的に絡んだ第2曲宮廷のアリア。 そして第4曲パッサカリアでは熱気の篭った演奏として幕としました。

第1曲イタリアーナ、爽やかなヴァイオリンの響き、瑞々しいチェロのピチカートが素敵な開始。 チェロを6名にした威力が発揮されていました。 今度はヴィオラのピチカートがしっとり。 柔らかな弦の響きが重なり合って素敵です。 辻さんも気持ちを乗せてリードしますと、メンバーもそれに合わせて会場内に素敵な時間が流れてゆきました。 そしてエンディング、ここちょっと乱れたみたいですね。 先ほどソリストをされていた堀江さんがアチャ〜てな感じで顔をしかめてらっしゃいました。 でも、よかったですよ。 don't mind

第2曲宮廷のアリア、辻さんがヴィオラとチェロのほうを向いて振り始めると深い響きが流れます。 想いの深さを感じさせるような響きです。 これにヴァイオリンが加わってしっとりとさせます。 ゆったりと曲を進め、冒頭の旋律に戻したあと、明るく軽やかな音楽に。 低弦を芯にした充実したアンサンブルを展開します。 ここでもチェロが6本あるのが有効なのでしょうね。 さて、辻さんのハナ息を合図にピチカート。 ここもよく揃っています。 そして今度は軽くジャンプすると熱いヴァイオリンの響きが出てきました。 これが2ndヴァイオリンとヴィオラ、チェロとコントラバスに引き継がれ。色々な旋律が現れては消えてゆきます。 とにかく気持ちを見事に乗せたアンサンブルが素敵です。 辻さん、音楽を凝縮させるように展開させて、最後は冒頭の主題を深いヴィオラの響きで戻して終わりました。 とても素晴らしい楽章でした。

第3曲シチリアーナ、やわらかな弦楽アンサンブル。 コントラバスのピチカートが決まっています。 要所を締めながらもしっとりとした演奏で変奏をくり広げます。 深い響きのヴィオラが印象的でした。 音楽がしだいに強くなり、チェロが力を込めて熱い音楽にとしたあと、最後はそっと締めました。

第4曲パッサカリア、辻さんのハナ息を合図にヴァイオリンから主題を搾りだします。 今度はヴィオラの響きを絞りだし、またもやハナ息とともにチェロのピチカートのあと全合奏。 そして今度はチェロ、そしてまた全合奏へと熱く力の篭った演奏を展開してゆきます。 ここも想いを乗せて歌う熱い変奏、しだいに複雑になる音楽です。 辻さんは最後の力を込め、フレーズを引っ張っるようにしてテンポを落として主題を戻し全曲を結びました。

この熱い終結に大きな拍手が客席から沸き起こりました。 指揮者に促されて立った皆さん、なかでも菅納さんやその隣の堀江さんなど目をしばたかせていたのは、演奏会をやり終えた歓びだったのでしょうね。 清々しい演奏会でした。