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尼崎市民交響楽団 第20回記念定期演奏会

気迫のこもった幻想交響曲戻る


尼崎市民交響楽団 第20回記念定期演奏会
2005年9月19日(祝・月) 14:00 尼崎アルカイックホール

ロッシーニ: 「セビリアの理髪師」序曲
シューベルト: 交響曲第8番ロ短調「未完成」D759
ベルリオーズ: 幻想交響曲Op14

(アンコール):マスカーニ: 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

指揮: 辻 敏治


音楽を楽しんでいることがストレートに分かる気持ちのすっきりした演奏会でした。
初めて聴くオーケストラなのですけど、どこか懐かしい感じのする演奏なのは、指揮者の辻敏治さんだからでしょうか。 
いきなり脱線しますが、辻さんご自身のホームページには、1970年に大阪音大を卒業、在学中より福村芳一さんの助言を受け、卒業後は渡邊曉雄さん、山田一雄さんの門下になるとの記載がありました。 懐かしいお名前ですね。 福村さんも山田さんも京響時代に生で聴かせていただいたこと、当時まだ中学生でしたけど、今でも心に残っています。
とにかく始めて聴かせていただいた尼響。 緻密な響きをストイックに追求するというよりも、アンサンブルを楽しむ団体という感じでしょうか。 枚方フィルに似ているような気もしました。
それはともかく、暖かな感じのする響きが特徴的だったロッシーニの「セヴィリアの理髪師」序曲。 ちょっとバランス的にはどうかな、なんて思えた面もありましたけど、ストレートな演奏には好感が持てました。
シューベルトの未完成交響曲は、ゆったりとしたテンポから沸きあがってくるようなアンサンブルの力を感じた演奏でした。 柔らかでまろやかな響きが特徴的で、自然に盛り上がり、そしてすぅ〜と退いてゆくような感じ。 第2楽章も暖かな響きが実に魅力的に響いていましたね。 オーソドックスにオーケストラをたっぷりと鳴らした演奏を楽しみました。
そしてベルリオーズの幻想交響曲、気迫の篭った演奏に感動しました。 この演奏の大きな特徴は弦楽アンサンブルが安定していたことでしょうか。 全体をしっかりと支えていましたね。 辻さんも、これまでと同じように慌てず騒がず、オケ本来の力が存分に出せるところを狙ってゆっくりと盛り立ててゆく感じ。 木管楽器はしっとりと歌い、金管や打楽器も呼吸を大きくとって、うねるような堂々たる演奏でした。 全員一丸となった演奏は、第20回の記念演奏会にふさわしい感動的な演奏でした。
なお、お客さんには小さなお子さん連れも多く、演奏途中に出入りもあったし、楽章毎には必ず拍手もあったのですけどね。 演奏終了後には、凄かったね、よかったね、との声があちこちから聞こえてきて、みんなに愛されているオーケストラなんだな、ということがよく分かりました。 暖かい気持ちになって会場を後にできたとても気持ちのいい演奏会でした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

前日は長岡天神、そして今日は尼崎と演奏会2連チャンで少々疲れ気味。 しかも午前2時半に目覚めました(なお前夜寝たのが9時半、疲れたので早く床についたのですけど、早く目覚めてしまいました)。 家を出る前に15分くらいかな、うたた寝したので体調が戻ったみたいです。 12時過ぎに自宅を出ました。

昨日と同じく梅田に出てから、今日は阪神電車(昨日は阪急電車)。 梅田駅で甲子園に行く大勢の人たちを掻き分けるようにして尼崎に向います。 昨日は小旅行の気分でしたけど、今日は通勤に近い雰囲気がありますね。 
開場10分位前に尼崎駅到着。 まだちょっと早いので、途中にあるアマゴッタ(ama gotta)の100円ショップを覗いたら、探していたガラスコップを発見しました。 トルコ製の強化ガラスで出来ているグラスなんですけど、ちょうど1個だけ売れ残ってました。 これはラッキーでした。

これで気持ちも良くしてアルカイックに到着。 ホール2階席に直行します。 中央通路後ろ、右側の二人席 6-37,38 を確保。 ここも足もとがちょっと広いのですね。 2階最前列はもっと足もとが広くていいんですけど、このあたりでのんびりと聴きたい気分でした(でも、演奏中には結構人通りがあったので落ち着かない場面もありましたけど)。 とにかく、パンフレットを読んで開演を待ちます。 

ついでにこのパンフレット。 第20回記念とのことでちょっと豪華な体裁にしているようです。 また市長さんや教育長さんの祝辞も掲載され、市民による市民のためのオケ、といった感じを受けますね。 実際、入場されるお客さんも友人連れ、家族連れ、小さなお子さん連れも多く、楽しみに来られているような感じです。 それに通常は挟み込まれている他のオケのチラシもまったくありませんでした。

予鈴のブザーが鳴り、アナウンスのあと、左右から整列入場し始めると照明が落ちます。 弦楽器の編成は 12-10-8-6-4 の通常配置。 チューニングを終え、辻さんがオケの中を掻き分けるように登場されて始まります。

ロッシーニの「セヴィリアの理髪師」序曲。 初めて聴くオーケストラなのですけど、どこか懐かしい感じのする演奏でした。 緻密な響きをストイックに追求するというよりも、アンサンブルを楽しむ団体という感じでしょうか。 ちょっとバランス的にはどうかな、なんて思えた面もありましたけど、ストレートな演奏には好感が持てました。

弾力を感じる出だし、丁寧に演奏してからまた強い響きを放ちます。 ここでの打楽器の音がストレートに届いてきて、少々吃驚。 このあとオーボエが可憐に吹き、弦楽アンサンブルも柔らかい響きで曲を進めます。 暖かな感じのするアンサンブルが、どこか懐かしい感じです。 少々悪く言うならば、要所をきちっと締めているけど、なんとなく緩んだ感じ・・・かな、でも気力がよく感じられた演奏でした。 悪い感じはしないどころか、逆に気持ちが暖かくなってくる感じがします。 各楽器のソロがハッキリと感じられるように進み、最後もオケをストレートに盛り上げて全体を閉じました。 小細工せずに演奏したって感じのストレートな演奏に好感が持てました。

管楽器メンバーがシフトし、弦楽器が増強されて 14-14-10-8-6 の編成になったようです(数え間違いがあるかもしれません)。 辻さんが登場して始まります。

シューベルトの未完成交響曲、ゆったりとしたテンポから沸きあがってくるようなアンサンブルの力を感じた演奏でした。 柔らかでまろやかな響きが特徴的で、自然に盛り上がり、そしてすぅ〜と退いてゆくような感じ。 第2楽章も暖かな響きが実に魅力的に響いていましたね。 オーソドックスにオーケストラをたっぷりと鳴らした演奏を楽しみました。 好きですね、このような演奏。

第1楽章、辻さんがチェロの方を向いて振り始めますと、柔らかで重量感のある響きが流れ出しました。 オーボエの響きも真摯、充実した開始でした。 ホルンがまろやかに吹き、チェロの旋律も優しく、ヴァイオリンが柔らかな響きで進めたのを、タイトに纏めます。 ここ、オケ全体から湧き上がってくるような響きが特徴的。 ストイックに纏めて対比を強調するのではないですね。 厳しく纏めても、どこか優しさを感じるのです。 辻さん、オケから自然な響きを紡ぎだしているようです。 トロンボーンが入って力が漲り、弦楽器も弓をいっぱいに使って伸びやかに盛り上げます。 音楽のスケールを一段と大きくしたみたい。 だから懐かしい感じがするのかな、なんて思って聴いていると、力を込め、大きく歌わせたあと、弾力を持ってスケールのある終結となりました。

第2楽章、コントラバスのピチカート、ホルンの響きに続いて柔らかなヴァイオリンのアンサンブル。 爽やかな開始です。 この音楽を大きくして力強く進むのですけど、余裕を感じさせる曲の運び。 落ち着いて曲を進めてゆきます。 クラリネットのソロが危うく外しかけましたけどきっちり修正、オーボエが甘い響きで歌うとフルートが柔らかく絡みます。 そしてまた力強い全奏となって、ティムパニがタイトに打って盛り上げます。 ここでも辻さんは自然体。 音楽を丁寧に紡ぐように進めます。 ホルンが少々外れたみたいですけど気力でカバーし問題なし。 主題を戻し、また冒頭の柔らかで爽やかなアンサンブルを聴かせます。 この暖かさを感じる演奏がとても魅力的です。 オケをたっぷりと鳴らした実にオーソドックスな演奏ですね。 安心して聴いていられるのは、自分が古いタイプの人間だからでしょうかね。 それはともかく聴き応えのある演奏を楽しみました。 最後はゆっくりと音楽を大きくしたあと、すっと退いて着地。 じわじわっと感動が押し寄せてきた演奏でした。

15分間の休憩。 座席に座ったままパンフレットを読みながら開演を待ちます。 演奏中にも続々と人が入ってきたので、2階席も7割位の人が入っているでしょうか。
定刻になり、ブザーそしてアナウンスのあと、照明が落ちるとともに団員の方が整列入場。 打楽器メンバーよりステージの奥から詰めるように並んでゆきます。 弦楽器は、パンフレットに書かれたとおり 15-14-12-11-8 の編成のようです。
入念なチューニングのあと、辻さんが出てこられ、いよいよ始まります。

ベルリオーズの幻想交響曲、気迫の篭った演奏に感動しました。 この演奏の大きな特徴は弦楽アンサンブルが安定していたことでしょうか。 全体をしっかりと支えていましたね。 辻さんも、これまでと同じように慌てず騒がず、オケ本来の力が存分に出せるところを狙ってゆっくりと盛り立ててゆく感じ。 木管楽器はしっとりと歌い、金管や打楽器も呼吸を大きくとって、うねるような堂々たる演奏でした。 全員一丸となった演奏は、第20回の記念演奏会にふさわしい感動的な演奏でした。

第1楽章、辻さんがゆっくりと振ると、木管が凛として響き、弦楽アンサンブルが爽やかですが重みを感じさせる響きで曲を開始。 充実した音楽です。 集中力を持って、曲をゆっくりと進めてゆきます。 低弦の響きは重く、ヴァイオリンの旋律が走りますが、大きく呼吸させるような感じで進めてゆきます。 上から見下ろしているで分かるのですけど、弦楽器の分奏もよく纏まっていますね。 徐々に緊張感の高まる音楽、底力を感じさせますけど、変に際立たせたり、ハタッリをかますような目立たせ方をせず、実にオーソドックスです。 これも良い言い方ではないですが、纏めて数で勝負みたいな感じかもしれません。 でもいいですよね、オーソドックスで安心できます。 辻さんはオケのことをよく考えていらっしゃるのでしょうね、ややテンポを落とし、ゆっくりと丁寧になぞるように進めます。 さて、オーボエが可憐に吹いて、緊張感を高めてゆきます。 ストレートに盛り上げ、ティムパニの重い打音とともに登り詰めます。 一転、木管の優しい響きを挿入し、そしてまた盛り上り。 ここのティムパニはタイトに決めました。 安定感があります。 再びすっと退いて、じっくりと進めたあと静かにこの楽章を終えました。

第2楽章、重心の低いオケの響き、ハープが明るさを垣間見せながらゆっくりと進む素敵な音楽です。 ここの弦楽アンサンブルもよかったですね。 すっきりと甘いヴァイオリンの響きに落着いた低弦。 それにヴィオラや2ndヴァイオリンなどの中音弦が何より安定感あります。 アンサンブルの芯になっています。 ここに甘いフルートやクラリネット、柔らかく吹いて、ハープが綺麗な響きを聴かせて優雅です。 ここでもゆっくりと音楽を進めた舞踏会の音楽でした。 最後は全員で音楽を大きくし、まあるく纏めて着地しました。

第3楽章、何よりコールアングレのまろやかな響きが素適でした。 バンダのオーボエも長閑な感じがよく出ていて、しっかりと見事に絡みます。 さらにヴィオラのトレモロが柔らかく伴けている充実した開始に、ヴァイオリンがふわっと入ってきました。 実にゆっくりと曲を進め、徐々に音楽を大きくしてゆきます。 ピチカートも弾力あって、各パートが会話するように進めた見事なアンサンブル。 チェロとヴィオラが力を持って現れます。 コントラバスも重く響くピチカート。 よく締まった響きの低弦、やわらかな木管が絡みながら緊張感を増し、タイトに打つティムパニのロールで頂点を築いたのもすっと退きます。 余裕を感じさせる音楽には、小細工やハッタリのようなものは感じません。 真摯に曲を進めているといった感じ。 コールアングレが冒頭の旋律を聴かせ、弦の重厚な響きが寄り添うようにして、そっと終わりました。

第4楽章、重い響きによる開始、弾力ある重いティムパニの打音でよく締まった開始。 重いファゴットの響きがリアルに響いてきました。 ここまで気合の入ったファゴットの響きを聴いたのはそうないですね。 金管ファンファーレは甘く輝くよう。 まろやかな感じですけど、底力があって落着いています。 辻さん、両手を上下に大きく振ってゆっくりとなぞるように進めてゆきます。 大太鼓の迫力ある響きがホールに充満しますけど、ここもテンポを速めないで雄大なファンファーレ、ティムパニも3人で大きく打って楽章を閉じました。

第5楽章、アタッカで入って欲しかったけれど、終楽章への息を整えるための休憩でしょう。 緻密な響きによるヴァイオリンのトレモロ、鋼のような低弦の響きを絡めて不気味さを出した開始。 音楽を大きく呼吸させながら、低弦の響きが沸きあがってくるようですね。 クラリネットがリズミカルに吹きます。 力を漲らせて迫力を導き出しました。 この後の木管アンサンブルは少々明るく上滑り気味に感じたのは、やや気合先行といった感じでしょうか。 でも重心の低い気迫こもったアンサンブルに引き継いでゆっくりと盛り上がりますと、鐘が印象的に響き渡ります。 実によく透った響きでカッコ良かったですね。 ファゴットとチューバによる「怒りの日」は重厚に響き渡り、ここもゆっくりと歩みます。 トロンボーンとホルンのファンファーレはやや控えめだったかしら。 鐘がまた印象的に響き、大きな呼吸でもってオケが進みます。 低弦が右から、高音弦が左からのステレオサウンド。 大太鼓が地響きのように聞こえて効果満点。 弦楽器は力強く弓を押し当てるようにして弾いているようです。 ファンファーレも迫力を持たせつつゆっくりと吹き、ティムパニ奏者2人が同じように左右に動きながらリズミカルに打って最後のクライマックスを形成。 シンバルの響きがホールに響き渡って全曲を閉じました。 迫力があり、堂々とした音楽で、じつに感動的な幕切れでした。

楽章毎には必ず拍手もありましたけど、演奏終了後には、凄かったね、よかったね、との声もあちらこちらから聞こえてきました。 大きな拍手に包まれ、みんなに愛されているオーケストラなんだな、ということがとてもよく分かった気持ちのいい演奏会でした。
少々疲れ気味だったことも忘れ、暖かな気持ちになって会場を後にしました。 皆さんお疲れさまでした。