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奈良女子大学管弦楽団 第36回定期演奏会

構成感のある素晴らしい演奏戻る


奈良女子大学管弦楽団 第36回定期演奏会
2005年11月27日(日) 13:30  奈良県文化会館・国際ホール

ドヴォルザーク: スラブ舞曲から
         第1集第1番、第1集第2番、第2集第3番、第1集第8番
チャイコフスキー: 交響曲第6番『悲愴』ロ単調op.74

(アンコール)チャイコフスキー: 「眠りの森の美女」よりワルツ

指揮: 牧村邦彦


いつもながら、このオケの飛躍振りには目を見張るものがあります。 今回もいい演奏会でした。
会場は奈良県文化会館国際ホール、このところ2階席への立ち入りが禁止されていましたけど、今回は開放。 それだけお客さんが入っているということで、関係者ではありませんが、嬉しい限りです。 
そして開演前から、オケメンバーの方が自由入場。 各自演奏開始前に練習してやる気満々・・・ってな感じ。 確かにその気合は、ドヴォルザークのスラヴ舞曲集に篭ってました。 
この舞曲集より4曲が演奏されましたが、いずれも遅いテンポながら充実した演奏でした。 言い方は悪いですが、噛んで含めるような感じもするのですけどね、堂々としていて立派。 言うならば、ドイツ風の演奏でした。
よくよく考えれば牧村さん、オトマール・スウィトナーさんに師事されていました。 スィトナーさんの録音でこの曲を聴いたことはありませんが(ドヴォルザークの交響曲全集は持っています)、スィトナーさんが指揮されたらこんな感じになると思えるほど、構成感があり、かつ熱い演奏でした。 とても満足しました。
休憩を挟んでチャイコフスキーの悲愴交響曲。 こちらも構成感のしっかりとした見事な演奏でした。 初めてこのオケを聴いたのは2000年のスプコンだったかしら、このような演奏が聴けるとは夢にも思いませでした(というと失礼かな)。 
だからこそ、あえて言わせてもらうならば、個人的な好みで申し訳ありませんが、第3楽章と終楽章の間の落差がもっと欲しかったなぁと。 第3楽章はパワーを前面に出し、巧く纏めているような感じでしたけど、もっと渦巻くような感じが欲しかったですし、終楽章はもっと陰鬱でうごめくような感じに対比つけて欲しかった。
でもこれはオケよりも牧村さんのせいかもしれませんね。 1〜3楽章まではかなり抑え目の指揮でしたけれど、第4楽章は逆にそれまでと違って大きく振って指揮台の上を動きまわっておられましたものね。 第3楽章の熱気をそのまま終楽章に雪崩れ込ませてしまったからかもしれません。
しかしそんな好みは置いておいても、本当に各パートがよく纏まってました。 それは見事な演奏でした(だからこそ、こんな要求も言えるのだと思います)。 演奏会はとても充実していましたし、好みは好みとして、演奏を楽ませていただき、満足して会場を後にできました。 皆さん、お疲れさまでした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

何故か奈良の演奏会は13時半始まりが多いみたい。 最寄駅からだと30分かからない計算で行けるはずなんですけどねぇ、でも13時前は乗り継ぎが悪く、12時50分の電車に乗らないと余裕がありません。 それに大和西大寺、いつも停止信号で遅れるので、ちょっとイライラしてみたり。 今回もそれでちょっと遅れ、開演15分前にホールに到着しました。 もっと余裕あったはずなんですけど。

さて、いつも閑散としているイメージなんですけど(失礼)、開演15分前なのに入口に行列がまだ出来ていて、少々吃驚。 しかもホールに入ったら、2階席が開放されています。 このところ集客が悪かったせいか、2階席の閉鎖が続いていましたけど、2階席が定位置ですからね。 これは有り難い。 さっそく階段を駆け上り、最前列 AA-33 を確保して落着きました。 1階席はすでに7割は入っているようです(最終的には8割は入っていたかも)。 よく入ってますね。

開演を告げるアナウンスの前からメンバーが続々と出てこられて練習開始。 自由入場ってやつです。 しかも練習に熱が入ってきて、開演を告げるアナウンスが始まっても聞き取り難い。 いいですよ、やる気を感じます。 メンバー表を見ると、弦楽器の編成が 12-12-10-8-6 の通常配置。 コントラバスには西出さんのお名前もありました。
ステージが暗転してようやく静かになりました。 コンミス登場、チューニングを終えて準備完了です。 しばし静寂のあと、落ち着き払った牧村さん、余裕の笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩いて登場。 始まります。

ドヴォルザークのスラヴ舞曲より4曲が演奏されましたが、いずれも遅いテンポながら充実した演奏でした。 言い方は悪いですが、噛んで含めるような感じもするのですけどね、堂々としていて立派。 言うならば、ドイツ風の演奏でした。 
よくよく考えれば牧村さん、オトマール・スィトナーさんに師事されていました。 スィトナーさんの録音でこの曲を聴いたことはありませんが(ドヴォルザークの交響曲全集は持っています)、スィトナーさんが指揮されたらこんな感じになると思えるほど、構成感があり、かつ熱い演奏でした。 とても満足しました。

第1集第1番、強靭な響きによる開始に少々驚きました。 よく締まった響きで力強い。 底光りするような感じで、これまでの奈良女オケにはちょっと感じられなかった音色ではないでしょうか。 牧村さん、ゆったりと拍を刻み、音楽を進めてゆきます。 重厚なドイツ風の音楽ですね。 ちょっとくどい感じもしますけど、引きずることなく、悠然と進んでゆくのは爽快でもあります。 牧村さん、ほとんど棒を縦に振っていますね。 これで集中力を高め、力を込めているのでしょう。 最後は腕を大きく回し、締め上げるようにした終結でした。 これもタイトでカッコ良かったですね。

第1集第2番、今度はゆっくりと腕を回した開始ですが、テンポはやはり遅め。 柔らかなコントラバスのピチカートとチェロのピチカートが交互に響きます。 スピードを上げ、金管の咆哮。 トロンボーンがよく締まってました。 要所をバシッ、バシッと決めながらも、ゆったりと大きく構えてますね。 力が漲って金管をバリバリと鳴し、木管も熱く歌います。 オーボエがエキゾティック、フルートが柔らかく吹いたあと、じっくりと進めてから止めました。

第2集第3番、牧村さんがヴァイオリンの方を向いて振り、旋律を引き出したあとしばし胸の前で手を止めます。 音楽の流れる方向を見定めてからまた振り出し、熱い想いを込めているようでした。 じっくりと音楽を流しつつ、軽快な部分でも決して飛ばさず、構成感を崩さない。 しかも時に熱い想いを込めて強く振る・・・オトマール・スィトナーさんの指揮ってこんなのではなかったかな、なんて思いつつ聴いていました。 低弦がベースになり、主題を奏でるチェロ、素朴だけれども締まりのある響きです。 ヴィオラもしみじみと聞かせ、ヴァイオリンに旋律を戻して音楽を熟成させるようにして止めました。

第1集第8番、これも締まって力強い響きで開始。 流すところはオケの自主性に任せてた自然な感じにしているみたい。 要所もやや力を抜き加減だったかな。 先日の橿原交響楽団のアンコールでは、本プロとは正反対に自在にオケを操った感じでの演奏を楽しみましたが、奈良女オケではまろやかに仕上げているって感じですね。 オーボエのソロが素朴な感じで良かったなぁ(顔を真っ赤にしての熱演でした)。 牧村さん、ゆったりと振って進め、ティムパニや大太鼓が重い響きで力を入れますが、しっかりとした構成感は相変わらず。 響き全体に弾力を感じますね。 最後はヴァイオリンに力を入れ、木管アンサンブルが絶妙な響きを聞かせて、ここのフルートも見事でした。 力の篭った演奏で、最後を締めました。

演奏会の最初にスラヴ舞曲集を演奏するなんて準備運動、小手調べ、そんな感じもしますけれど、なかなかどうして、どの曲もとても充実した立派な演奏に大いに満足しました。 牧村さんのドイツ風の解釈、それを見事に演奏したオケに熱い拍手を贈りました。

15分間の休憩。 ステージの準備が整うやいなや木管メンバーが出てきて練習を始めます。 すると続々と他のパートの方も出てこられて練習開始。 ホントやる気満々ですね。 今度は、12-12-10-8-5 の編成。 トランペットの1stアシに大阪シンフォニカーの徳田さんがいらっしゃいました。 延々と練習が続き、なかなか始まらないなぁ〜 と思った頃、ようやく暗転。 始まります。

休憩を挟んでチャイコフスキーの悲愴交響曲。 こちらも構成感のしっかりとした見事な演奏でした。 初めてこのオケを聴いたのは2000年のスプコンだったかしら、このような演奏が聴けるとは夢にも思いませでした(というと失礼かな)。

だからこそ、あえて言わせてもらうならば、個人的な好みで申し訳ありませんが、第3楽章と終楽章の間の落差がもっと欲しかったなぁと。 第3楽章はパワーを前面に出し、巧く纏めているような感じでしたけど、もっと渦巻くような感じが欲しかったですし、終楽章はもっと陰鬱でうごめくような感じに対比つけて欲しかった。
でもこれはオケよりも牧村さんのせいかもしれませんね。 1〜3楽章まではかなり抑え目の指揮でしたけれど、第4楽章は逆にそれまでと違って大きく振って指揮台の上を動きまわっておられましたものね。 第3楽章の熱気をそのまま終楽章に雪崩れ込ませてしまったからかもしれません。
しかしそんな好みは置いておいても、本当に各パートがよく纏まってました。 それは見事な演奏でした(だからこそ、こんな要求も言えるのだと思います)。 好みは好みとして、演奏を楽ませていただきました。

第1楽章、正面を向いたまま上体を右に捻るようにして振り始めました。 ファゴットのうごめくような響き、ヴィオラがじ〜んとくる響きを奏でて上々の開始。 弦楽器の分奏がよく纏まってますね。 管楽器がほんの少々バラつき加減でしたけど、これも勢いがついてきて充実。 金管の咆哮はタイトに決めました。 牧村さんが大きく振って、のびやかな音楽に。 木管アンサンブルが充実してますね(ファゴットの方、真っ赤な顔して吹いてらして気合入ってます)。 ティムパニの軽いロール(いいですね)、クラリネットが柔らかな響きを聞かせたあと緊張が漲る転換も見事。 よく締まっていて、ヴァイオリンがザッザッと力入ってます。 管楽器との呼応も決まっていますよ。 牧村さん、オケを走らせ、力も要求しますけど、オケもそれに見事に応えてます。 集中力の高さ、音量も申し分ありません。 本当に成長しましたねぇ。 終結部では弾力あるピチカートにのせ、じっくりと進めてから、すっと着地。

第2楽章、チェロのほうを向いてふわっと振ると柔らかな響きが出てきました。 木管アンサンブルがここでも好調。 弦合奏も優しくワルツを刻んでゆきます。 ヴァイオリンが爽やかですし、ホルンも柔らかな響きを聞かせてくれます。 活気づいてきても、じっくりと進め、熱いながらも柔らかさを決して失いません。 素晴らしいですね。 牧村さん、ふわふわっ〜と振っていますけど、構成感をきちんと保って曲を進めます。 オケも各パート毎によく纏まってます。 終結部は、木管と金管が柔らかな響きで絡んだあと主題を戻しますが、牧村さん、ここは右手を小刻みに振って集中力を高めてから、柔らかなピチカートで纏めました。

第3楽章、小さく振りはじめ徐々に音量を上げてゆきます。 リズム感の良い中低弦のピチカートに乗せ、色々な楽器が加わって力を増していった感じ。 牧村さん、小さく縦に振って進めます。 大太鼓がタイトに決め、主題をクラリネットが熱く吹きます。 よく締まった弦アンサンブルと管楽器が呼応しながら、リズム感よく行進。 トランペットが明るく響きかせますが、ぎゅっと締まった音楽のまま。 牧村さん、ほとんど立ち位置を変えず、右手で指示を出す程度。  ようやく左手でヴァイオリンに力を込め、金管が華やかに鳴り響きますが、淡々と曲を進めてゆきました。 シンバルがタイトに鳴り渡り、ようやく大きく振って勢いをつけますが、落ち着いてますね。 よく纏まったオケ・サウンド。 皆さんしっかりと自分の持ち場で鳴らし、吹き、叩いて響きを前面に出して盛り上げます。 このあたり、各フレーズをもっとクレッシェンドさせて渦巻くようなのが好みなんですけどねぇ、そこは皆さん若者ですから、エネルギーをストレートに高揚させて、タイトに締めて着地。
静寂が拡がりました、この緊張感、たまりませんね。

第4楽章、ふわっとした弦の和音が歌い出します。 牧村さん、これまでと違って指揮台の上で踊るよう。 感情を込めて盛り上げます。 オケもそれに反応し、ファゴットがいい感じに入ってきます。 弦とともにファゴットも熱くなりました。 ホルンが柔らかく吹いて、弦合奏に憂いを込めていますが、どことなく明るい雰囲気。 これは牧村さんの個性かしら。 とことん暗く陰鬱な曲というイメージなんですけどねぇ、オケの皆さんも若いし一所懸命。 これがびんびん伝わってくるので不満はありません。 個人的には前楽章の高揚感との落差がもっと欲しかったんですが、それは置いといて・・・ティムパニが力強く打ち、金管が入ってぐっと盛り上げたのをスパッと止めます。 ぐっとこらえた牧村さん、うめき声のような声とともに熱く振り、そしてまた止める渾身の指揮。 気迫の演奏が展開してゆきます。 そしてまたクライマックスを熱く形成。 このあたりも個人的には渦巻くようなのが好みなんですが、エネルギーがまっすぐに放出されるみたいな感じ。 牧村さんももっと表情をつけるようにと振ってらっしゃいましたけど、一度ついた勢いは止められなかったのかもしれませんね。 前楽章から引き続いて熱い演奏ですが、徐々に楽器の数が絞られ、弦合奏、そしてコントラバスに集約されたのち、ややあっさりと全曲を締めました。

この難しい曲を本当によく演奏したと思いました。
蛇足ですが、牧村さんも長年指揮されてきた大阪シンフォニカー。 以前トーマス・ザンデルリンクさんが芸術監督だった頃、会員として数々の演奏を聴いてきました。 定期演奏会でチャイコフスキーの交響曲第4番、第5番と名演奏が続いたので、この悲愴交響曲も採り上げて欲しいとの話がありましたが、ザンデルリンクさんは「この曲は難しいから、まだダメだ」と拒否されて封印されました。 芸術監督になられて5年ほど経ち、ようやく演奏会にかかったのではないでしょうか。 
確かに通俗名曲のように扱われていますが、曲全体と見渡すと、非常に独創的な交響曲ですものね。 そのような難しい曲なのですが、各パートがとてもよく纏まった見事な演奏でした。 だからこそ、余計に上記のようなことも書きたくなったように思います(すみません)。
しかし、演奏会はとても充実していました。 好みは好みとして、演奏を楽み、満足して会場を後にできました。 皆さん、お疲れさまでした。