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オーケストラ・ニッポニカ 大澤壽人交響作品個展

先取の気質、理知的な曲を真摯に戻る


オーケストラ・ニッポニカ 大澤壽人交響作品個展
2006年3月4日(土) 18:00  いずみホール

大澤壽人: 交響曲第2番(1934)
大澤壽人: 「"さくら"の声」ソプラノとオーケストラのための(UNE VOIX A "SAKURA")(1935)
大澤壽人: ピアノ協奏曲第2番(1935)

独唱: 腰越満美(S)
独奏: 三輪 郁(p)

指揮: 本名徹次


本名徹次さんが音楽監督を務めるオーケストラ・ニッポニカ。
いつもながら本名さんの指揮される演奏は、聴いているこちら側にまで、身が引き締まるような真摯さを感じさせます。 月並みな言葉ながら、いい演奏会でした。

初めて聴く曲ばかりなので、曲や演奏についてとやかく言えようもなく、表現に困ってしまいますが、英語なら interest という言葉になるのでしょうか。
個人的には、最後の「ピアノ協奏曲第2番」(1934)が一番面白く聴けました。 ボストン時代の経験からかな、どこかジャスの香りがしたのは気のせいでしょうか。 またラヴェルやガーシュウィンなどの協奏曲にも、似ているとは思わないのですが、どこか近い雰囲気を感じました。 とにかく、リズミックでキレ味良い独奏は聴いていて気持ちよかったですし、またオケも充実した演奏で盛り上げていて、食い入るように聴きました。
「「'さくら'の声」ソプラノとオーケストラのための」(1935)は、お馴染みの「さくらさくら」をモティーフにした作品。 確かに日本的はあるのですが、インターナショナルな音楽として洗練された歌曲ですね。 最後はオケと声楽が渾然一体となり、とても面白く聞けました。
今回の演奏会の中では、聴き手にとって一番近しいものを感じたこともあり、会場のウケは一番よかったのではないでしょうか。 黒澤映画に出てくるような音楽・・・そうかもしれません。
冒頭の「交響曲第2番」(1934)は、意気込みを感じた音楽でした。 寄せては返す喧騒の響きと柔らかな響き。 延々とこれが繰り返されて発展してゆき、なんとなく音楽のパッチワークのような印象も受けましたが、先取の気質があふれ、理知的な感じがしました。 
指揮者の本名さん、いずれの曲でもそうなのですが、いつもの器械体操みたいな指揮ぶりで交通整理をします。 この曲でも終始キレのよい動きで演奏を纏め、時に揺らせたりもしていましたけど、オケもかなり気合の入った演奏で指揮に応えていました。

なお今回の演奏会は、1935年11月8日のパリ初演時の演奏会の再現となっていて、日本でも60数年ぶりの再演だそうです。 
このような貴重な機会に立ち合えたこと、本当に感激しながら聴いていました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

このところ仕事が忙しいので、ウィークデーはバタンキューの生活。 だから、先週末の演奏会の感想文は、土曜日に書くのが日課になってます。 家事もこなし、なんとか書き上げたら、演奏会に出かける時間になりました。 なんか自転車操業みたいやな。

会場のいずみホール、森ノ宮から歩いて行けば通勤定期が使えます。 交通費がかからないのが嬉しいですね。 だいたい開場時間頃に森ノ宮駅に到着。 ここからブラブラと歩いてホールまで10分ちょっとかな。 現代音楽の演奏会なので、愛用のメモリープレーヤで現代音楽・・・といっても歌謡曲ですけどね(現代の音楽やし)、南沙織さまの歌を聴きながら到着。

ご招待いただいたので真中あたりのとても良い席(N-21)に着席(有難うございました)。 でも、いつも自由席の演奏会ばかりなんで、指定席はちょっと窮屈に感じてしまって、後ろを振り返って空いている席に行こうかな・・・なんて考えてもみたり(贅沢を言ってはいけませんけどね)。 だいたい7〜8割の入りでしょうか。 現代音楽の演奏会なのに、けっこう入ってます。

予鈴を知らせる音楽が流れても続々と人が入ってきます。 定刻を5分過ぎた頃かな、ようやくドアを閉めました。 ステージが明るくなって第1ヴァイオリンより順次メンバーが入場。 拍手が沸き起こります。 女性団員の方は黒のスカートまたはパンツに青系の上着を着ておられますね。 清涼感を感じました。

なおオケは対抗配置で、弦楽器が 9-9-7-6-4 の編成。 金管楽器も向かって左奥にホルン、右奥にトランペットとトロンボーン、それに打楽器が配置されています。 
コンマスがとても念入りにチューニングを実施して準備が完了すると本名さんの登場。 いつもなら、足音高く、勢いよく出てくるイメージだったのですけど、今回はにこやかな表情をたたえながら、ゆっくりと歩いて登場されました。 始まります。

「交響曲第2番」(1934)は、意気込みを感じた音楽でした。 寄せては返す喧騒の響きと柔らかな響き。 延々とこれが繰り返されて発展してゆき、なんとなく音楽のパッチワークのような印象も受けましたが、先取の気質があふれ、理知的な感じがしました。  本名さんの指揮はいつもの器械体操みたいな指揮ぶりで交通整理をします。 この曲でも終始キレのよい動きで演奏を纏め、時に揺らせたりもしていましたけど、オケもかなり気合の入った演奏で指揮に応えていました。

第1楽章、響きの柔らかなチェレスタ、そして弦楽器も入って神秘的な開始。 徐々に集中力を高めます。 鋭い響きのトランペットが入って頂点を築いたと思ったら、また柔らかな音楽になりました。 強烈な響きと柔らかな響きの部分が執拗に繰返されてゆきます。 しかし、いずれもオケの分奏が良く、緻密に響きを組み合わせた感じで曲を進行。 気合の入った演奏が続きます。
本名さんの指揮はいつもながらキレ味良く、唐突な感じで急激に盛り上げてオケをぐぃぐぃ引っ張ってゆく感じ。 対抗配置にしたオケも、瑞々しいヴァイオリンが左右に振り分けられ、また金管も左右から響きが聞こえたりして、ステレオ効果も満点。 チェレスタの響きが入って冒頭の神秘的な感じかな、と思ったあと、またもや喧騒といってもいいような響きが支配します。 そしてそれが力を更に増し、弾力を持った響きで纏めて止めると、残響がホールにこだましていました。

第2楽章は4つの部分(2つのアリアと2つのトッカータ)から成っていて、連続して演奏されます。
「アリアT:コールアングレとオーケストラのための」は、コールアングレが終始ノスタルジックな響きでしみじみと歌いました。 オケの他の木管もふわっとした響きでサポート。 弦楽器も柔らかく弾きますけど、本名さんが右手をグルグル回しながら表情をつけてました。 そして、ふわっとしたピチカートで纏めて、次に繋ぎました。
「トッカータT:ヴァイオリンとオーケストラのための」は、本名さんのハナ息とともにコンマスが弦を弾いた響きでスタート。 タイトに盛り上がってゆきます。 コンマスのソロ、どこかバルトーク風。 これが収まると、今度はヴィオラとコンマスが絡んで、何といっていいのかよく分かりませんが、どこか不思議な感じのする音楽となりました。 そしてまたタイトに盛り上がってリズム感よく締めて、次に繋ぎます。
「アリアU:2本のクラリネットとオーケストラのための」は、2本のクラリネットの対話がる柔らかなリズムをもって盛り上がってゆきます。 ここではファゴットも健闘していたのが見逃せませんね。 張りのあるピチカートには柔らかさも感じました。 さらに次に繋ぐと、
「トッカータU:4つのソロ楽器とオーケストラのための」で、急激に盛り上がりました。 チェロとヴィオラ、フルートとファゴットが主役となり、オケの響きもぎゅっと締まって盛り上がってゆきます。 中でもコントラバスの響き、この楽章ではよく聴こえてきて、オケの芯になっているような感じ。 音楽は、急激な盛り上がりかと思うとソロの競演になったりもし、最後は本名さんがぐるっと回した手をすぼめるようにして纏めました。 順をおっかけて聴いてゆくのが精一杯ってな感じでたね。

第3楽章、スネアとミュート・トランペットによる開始。 ファンファーレって言っていいのかな。 ぐっと惹きつけられました。 マリンバが入り、幻想的な感じで曲が進行。 なんだか、もやもやっとした感じの響き、少々つかみ所のない感じだったですが、それが急激に盛り上がってゆきました。 木管が密やかに吹き、演奏を叙情的にして鎮めますけど、また緊張感が高まってトランペットの鋭い響き。 隣席で寝ていた女性の方、この響きで目を覚ましたようです。 そして何度も畳み掛けるようしてから、最後はチェレスタ、コントラファゴット、ヴィオラのソロなどが現れてから、フルートでしょうか、響きを集約させるかのようにそっと全曲を閉じました。

気合を感じさせた音楽と演奏でした。 初めて聴く曲なので、とやかく言いようはないのですけど、どこかパッチワークのような断片的な感じがしました。 感激が長続きしないというか、ちょっと掴み所を見失ってしまった感じかな(すみません)。

20分間の休憩。 詳細に書かれたパンフレットを読みながら、席でじっと開演を待ちました。 正直に言うと、老眼がかかってきたんで、細かな文字が沢山あるパンフレットを読むには、ちょっと集中力を欠いてしまってて、拾い読みをしただけですけどね、でもこのパンフレットだけでも大澤壽人さんの貴重な資料といった感じだと読み取りました。

さて、ステージ上のマリンバやコントラファゴットなどが片付けられ、ハープ奏者の方が出てこられてチューニングをしてらっしゃいましたけど、定刻前にいったん全員下がられました。 そして、予鈴の音楽のあと、オケメンバー全員がステージに揃ってチューニングを実施。 薄いベーシュのロングドレスを着た腰越満美さんと本名さんが登場し、いよいよ後半の開始です。

「「'さくら'の声」ソプラノとオーケストラのための」(1935)、お馴染みの「さくらさくら」をモティーフにした作品。 確かに日本的はあるのですが、インターナショナルな音楽として洗練された歌曲ですね。 最後はオケと声楽が渾然一体となり、とても面白く聞けました。
今回の演奏会の中では、聴き手にとって一番近しいものを感じたこともあり、会場のウケは一番よかったのではないでしょうか。

チューブラベルの柔らかな打音、ハープの響きで始まるとフルートやオーボエが柔らかな旋律を吹きます。 全然「さくらさくら」とは関係ない感じ。 ソプラノが透明感のある柔らかな声で「あ〜」で絡みました。 歌詞はなくスキャットというかヴォカリーズというか声を聴かせたあと急激な盛り上がりを越え、そのあと「さくらさくら」「ふるさとの春の想い」「弥生の空に」などとオケと一体となって歌い進みました。 日本的な部分もありますけど(日本語ですからね)でも、日本に寄りかかってない感じの歌曲です。 ここでも、ぐっと盛り上がっては退くことを繰り返します。 また歌詞のない声とオケが渾然一体となり、リズム感もって進みます。 なんか面白い感じだな、と聴いていたら、最後、ダン♪・ダン♪と和音を2つ響かせた終結。 これもまた面白かった。

「さくらさくら」が出てきたりして、聴きやすかったこともあったので、会場からは熱い拍手が続いてました。
さて、暗転して全員がいったん退場。 ピアノを出してきました。 このためオケのヴァイオリンがやや後方に移ったようです。 けっこう窮屈そうな感じになりましたけど、全員が揃ってチューニングを実施して準備完了。 さっそうと三輪さんが登場しました。 小柄な方なんですね。 パンツルックで、元気よく登場といった感じでした。 蛇足ですが、今回は譜面を置いての演奏でした。 さぁ始まります。

「ピアノ協奏曲第2番」(1934)、個人的にはこの曲が一番面白く聴けました。 ボストン時代の経験からかな、どこかジャスの香りがしたのは気のせいでしょうか。 またラヴェルやガーシュウィンなどの協奏曲にも、似ているとは思わないのですが、どこか近い雰囲気を感じました。 とにかく、リズミックでキレ味良い独奏は聴いていて気持ちよかったですし、またオケも充実した演奏で盛り上げていて、食い入るように聴きました。 

第1楽章、本名さんのハナ息とともに、よくブレンドされて弾力ある響きで始まりました。 独奏ピアノも透明感を伴った柔らかい響きでいい感じ。 オケとともにリズミカルに曲を展開してゆきますが、アレグレットで走っていても理知的な感じがします。 ピアノも都会的で洗練された響き、どこかジャジーな感じがするのは、オケのミュート・トランペットの影響かしら。
ここでも本名さんらしくキレ味よく、またしなやかにリードしています。 オケもまた力が漲っても、軽やかさを失わないあたり、腕の達者な人が多く集まっているのでしょうね。 安心して聴き進められます。 
カデンツァもジャジーな感じだったかしら。 このあとテンポを上げてオケを走らせたあと、緩やかにして起伏をつけてから唐突な感じでこの楽章を終えました。

第2楽章、静かに弾くピアノによる開始。 しみじみとしますね。 ホルンが入って、この楽章全体がノクターンみたいな感じかな。 弦とピアノで柔らかくも哀しいような旋律を展開させますけど、しだいに熱を帯びてきたみたいです。 フルートの響きにピアノの雨だれのような打音が絡みます。 そのうちトロンボーンも加わってまた熱気が増しますが、ピアノ独奏がそれを冷まし、静かで落ち着いた気分とさせて、最後は弦のピチカートで締めました。

第3楽章、クレッシェンドしたオケの響きで開始。 ピアノが都会的な旋律を弾き、オケと一緒に盛り上げてゆきます。 リズミックなピアノには透明感があって素敵ですし、オケも響きに弾力があってカッコ良い。 とにかく洗練された都会風の音楽ですね。
この音楽がすっと退いて、今度はピアノがチャーミングなソロを聴かせます。 本名さん、身体の前で大きく手を左右に揺らしてオケを盛り上げ、ピアノも加わって進みます。 締まった響きが寄せては返す感じ。 情熱的ながら思索的な感じもさせる音楽。 こんなの好きですよ。 さて、トロンボーンが加わってオケに熱気が帯びます。 ピアノとオケが一体となってスピードを上げ、最後はパパパッパァと元気よく全曲を締めました。

交響曲は力作だと思いますが、どこか断片的な感じがしたんですけどね、このピアノ協奏曲は洗練された感じで、才気も感じて、とても面白く聴けました。 熱い拍手を贈らせてもらいました。
会場からの拍手が鳴り止みませんでしたが、本名さんがコンマスに話しかけて引っ込んだあと、コンマスがオケメンバーに合図を送って全員で深々と礼をしてお開きとなりました。 
月並みな言葉ながら、いい演奏会でした。