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同志社女子大学オペラクラス 第19回公演「フィガロの結婚」

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同志社女子大学オペラクラス 第19回公演「フィガロの結婚」
2006年3月5日(日) 14:00 同志社女子大学・新島記念講堂

モーツァルト: 歌劇「フィガロの結婚」全4幕(日本語上演)

演出・音楽指導: 坂口茉里
音楽指導: 中村利男
衣装: 岸井克己
   
アルマヴィーア伯爵: 三原 剛
フィガロ: 井原秀人
ドン・バルトロ: 雁木 悟
ドン・バジリオ: 松岡重親
ドン・クルツィオ: 平松実留
アントニオ: 伊藤 正
   
<4回生オペラクラス配役>
伯爵夫人: 北川侑依(2幕)
  田中美央(3・4幕)
スザンナ: 十河加名(1・4幕)
  山崎 愛(2幕前半)
  金 一恵(2幕後半)
  山中綾子(3幕)
ケルビーノ: 上茂優子(1幕)
  上山祐未子(2幕)
  中村友美(3・4幕)
マルチェリーナ: 洲崎亜矢
バルバリーナ: 真田知香子
   
村娘・花娘: 3回生オペラクラス(19人)

(花娘)

澤井志津香、浅野靖世
村の若者:大阪音楽大学有志(8人)

管弦楽: 同志社女子大学音楽学科管弦楽団有志
チェンバロ: 松浦亜季(卒業生)

指揮: 井村誠貴


同志社女子大学オペラクラスの卒業公演、今回も充実した公演を楽しみました。
昨年は他の演奏会とバッティングしてしまいましたが、今回は家族帯同(一家4人)で新島記念講堂に伺いました。 実は、演劇をかじった我が奥さん、演技にはかなりウルサイんです。 しかもちょっと歌も習っていた時期もあって反応が気になりましたけど、「面白かった〜」と言わしめた公演でした。
なお我が奥さんが言うのには、主役が喋って場面が止まったとき、他の配役の誰もが、例えば笑った表情ならそれをそのまま全員がピタっと止めて主役を引き立てている、とのこと。 なるほどね。 蛇足ながら、随分以前(20年以上前)、奥さんが関西歌劇団の公演を見たときには演技が下手でたまらなく、日本人のオペラに失望したんだそうです。
同じ大学という環境で、同じ先生について勉強されたからでしょうけど、配役が幕毎に代ったりするのですけれど、全くといっていいほど違和感がありませんでしたし、とにかく皆さん、歌がとても巧い。 それに演技がしっかりしているのだから、大いに楽しめました。 いい公演だったと僕も思いましたよ。
とにかくこの「フィガロの結婚」、あたりまえながらモーツァルトの音楽が「てんこもり」ですものね。 オペラを支えるオケもまた素晴らしかったことを付け加えておきたいと思います。 特に第4幕など、舞台とオケとが一体になった盛り上がり。 やっぱりオペラはナマ公演が最高だなぁ、と感じたしだいです。
繰り返しになりますが、出演された方々、皆さんそれぞれ良いところがあって楽しめましたし、また関西のトップクラスの男声陣の方々と堂々と渡り合っていて、見ごたえがありました。 出演されたオペラクラスの皆さんにとっては、得がたい貴重な経験になったと思いますし、見て聴いている客席の我々にとっても、見ごたえ聴き応えのあった公演でした。 満足しました。 皆さんお疲れさまでした。
最後に、我が奥さんのお気に入りは・・・、バジリオとアルマヴィーヴァ公爵。 なかでもバジリオの演技にはハマってしまったようです。 帰り道もひとしきりその話題でした。 
来年もまた機会が合えば一緒に伺いたいと思っています。


簡単に公演をふりかえってみたいと思います。

同志社女子大学オペラクラスの卒業公演、昨年は他の演奏会とバッティングしてしまいましたが、今年は楽しみに待ってました。 家族にその話をしたところ、我が奥さん「一家で行こう」と提案し(子供達にとっては強制かもしれませんけどね)、今年は一家4人で伺うことになりました。 高校受験を来年に控えた長女にも、大学ってどんなところかを見せるチャンスかもしれませんしね。 なお僕の行っていた大学にはエスカレータはありませんでしたけど、大型トラクターには乗れたし、女子学生は1割ほどでしたけど牛はいっぱいいました・・??(今は5割は女子学生らしいですけど)

さて、一昨年の経験よりちょっと早めに家を出ました(だって超満員になるんですもの)。 興戸の駅からブラブラ歩き、同志社女子大学の正門よりエスカレータを利用します。 キャンパス内を抜けて新島記念講堂の前に着いたら長蛇の列でした。 その列の後ろに並び、あと10分待つのかな〜、と時計を見たのですが、すぐに列が移動し始めました。 予定を10分早めて開場してくださったようです。

入り口でパンフレットをいただき、大勢の人にもまれながら講堂に入ります。 オーケストラの公演だと後ろの席に行くのですけど、オペラは前の方がいいですね。 中央付近は遠慮して、チェンバロの前あたりで(前回もこのあたりでした)前から2列目を確保しました(F-12)。
奥さんと長女はアイスクリームを食べに出てゆきましたが、長男と僕はそのまま席で開演を待ちます。 続々と人が詰めかけてきてほぼ満員(一昨年は通路にまで人が座ってましたけど、今回はそこまでにはなりませんでした)。 奥さん、長女も戻ってきたあと、5分前の予鈴を告げるパイプオルガンが迫力満点に鳴り響きました。 壮麗ですけど、圧倒的な感じ。 一瞬にして会場内の全員がこの響きに耳を奪われた感じさえしました。

自由入場で練習をしていたオケ・メンバーも全員揃いました。 弦楽器は 6-5-4-3-2 の編成で、向かって左に弦楽器、右側に管楽器が配置されたオペラ伴奏の配置ですね。 定刻になって照明が若干落ちてチューニングを実施。 舞台に向かって右側のドアより指揮者の井村さんがゆっくりと歩いて登場しました。 いよいよ始まります。

序曲の開始。 覇気のある演奏が心地良いですね。 目の前がコントラバスだったりして、バランスはいつも聴いているのとは違いますけど(重心の低い響きですけど)、それもまた面白く感じます。 真摯な表情の井村さんの指揮を横目で見ながら、丁寧に紡がれた、でもわくわく感のする演奏に期待がどんどんと膨らんでゆきました。

第1幕が開いてフィガロとスザンナの場面。 フィガロは井原さん、張りのある声ですね。 それに対するスザンナの十河さんは凛とした清潔な声の持ち主。 堂々とフィガロと渡り合って見事な開始です。 確かに手馴れた井原さんと比較すると、スザンナは丁寧に歌っている感じがしますけどね、ほんと堂々としてて巧いもんです。
堂々としているといえば、洲崎さんによるマルチェリーナ。 若いのに難しい役どころだと思いますけど、全幕に登場して貫禄のある演技でしたね。 ここでもバルトロの声量ある歌にも、艶の乗った声でよく張り合って見事でした。 で、初々しいのは上茂さんのケルビーノ。 童顔なので可愛い少年みたい、声が透き通っていて実に可愛らしかったですね。
ここに三原さんによるアルマヴィーア伯爵が登場、すごい存在感あります。 苦虫を噛み潰したような表情ばかりの役柄ですけど、ここでは下心ありありって感じ。 勿論、張りのある声が素敵ですけれど、ここではちょっと抑え気味だったかもしれません。 そして松岡さんによるバジリオが登場。 艶のあるよく透った声で、イヤミったらしい役柄を見事にこなしてます。
これら役達者な人たちを相手にスザンナが大健闘。 遜色なく渡り合った演技もとても見事でした。
フィガロが村娘達を伴って登場すると、爽やかで気持ちのいい合唱。 きちんと動きも揃って、見ていても綺麗で清潔な感じがよく伝わってきます。 そしてフィナーレ、フィガロによる「もはや飛べまい」、艶と伸びのある歌で圧倒します。 ケルビーノが、手を胸の前でする敬礼を繰返して初々しく、可愛らしかったなぁ。 オケのラッパが勇ましくも軽やかに吹いて場面を盛り上げて、第1幕を閉じました。

暗転、暫くそのままの状態が続いたあと第2幕となりました。 ゆったりとした音楽をまず力をこめて演奏したあと、柔らかく奏でていったあと幕が上がります。 まず、北川さんによる伯爵夫人、清澄な声質ながら柔らかく響く上品なアリアが素敵。 上品ですね。 スザンナが登場、山崎さんに代わっていますがちょっと見だと気づかないかも。 ケルビーノは上山さんに交代、宝塚っぽくなった感じがします。 ややハスキーな声質なのかしら「恋とはどんなものかしら」を魅惑的に歌い上げて見事でした。 オケも柔らかな木管、素敵でした。
スザンナのアリアは柔らかな声で実に肌触りのよい響きでしたね。 伯爵が登場し、三重唱。 さすがに余裕の伯爵に、スザンナと伯爵夫人は懸命なのでしょうけど、落ち着いて対抗します。 オケも一体となって聴き応えありました。 スザンナとケルビーノの柔らかな二重唱のあと、フィナーレの充実した音楽になります。 伯爵は変わらず圧倒的な感じですが、これに伯爵夫人が上品で清澄に絡みますし、オケも井村さんのハナ息が聞こえるほど気合入ってました。
扉より出てきてスザンナは金さんに交代、伯爵が驚きます。 ここでのスザンナは繊細な声質で優しく歌って伯爵を諌めます。 伯爵夫人もしっかりと絡んできて、伯爵に対抗。 なかなかよかったですよ。 この場面。
フィガロが登場し、重唱がオケとも見事に絡んで場が更に盛り上ってゆきます。 アントニオの伊藤さんも登場、張りのある声はさすがといった感じ。 オケも緊迫感を伝える音楽で畳みかけます。 マルチェリーナやバジーリオも加わっての大団円。 初々しいスザンナ、堂々としたマリチェリーナ、上品な伯爵夫人、芸達者な男声陣と堂々と渡り合い、華やかな音楽としてこの幕を閉じました。 聴き応え充分なアンサンブルを楽しみました。

20分間の休憩。 さすがに1時間45分も音楽を聴きつづけて疲れました。 新鮮な酸素を補給しに外に散歩に出て体調を整えました。 第2幕の中ほどはちょっと酸欠気味でしたものね。

第3幕、チェンバロの響きとともに幕が開きます。 伯爵が苦虫を噛み潰したような表情でレチタティーヴォ。 ほんとヤな奴、といった感じです。 そんな伯爵をじらすこの幕のスザンナは山中さんに交代。 外見は皆さんほんとよく似てらっしゃいますけど、ここでは少々大人っぽい落着きを感じさせますね。 よく伸びる柔らかな声で伯爵との二重唱が素敵でした。
真田さんによるバルバリーナはチャーミングな娘、ケルビーノは中村さんに交代して初々しく場面を彩ってから、田中さんに交代した伯爵夫人のアリア「スザンナは来ない」をドラマティックに歌い上げました。 張りのある声ですけれど、肌触りの良い響きが特徴的。 伸びも充分にあって立派でしたよ。
クルツィオの平松さんとマルチェリーナが出てきて、金を払うか結婚するかと迫り、結局マルチェリーナが母親だと判明したシーン。 ここのコミカルな演出では会場からクスクス笑いも起きましたけど、マルチェリーナの演技もまた堂々として見事でした。 そして6重唱、各人の思いが見事に描き分けられてて、とても面白い場面なのですけれど、スザンナの表情豊かな演技もよかったですね。 もちろんオケも見事に絡んで、モーツァルトの音楽を堪能しました。 そしてスザンナの退場のシーン、ここも巧く纏めて見事でした。 なお目だってませんでしたけど、バジオリがピンクのハンカチを持って、嫌味ったらしい雰囲気で場面を彩っていたのもほんと面白かったですね。
さて上品に歌う伯爵夫人と初々しくも利発な感じをもったスザンナの2重唱、柔らかな伴奏にのって素敵な気分にさせられたあと、村娘たちが登場して場面が盛り上がります。 村娘の皆さん可愛らしく、丁寧な合唱は明るくよく揃っていて気持ちよかったですね。 マスゲーム風に踊り、花娘二人の歌も軽やかでとっても素敵。 行進曲風の合唱・音楽が明るく揃い、気持ちを高揚させてこの幕を閉じました。

15分間の休憩。 席で開演を待ちますが、奥さんが「バジリオが巧い、面白い」とご満悦でした。 定刻、井村さんがちょっと出遅れたみたいで苦笑いしながら慌てて登場。 一度オケを立たせてから演奏を始めて幕が上がりました。

第4幕、バルバリーナの豊かな声、しかもよく転がせて丁寧に短調のアリア「無くしてしまった」を歌いました。 美しく歌って巧かったですねぇ。 フィガロとマルチェリーナが登場、バジリオとバルバリーナも登場しますが、このあたりカットされることがよくあるようですね。 そしてここのバジリオ歌うアリア、張りのある良く透る声で見事でした。 演技もこれまで繰返した書いているとおり、役柄に溶け込んでいるようです。
フィガロのアリア、これまたよく透る張りのある声でホールに響き渡ります。 スザンナは、第1幕に出ていた十河さんが再登場、変わらず凛とした清潔な声ですね。 理知的な声っていうのかな。 とにかく安定感もあって見事です。
ケルビーノがとても柔らかな声でかわいらしく歌い、伯爵夫人にまとわりつくと、伯爵夫人が凛とした声です。 対比させているのかしら。 ここに伯爵が登場すると空気が変わります。 三原さんの存在感抜群ですね。 声も響きがたっぷりあるのによく伸びます。 さすがとしか言いようありません。 登場したフィガロ、伯爵夫人に扮したスザンナに、オケが自在に音楽を付けて舞台が進行、ぐいぐいと惹き付けられます。 この間、舞台の左隅にあるあずまやの所でマルチェリーナが様子を伺ってます。 台詞はないけど、マリチェリーナの表情による演技も巧かったですね、場面にアクセントをちゃんとつけてました。 音楽が高揚してきます。 オケの弦の響きがまろやかで綺麗です。 それがすっと退いて、伯爵が「許せよ」と低く伸びやかな声。 そして重唱となり、柔らかく響きあって和解し、そして音楽も響きを増してエンディングへと向かいます。 重いティムパニの響き、力を増したオケが畳みかけるようにして、出演者全員が一丸となって最後までたっぷりとした歌唱で全幕を閉じました。

ブラボーの声もかかった見事なフィナーレでした。 カーテンコールもまた華やかで、素晴らしい舞台です。
アンコールとして、出演者全員に客席に居た卒業生でしょうか、客席のメンバーも立ち上がって、第2幕のフィナーレの合唱を歌ってお開き。 本当に楽しい舞台でした。
オペラは観て聴いて楽しむもの、当たり前のことかもしれませんが、それが実感できた公演でした。 皆さんお疲れさまでした。 これからの活躍も期待したいと思います。