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セント・マーティン・オーケストラ 第3回定期演奏会

覇気ある演奏会、ソリッドに響くベートーヴェン戻る


セント・マーティン・オーケストラ 第3回定期演奏会
2006年10月1日(日) 14:00  東灘区民センター・うはらホール

ベートーヴェン: エグモント序曲op84
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番ハ短調op37
ベートーヴェン: 交響曲第3番変ホ長調「英雄」op55

独奏: 安田伸子(p)

指揮: 河崎 聡


覇気ある演奏会、集中力も高く、ソリッドに響くベートーヴェンを堪能しました。
河崎聡さんの指揮のもと、覇気のある引き締まった演奏に圧倒されたような感じです。 河崎さんの指揮は、指揮棒を下から上に挙げる動作にキレがあり、必然的にオケもキレの良い響きで反応して覇気を感じます。
今回の演奏会では、やはりメインの英雄交響曲が一番素晴らしかったですね。
流麗に曲を運び、要所をソリッドに決めつつ、ぐぃぐぃと推進力を持った演奏でした。 最初から最後までノリノリっていう感じでしょうか。 起伏や緩急をつけつつも、決して流れが滞らない。 そしてまたオケの巧さもあって、対抗配置にした弦楽器の分奏や、木管、金管、打楽器がそれぞれ持ち場をしっかりと決めているのが手に取るように分かります。 英雄交響曲を皆で支えている風通しの良い演奏でもありました。
もちろんパワーも十二分にあるから見事。 少人数のオケとは思えない音量と雄大さと、引き締まった音楽を堪能しました。 いや、逆にこの人数だからこそ、ここまで纏まった演奏が出来るのかもしれません。 とにかく若々しくスカッとした気持ちのいい演奏に感激しました。
中プロの安田伸子さんのピアノによる協奏曲第3番。
安田さんのピアノは輝かしいタッチ、粒立ちの良い響きがとても印象的でした。 オケの覇気を持ったサポートとあいまって、凛としたベートーヴェン。 軽やかなのですけれど芯の強さもあり、ときにキラキラっと輝くのが素適でした。
冒頭のエグモント序曲は、元気いっぱいでソリッドに響く演奏が全開。
金管楽器が煌びやか、打楽器も強烈な打音で盛り上げていて、ぎゅっと纏まってはいるのですけれど、やや騒々しさを抑えきれないような感じだったかな。 でも音楽としてはとてもよく纏まっていて、やる気とポテンシャルの高さを十分に感じました。
とにかく若々しくて気持ちのいいベートーヴェンの演奏会、雨をもろともしない熱い演奏を楽しみました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

3回目の定期演奏会でやっと伺うことができました。
創立したときから気にはなっていたのですが、ブッキングしたりヤボ用があって伺えませんでした。 今回も危なかったけれど、奥さんに救われ、途中抜け出して会場に走りました。

東灘区民ホール(うはらホール)も初めてのホールなのですが、駅から直結なんですね。 改札口にある案内板に従って進んでゆくと傘をささずにホールにたどり着け、またとても綺麗なホールに少々驚きました。 後ろから3列目かな、S−6に陣取りました。

ところでこのオケの音楽監督は河崎聡さん。 河崎さんというと、2002年5月の奈良女子大学管弦楽団スプリングコンサートでのシューベルトのグレート交響曲が忘れられません。
冒頭に事故があってどうなることかと思っていたけれど、終始速いテンポ設定、決して好きなテンポではないしミスも散見されましたが、そんなこととは関係なく気持ちの良くなる堂々とした演奏に感動し、アマチュアオーケストラによる音楽の醍醐味を味わったことを思い出します。
それから4年、河崎さんのお名前を目にすることがなかったのは、ロシアに留学されていたからなのですね。 パンフレットで知り、期待が膨らみました。

雨なのにギャラリーを除くと7割くらい入っていたでしょうか。 ステージを見ると弦楽器が対抗配置になっています。
定刻、オーケストラメンバーがパート単位で入場、弦楽器の構成は 8-8-5-5-3 だったでしょうか。 チェロはメンバー表には4名のお名前が書いてあったので、数え間違いがあるかもしれません。 小振りなステージにけっこう詰めて座っています。
なお金管楽器はステージに向って右側、ティムパニの前にトランペット、ビオラ後方にホルンといった配置。 個人的にはトランペットとホルンも左右に振り分けたらどうなるのかな、なんて思って見ていました。

チューニングを終えてちょっと大きな眼鏡をかけた河崎さんがにこやかに登場、眼鏡は以前と同じみたいですが少々恰幅がよくなった感じがします。 自信でしょうか。 そうそう河崎さん、ピアニストの斎藤雅広さんに似ている感じがするんですが・・・ま、そんなことはともかく、演奏会が始まります。

エグモント序曲、元気いっぱいでソリッドに響く演奏が全開でした。
金管楽器が煌びやか、打楽器も強烈な打音で盛り上げていて、ぎゅっと纏まってはいるのですけれど、やや騒々しさを抑えきれないような感じだったかな。 でも音楽としてはとてもよく纏まっていて、やる気とポテンシャルの高さを十分に感じました。

左腕を力強く廻して曲を開始、響きを合わせた強靭な響きが出てきました。 落着いた色彩のオーボエのあと、また重厚なアンサンブルでゆったりと進みます。 引き締まった低弦の響きがくっきりと聴こえ、さらに力を込めて、ソリッドな響きのティムパニの打音。 強烈ですね。 金管もタイトに締まっていて煌びやか。 木管楽器は凛としていて、ストレートに響く感じでしょうか。 やや騒々しさを抑えきれないような感じもしました。 河崎さん、左手の拳をぐっと握りしめて曲をいったん停止。 そして集中力を増したフィナーレに突入して輝かしく纏めて曲を閉じました。

音痴な僕が言うのでアテになりませんが、なんとなく管楽器(特に金管楽器)のピッチがやや高かったのかな。 全体よりちょっと浮いて聴こえてきた感じでした。 打楽器も強烈な打音で盛り上げていて、やる気を存分に感じた演奏での幕開けとなりました。

照明が落ち、いったん全員が退場して舞台上手の楽屋よりピアノを搬入します。 大きなステージなら舞台後方に置いたピアノを前に出すのでしょうが、小振りなホールなのでステージはオケでいっぱい。 ピアノを配置するため弦楽器奏者の方は更に後方で詰めて座ります。
準備が完了、ブラウンのスリムなドレスをまとった安田さんが登場して始まります。

ピアノ協奏曲第3番。 安田さんのピアノの輝かしいタッチ、粒立ちの良い響きがとても印象的でした。 覇気を持ったオケのサポートとあいまって、凛としたベートーヴェン。 軽やかなのですけれど芯の強さもあり、ときにキラキラっと輝くのが素適でした。
ただしやや一本調子というかインテンポで突き進んだみたいでした。 個人的にはもうちょっと歌って欲しかったですけどね。 今回は第3回ということで「3」にちなんで第3番でしたけれど、第1番の協奏曲ほうが似合っていたかもしれないなぁ〜 なんて思って聴いていました。

第1楽章、この曲でも響きを合わせた硬質な弦アンサンブルによる開始。 エグモントでは気になった金管や打楽器は改善され、抑制とダイナミズムを巧く使い分けています。 弦と管とがきちんと絡みあった纏まりのよい序奏。 これを終えると安田さんのピアノが輝かしい響きで入ってきました。 粒立ちの良い響きでもあって、まさにブリリアントといった感じでしょうか。 曖昧さを感じさせず、ぐいぐいと弾き進めてゆきます。 オケもまた締まった低弦、高音弦のキザミもはっきりと聴こえてくる覇気を感じる伴奏ですね。 安田さんのピアノともども曖昧さのない演奏。 ぐっと大きく盛り上げたあとのカデンツァ。 更に力強く、キレよく、しかも軽やかな左手にも力強さがあってもたれるような感じは皆無ですね。 凛として弾ききって、オケもまたパワーをあげてこの楽章を力強く纏めました。 この力強さに拍手がパラパラっと沸き起こったのも頷けます。

第2楽章、拍手が収まるとすぐに開始。 凛とした響き、背筋をピンと伸ばして襟を正すような感じさえしました。 オケがふわっと入ってきますが、締まった低音弦がよく聴こえるのはここでもまた同じ。 ピアノが静かな口調で語りかけてくるのですが、輝きを全く失っていません。 木管楽器と呼応しながら、凛として対話しながら進んでゆきますが、個人的にはもうちょっと起伏が欲しい感じですね。 やや一本調子みたいな感じに聴いてしまいましたけど、どこまでも輝きを失わないところは大きな魅力に違いありません。 第1番のピアノ協奏曲ならもっと面白く聴けたかな、なんて思って聞いていました。

第3楽章、これまた輝かしい響きを満載した開始。 オーボエも透明感を感じさせる響きで呼応し、オケが力を入れてタイトに締め上げます。 ピアノも強靭なタッチで応えながら曲を進めてゆきました。 河崎さん、要所をバシっバシっと決めながら、緩急つけてぐんぐん進めてゆきますが、このあたりももうちょっと歌ったり揺れてくれたりするともっと感情移入できたのかもしれませんね。 なんだかあれよあれよといった感じで進んでいった感じ。 しかし華やかでとても整った演奏です。 弦楽器の分奏などとてもよく纏まっていて、見ているだけでもとても面白かったですしね。 これは欲張りなのかもしれませんね。 とにかく最後まで輝きを失わず、力強く全曲を纏めて終わりました。

15分間の休憩。 席でじっとしてアンケートを書いたり、パンフレットを読んで開演を待ちました。
オケのメンバーが出てきて着席、やっぱりチェロの人、一人多いように見えましたが、どうでしょう。 それはともかく全員が着席し、コンミスのチューニングを終えて準備完了。 河崎さんが笑みを浮かべながら登場されてメイン・プロが始まります。

英雄交響曲。 とても素晴らしい演奏でした。 流麗に曲を運び、要所をソリッドに決めつつ、ぐぃぐぃと推進力を持った演奏。 最初から最後までノリノリっていう感じでしょうか。 起伏や緩急をつけつつも、決して流れが滞らない。 そしてまたオケの巧さもあって、対抗配置にした弦楽器の分奏や、木管、金管、打楽器がそれぞれ持ち場をしっかりと決めているのが手に取るように分かります。 英雄交響曲を皆で支えていることが解かる風通しの良い演奏でもありました。
もちろんパワーも十二分にあるから見事。 少人数のオケとは思えない音量と雄大さと、引き締まった音楽を堪能しました。 いや、逆にこの人数だからこそ、ここまで纏まった演奏が出来るのかもしれません。 とにかく若々しくスカッとした気持ちのいい演奏に感激しました。

第1楽章、この編成のオケとは思えない強靭な和音、鋭く決めたカッコ良い開始でした。 しかも続く透明感のある高音弦の響きも魅力的。 河崎さん、嬉しそうに振ってオケをぐいぐいと乗せてゆきます。 流麗でかつパワーを感じさせる演奏は、これまでの演奏とは1ランクも2ランクも上ではないでしょうか(けっしてこれまでの演奏が悪いと言っているのではありませんが充足感がまるで違います)。 木管アンサンブルもこれまでだと、端正な感じだったのですが、ここではニュアンスもうまくつけてノッて演奏しているのがよく分かる感じです。 金管楽器の響きもまた全体の響きにとてもよくマッチしていました。 起伏や緩急をつけつつ、集中力の高い演奏に感動しながら聴いていました。 そして最後までこの集中力は途切れず、しかも更に一段とパワーを乗せての力強いフィナーレ。 とても熱い音楽でした。

第2楽章、第1ヴァイオリンの方を向いて振り始めた送葬行進曲は、しっとりとした深みのある響きが特徴的。 オーボエの艶のある響きも濡れているようでした。 ため息をつくような弦アンサンブル、クラリネットの深い響きも素適でした。 ぐっと力を増してキレよく纏めます。 河崎さん、今度は下からすくい上げるように音を引き出しとオケも機敏に反応。 オーボエ、フルート、ファゴットの素適な響きのあと、ダイナミズムを持った全奏。 河崎さん、オケ全体を徐々にリズムに乗せ、全奏へと向うドラマティックな音楽つくりですね。 主題を戻したあとの弦の分奏もとてもしっかりしてました。 ティムパニは小さく鋭く、ホルンやトランペットも厳かに吹奏、終始落ちついた表現ながらも熱い心情が迸り出てくるような演奏でした。 最後はそっと潮が引くように終了。

コンミスの方を見ているとチューニングをするのかな、と思いきや河崎さんはそのまま続行のよう、オーボエ奏者の方が慌ててリードを装着するのを見届けて準備完了。

第3楽章、整った弦の響きに円やかなオーボエの響き、柔らかいフルートが絡みます。 弦の分奏がここでもしっかりと決まっていて、それを急激に力強くして覇気あるアンサンブルに。 そしてズム感よく起伏を作って曲を進めます。 音量が上がっても刺激的な響きではありません。 しかしこの音量、この人数でやっている音楽とは思えない感じですが、この人数だからこそ纏まりのある強靭な音楽になるのかもしれませんね。 ホルンのトリオ、暖かな響きをタイトに決めてました。 若干音程が揺れたようにも感じましたけど、暖色系なので気になりません。 かえってほのぼのしていい感じだったかも。 最初は端正に思えた木管もこの楽章以降は暖かな響きが特徴的でした、

第4楽章はアタッカで突入、河崎さんが左腕をぐるっと回してすくい上げ、シャープな響きを導き出し、そして力強い全奏。 弦の分奏、ここもまたよく揃っています。 対抗配置になった第2ヴァイオリン、楽器が裏向きになっているハンデもあるのに、響きがよく届いてきて素晴らしいですね(対抗配置にしてかえって非力さを露呈する場合があるのですが、このオケの場合はほんと見事でした)。 オケ全体が緻密に構成された音楽を芯にしていて全くゆるぎなし。 河崎さん、ほんと楽しそうに振ってらっしゃいますが、機動力を感じさせるこんなアンサンブルを振っていたら楽しくないわけがないでしょう・・って感じ。 聴いているこちらもどんどんと乗せられます。 ホルンの斉奏、ここでは力強く雄大に決めて見事。 トランペットも熱く語りかけ、熱気を孕んだ演奏として盛り上げますが、これにいったん抑制をかけ、軽くジャンプした河崎さんがエンジン全開。 推進力を持ったエンディングに突入します。 ホルンのタイトな咆哮、ティムパニが小さく鋭く叩いて最後まで統制のとれた素晴らしい演奏で全曲を閉じました。

熱い拍手を贈らせていただきました。 これほどの素晴らしい演奏のあとにはアンコールは不要ですね。 若々しくて気持ちのいいベートーヴェンの演奏会。 皆さん、おつかれさまでした。