BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
奈良女子大学管弦楽団 '07スプリングコンサート

春らしい清々しい演奏会戻る


奈良女子大学管弦楽団 '07スプリングコンサート
2007年4月29日(日) 13:30  奈良県橿原文化会館大ホール

シューベルト: 「ロザムンデ」序曲(*)
ビゼー: 交響曲第1番ハ長調
シューマン: 交響曲第1番変ロ長調「春」

指揮: 柴 愛(*)、牧村邦彦


来年3月のチェコのプラハ・スメタナホールでの公演も決まっている奈良女オケのスプコン、今回も好調を維持して、とても春らしい活き活きとした演奏会を楽しみました。

中でもビセーの交響曲第1番の爽快さに心踊りました。
シューマンの「春」のときも同じなのですが、中低弦の響きがまろやかに絡んでいて、安定感も抜群。 弾力のある響きもよく出ていました。 第2楽章などちょっと怪しくなりそうな場面もありましたが、牧村さんの集中力で見事に踏ん張り、後半は管と弦のブレンドされた素晴らしい響きを堪能しました。 素晴らしかったですね。

そしてシューマンの「春」、明るい響きながらドイツ・ロマン派の音楽らしい堂々とした部分もしっかりと兼ね備えた見事な演奏でした。 特筆したいのはコントラバス。 常に響きの土台となっているのはもちろんのこと、リズム感があり、この曲に推進力を与えていました。 もちろん牧村さんの明快な解釈によるところ大なのですが、皆さん一致団結して、それぞれにベストを尽くしたと思われる素晴らしい演奏で、聴いていて気持ちがよくなりました。

なお冒頭の副指揮者・柴愛さんの指揮によるロザムンデ序曲、若々しさの溢れた演奏でした。 特に序奏部の切り返しの素早くてなんと力強いこと。 恣意的な感じも受けましたけれど、これも若さの現れですね。 軽やかに駆け出し、調子も出てきたようです。 後半になるとオケの響きも見事にブレンドされ、恰幅良さも感じさせたフィナーレが素適でした。

何度も書きますが、このオケを最初に聴いたときには・・・率直に言って下手でした。
コケまくってて・・・ホントどうなることか、そんな風に思ったこともあります。 学生オケですから、毎年少しづつ入れ替わりがあって、正確には当時とは同じオケではありません。 でも、このオケに伝統というものがあるとしたら、それは当時も今も、単に上手に聴かせよう、としていないことじゃないか、とビゼーの交響曲の第2楽章を聴きながら、ふっとそんなことを感じました。

ミスしないように頑張って演奏するのではなく、技量の多寡はあっても演奏する音楽を通して一生懸命に伝えようとしている、それが今も脈々と伝わっているように思います。 とても春らしい清々しい演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

いい天気でしたね。 慢性睡眠不足なのですが、休日早朝の恒例となりつつあるウォーキングのあと少々眠ったので体調も万全です。 予定よりも少し早く最寄駅を出発、大和西大寺のホームで待つこと10分。 初夏を思わせる風を感じながら大和八木に向いました。

GWなので、急行電車が西ノ京駅に臨時停車したりして、ちょっと慌てましたが、ホールには開演10分前に到着。 ステージで管楽器奏者の方が練習されているのを聴きながら、後ろから6列目かな、ね-21 の席を確保しました。 客席はざっとみて4割程度の入りでしょうか。 もうちょっと入ってもいいのですけどね。

予鈴のブザーが少々頼りなさげに鳴って、弦楽器メンバーの方も自由入場で登場。 14-9-8-7-4 の通常配置ですね。 コントラバスに西出の名前がありましたが、欠席のようですね。 西出さん、10年以上前の大阪シンフォニカーで若者に混じって楽しそうに演奏されてましたが、いまでも学生オケに混じって演奏を楽しまれてるようです。 いいのですが、最近ちょっとお姿をお見かけしないのが少々気がかりでもあります。 やはり若くないですしね。

場内がいきなり暗くなり、ステージが照明で照らされました。 コンミスが登場してチューニングを行って準備完了。 背筋をピンと伸ばし、黒シャツに黒パンツの副指揮者の柴さんが颯爽と登場しました。 ショートカット、小柄でボーイッシュな感じですね。 でもちょっと緊張気味かしら。 いよいよ始まります。

シューベルトのロザムンデ序曲、若々しさの溢れた演奏でした。 特に序奏部の切り返しの素早くてなんと力強いこと。 恣意的な感じも受けましたけれど、これも若さの現れですね。 軽やかに駆け出し、調子も出てきたようです。 後半になるとオケの響きも見事にブレンドされ、恰幅良さも感じさせたフィナーレが素適でした。

力強い幕開け。 明るさを持った響きがキレよく響きました。 オーボエが慎重に旋律を歌い、他の木管もまたゆっくりとなぞるように進めますが、弦楽器が入る部分、強靭な響きがキレ良く何度も入ってきて、ちょっと流れを断ち切るようにも感じましたが、これは気合の現れでしょう。 柴さん、左腕とともに身体を前のめりにし、相当力入っていたようです。
そんな具合でバシっと序奏も切り、主部の旋律が駆け出すと、艶やかな弦のアンサンブル。 いいですね。 ここでもメリハリをハッキリとつけつつ進めますが、軽やかな木管、金管もよく纏って、明るい音楽が心地いい感じです。 途中ちょっと惜しいと思う場面もありましたが、オケ全体としてとてもよく纏まった演奏に好感が持てます。 元気があって、青年の若々しさを存分に感じました。
後半、主題を戻して丁寧にリードする柴さんのもと、オケ全体もかなり乗ってきたようで、響きもブレンドされて深みが増しました。 そしてトロンボーンがいい響きを聴かせたフィナーレ、恰幅良く纏めました。 ここ素適でしたね。

ステージは暗転し、トロンボーン奏者が抜けて、管楽器奏者のシフトが行われたり、弦楽器も 13-10-8-8-4 となりました。 別のコンミスの方によるチューニングが実施されて準備完了。 牧村さんがゆっくりと登場され、指揮台の上でにこやかな笑みを見せて一礼。 さあ始まります。

ビセーの交響曲第1番、爽快な演奏に心踊りました。
中低弦の響きがまろやかに絡んでいて、安定感も抜群。 弾力のある響きもよく出ていました。 第2楽章などちょっと怪しくなりそうな場面もありましたが、牧村さんの集中力で見事に踏ん張り、後半は管と弦のブレンドされた素晴らしい響きを堪能しました。 素晴らしかったですね。

第1楽章、牧村さんがさっと小さく振ると、覇気のある小気味良い響きが飛び出しました。 強靭さを持った深みのある響きと、軽やかな響きが交互に出ていいですね。 弦のアンサンブル、少々流れてゆくような感じもしないではありませんが、瑞々しさがいっぱいです。 オーボエのソロも可憐、ホルンも円やかな響きを聴かせてくれました。 トランペットが軽やかに吹いて、爽やかさもいっぱい。 でも中低弦の響きがしっかりと聞えてきているので安定感も抜群です。 うきうきしながら聴いていました。 そして力強く振った牧村さんに合わせて、弾力ある着地もカッコよかったですね。 あっという間に終わったみたいでした。

第2楽章、ふわりとした響きによる開始、牧村さんが広げた両手をそのままに保ち、なでるようにして進めます。 エキゾティックなオーボエの響きによる優美な旋律、たっぷりとした弦楽器のピチカートなど、ゆっくりと、とてもいい感じで進んでゆきましたが、しかし、弦のアンサンブルがな〜んとなく怪しくなりそうな感じ。 でもここは牧村さんの集中力が凄かったですね。 指揮台の上で緊張感を漂わせ、眼光鋭くオケの響きを纏めて動いていました。 そして、コントラバスの落ちついた響きに乗り、フーガ風の中間部を全員で纏めて音楽が見事に大きくなってました。 聴かせる音楽ですね。 そして冒頭の旋律に戻り、夢見心地のまま最後の静かな着地まで音楽を満喫しました。 巧い下手とかじゃないですね、清々しくなりました。

第3楽章、華やかを感じた開始。 やや開放的に鳴るトランペット、爽やかなヴァイオリンの響き、フルートの軽やかさもとても気持ち良いですが、低弦がとてもまろやかな響きで曲を支えていたのが素適でしたね。
ヴィオラとチェロが深みと明るさを共存させた響き、これは開放的ですが、そのあとは牧村さん、きちんと締めて対比させてます。 オケもしっかりと応え、朗らかな演奏に心躍らされます。 最後は左手でさっとすくっておしまい。 一気に駆け抜けた感じ。

第4楽章、間合いをはかってジャンと飛び出し、滑るような弦楽器が心地良い開始。 ここでも低弦が柔らかく絡んでいてほんと素適。 そして、ジャンと切るキレの良さはあっても、刺激的じゃなくて弾力のある響き。 これもまた素適。 ちょっとテンポが遅くなる部分では少々まとまり感の無さもあったりするのですが、気持ち良さはちゃんと持続してます。 チャーミングな木管を散りばめ、またもや滑るような弦楽器で走り始めます。 牧村さん、ちょっと抑え気味かしら、皆さん若々しいですものね。 ホルンが牧歌的な響きを聴かせ、トランペットが軽やかに吹いて爽快。 低弦のリズムの良さは最後まで途切れず安定して曲を支えてて素晴らしいなぁ。 最後、木管が覇気ある響きで入ってくると軽やかなステップを踏むようにし、全曲を見事に纏めあげました。

何度も書きますが、このオケを最初に聴いたときには・・・率直に言って下手でした。
コケまくってて・・・ホントどうなることか、そんな風に思ったこともあります。 学生オケですから、毎年少しづつ入れ替わりがあって、正確には当時とは同じオケではありません。 でも、このオケに伝統というものがあるとしたら、それは当時も今も、単に上手に聴かせよう、としていないことじゃないか、と第2楽章を聴きながら、ふっとそんなことを感じました。
ミスしないように頑張って演奏するのではなく、技量の多寡はあっても演奏する音楽を通して一生懸命に伝えようとしている、それが今も脈々と伝わっているように思います。 素晴らしいことですね。

15分間の休憩。 席でじっとアンケートなど書いて過ごしました。 お客さん、ちょっと増えたみたいですね。
しばらくすると管楽器奏者の方などが出てこられて練習開始。 予鈴のブザーのあと自由入場で揃って 13-10-8-7-4 の編成となります。 またまた別のコンミスの方によるチューニングを実施して準備完了です。 牧村さんが出てこられました。 後半プログラムが始まります。

シューマンの交響曲第1番「春」、明るい響きながらドイツ・ロマン派の音楽らしい堂々とした部分もしっかりと兼ね備えた見事な演奏でした。 特筆したいのはコントラバス。 常に響きの土台となっているのはもちろんのこと、リズム感があり、この曲に推進力を与えていました。 もちろん牧村さんの明快な解釈によるところ大なのですが、皆さん一致団結して、それぞれにベストを尽くしたと思われる素晴らしい演奏で、聴いていて気持ちがよくなりました。

第1楽章、さっと振って、明るく艶やかなトランペットのファンファーレによる開始。 力のある主題の呈示、簡潔な間合い、ぐいぐいと推進力のある演奏に惹きこまれていきました。 ホルンの斉奏もしっとり、トランペットもキレよく纏め、木管は軽やか。 でも主役は弦楽器かな。 明るい響きなのにヴォリュームも感じて素晴らしい。 これはコントラバスによる下支えによるところ大。 牧村さんのしっかりとしたリードに活き活きと応えているオケがとにかく気持ちいい。 早いパッセージでは木管が少々怪しく感じる場面もありましたが、これもまた爽快感を感じました。 トロンボーンのたっぷりとして良い響き、トランペットのファンファーレで拡大した音楽もまた低弦がしっかりと支えて引き締まった音楽。 ティムパニがコンパクトだけど深い響きで力を増した終結部を牧村さんがぐぃとすくいとって締めたあと、残響がホールに残っていました。

第2楽章、のびやかで情感のある弦楽アンサンブルがゆったりと進みます。 木管が綺麗な響きで併せで一体感があります。 チェロが想いをこめた旋律を歌い込み、いいなぁ。 牧村さん、いつもよりも大きな動きでオケを乗せているようですね。 よく動き回ってます。 しっとりとしたオーボエ、クラリネット、そしてホルンもからんできますが、弦楽器がホントとてもいい。 美しい演奏です。 トロンボーンが暗示をするかのようなコラールを示したあと響きがそっと消えます。

第3楽章にアタッカで突入、覇気のある響きによる主題の呈示。 熱気も篭もってますね。 これをさっと翻して軽やかで柔らかな木管。 そしてまた主題と引き締まって充実した音楽です。 しかもカッコ良い音楽になっているのが牧村さんらしいところでしょうか。 柔らかく響くコントラバスが常に芯になっていて、ここでも安定感抜群で、しかも重過ぎないんですね。 そのコントラバスに牧村さんが力を更に込め、舞曲のリズム。 堂々とした主題を戻して、また軽やかに駆けてと、纏ったオケの響きがとても素晴らしかった。 そしてこれをす〜っと退いてゆき、弦奏者がさっと譜面を返します。

第4楽章もアタッカ、雄大な響きの序奏に続き、弦と木管が戯れるように活き活きとした主題。 常に落ちついた曲運びです。 低弦がしっかりとしていて曲に推進力を与えてますね。 牧村さん、軽やかに進めつつも、しっかりとした足取りで曲を進めます。 トロンボーンの張りのある響きがホールに流れ、牧村さん、オケ響きをため込み開放しません。 そして遥かなホルンの響きに続いてフルートのみずみずしいカデンツァで開放。 素適でした。 そしてここからまた力を増し、弦と木管が戯れるチャーミングな響きを挟み込みつつ、ビシバシっと決めながら進めた終結部。 晴れやかで、堂々とした響きによって全曲を纏めました。
明るい響きを基調にしつつもドイツ・ロマン派の音楽らしい堂々としたシューマンを楽しみました。

いずれの曲もとても春らしく活き活きとした演奏で、気持ちの良い演奏会。 明るい気持ちになって会場を後にしました。
外に出るとちょっと汗ばむ感じ。 いい一日でした。 皆さんお疲れさまでした。