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大阪大学交響楽団 第89回定期演奏会

活き活きとした響きに満ちたシューマン戻る


大阪大学交響楽団 第89回定期演奏会
2007年7月7日(土) 14:00  尼崎市総合文化センター・アルカイックホール

ワーグナー: 楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲
シューベルト: 交響曲第7番ロ短調「未完成」
シューマン: 交響曲第4番ニ短調op.120

指揮: 金洪才


オーソドックスながらも活き活きとした響きに満ちたシューマンの交響曲第4番に感動。 素晴らしい演奏でした。 この曲、大好きなだけにハードルも高いのですけれど、楽々とクリアしていました。

何と言って表現したらいいでしょうか、充実したアンサンブル、この言葉しか浮かびません。 金洪才さんの指揮らしく誠実でいて内面は熱い響きに満ちていました。 オーケストラも分奏がとてもしっかりとしていて内声部が充実。 全体として構成感のはっきりとした表現なのに活気に満ちていたと感じたのはこの内声部の充実によるものだと思います。 終演後、ホルンの第3・4番奏者の方が握手して健闘を称え合っていたとおり、タイトなホルンの響きも全体の響きにマッチしていてとても素晴らしかったですね。

これに先だって演奏されたシューベルトの未完成交響曲もまた落着いた表現ながら活気がありました。 シューマンもワーグナーでもそうでしたが、各楽器の響きの当りがとても柔らかく、刺激的な感じがまったくしないのが素晴らしいところです。 演奏全体としても落着いた色彩を感じさせますが、そこはやはり学生オケらしい活きの良さ、底力も勿論あって、金さんのもとで丁寧な演奏として見事に応えていました。 聴き応えのある未完成交響曲でした。

冒頭のワーグナーの楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲も落着いていながらもパワーの内包された若者らしい覇気ある演奏が素敵でした。 弦楽器奏者の方は弓をいっぱいに使っていましたし、金管ファンファーレはオケ全体の響きのトーンに見事にマッチさせた響きを拡散させ、ともに広大な空間をイメージさせるのに充分。 落着いて雄大な演奏ながらキリッと引き締まった表情が印象的でした。

しかしメインのシューマンの交響曲第4番の演奏には敵わないですね。 今年2月には某オケで1841年版による演奏を聴きましたが、こちらはオーソドックスな版ながらも金洪才さんの指揮での熱い演奏。 大きな拍手を贈りましたがアンコールはなし。 確かに、この素晴らしい演奏の後には曲は不要です。 素晴らしい演奏を胸に会場を後にしました。 皆さんお疲れさまでした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

前日の展示会で説明員をやっていたため1日中立ちっぱなしでまだ足が重く、気持ちが前向きになりませんが、金洪才さんの指揮とあれば聞き逃せません。 このオケの第78回定期(2002年)でのワーグナー「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死(独唱:基村昌代)の素晴らしい演奏が脳裏に蘇ります。 ふぅふぅ言いながら、アルカイックホールには開演15分前に到着。 2階席最前列には人が多くいたので、中央通路後ろの 6-34 を確保しました。 ここも楽チンなのです。

ホール内に入った時にはコントラバスの音がしていて、ステージで練習をされていたようですが、席についてパンフレットなど読んでいたら楽屋に下がられたようです。 お客さんはさすがに学生さんが多いのが特徴的ですね。 1階席は最終的には9割、2階席も6割程度入っていたのではないでしょうか。 学生さんが多いとホール内に活気がありますね。

定刻、整然とした整列入場が始まりました。 各パート毎に綺麗に揃って歩き、着席してゆきます。 弦楽器の編成は 12-12-10-8-6 の通常配置。 全員が席に着くとコンマスが拍手とともに登場、チューニングを開始すると場内が暗転しました。 準備完了です。 金洪才さんが舞台袖より一歩出るとまず客席を見て笑顔で軽く会釈、ステージ中央に立つ前にオケを立たせ、コンマスと握手をしてから一礼。 金さん、常に静かな笑顔をたたえていらっしゃいますね。 さあ始まります。

ワーグナーの楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲。 落着いていながらもパワーの内包された若者らしい覇気ある演奏が素敵でした。 弦楽器奏者の方は弓をいっぱいに使っていましたし、金管ファンファーレはオケ全体の響きのトーンに見事にマッチさせた響きを拡散させ、ともに広大な空間をイメージさせるのに充分。 落着いて雄大な演奏ながらキリッと引き締まった表情が印象的でした。

金さんがさっと振って締まった響きによる開始。 荘重さもありますがスッキリとしたオケに深い響きのティムパニが絡んでいます。 間奏部分の管楽器によるアンサンブルは雑然とした感じになってしまいましたが、主題を戻して雄大な感じとして昇ってゆきます。 上から見ているので、弦楽器パートの動きがよく揃っているうえに弓をいっぱいに使っているのもよく解ります。 いいですねぇ。
金さん、膝を使ってふわっふわっと盛り上げたかと思うと、下からしゃくり上げるように力を込めています。 木管アンサンブルとホルンがチャーミングに奏で、チューバが柔らかな吹奏で歌って見事。 弦楽アンサンブルの分奏がほんと巧くて、返ってきちんとした合奏にはもうちょっと遊びが欲しいような気もしますけど、それは欲張りというもの。 金管ファンファーレもまた全体の響きと同質で恰幅のよい音楽としています。 落着いて引き締まった音楽を雄大に演じ、シンバルもベストタイミング。 最後まで力を内包させた落着いた演奏として全曲を閉じました。

いったんステージ上の皆さんが全員退場。 3名ほど出て来られてティムパニを組替え、女性奏者と思われる方だけが残ってチューニングし、やはり舞台袖に下がりますが、すぐにこの奏者を先頭に整列入場となりました。 しかしこのオケの整列入場、粛々と歩みを進めて、見るからに綺麗な入場行進といった感じですね。 とにかく 11-11-7-8-6 の編成となりました。 コンミスの方が拍手とともに登場されてチューニングを実施。 準備が整うと金さんが登場し、今度はコンミスの方と握手をされてから一礼して登壇。 すぐにコントラバスの方を向いて始まります。

シューベルトの未完成交響曲。 この演奏もまた落着いた表現ながら活気がありました。 シューマンもワーグナーでもそうでしたが、各楽器の響きの当りがとても柔らかく、刺激的な感じがまったくしないのが素晴らしいところです。 演奏全体としても落着いた色彩を感じさせますが、そこはやはり学生オケらしい活きの良さ、底力も勿論あって、金さんのもとで丁寧な演奏として見事に応えていました。 聴き応えのある未完成交響曲でした。

第1楽章、コントラバスの方を向き、柔らかく落着いた低弦の響きを導き出し、ヴィオラやヴァイオリンなども静かな響きのアンサンブルとして進めます。 オーボエのしっとりとした響きも良い上々の出だし。 最初のクライマックスをキリッと引き締まった響きで越えると、チェロのアンサンブルが柔らかな素適な響きで歌います。 この合奏のまろやかな美しさがとても素晴らしかったなぁ。 そして落着いた高音弦に引き継がれます。 金管楽器が横に拡散するような響きで包み込むように吹き、ティムパニが弾力ある打音も見事。 そして主題が繰り返されました。
オーソドックスで演奏全体としても落着いた色彩なのですが、学生オケらしい活きの良さ、底力があって、ぐいぐいと惹き込んでゆくような感じがします。 終結部もそんな感じで冒頭の旋律を歌いまわしてゆき、各楽器の響きや情熱がうまくブレンドされた演奏。 ぐぃと盛り上げて熱気のある終結でした。
その熱気に刺激されたのでしょうね、客席より拍手も沸き起こりましたけど、これには納得します。

第2楽章、コントラバスの方を向いた金さん、柔らかく振り、少し明るさを感じさせる落着いたピチカートとホルンとファゴットの柔らかな和音を聴かせます。 ゆっくりと、しかも緊張感を持って進めます。 クラリネットの響きも落着いた音色で、続くオーボエもともに清潔な響きが特徴的でした。 ぐっと盛りあがりますが、ここも響きの角を落して刺激的ではないのに力感があります。 丁寧に曲を進め、ホルンがちょっと惜しい場面もありましたが、主題を戻してこれを挽回。 また丁寧に進めてゆきます。 キリッと引き締まった表情、愛らしい旋律、ともに誠実さと若さをどこか漂わせていて、これらがマッチして聴き応えのあるシューベルトになっているようです。 シューベルトって31歳で亡くなっているものなぁ(若さを感じて当然かぁ)などと考えているうち、そっと全曲を閉じました。

20分間の休憩。 咽喉も渇いたのでロビーに出てお茶でもと思ったりもしましたけど、なんだか動くのが億劫なので席でじっとして開演を待ちます。 ちょっと寝ようかなぁとも思いましたけど、目を閉じたもののさすがに眠れませんね。 ステージで音がするので目を開けると、不要になったイスやひな壇を運び出していました。 そして暫くすると、金の指輪の忘れ物がありました、との放送もかかって客席からどよめきが起きたりもして、まぁ色々とありますねぇ。 とにかく予鈴のブザー、アナウンスのあと整列入場が始まりました。 今度は 10-11-8-8-7 の編成です。 また別のコンミスの方が拍手とともに登場してチューニングを実施。 金さんが出てこられました。 メイン・プログラムが始まります。 この曲がお目当てなのですね。 期待で胸が踊っています。

シューマンの交響曲第4番、オーソドックスながらも活き活きとした響きに満ちた演奏に感動しました。 素晴らしい演奏でした。 何と言って表現したらいいでしょうか、充実したアンサンブル、この言葉しか浮かびません。 金洪才さんの指揮らしく誠実でいて内面は熱い響きに満ちていました。 オーケストラも分奏がとてもしっかりとしていて内声部が充実。 全体として構成感のはっきりとした表現なのに活気に満ちていたと感じたのはこの内声部の充実によるものだと思います。 終演後、ホルンの第3・4番奏者の方が握手して健闘を称え合っていたとおり、タイトなホルンの響きも全体の響きにマッチしていてとても素晴らしかったですね。 この曲、大好きな曲だけにハードルも高いのですけれど、楽々とクリアしていました。

第1楽章、両手を大きくゆったりと振り上げて弾力のあるオケの響き、落着いて進めると高音弦の綺麗な響きも絡んでくる充実した開始。 弦楽器はもちろん、木管、ティムパニも同じようなくすんだシューマンらしい色彩がしています。 そして主部、低弦の響きに乗せてぐいぐいと進みます。 ホルンの斉奏がタイトに響き、底力のある響きもまた全体の響きの色に合っています。 金さん、この部分では時折お尻をクイッと横に振ってアクセントを付け、抑揚をつけながら進めて、聴いているこちらも乗せられて思わず身を乗り出していました。 歯切れが良く、力感ある演奏なのに、耳当たりのよい響きで柔らかい感じもさせて素晴らしいですね。 中低弦の響きがブレンドされ、やはり落着いた色彩ながら活力に溢れたクライマックス。 金さんがここは鋭角的に振って力をこめて走らせたのをすっと止めました。

第2楽章、哀愁漂わせたオーボエの響きが素適。 ゆっくりと歌って他の木管とも絡んで清楚な感じもさせながら進みます。 高音弦が入ると瑞々しくもあって、ここに艶やかだけれど控えめなソロ・ヴァイオリンが乗ります。 すべての楽器が突出していなくて、とても落着いた雰囲気です。 中音弦が充実しているからでしょうね。 音楽がとても安定しています。 そしてこの響きに乗った木管や独奏ヴァイオリンもより息づいて聞こえてくるような感じがします。 静かにこの楽章を閉じました。

第3楽章、軽いハナ息とともに両手を振り上げた金さん、落着いた力強い響きを導き出します。 この響きにも艶がありますね。 充実したアサンサンブルです。 低弦は柔らかく鳴り、高音弦はしっとりした響き。 丁寧なのですが、活気を持たせて進めます。 中間部のトリオは一転してゆったりと歌わせていました。 オーボエもまた柔らかな響きでしたね。 ふわっふわっとした感じで進めたあと、また主題を戻して力強く演奏。 そしてまたトリオを再現。 何も変わったことはしてないのに充実した演奏に惹き込まれっぱなし。

第4楽章、柔らかな高音弦による持続音に金管が加わってきて音量を増します。 ホルン、トロンボーンの響きもパワーがあるのに柔らかく、トランペットは落着いた輝きを見せた響きが素晴らしかったですね。 金さん、ここではグーにした左手を空手のように突き出して頂点を形成したり、指揮棒を持った右手を高々と上げてホルンの斉奏を導き出したりするエネルギッシュな指揮なのですが、オーソドックスな構成には全く変わりありません。 きちっきちっと構成感を保って進め、オケもそれにきちんと見事に応える素晴らしい演奏。 フィナーレではスピードを上げ、重厚ながらも爽快さをも感じさせる活き活きとした演奏で駆け抜けて全曲を締めました。

この曲、大好きな曲だけにハードルも高いし、今年2月には1841年版による素晴らしい演奏も聴いていたのですが、オーソドックスな版ながらも金洪才さんの指揮によるこの熱い演奏に感動。 大きな拍手を贈りましたがアンコールはなし。 確かに、この素晴らしい演奏の後には曲は不要ですね。 ホールが明るくなっても拍手を贈り、素晴らしい演奏を胸に会場を後にしました。 皆さんお疲れさまでした。