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セント・マーティンオーケストラ 第4回定期演奏会

ワクワクした交響曲第1番戻る


セント・マーティンオーケストラ 第4回定期演奏会
2007年11月10日(土) 14:00  東灘区民センターうはらホール・大ホール

ベートーヴェン: レオノーレ序曲第1番op138
モーツァルト: ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466
ベートーヴェン: 交響曲第1番ハ長調op.21

独奏: 西玉美絵(p)

指揮: 河崎 聡


ベートーヴェンの交響曲第1番、ワクワクするような演奏を存分に楽しみました。

プログラムには「この曲を聴くと思うと期待で胸がワクワクするようなお客様は少ないのではないでしょうか・・・(中略)・・・「1番シンフォニーっておもしろいね」と感じていただけたら・・・」とコンマスの方が書かれていましたけれど、その目的は十分に達っせられたのではないでしょうか。 実はこの数少ない1番シンフォニーがお目当の一人でした。 ブロムシュテットのCDでこの曲の魅力に開眼したのはいつだったかしら・・・ それはともかく、ハイドンやモーツァルトの延長線上にベートーヴェンが存在する、そんなごく当たり前のことに気づかされて以来の好きなシンフォニーです。 そして今回のセント・マーティンの演奏もまたそのことを強く感じさせてくれました。 特に第2楽章、ハイドンのような愉悦の響き、終楽章は疾風怒濤、活き活きとしていて真摯で熱く楽しい音楽を堪能しました。

音楽監督でもある指揮者の河崎さん、他の曲でもそうだったのですが、細かな指示を繰り出すのではなく、常に笑顔を絶やさず、身体をゆすって楽しそうに振り、時にオケに信頼を寄せるように微笑みかけて進めてゆく。 オケもまたそれにきちんと応えていました。

なおこれに先立って演奏された西玉美絵さんの独奏によるモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。 西玉さんの淡々としていながらも底光りのするピアノの響きが素晴らしく、この曲のイメージによく合って魅力的でした。 ただ、オケの演奏がキレよく畳み掛けるようでもあって、ちょっと音量が大きかったかな。 西玉さんの音量もそれに負けてはいなくて、真摯で熱い演奏で応え、しっとりと浸るのではなくキリっと引き締まった若々しく真摯なモーツァルトとしていました。

レオノーレ序曲第1番もまたタイトでストレートな演奏でしたね。 冒頭こそ少々落ち着きを得ませんでしたが(ノン・ヴィブラート奏法だったかもしれませんが)、盛り上がるとキレよく畳み掛けるようにぐいぐいと進めて力強い演奏になりました。 小細工なし、ストレートに立ち向かった演奏に思えました。

とにかく、弦楽アンサンブルのふくよかさなど、1番シンフォニーの演奏は一味違っていました。 ソリッドに響く金管にも余裕を感じましたし、木管の柔らかな響きにも魅了されました。 心躍るような楽しい演奏に満足して会場を後にしました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

秋晴れ、東海道線の電車の中に降り注ぐ陽の光が痛いほど。 いい天気ですね。 でも、いかんせん当方の身体は疲れが抜けていなくて、大阪まで出る地下鉄の中では熟睡していました。 最近、電車の中での熟睡が日常になっていますが、さすがに日頃乗っていない東海道線では眠るのは危険で、沿線の風景を楽しみながらちょっとした遠足気分で住吉へと向かいました。

元気だったら、演奏会のあとに六甲ライナーに乗って小磯良平の記念館にも立ち寄りたいところやけどそれはまた今度、と一緒に行った奥さんと話をしながらホールに到着。 開演25分前だったかしら、受付でパンフレットを受け取ってホールに入るとそこそこ中央付近は埋まっています。 中央ブロックの通路側、傾斜になった客席の中ほどのN-8に落ち着きました。 いつもはもっと後方から聞いているのでちょっと近め、少々ためらいましたけど、あまり悩むのも面倒ですものね。

さて席についてしばらくすると、4名のコントラバス奏者とティムパニ奏者の方が出てこられて練習開始。 自由入場方式なのですね。 コントラバス奏者の方はステージに向かって左奥におられるので対抗配置。 ティムパニは右奥です。 あとから登場されたトランペットとホルンはともにティムパニの前に配されていました。

予鈴のチャイムが鳴って全員が揃うと弦楽器は 10-10-7-8-4 の編成のようです。 舞台上に人があふれるほど乗っていてヴィオラやチェロの数がよく見えません。 コンマス(ミストレスですがこのオケではコンマスと呼んでいるようですね)が出てこられてチューニングを実施。 さて、準備完了。 音楽監督の河崎さんがにこやかな表情で出てこられ、コンマスと握手して一礼。 指揮台に登壇して始まります。

ベートーヴェンのレオノーレ序曲第1番。 今回は1番にこだわったプログラミングだそうで、この1番はタイトでストレートな演奏でしたね。 小細工なし、ストレートに曲に立ち向かった演奏に思えました。 冒頭こそ少々落ち着きを得ませんでしたが(ノン・ヴィブラート奏法だったかもしれませんが)、盛り上がるとキレよく畳み掛けてぐいぐいと進めた力強い演奏になっていました。

河崎さん、指揮棒を持った手を真下から大きく2度振り上げ、イチ・ニでスタート。 深い和音、それに続く高音弦、やや不安体な感じ? ノンヴィブラート? よく判りませんでしたが、旋律を各パートがゆっくりと丁寧に受け渡してゆきます。 少々型どおりな感じかしら。 徐々にスピードを上げるとハリのある響きが畳み掛けるように盛り上げ、元気が出てきました。 そして木管が端正な響きを重ね、また丁寧に進めたあと、タイトなホルンの響きを伴ってストレートにぐいぐいと推し進めます。 時にちょっと叩きつけるようでもある元気な音楽として、最後もきちっと纏めました。

暗転、オケ団員の方はいったん全員退場。 第2ヴァイオリンの席を後ろにずらし、舞台上手よりピアノを搬入します。 舞台中央にピアノ、団員の方が戻ってきて席につきますと、先ほどでもあふれるほどの人が乗っていた舞台が満杯。 編成はヴァイオリンが1プルト減ったのは判りましたが、あとは多くの人でよく見えません。 8-8-7-8-4 の編成かしら。 とにかく人がいっぱいですね。
チューニングを終え、シックなエンジ色のドレスを着たソリストの西玉さんと河崎さんが登場。 西玉さんは20才代でしょうね、きりっとした真摯な表情が清楚でもあります。 指揮者の河崎さんは常に笑顔で好対照ですね。 さあ始まります。

モーツァルトのピアノ協奏曲第20番。 西玉さんの淡々としていながらも底光りのするピアノの響きが素晴らしく、この曲のイメージによく合って魅力的でした。 オケの演奏は先と同じくキレよくストレートで、時に畳み掛けるようでもあって、ちょっと音量が大きかったかな(席がいつもよりも前ということありますが)。 また西玉さんの音量もそれに負けてはいなくて、真摯で熱い演奏で応え、しっとりと浸るのではなくキリっと引き締まった若々しく真摯なモーツァルトとしていました。

第1楽章、深く落ち着いた音色ながらキレよく進める河崎さん、ティムパニも強打ながら渋い打音で覇気があります。 ヴァイオリンはここでもノンヴィブラートかしら。 西玉さんのピアノが落ち着いた音色で清楚に入ってきました。 清楚といっても軽い響きではなく、底光りのする深みを伴っていますね。 この曲のイメージによく合っていていいですねぇ。 オケが要所に力を込め、やや音量高く入ってきます。 西玉さんはインテンポで淡々とした感じで進めます。 でもやはり要所ではキリっとした表情ながら、熱気を帯びた響きで応えて音量負けすることはありません。 カデンツァの冒頭も左手が決然した響きで割って入り、深い響きながらダイナミズムを大きくとった演奏で惹きつけました。 オケが力を込めてぐいぐいと進めて着地しました。

第2楽章、粒立ちの良いピアノ響きは柔らかく、明るくて華やかなロマンツェ。 まさにモーツァルトらしい素敵な演奏として始まりました。 オケはここでも熱い響きでサポートしていますが、淡々とした感じで進める西玉さんのピアノにぴったりと寄り添っています。
河崎さんが右手を振って決然とした音楽にすると、ピアノもまた深みのある凜とした響きとなって端正に進めます。 主題を戻し、また明るい音色にもどりますけれど、淡々としているせいかちょっと単調な感じも受けつつこの楽章を閉じました。

第3楽章、立ち上がりの良いピアノの響きにハッとした開始。 オケもまた畳み掛けるように入ってきて、タイトにぐいぐいと進めます。 ここでも底光りのするピアノの響きが素敵。 木管も端正に吹いてストイックな演奏ですね。 オケの低弦もしっかりとしています。 ティムパニの強打、そしてカデンツァ。 粒立ちの良い凜とした響き、ほとんど色はつけずに端正に弾いて仕上げてオケにバトンタッチ。 オーボエ、ファゴットもまた端正に歌って引き継ぐと、河崎さん、上下に棒を振って力を込めたフィナーレとして全曲を閉じました。

西玉さん、演奏前、演奏中と同じく表情を変えずに客席に向かって礼をしたあと、指揮者の河崎さんと握手したらようやく笑顔が少し覗きました。 若々しく真摯なモーツァルトの演奏に熱い拍手を贈りました。

20分間の休憩。 あまり身体を動かす気がしないので席でパンフレットを眺めたりしながら開演を待ちます。 やなりこのところの疲れが抜けていなくて、なんとなく眠いのですけどね、演奏はそれぞれに面白くって演奏中に眠ることはありませんが、でも休憩時間になると疲れが押し寄せてくるって感じです。 次の演奏への英気を養いました。 そして定刻、メンバーの方が揃って 10-10-7-8-4 の編成。 コンマスによるチューニングのあと、河崎さんがにこやかに登場され、メインの曲が始まります。

ベートーヴェンの交響曲第1番、ワクワクするような演奏を存分に楽しみました。 ブロムシュテットのCDでハイドンやモーツァルトの延長線上にベートーヴェンが存在しているこの曲の魅力に開眼して以来の好きなシンフォニーです。 そして今回の演奏もまたそのことを強く感じさせてくれました。 特に第2楽章、ハイドンのような愉悦の響き、終楽章は疾風怒濤、常に笑顔を絶やさない河崎さんによる活き活きとしていて真摯で熱く楽しい音楽を堪能しました。

第1楽章、わやらかな木管とピチカート、ゆったりとふくよかな弦楽アンサンブルに引き継がれた開始。 これまでと一味違った響きに惹かれました。 これまではストレートに響く感じでしたが、この演奏ではぐいぐいとスピードに乗せて畳み掛けるようになっても、奥行きや弾力を感じます。 いいですね。 そして木管がこれまた柔らかなアンサンブル。 まろやかさもまた魅力です。 河崎さん、楽しそうにオケをドライブしていて、要所には力を込めるけれど、細かな振りはせずに微笑みかけるだけでオケの自主性に任せていた部分もあったようです。 躍動感のある楽しい音楽を楽しみました。

第2楽章、第2ヴァイオリンの方を向いた河崎さん、落ち着いた響きを導き出すと、ヴィオラからも深い響き、それが各弦楽パートに広がって高音弦の清々しい響きがのった豊かな弦楽アンサブルとしました。 快活でかつ躍動的。 ハイドンのような愉悦な響きも感じましたが、これは中音弦が充実しているからでしょうね。 いいですねぇ。 そしてホルンの遥かな響きも絡んだ素敵な終結部も見事でした。

第3楽章、軽やかなヴァイオリンの響きが躍動的なスケルツォじゃなくメヌエットなのですね。 ときにトランペットなど金管を交えて畳み掛けるようにし、木管アンサンブルはやわらかな響きで弦楽器と呼応して軽快に進みます。 河崎さん、大きく振ってオケから楽しそうに音楽を搾り出しているみたい。 タテノリのリズムでぐいぐいと進めてこの楽章を閉じました。

第4楽章にはアタッカで入ります。 右手ですくうように振ってオケから和音を出し、ヴァイオリンがちょっとためらい勝ちな旋律の序奏を経てぐいぐいとスピードを上げてゆきます。 推進力があって、でも走っていても抑制がよく効いているので弾力も感じます。 この楽章でも中音弦が頑張っていますね。 いやぁ〜楽しい音楽です。 オケのチェリストの方も首でリズムを取りながら演奏されているのが見えました。 リズムに乗って力を込めて音量を上げ、また軽やかな旋律に戻してと、ワクワクとしてきますね。 ホルンのまろやかな響き、そしてティムパニの強打。 河崎さん、変わらぬ笑顔ですがハナ息だけでなく足音も交えたアクションでしっかりとオケの手綱を締めます。 オケも各パートを有機的に絡ませて歌わせたアンサンブルとして応えて見事。 最後は指揮棒をすくい上げるようにして潔く全曲を閉じました。

アンサンブルのふくよかさなど、先の2曲の演奏とは一味違っていましたね。 ソリッドに響く金管にも余裕を感じましたし、木管の柔らかな響きにも魅了されました。 とにかく心躍る楽しい演奏。 アンコールはありませんでしたが、この素晴らしい演奏に満足して会場を後にしました。 皆さんお疲れさまでした。