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甲南文化会大学交響楽団 第47回定期演奏会

熱い盛り上がりの中にもしっかとした造形戻る


甲南文化会大学交響楽団 第47回定期演奏会
2007年12月15日(土) 18:30 神戸国際会館こくさい大ホール

ブラームス: 大学祝典序曲(*)
ビゼー: 歌劇「カルメン」より抜粋
チャイコフスキー: 交響曲第5番ホ短調

指揮: 船曳圭一郎、上間康弘(学生,*)


熱い盛り上がりの中にもしっかとした造形をきちんと保った大人の演奏。 学生オケの定番ナンバー、チャイコフスキーの交響曲第5番などもっとハジけた演奏を想像していましたが、良い意味で裏切られました。

大人の演奏は、冒頭の学生指揮者上間康弘さんによるブラームスの大学祝典序曲から。 落ち着いた響きがブレンドされていて、特に後半、フィナーレにかけての充実感は見事。 チェロのピチカートが心地よく響き、柔らかな木管アンサンブルにまろやかな金管楽器、そしてしっとりとした粘り気を感じさせるアンサンブルで纏められた高揚感に酔いました。 この粘り気、学生指揮ではなかなか出ないように思いました。

指揮者を地元神戸出身の船曳さんに交代し、まずはビゼーの「カルメン」より抜粋。 いつもながらの縦ノリのリズム、要所を鋭く決めて進めますが、ここでも落ち着いてしっかりと纏めたオーケストラを評価したいと思います。 多少思い通りにいかない部分もあったようですが、パンフレットにもあったように最後まで緩むことのない演奏でした。 ラストナンバーを第2幕冒頭のジプシーの踊りで締めましたが、スピードアップしてもまろやかな響きをきちんと保っていたのがとても素晴らしかったですね。

そしてメインのチャイコフスキーの交響曲第5番、冒頭のクラリネットの奥深い響き、うごめくような弦楽アンサンブルの中にもまろやかさをも感じさせる上々の滑り出し。 そして終楽章の偽終始からアッチェランドがかけられたフィナーレまで落ち着いたサウンドで統一されていました。 この曲でも指揮棒を持たない船曳さん、学生オケ特有のソリッドな盛り上がりと覇気のある響きをしっかりとまとめ、堂々と進めてゆきました。 もっと熱気を前面に出し、抑揚を大きく付けてゴテゴテっとした演奏になるのかなぁ〜なんて勝手に思っていましたが、裏切られました。 しっかりとした大人の演奏を楽しませてもらいました。

客席からの熱い拍手は途切れることがなく、カーテンコールが繰り返されていました。 4回生の女性は頭に白い髪飾り、男性は胸に白いチーフだったでしょうか。 この演奏会をもって社会に巣立っていかれる方々、社会人になってからの演奏活動は大変でしょうが、この日のことを忘れずに演奏活動を続けていって欲しいと思いつつ拍手を贈り続けました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

ルミナリエで混み合う電車でもちゃんと座ることが出来、賑わう三宮の地下街を縫うようにして神戸国際会館には開場5分後に到着しました。 幸先良いですね。 入場が始まっていますが、長蛇の列はまだ残っていて、慌てて列の後方に並びました。 オケの女性の方でしょうね、入場券を配布しているのを受け取り、牛歩の歩みで進みます。 さすがに学生さんやOB/OGが多くて、○○さんやぁ〜、先輩ィ〜 なんていう声(主としてOGの方ですが)をあちらこちらで耳にしながらようやく入場。 入場してからも長いエスカレータがこのホールの特徴、しかしこれがまた遅いと感じるのは大阪人だからでしょうか。

ホールロビーに到着、すぐさま2階席への階段を目指して駆け上ります。 2階席最前列1列21番を確保しました。 足元が広くて楽ちんなのですね。 ようやく落ち着いたので、あとは席でじっとパンフレットやチラシなどを読んで開演を待ちます。 1階席は8割程度入ったでしょうか、予鈴の鐘が鳴りました。 ステージはまだ暗いのですが、オケの方々の整列入場が開始。 まず下手、続いて上手。 通常配置なのですが、先にコントラバスが出てきて陣取ってしまったので、チェロの方など楽器を持って通り抜けるのが大変そうやな、なんて余計なお世話なことを考えながら見てました。 最後にヴィオラ奏者の方が席に着き、全員が揃って 12-11-11-10-8 の編成です。 コンマスが登場、チューニングを始めますが、まだステージには照明がついてなくて、ステージ後方のオケの団旗にスポットライトが当たっています。 これを見ながらチューニングは厳かな響きにも感じました。 チューニングを終えるとようやく客席の照明が落ち、ステージが明るくなりました。 学生指揮者の上間康弘さんがゆっくりと歩いて登場して、いよいよ始まります。

ブラームスの大学祝典序曲。 落ち着いた響きがブレンドされていて、特に後半、フィナーレにかけての充実感は見事でした。 チェロのピチカートが心地よく響き、柔らかな木管アンサンブルにまろやかな金管楽器、そしてしっとりとした粘り気を感じさせるアンサンブルで纏められた高揚感に酔いました。 この粘り気、学生指揮ではなかなか出ないように思いました。

学生指揮者の上間康弘さん、緊張からでしょうか、ちょっと間合いを取り難かったのかな、何となく始まったように見えましたけれど(間違っていたらごめんなさい)オケから落ち着いた響きが出ての始まりです。 ハラっとしたものの、オケの響きがきちんとブレンドされていて、軽く吹くトランペットやホルンも素敵な開始です。 上間さん、左腕をすっと伸ばしてキレよく動かして覇気のある響きを導き出します。 弦の分奏がいいですね。
「我らは立派な校舎を建てた」、柔らかなトランペット、トローンボーンの響きが加わって厚みを増し、ゆっくりと進みます。 ティムパニのトレモロもうまく抑制を効かせてますね。 キレの良い響きに粘りもつけて盛り上げてゆきますが、この粘り気がなかなかの優れ物。 オケもずいぶんとのってきたようです。
「新入生の歌」、ファゴットが暖かな響きを軽快に進めて素晴らしかった。 そしてオーボエの愛らしい響きも見事。 活気をつけた全奏、ホルンがタイトに吹き、上間さん左腕でさらに力を込めます。 落ちついた纏まり感のある演奏は聴き応え充分。 チェロのピチカートが心地よく響きます。 まろやかな金管、落ち着いた打楽器、そして弦のアンサンブルも分奏もしっかりとしているけれど、たっぷりとした響きを醸し出しています。 充実感に満ちたまろやかな響きがホールに満ちたフィナーレ。 冒頭こそハラっとしましたけど、見事な演奏に大きな拍手を贈りました。

いったん全員が退場。 しばらくしてから上手下手と別れてまた整列入場で 15-13-13-9-8 の編成となりました。 やはりコントラバスが先に出てきてましたね(大きなお世話)。 コンミスが足音も高らかに登場、チューニングを開始します。 慌てて入ってきた奏者の方もいたようですが、準備完了となりました。 指揮者の船曳さん、小首をかしげるようにして客席をチラっと見て、ニコっと微笑むいつもの感じでの登場です。 コンミスと握手をし、客席に一礼をして始まります。

ビゼーの「カルメン」より抜粋した5曲。 いつもながらの縦ノリのリズム、要所を鋭く決めて進めますが、ここでも落ち着いてしっかりと纏めたオーケストラを評価したいと思います。 多少思い通りにいかない部分もあったようですが、パンフレットにもあったように最後まで緩むことのない演奏でした。 ラストナンバーを第2幕冒頭のジプシーの踊りで締めましたが、スピードアップしてもまろやかな響きをきちんと保っていたのがとても素晴らしかったですね。

Les Toreadors(第1幕への前奏曲・前半)、よく締まって迫力ある響きでの開始。 金管はソリッドで、弦楽アンサンブルにもパワーがあり、打楽器もインパクト充分、って書くとイケイケドンドンのような演奏に思えますが、きりっと引き締まった演奏は見事にコントロールされていて耳を奪われました。 一転、落ち着いた金管を挟んでから明るい弦の響き、これを勢いよくストップ。 深いヴァイオリンとチェロ、コントラバスのピチカートが深く響き、緊張感を含んだまま終わりました。

Aragonaise(第4幕への間奏曲)、アタッカで突入。 落ち着いた打音を聞かせるパーカッション、タンバリンが異国情緒を盛り立てます。 心地よい深みを感じさせるピチカート、オーボエのソロが艶やかでしたね。 フルートも軽やかな響き。 船曳さん、踊るようにオケをドライヴし、オケもそれによくついてまろやかな響きで応えています。 そんな柔らかな響きのままそっと止めました。

Nocturne(第3幕のミカエラのアリア)、ちょっと間合いを整えて始まります。 ホルンが柔らかな響きを聴かせたあとヴィオリンのソロ。 艶やかでしとやかな音色ですね。 船曳さん、落ち着いて進めながらも抑揚を付けて歌わせているようです。 ヴァイオリンのソロがまた粘りつくような感じもさせる響き、不思議な魅力、いや魅惑ですね。 ミカエラのアリアをヴァイオリン・ソロが奏でていますものね。 船曳さん、両腕を使い(今回全曲指揮棒を使っていません)身をよじるようにして進めてゆきます。 そして最後もホルンの落ち着いた音色で幕としました。

Chanson du Toreador(闘牛士の歌)、お馴染みのナンバー、力強くもたっぷりとした響きで始まります。 トランペットのソロ、音色が素敵です。 トロンボーンもハリがありますね。 闘牛士の歌ではやや緊張気味だったようですが、落ち着いて切り抜け、柔らかな弦のアンサンブルを挟み、力を増していって盛りあがったのを船曳さんが左腕で払いのけるようにして止めました。 機動力抜群。

Dance Boheme(第2幕冒頭のジプシーの踊り)、ヴィオラとチェロのほうを向いた船曳さん、しっとりとした響きで始めます。 フルート2本が深みをも感じさせる艶やかな音色で会場内を魅了。 素晴らしかった。 ヴァイオリンのピチカートが弾力を持って入ってきたかと思ったら、すっと退いて、メリハリもつけていますが、まだまだ抑え気味。 木管楽器がみな柔らかな響きでいいなぁ〜と思っていたら、次第にスピードがあがってゆきます。 ぐいぐいと力を込めてゆく船曳さん。 オケもそれに付いてゆきますが、まろやかな響きはきちんと保っています。 船曳さん、胸の前で小さく力強く振って響きを纏めていて、オケもきちんとそれに応えて覇気ある響き。 シンバルもオケの音色にピタっと嵌まっていて、最後は弾けるようにして全曲を纏めました。
5曲の中には多少思い通りにいかない部分もあったようですが、パンフレットにもあったように最後まで緩むことのない演奏に熱い拍手を贈りました。

20分間の休憩。 席でアンケートを書いて開演を待ちます。 ルミナリエのためでしょうか、2階席が比較的余裕なのが意外な感じ。 でも楽屋では盛り上がっているのでしょうね、ストロボのような光が楽屋より漏れてきます。 盛んに記念写真など撮っているのでしょう。 学生生活最後の演奏会もあと1曲。 ちょっと休憩時間が長かったようにも思えましたが、メンバーの方の整列入場が始まりました。 今度は 16-14-13-10-8 の編成で着席。 コンミスがヴァイオリンを小脇に携えて姿勢よく登場します。 歩く姿がカッコイイなぁ。 チューニングを終えて着席。 船曳さんが例によって、ちょっと小首をかしげるようにして登場して始まります。

チャイコフスキーの交響曲第5番、冒頭のクラリネットの奥深い響き、うごめくような弦楽アンサンブルの中にもまろやかさをも感じさせる上々の滑り出し。 そして終楽章の偽終始からアッチェランドがかけられたフィナーレまで落ち着いたサウンドで統一されていました。 この曲でも指揮棒を持たない船曳さん、学生オケ特有のソリッドな盛り上がりと覇気のある響きをしっかりとまとめ、堂々と進めてゆきました。 もっと熱気を前面に出し、抑揚を大きく付けてゴテゴテっとした演奏になるのかなぁ〜なんて勝手に思っていましたが、裏切られました。 しっかりとした大人の演奏を楽しませてもらって、大きな拍手を贈りました。

第1楽章、指揮棒を持たない船曳さん、おもむろに両腕を上下に振り、クラリネットの奥深い響き、うごめくような弦楽アンサンブルの中にもまろやかさをも感じさせる上々の滑り出し。 木管楽器も落ち着いて進めてゆき、ソリッドな盛り上がりは力が纏まっています。 迫力あるホルンにティムパニの硬い打音。 これをすっと退いたのち、また活気付けます。 若者らしく覇気のある演奏ですがきちんと制御もされていて機動力があります。 でもけっこうサクサクっと進んでゆくようにも感じました。 もっと熱気を前面に出し、抑揚を大きく付けてゴテゴテっとした演奏になるのかなぁ〜なんて勝手に思っていましたが、落ち着いた響きで満たされています。 少々タメを作ってコーダに入ってからも、落ち着いていた響きをたっぷりとさせてうごめくように終了。

第2楽章、コントラバスの方を向いた船曳さん、これまた深い響きでじっくりと進めます。 ホルンのソロ、心に染み入るような響き、少々不安定に感じる場面もあったけれど落ち着いて敢闘しましたし、まろやかなクラリネットの響きの絡みもあってよかったと思います。 弦アンサンブルに力があって、落ち着いていてたっぷりとした演奏ですが、瞬発力ある盛り上がりなど若さが迸り出ているようでもありました。 船曳さん、丁寧に進めます。 落ち着いて全奏に入って盛り上げたのをバシッと止めて、ピチカート。 そしてまた盛り上げてゆきますが、力はいずれも篭っていますが端正な盛り上がりが繰り返され、落ち着いた雰囲気も感じます。 最後もトロンボーンとチューバがパワフルに盛り上げ、このあとゆっくりと進めた響きをオケの中を回して柔らかなクラリネットの音色に行き着き、そっと着地をしました。

第3楽章、船曳さんが汗を拭ってからのスタートです。 踊るようにしてヴァイオリンから柔らかな響きを導きだすと、香りたつような弦のアンサンブル。 オーボエが華やかさを添えていました。 太くまろやかなクラリネット、落ち着いたファゴットもよかったですよ。 オーケストラのゆったりとした響きに軽やかさが感じられます。 大きな編成のオケならではのたっぷりとした響きなのですが、爽やかなのですね。 軽やかに駆け、それが徐々にスピードを上げても落ち着きはそのまま。 主題を戻し、畳み掛けるようにしてからクラリネットとファゴットによって堂々と終了。

第4楽章、アタッカから艶とコクのある弦楽アンサンブルが素敵に響きます。 たっぷりとしていても爽やかなのはここでも同じ。 落ち着いた響きのトランペットのファンファーレ、厳かなトロンボーンとチューバ、朗々としていて大きく纏めています。 じっくりと進め、集中力を高め、ティムパニのロール、ヴァイオリンの力強い響き。 中低弦の響きとも呼応しあいながら熱さを増します。 ファンファーレがまたよく揃っていますね。 船曳さん、腕をぐるぐるっと回して盛り上げますが、しっかりと抑制が効いたまま。 熱い響きですがきちんと揃っています。 さらにパワフルなティムパニのロール、たっぷりとしていますが、これをふわっと消した偽終始。
行進曲もまた大きく歌い上げるように進めます。 低弦がよく纏まって聞こえ、輝かしくも落ち着いた響きのトランペットが素敵。 ゆっくりと力を入れ、すっと退いてタメを作って進める船曳さん、あざとさはなくて落ち着いた演出みたい。 ファンファーレから小刻みに盛り上がってゆき、しだいに駆け出して突き抜けるトランペット、ホルンもカッコ良い響き、それまで手綱を絞っていた船曳さんもアッチェランドをかけているようですが、落ち着いてたっぷりとした響きをそのままに力強く全曲を締めました。

学生オケの定番ナンバー、もっと熱気を前面に出た演奏になるかと思っていたら、しっかりとした大人の演奏でした。 良い意味で裏切られました。 大きな拍手を贈りました。

客席からも熱い拍手が途切れることはなく、カーテンコールが繰り返されていました。 4回生の女性は頭に白い髪飾り、男性は胸に白いチーフだったでしょうか。 この演奏会をもって社会に巣立っていかれる方々、社会人になってからの演奏活動は大変でしょうが、この日のことを忘れずに演奏活動を続けていって欲しいと思いながら拍手を贈りました。
蛇足ですが、せっかく白いマークを付けているのだから、カーテンコールのときに4回生だけ立たせてあげるとかしも良かったんじゃないですかなぁ。。なんて思ってみたりもしたことを付け加えておきます。 皆さんお疲れさまでした。