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アンサンブル・コスモリバティ 第18回定期演奏会

堂々とした風格戻る


アンサンブル・コスモリバティ 第18回定期演奏会
2008年6月29日(日) 14:00 茨木市市民総合センター・クリエイトセンター・ホール

ヘンデル: 合奏協奏曲 ニ短調 op.6-10
モーツァルト: アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト短調 K.525
早川正昭: バロック風日本の四季より「秋」
チャイコフスキー: 弦楽セレナーデ ハ長調 op.48
(アンコール)レスピーギ: 古風な舞曲とアリアより「イタリアーナ」

指揮: 木村俊明

このオケを聴いて3年目、「春」から始まった早川正昭作曲による「バロック風日本の四季」も「秋」になりました。 ほっとするような暖かなアンサンブルがよく溶け合って聴こえるのは共感があるからでしょうね。 この演奏を聴きたくて、単身赴任先への帰路に茨木へと足を伸ばして正解でした。 大いに満足しました。

このオケの特徴は、太い筆で描いたような滋味溢れる弦楽アンサンブルですが、今年は堂々とした風格も感じました。 とくに前半プログラム、ヘンデルの合奏協奏曲ニ短調op6-10とモーツァルトの名曲アイネ・クライネ・ナハトムジーク。 いずれも指揮者の木村さんがリズムをしっかりととり、アンサンブルを巧みにリードしていたのも印象的でした。 とにかく安定感がありましたね。

そして後半、先にも述べた「バロック風日本の四季」が秀逸。 全てのパートが溶け合って響いてきました。 懐かしいメロディに虫の鳴き声も散りばめられた第1楽章、「荒城の月」をシチリア風の伴奏で静かう歌った第2楽章、第3楽章は「村祭り」を軽やかに演奏されて、十二分に楽しませていただきました。 いつかまたどこかで全曲を演奏してくださらないかしら。

メイン・プログラムは、チャイコフスキーの弦楽セレナーデ。 弦楽アンサンブルの名曲中の名曲ですが、ここでも太い響きを基調にし、深いけれど重くなりすぎず、しみじみとさせるけれど暗くならず、そして熱くなっても流されることのない演奏。 気合、というか、演奏に賭けた並々ならぬ意気込みも感じた次第です。 完全無欠の演奏ではなかったかもしれませんが、気持ちのよく伝わってきた演奏に大きな拍手を贈らせていただきました。

外は生憎の雨模様、しかも蒸し暑い一日でしたが、清々しい気持ちになれた演奏会でした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

早朝の大雨もお昼前には小雨模様、奈良では少々晴れ間も差しましたが、かえってこれで蒸し暑く感じます。 単身赴任先への帰路、東京に戻る荷物を持ち、スーツ姿で茨木駅に降り立った頃、あがっていた雨がまたパラパラと振りだしましたよ。 傘を差すのも面倒で、汗をダラダラとかきながらホールに急ぎます。

結構お客さんが入っていますね。 す-6、後ろから2列目の席を確保し、扇子でもって風をパタパタとせわしなく送って一息つきました。 お客さんはどんどん詰め掛けてほぼ満員。 演奏者の方々と同じく年配の方を多く見受けますが、皆さんお元気そうですね。 自分がこのような年代になったときは大丈夫かしら・・・

定刻を告げるアナウンスがあって照明が落ちると整列入場が始まりますた。 拍手も起きたなか席につくと 11-10-8-7-3 の編成でしょうか、ちょいと見えませんでした。 すみません。 コンミスによるチューニングを行って準備完了です。 指揮者の木村さん、白のジャケットで登場。 始まります。

ヘンデルの合奏協奏曲ニ短調op6-10、太い筆で描いたような滋味溢れる弦楽アンサンブル、このオケの特徴の良く出た演奏を楽しみました。

序曲、木村さんが腕をさっと横に拡げてしばし静止、意を決したように振りはじめると深い響きが出てきました。 落ち着いた響きですねぇ、いい感じです。 指揮台はなく、オケの同じ平面に立った木村さん、丁寧に振って力強さも感じさせます。 低弦がよくブレンドされているからでしょうね。

アレグロ、ヴァイオリンの爽やかな響きから始まり、中低弦がからんできて厚みを増します。 決然とした感じ、でも前に押しだすだけではなく、含みのある響きが良いですよね。

エア、じっくりと響きを保って進めます。 ヴァイオリンとチェロのソロも落ち着きがありました。 ソロとアンサンブルがよく馴染んだ響き、慈しむように演奏して終わります。

アレグロ、落ち着きのあるアレグロですね。 木村さんがリズミカルに振り、ニュアンスを付けて進めます。 自信というのかな、年齢から醸し出される落ち着きでしょうか、畳み掛けることなどなく堂々とした演奏としていました。

アレグロ、ヴァイオリンのソロから始まった瑞々しい音楽。 各楽器の分奏も良く、深い音色ですが、ちょっとくすんだ色合いも感じられ、滋味溢れる充実したアンサンブルを楽しみました。

アレグロ〜モデラート、楽しそうな表情で振り始めた木村さん、オケは軽やかな演奏で応えています。 そして木村さんが力を入れると、堂々とした響き。 信頼関係から来る反応の良さを感じます。 丁寧に進めていったあと、上品で柔らかなエンディングもまた素敵でした。 大きな拍手を贈りました。

コンミスが立ち上がり、チューニングが行われて準備完了。 木村さんが出てこられて始まります。
お次はモーツァルトの名曲アイネ・クライネ・ナハトムジーク。 悠揚としたロマンスを感じさせる演奏でした。 こちらもヘンデルと同様、暖かで太い響きによって丁寧に進められていました。

第1楽章アレグロ、暖かな響きで駆け出します。 熱さも感じる演奏ですが、ちょいと早いパッセージでは少々バラけ気味? 気になりません。 強弱コントロールを付け、ここでも太い筆で描いたようなモーツァルト。 渋い響きながら、十二分に熱い息吹も感じます。 最後はよく纏まった演奏で堂々とした終了。

第2楽章ロマンス〜アンダンテ、暖かな響きが心地よいロマンスが始まりました。 中低弦がしっかりとしているので、奥行きや深さも感じます。 木村さん、大きく抑揚をつけながらも、しっかりとしたリードを保ち、悠揚としたロマンスを聞かせてくださいました。 ゆったりと終わります。

第3楽章メヌエット〜アレグレット、軽やかに振ってから、力強いメヌエットとして駆けてゆきます。 エレガントになっても、リズムはしっかりととっていて、安定感は抜群。 堂々とした演奏に風格も感じました。

第4楽章ロンド〜アレグロ、木村さんがすくい上げるように振って高音弦の旋律が軽やかに駆け出します。 中音弦がしっかりと演奏を支えているので、全体として落ち着きのある堂々とした演奏になります。 そしてフィナーレ、熱気を孕んだ演奏とし、大きくバウンドするようにして終了。 我が道を行くかのような自信も感じた演奏でした。 こちらも熱い拍手で応えます。

15分間の休み。 トイレに行き、外の様子を伺うと・・・雨が沢山振ってて、少々憂鬱な気分になりますね。 この演奏会のあと新幹線で東京に戻らねばなりませんし・・ しかし気を取り直して席に戻り、演奏を待ちます。

定刻、オケの皆さんが集まりました。 コンミスが立つと、チェンバロの音でチューニングを開始。 ちなみにチェンバロは電子楽器のようですね(よく見えませんけれど)。 準備完了。 指揮者の木村さんが登場して後半のプログラムが始まります。

「春」から始まった早川正昭作曲による「バロック風日本の四季」、3回目の今回は「秋」。 今回もまた全てのパートが溶け合って響いてきました。 懐かしいメロディに虫の鳴き声も散りばめられた第1楽章、「荒城の月」をシチリア風の伴奏で静かう歌った第2楽章、第3楽章は「村祭り」を軽やかに演奏されていて、素晴らしい演奏に時間を忘れるほど。 十二分に楽しませていただきました。

第1楽章、軽やかに滑るように始まります。 虫の声の旋律が聞こえてきます。 7人のヴァイオリン奏者の方が虫の声を清々しく演奏され、思わず、あ〜面白い虫の声、と口ずさんでみたくもなりました。 日本の四季、ヴィヴァルディ風で本当にいい曲ですね。

第2楽章、しっとりとしたシチリア風。 「荒城の月」が落ち着いた音色で歌われますが、ソロと伴奏が一体になって、全体が綺麗に溶け合っています。 このような柔らかな響きのアンサンブル、前半のプログラムではあまり無かったのように感じたのは、曲への共感のせいでしょうか。

第3楽章、アタッカで「村祭り」の旋律を暖かな響きで演奏。 どこか、ほっとするような感覚を覚えました。 伸びやかなヴァイオリンの旋律、それに寄り添う中低弦楽器。 じっくりと熟成された響きで満ちています。 やはりこれも共感なんですね。 あっという間に全曲が終わってしまったような気がします。 素晴らしい時間はあっという間に過ぎてゆくものなのですね。

メインのプログラムが始まる前もコンミスが立ち上がり、チューニングをしてオーケストラを整えます。 準備完了、木村さんが登場して始まります。

チャイコフスキーの弦楽セレナーデ。 弦楽アンサンブルの名曲中の名曲。 ここでも太い響きを基調に、深いけれど重くなりすぎず、しみじみとさせるけれど暗くならず、そして熱くなっても流されることのない演奏。 気合、というか、演奏に賭けた並々ならぬ意気込みも感じました。 決して完全無欠の演奏ではなかったかもしれませんが、気持ちのよく伝わってきた演奏に大きな拍手を贈りました。

第1楽章、たっぷりとした豊穣な響きで開始。 スパっと切った演奏もまたしっとりとした響きで再開します。 木村さん、積極的な振りで進めています。 意気込みというか、気合の入ったというか、とにかく想いのよく乗った演奏ですね。 太い響きがして、現代的な効率の良さからは得ることのできない熱い想いが伝わってきます。 入魂の演奏といっても良いと思います。 木村さん、時に笑みを浮かべながら積極的にリード。 聴いているこちらにも、想いがこちらに伝わってくるようで、思わず首を動かしながら聴いていました。 分奏する楽しさ、そんなものも伝わってきました。

第2楽章、木村さんが丸ぁるく振り、柔らかなヴァイオリンの旋律を導き出します。 あまく、ふくよかな響き、少々バラけているような感じもしましたけど、すぐに挽回。 チェロのふくよかな旋律が素敵でした。 優雅さも感じさせるアンサンブル、最後のピチカートもまろやかな響きでしたね。

第3楽章、しっとりとした開始。 重くなりすぎず、爽やかさも感じます。 木村さん、大きく振ってたっぷりとしたピチカート。 でもしっかりとしたリズム感で進めているので、抑揚をつけても甘くなり過ぎないのでしょう。 ヴィオラ、ここでの暖かな響きの旋律が素敵でした。 ヴァイオリンに旋律が移り、艶やかに歌っていても、しみじみとした奥行きの深さを感じます。 達観した感じなのでしょうか。 ふわっとした着地を決めました。

第4楽章、上げた腕を下ろさず、そのまましっとりとしたアンサンブル。 厳かな感じもしました。 左腕を廻して軽快なメロディ、中低弦が力を込めて引き締まった音楽。 木村さんは終始丁寧に振ってアンサンブルを纏めています。 そして端正に振って力を込め、速度も徐々にアップさせてゆきました。 大きく振り被ってから主題を戻し、さらに力を増してゆきますが、落ち着いた響きはそのままです。 力のこもったエンディングを決め、全曲を閉じました。 気持ちのよく伝わってきた演奏に大きな拍手を贈りました。

アンコールはレスピーギの「古風な舞曲とアリア」より「イタリアーナ」、爽やかなアンサンブルを楽しませていただいたあと、外に出てみると雨は上がっていました。 人生の諸先輩方によるアンサンブル、今年も聴かせていただくことが出来、今年もまた清々しい気持ちになれました。 来年もまた聴けるよう願っています。 そしていつか「バロック風日本の四季」を全曲演奏してくださらないかしら。