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セント・マーティンオーケストラ 第7回定期演奏会

豊穣な響き、深遠な演奏、そして迫力、充実した演奏会戻る


セント・マーティンオーケストラ 第7回定期演奏会
2009年11月29日(日) 14:00 豊中市立アクア文化ホール

ロッシーニ: 歌劇「ウィリアム・テル」序曲
シューベルト: 交響曲第7番ロ短調「未完成」 D.759
ベートーヴェン: 交響曲第4番変ロ長調 op.60

(アンコール)ロッシーニ: 歌劇「ウィリアム・テル」序曲 後半再演

指揮:河崎 聡


古典音楽を小編成で存分に楽しみたいという願いから、2004年に神戸で生まれたセント・マーティンオーケストラ。 対抗配置による 9-9-7-7-4 の編成ながら、オケのスケールなど感じさせない豊穣で力強い響きに満ちた素晴らしい演奏会でした。

何より驚いたのは、最初に演奏されたロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲。 ただただ長い前半部のあと、威勢の良い後半・・・というこの曲のイメージが大きく覆されました。 深みのあるチェロのソロ、そしてアンサンブルも落着いた開始。 そしてヴァイオリン、管楽器が加わって明るくなってくるにしたがって、オーケストラ全体が艶やかかつ力のある響きで迫ってきました。 各声部ともしっかりとしたアンサンブル、それが有機的な響き合っていて、この曲に持つイメージが霧散。 惹き込まれるように聴いていました。

そしてお馴染みのトランペットのソロも颯爽としていて、オケ全体の響きもますます豊穣となって進みます。 奥行きも感じさせる、なんともゴージャスな響き。 河崎さんのリード、音量バランスもよく、配慮の行き届いた演奏に笑みもこぼれていました。 オケもノッてますね。 そんな余裕を感じさせる音楽のまま終結。 このところこのオケの演奏会にご無沙汰してましたが、なんだか凄いことになっているなぁ、なんて思ってしまいました。

続く、シューベルトの未完成交響曲は、深い精神性を表現していて、この曲もまた耳からウロコ状態。 特に中音弦の充実振りが素晴らしかったように思いました。

第1楽章、厳かな低音弦の響きに、凜としたヴァイオリンによる開始。 力強く盛り上がって、たっぷりとホルンの響き。 お馴染みの旋律がとうとうと流れるように進みます。 豊かな響きですが、先ほどとは質が違いますね。 真摯さと深遠さ、弾力も感じます。 第2ヴァイオリン、ヴィオラが安定した響きで波打って聴こえます。 クライマックスでの底鳴りのする響き、主題を戻し、ピチカートにも深い精神性を感じました。 うごめくようなコントラバスの響き、力強くも深い響きでこの楽章を閉じました。

第2楽章、たっぷりとした開始より、深さと明るさ、しなやかさと力強さ、これらが寄せては返し、この楽章もまた深遠なる世界を伴ったシューベルトの歌。 オケの響きが渾然一体となり、歌い継がれてゆくのが素晴らしいですね。 深い歌の流れにのり、ただただ聴いていた、そんな感じでした。 これほどに精神性を感じさせる未完成交響曲を聴いた記憶がありません。 たっぷり、そしてゆったりと歌ったまま、そっと閉じたエンディング。 しばし静寂が続いてから湧き上がった拍手もまた、この演奏によく似合っていました。 素晴らしい演奏に、熱い拍手を贈りました。

20分の休憩を挟んで、メインのベートーヴェンの交響曲第4番。 華やかでドラマティック、
勢いに頼ることのない洗練された響きに力強さがありました。

第1楽章、軽いピチカート、落着いた響きに華やかさも覗かせるような導入部。 キレの良い響きから駆け出しました。 弾力のある豊穣な響き、河崎さんも嬉しそうな表情でオケをリード。 流れに乗せた音楽にはロマティックさもあり、要所は力強く決めていて、メンゲルベルクやクライバーでこの曲に親しんでいる自分にとって、嬉しくなってくる演奏ですね。 弦の各パートに丁寧に響きを廻し、全奏で力をこめて畳み掛けます。 そして弾力をもった響きでの着地。

第2楽章、今度は透明感を持たせた、落着いた開始。 たっぷりとさせた響きに力を込め、ゆったりと歌ってゆきます。 オケの響きが豊かなので、形式は古典ですが、響きはロマン派といった感じかしら。 念を押すように力を込め、区切るように進みます。 オーボエにも力が入っているからでしょうね、徐々にベルアップ気味となってました。 左右に振り分けられたホルンとトランペットの掛け合いも決まってましたよ。 ホルン奏者、2名なのに実にパワフルな響きでしたね。 暖かな木管の響きのあと、ぐっと力をこめてこの楽章も終わります。

第3楽章、弾力ある響きが湧き起こり、ここもまた豊穣な響きです。 地に足をつけて落着いて進めています。 河崎さん、にこやかな表情はここでも同じ、オーボエそして弦の合いの手、これを嬉しそうにリードしていました。 これで奏者はノルのでしょうね。 10年程前から河崎さんの指揮を見ていますが、変わっていないみたい。 河崎マジック健在。 そしてこの楽章を終えても、河崎さんの指揮棒は立てたまま。 団員も素早く譜面をめくると準備OK、第4楽章に突入しました。

第4楽章、集中力の高い響きで駆け出しました。 オーボエとフルートの歌が綺麗ですね。 中低弦もまた歌っています。 快活に進んでゆきますが、しっかりと速度はコントロールされた洗練された響き。 やや前の楽章では少々硬直した感も受けていましたけれど、ここでは伸びやかですし、全奏になっても中音弦がよく聴こえてきます。 河崎さん、肘でリズムとりながら、オケをよく集中させ、力強くフィナーレへと導きます。 全般的に音量が大きく感じていましたが、ここはもう一回り大きくなっているでしょうか。 でも、前述のとおり、よくコントロールされた響きです。 スピードをぐっと絞り込んだあと、一気に畳みかけてパワフルに全曲を閉じました。

2007年11月の第4回定期演奏会以来ですから、2年ぶりとなってしまったセント・マーティンオーケストラの演奏会。 久しく聴かないうちに凄いことになっているなぁ、というのが率直な印象でした。 これまでもよく纏まった真摯な演奏でしたが、気迫と熱気、そして奥深い演奏になっていることにも驚きました。 個人的には、前2曲が特に驚きました。 ベートーヴェンも巧かったけれど、生意気言うようですが、全般的に音量が大きくて、やや平板に聴こえたのが惜しかったと思います。 弱音による魅力にも期待したいところです。
しかしアマオケらしい真摯さを失わず、今後の発展に期待しています。 素晴らしい演奏をありがとうございました。