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かぶとやま交響楽団 第45回定期演奏会

深みを持った弦の響きの美しさ、押し出しの強さ、キレの良さ戻る


かぶとやま交響楽団 第45回定期演奏会
2012年9月22日(祝・土) 14:00開演 いたみアイフォニックホール

プロコフィエフ:古典交響曲ニ長調(交響曲第1番)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」
シューベルト:交響曲第8番ハ長調「グレート」

独奏:岩城智由理(p)

指揮:藤田謹也


シューベルトのグレート、月並みな表現ながら素晴らしい演奏でした。 演奏を聴き進めながらも演奏が終らないで欲しい・・・と久しぶりに思え、終演後もしばらく頭の中で音楽が流れ続けていました。 そんな衝撃を久しぶりに受けました。

オーケストラは対抗配置。 弦楽器はいつもながらの 9-7-6-5-4 の小振りな編成にて各パートが引き締まった響きを導き出します。 これらが絡み合いつつ、響きが醸し出されるので、ワクワクしっぱなし。 特筆したいのは、第2楽章のオーボエの端正な演奏もよくマッチしていて良かったのですが、個人的にはトロンボーンとティムパニを採りたいですね。

女性3名のトロンボーン・チーム。 息もぴったり、そして皆さんタッチが柔らかいけれども押しの強さも十分。 終始演奏に華やかさを彩っていて、第1楽章からうっとりと聴き入って、最後まで存分に楽しませてもらいました。 そしてまたティムパニも女性奏者、コンパクトで控えめな叩きっぷりでしたが、先の細いマレットでタイトに打ち、先の大きなマレットでは柔らかく打ち分けています。 控え目な打音で、決して前面にしゃしゃり出ることはないけれども、曲の芯をしっかりと支えていました。 こちらも感心しました。

もちろん数は少ないけれども音圧を感じさせる弦楽アンサンブルは、中音域がしっかりとしていました。 そして凜とした管楽器群も素晴らしかったなぁ。 クラリネットも端正に歌っていて、ピストン式のトランペットは打楽器のごとく、要所をきちんと締めていました。

そして全体として躍動するリズム、安定した響きで展開されて歌う。 どんどんと前のめりになって聞き入ってしまいました。 そう、歌っていたといえば2本のホルン、2本ともウィンナホルンでした。 冒頭こそそっけなく演奏していましたけれども、随所で鼻にかかった朴訥な響きもまたアクセントになっていました。

素晴らしい演奏に、演奏終了後にブラボーがかかったのも納得。 しかしながら、終演時間が押していたようです(このホールでは、この演奏会の後には他のオケのリハも予定されているようでした)、あっけなくお開きになったのは、潔さですね。 また、こんな素晴らしい演奏のあとでアンコールは不要でしょう。

これに先立って演奏されたのは、プロコフィエフの古典交響曲とベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」。

冒頭のプロコフィエフは、実演で何度か聴いていますけれども、終楽章では細かな音が続いている木管を弦楽器が追い立てているようでとても大変そう。 しかしメリハリがついていて、どんどん華やかになってゆくのですね。 こんな風に面白く聴けたのは初めてかもしれません。 リズム感の良さを感じた素晴らしい演奏だったと思います。

ただ少々気合入りすぎていたかもしれません(確かに難曲です)。 小型技巧派のオケらしく展開も素晴らしく、また凝縮されたオケの響きには光沢ものっていましたけれど、音量が上がると一本調子となり、やや刺激的は響きに感じたのは、覇気ととるべきかもしれません。 が、個人的には少々気になった点でした。

ベートーヴェンの皇帝、岩城智由理さんのピアノに指揮者の藤田謹也さんが終始注意を払いながら寄り添った演奏でした。 岩城さん、落ち着いた深みのある響きが特徴的。 ソリストとしての華という点では地味だったかも。 自分を主張するような場面はあまりなかったように感じました。 でも、当たりの柔らかな深い響きの底でキラリと輝くピアノの響きはとても魅力的。 第2楽章などタッチが軽く柔らかいのにピアノがたっぷりとよく鳴っていてました。

ただオケもピアノも全体的に単調になったきらいも感じられました。 終楽章では聴き手として少々疲れてきたこともあって、しっかりとしたピアノとオケの演奏が繰り返されるのに少々飽きてしまったようです。

そんなことやら、少々疲れを引きずって聴き始めたグレート交響曲でしたが、冒頭に書いたとおり。 目の覚める演奏でした。 これ1曲で良かった、と言えば失礼になると思いますれども、色々なことがすべてここに帰結したように強く感じた演奏会でした。


以下、未稿