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吹田市交響楽団 第74回定期演奏会

機動力、艶も感じられる愉快でチャーミングなドン・ファン戻る


2013年1月19日(土) 18:00開演(17:30開場)
吹田市文化会館メイシアター・大ホール

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」-*
R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」-*
シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレート」
(アンコール)シューベルト:「ロザムンデ」より間奏曲第3番

指揮:新谷 武 -*、米山 信


きびきびとしたグレートも良かったけれど、20年ぶり2回目でR.シュトラウス唯一のレパートリーと言われているドン・ファン。 この演奏での機動力、艶も感じられる愉快でチャーミングな演奏が見事でした。 演奏者の方々は決して余裕があるとは思いませんが、曲の運びや間合いに余裕すら感じさせる熱演。 タイトで底力のある響きにのめりこんで聴いていました。 素晴しかった。

けれど、エンディングのドン・ファンの死の場面で客席から無粋なくしゃみ・・・思い出したくもありませんが、これで会場の緊張感が切れてしまって拍手もまばら、残念でしたけれども、素晴しい演奏には違いありません。 ここに大書しておきます。

ちょっと残念な客席でありましたが、最後にはいい気持ちになり、会場を後にすることが出来ました。 皆さんお疲れさまでした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

今年初めての演奏会、久しぶりの夜公演です。 年取ったな、と感じるのは演奏会の夜公演がしんどくて敬遠してしまうこと。 ですが、今回は好物メニュー(曲目)が並んでいるのと、グレートはベーレンライターの新しい楽譜で演奏されるという情報もあって、メイシアターへ。 2階席のいつもの席に身を沈めて会場を眺めると、おつむの辺りが白かったり、薄くなっていたり、お客さんにはご年配の方が多いですね(自分もその仲間に近くなりましたけれど)。 地元に静かに愛されているオケ、そんな感じを改めて持ちました。

定刻となり、整列入場で揃った編成は、11-11-9-8-6 だったでしょうか、通常配置。 まずは新谷さんの指揮による「フィンガルの洞窟」、重心を感じさせる響きでそっと始まりました。 やや手探りな感じで生気があまり感じなく、少々雑然とした感じのアンサンブルで進みます。 しばらくこんな感じで続いたあとスピードに乗せて走った後半、ここからようやく調子が出てきました。 粘りのある響きでのエンディングで帳尻を合わせた感じかな。 後で判りましたけれども、続く2曲との練習量の差でしょうね。

「ドン・ファン」は、新谷さんのハナ息で覇気のあるオケの響きが一気に迸り出て、畳み掛けるティムパニのソリッドな音でいきなり圧倒。 先ほどのオケとはまるで違います。 キレと迫力に加えて華々しさ、そして艶も感じさせるのがリヒャルト・シュトラウスの魅力ですが、見事にそれらが出ていました。 曲の運びや間合いにも余裕を感じさせます。

このオケ、10年ちょっと前より聴いていますけれど、当時の新谷さんの指揮はオーバーアクションであったかもしれません。 オケがついてこず、アクションと出てくる音に乖離を感じたことも多々ありましたけれども、今は一体。 オケも全幅の信頼を寄せているのでしょう。 演奏者の方々は決して余裕があるとは思えませんが、判りやすく大きく振っている新谷さんの指揮にのり、整然と進んでゆきます。

オーボエの響きがまたよかったですね。 深みも感じられ、オケ全体の響きにマッチしながらも目立ってました。 またこれに合わせたクラリネットやファゴットもよかったですよ。 そしてホルンの斉奏がタイト。 金管全体としても、音が前に突き出てくるのではなく、横に広がって聴こえてホールを包み込むような感じ。 そこにティムパニのちょっと荒々しくソリッドな打音で前に出て、迫力のあるクライマックスが見事でした。

続いて粘り気のある弦アンサンブル。 これでエンディングへといざなって、ピチカートでそっと閉じる素晴しい演奏・・・でも、ここで客席から無粋なくしゃみ・・・思い出したくもありませんが、これで会場の緊張感が切れてしまって拍手がまばらだったのが本当に残念でした。

15分の休憩を挟み、米山さんによる「ザ・グレート」。 いつもの端正な指揮より、省エネ指揮とも呼ばれますが、きびきびとした演奏が展開。 冒頭のホルンや第2楽章のオーボエに代表されたように、暖かな響きで全般的をまとめられていながらも、理知的な演奏でした。 各楽器、とくに木管は歌っていたと思いますが、個人的にはもうちょっと弦楽器なども含めて叙情的な感じにして欲しかったかな。 でも管と弦楽器、管楽器同士、弦楽器同士の掛け合いもよく、また内声部もよく聴こえて、かなり練習されたのでしょう。 同じフレーズが繰り返し繰り返し出てきますが、聴いていて退屈などすることなく、この曲の良い面が存分に表現されていたと思います。

第1楽章、冒頭のホルンの柔らかな響きが朗々と流れる上々の滑り出し。 続く弦楽アンサンブルがまたよかったなぁ。 締まった低弦による下支えがしっかりとしているのに加え、地味な持ち場であるヴィオラも奮闘してました。 あと金管ではトロンボーンかな、おっとりとした響きが印象に残りました。 終結部、ゆったりとオケを止めたあと、しばしの静寂・・・これもまた良し。

第2楽章、やや大きめの弦の響きで始まったのにちょっと吃驚しましたが、艶やかなオーボエの旋律。 憂いも感じ、続くクラリネットは太い響き。 ゆったりと纏めてからキレの良い弦楽アンサンブルと受け渡す上々の滑り出し。 管と弦楽器、管楽器同士、弦楽器同士の掛け合いも見事。 やや明るめの音色での響きが織り成してました。

第3楽章、膝を折って伸び上がるようにした米山さんの指揮より、これまでとはちょっと違った歌う演奏での開始。 木管のチャーミングな響きが弦楽器に混ざって活気のある演奏を展開。 いいですね。 管楽器だけの演奏になって、弦メンバーがバサバサっと一斉に譜面をめくる音にも活気が伝わってきました。 そして音量を上げて呼応する弦楽アンサンブル。 しかしこのあとはサクサクと進んで、音量の大小の変化はあるけれど、個人的にはもうちょっと抑揚つけて歌わせて欲しかったなぁ、とは欲張りな感想。

第4楽章、締まった響きながらも温かみがあるのが特徴。 落ち着いた弦と木管で曲が進み、金管が入って覇気が加わります。 これとすっと止めて弦アンサンブル、きびきびとした躍動感がいいですね。 音量をやや上げてフィナーレに向かって進みます。 オーボエがやや息切れ気味ながらもクリア、2管編成の管楽器にとっては休む間は少ないし、また弦楽器も同じフレーズが延々と繰り返される長丁場で、やっぱりグレートって大変な曲であったことを聴き手としても実感。 オケが一丸となったエンディング、米山さんの左手の拳が前に出されて締め上げての見事に着地。 大きな拍手が沸き起こりました。

米山さん、客席を振り返って一礼をしたあと、そのままオケを立たせずに退場・・・かなり集中して指揮されたので疲れておられたのでしょうね、慌てて戻ってこられてオケを立たせていました。 アンコールの拍手が手拍子になると、いっしょになって手拍子をしながら再び米山さんが登場してアンコールへと進みます。

アンコールは予想どおりロザムンデ、間奏曲第3番。 本プロの緊張からちょっとほぐれたのでしょうか、重厚な弦アンサンブルながらもこちらは歌う演奏となりました。 オーボエはさすがに選手交代してましたが、変わらずクラリネットは太いまろやかな響きで魅了。 お開きとなりました。

ドンファンではちょっと残念な客席でありましたが、最後にいい気持ちになり、会場を後にすることが出来ました。 皆さんお疲れさまでした。