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第22回「天理の第九」演奏会

河崎聡さんの指揮のもとストイックな演奏を堪能戻る


日時:2015年12月20日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:天理市民会館やまのべホール

曲目:<第1部>
   シベリウス/カレリア組曲(シベリウス生誕150年記念)
     安野英之 指揮 天理シティーオーケストラ
   <第2部>
    ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」
(アンコール)
(アンコール)エルガー/威風堂々(合唱付き、作詞:喜多園子)
(アンコール)蛍の光

独唱:内藤里美(S)、大賀真理子(A)、馬場清孝(T)、鳥山浩詩(Br)

合唱:天理第九合唱団
   天理ピエーナ少年少女合唱団
   奈良県立二階堂高等学校コーラス部

管弦楽:天理第九管弦楽団

指揮:河崎 聡


単身赴任期間中の中断はあれど毎年第九は「天理の第九」で締めくくっていますが、昨年「天理の第九」のきっかけとなった天理ライオンズクラブ設立50周年、そして天理市制60周年を経て、今年は新しい第九、河崎聡さんの指揮のもとストイックな演奏を堪能しました。 今年より合唱に加わった奈良県立二階堂高校コーラス部、昨年より参加されている天理ピエーナ少年少女合唱団を含めオール天理の実力を示した合唱が立体的に響き渡り、パワー一辺倒ではない素晴しい合唱に感動しました。 合唱団も指導されている河崎聡さんの指揮によってオケもよく鳴って、余計なドラマを廃したストイックな第九演奏で、合唱とのバランスも見事。 恒例となった天理を歌った合唱付きの威風堂々のあと、緑色のルミカライトを振りながら歌った蛍の光。 今年も大いに満足、大いに楽しませていただき、会場を後にすることができました。


開演30分前までにお越しください、とチケットに書かれていましたが、駅前でちょっと買物などしてから35分前に到着したのですが、なんと長蛇の列。 例年うかがっていますが、こんな長い列は始めてかも・・・引き換えてもらったのはX列、後ろから2列目。 もとより後ろの席が希望なのでこの方が良かったかも。 最後尾にはパイプ椅子の補助席まで出る満員御礼状態でした。 熱気に包まれた演奏会は、合唱にも参加される若い天理市長のお話で始まりました。

第1部は、安野英之指揮天理シティーオーケストラによる演奏で生誕150周年を迎えたシベリウスのカレリア組曲。 明るく柔らかな響きによる上質な演奏でした。 幻想的な前奏曲では柔らかく吹いたホルンと抑制をよく効かせたパーカションで丁寧な盛上がり。 バラードは落ち着いた音色の弦楽アンサンブル、しっとりと濡れたような木管。 とくにコールアングレがコントラバスのピチカートに乗せて素敵な音色で素晴しかったですね。 最後の行進曲風には明るく爽やか、トランペットが軽やかで上品。 カラフルでありながらも立体感もよく出た美しい演奏でした。 大きな拍手を贈りました。

第2部は、オーケストラに先ほど指揮されていた安野さんが本職のチェロで加わるなど、トレーナーの先生なども加わります。 コンサートマスターには栄嶋道広さんが座わって、弦楽器は 9-7-6-6-4 の編成による対向配置(第一部も対向配置でした)。 合唱団が先に席に着き、オーケストラも自由入場で三々五々集まってきて練習を始めて期待が高まります。 定刻、チューニングを終えて河崎さんがにこやかに登場。 オーケストラを立たせ、栄島さんと握手をして一礼。 登壇していよいよ始まります。

第1楽章、河崎さん、指揮棒を持たずに厳かな響きで始まりました(全曲指揮棒なしでした)。 中腰になって音量を絞って進めてから、激しくゲンコツを振り、気合を込めて盛り上げます。 コンパクトなオケよりタイトな響き、キレ良く進めて行きます。 栄島さんも普段よりも気合入ってるみたいで大きな動き。 木管アンサンブル、河崎さんは今度は両手を前に出して何かを掴むように指揮して渋い響きを醸し出してました。 トランペットは4人、先の曲とは違ってロータリー式の楽器に持ち替えてますね。 ゲンコツを繰り出してフレーズを短く切ってストイックでキレの良い音楽。 タイトな盛り上がりはドラマティックでもあって素晴しかった。 力強いフィニッシュとして会場より拍手も起きました。

第2楽章、キレよくタイトな開始ながら熱い音楽。 時計じかけのオレンジのような冷徹な響きとは間逆ですね。 中間部、のどかな感じですがオーボエは響きも色をつけずに淡々とした装いとして、またドラマティクな音楽にもどします。 ここでのフィニッシュはちょっと抜くような感じでの着地。

第3楽章、ソリストが入場しました。 河崎さん、慈しむようにこの楽章を始めます。 ファゴット、クラリネットそして弦楽アンサンブルが丁寧にゆったりと進め、河崎さんは更にオケを引きつけるようにじっくりと。 第2ヴァイオリンの響きが素適でした。 淡々と響きを重ねてゆきました。 そして腰をかがめた河崎さん、重ねた響きをゆっくりと止めます。

第4楽章、力強く拳を振って突入。 コントラバス4本ながら粘り強い重厚な響き。 重心を低くとってストイックでも冷徹じゃないのは第2楽章と同じ。 充分な間合いをとってから、歓喜の旋律をコントラバスがゆっくりと歌います。 感動的。 ヴィオラのしっとりとした響きにファゴットがからんで素適ですね。 明るさが徐々に増し、トランペットの響きも明るさを持ちながら落ち着いた進行。 そして切れ込み鋭い音楽として、バリトンの独唱が美声でした。 タイトな合唱による応答、少々堅い感じかな。 4人のソリストは粒が揃ってよく聴こえていました。
行進曲調となり、しなやかなトロンボーン、愛らしいピッコロはチャーミングです。 テノールのソロは若干擦れた声質かな、重唱となるとよく聴こえるのですけれど。 弦楽器が入って立体的な響きになりました。 重量感は少しなくなりましたが、明るい響きでタイトに響く合唱と絡みます。 男声合唱のミリオーネンはタイトな響き、トロンボーンも素適な響きで応えます。 女声合唱の拡がり、男声ともうまく絡んで、堅さもとれたみたい。 立体的な声の響きとなって魅了されました。 オケとも見事なバランスですね。
女声が左右に広がって、中央を男声が貫いてくる。 トランペットは輝かしく抜けるならば、トロンボーンの音色が麗しく響き渡る。 ソリストのソプラノも美声だしアルトも良い声で絡み、テノール、バスとも頑張って4人のソリストが揃っていて良かったですね。
ドライブをかけてフィナーレに突入。 河崎さんのにこやかな笑顔も垣間見えますが、余計な盛り上げ方はせずとも最後までストイックに締めて感動的な力強い幕切れ。 素晴しい演奏に会場より大きな拍手が沸き起こりました。

1994年、天理市制40周年、天理ライオンズクラブ創立30年を記念して始まった市民による手作り第九演奏会。 また新しい一歩を踏み出したように感じました。
アンコールの1曲目は・・・??・・・マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲と合唱だったのでしょうか。 そして一昨年より歌われている古里天理を歌い上げる合唱付きのエルガーの「威風堂々」。 恒例となった会場の全員が緑色のルミカライトを振って「蛍の光」を歌って今年もお開きとなりました。 天理の冬の風物詩「天理の第九」。 今年も素晴らしい演奏会にお招きいただき、有難うございました。