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紫苑交響楽団 第28回定期演奏会

森口さんが指揮されるとオケの一体感のレベルが上がるみたい戻る


日時:2016年9月4日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:京都府長岡記念文化会館

曲目:ウェーバー/歌劇「オイリアンテ」序曲
   モーツァルト/交響曲第40番
   チャイコフスキー/交響曲第4番
(アンコール)チャイコフスキー/バレエ「白鳥の湖」第3幕第15番「情景」

指揮:森口真司


どの曲もビシっと縦横の線が揃っていて、弦楽器と金管楽器の音色が揃った素晴らしい演奏でした。 いつもこのオケでは弦楽アンサンブルの巧さを言うのですが、今回は木管も金管もそして打楽器も自信を持った素晴らしい演奏でした。 森口さんが指揮されるとオケの一体感のレベルが上がるみたい。

個人的なこの日の白眉は、モーツァルトの交響曲第40番でしたね。 名曲中の名曲ながらこんな素晴らしい演奏をアマオケで聴けるとは思ってもみませんでした。


簡単に演奏を振り返ってみたいと思います。

オケの編成を10-10-8-7-4に絞込んだ通常配置(ウェーバーとチャイコフスキーは 13-12-10-8-6 での通常配置)より、やわらかくしなるような第1楽章の開始、要所でのキレや押しの強さも感じさせるストイックな演奏ながらロマンの香りも漂います。 弦楽アンサンブルの裏で吹くオーボエ、ホルン、フルートなどが健闘、クラリネットがまた渋いいい音色していましたね。 クライマックスでは低弦が雄弁となりましたが、見事なバランス感覚で聴き応えありました。
第2楽章は、豊かな響きのヴィオラ、第2ヴァイオリンそして第1ヴァイオリンと回って上質な音楽。 森口さんが緻密に振り分けて進めていて、木管と弦楽器の響きがよくマッチした音楽が何より息づいていました。
第3楽章、低弦が芯になったハリのある響きでの開始。 高音弦も良く揃って透明感が高く、自信を持ったアンサンブルでしたね。 少々固めの木管アンサンブルにまろやかなホルンが溶け合います。 主題戻してスクエアに振る森口さんのもとストイックにこの楽章を纏めて終了。
終楽章は少々音量上がったでしょうか、各楽器の凝縮した響きでの開始。 低弦が引き締まってストイックですが、第2ヴァイオリンが歌っていたり、クラリネットの柔らかな響き、そしての裏で吹くファゴットの音色が素敵でした。 全奏となってヴァイオリンの疾走感がまた素晴らしい。 木管と弦楽器も会話も見事に決めつつ進めて、緻密にまとめたエンディングまで一気に聴かせました。

パンフレットにも書かれていたように、耳慣れた名曲でもあるし、なんたってモーツァルト。 ちょっと間違っても、また一つも間違わずに機械的に演奏できたとしてもモーツァルトではなくなる、そんな難曲なのですけれど、こんなに素晴らしい演奏に出会えて本当に幸せでした。 というかしばし唖然・・・というのが本当かな。 本当に素晴らしい演奏に出会えて幸せでした。

本当にこれがアマチュア?かと思えるほどの巧い演奏に感動しましたが、個人的にはキレキレで演奏されたメインのチャイコフスキーはちょっと窮屈さも感じてしまいました。 もともとチャイコフスキーの後半3曲の交響曲はどれも好みではなくて(前半3曲は好きなのですけどね)、派手に盛り上ってゆくほどに白けてしまう癖があるので、今回もそんな面も出たみたいです。

チャイコフスキーの交響曲第4番、第1楽章冒頭の金管ファンファーレより見事に練り込まれた響きが会場を包み込みました。 これでこの演奏は素晴らしいものになるということを確信。 雄弁なオケはダイナミックな響きながらも騒々しさとは無縁で、場面転換もカッコ良く決めて進んでゆきます。 しかし聴きこむほどに、なんだかな〜 こんなに巧く演奏されると、かえってこの曲の精神の深さって何かな? と思ってしまうわけで・・・第3楽章にいたっては交響曲というよりバレエ曲ちゃう? なんて思ってしまうのでした。 これが下手なオケだと、もっと違うところを聴いてしまうので、曲の精神性とかには至らないんですけどね。 とにかくこんなこと考えるなんてチャイコフスキーってホンマ苦手なんですね。 すみません。

でもオケは本当に巧かったですよ。 イケイケどんどんのアマオケなら音が前に前にと飛んで出てくるのですけれど、このオケではオケの各パートの音がオケの中できちんと響き合った音楽となって照らし出されるような感じ。 勢いに任せることなどなくきちんと抑制かかってました。 各自各パートが自信を持って演奏されているからでしょうね。 そして森口さんがきちんとバランスとって届けてくださる。 終楽章のフィナーレこそ森口さんがアッチェランドをかけて凄まじい勢いとして、大きく力のこもった着地の動作でしたけれども、一番最後の音は軽くふわっと響きを残す巧さ。 本当に見事な演奏でした。 唸りました。

これに先立って演奏されたウェーバーのオイリアンテ序曲、落着いて張りのある豊かな響きによる開始。 左の高音弦と右の低音弦がきちんと分離されて届けられるステレオ効果、これをまた見事にブレンドさせて伸びやかな音楽となっていました。 森口さんが右手を回してキレ良く場面転換、今度は豊穣な響きとなります。 高音弦2プルトづつの合奏もしっとりと綺麗でしたが、このあと全奏となっても第1ヴァイオリンの前から後ろのプルトまできちんと揃ったボウイング。 透明感と力強さはこんな訓練によって出てくるのですね。 キレの良さ、透明感の高さに、力強さとまとまり感の良さなどなど、こちらもじつに聴き応えのある素晴らしい演奏でした。

この日の演奏会、長岡記念文化会館はほぼ満杯。 かつて団員さんのご家族と思われる小さな子供を連れた方が多く、空席も目立っていた頃は遠い昔となってしまいましたね。 好調の紫苑交響楽団、ますますの発展を期待します。 皆さんお疲れさまでした。