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大阪市民管弦楽団 第87回定期演奏会

真摯でダイナミックかつドラマティックな演奏会戻る


日時:2018年3月11日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:保科 洋/風紋(原典版)《管弦楽版》
   保科 洋/復興《管弦楽版》
   ラフマニノフ/交響曲第2番
(アンコール)ラフマニノフ/ヴォカリーズ
(アンコール)菅野よう子/花は咲く

指揮:井村誠貴


3.11 東日本大震災の発生した日。 毎年GW、ここシンフォニーホールで復興チャリティコンサート・未来へつなぐ『集』コンサートを開催されている指揮者の井村誠貴さんの指揮による演奏会。 井村さんと大阪市民管弦楽団らしい真摯でダイナミック、かつドラマティックな演奏会でした。

まずは保科洋さんの「風紋」、六甲フィルの演奏会でも聴きましたが映画音楽のように聴きやすい曲ですね。 たっぷりとして深みのある弦の響きからの開始。 ゆったりと流れる音楽に大きな体躯をしなやかに動かして想いを込める井村さん。 弦と管の響きが折り重なり、打楽器が割って入ってリズミカルな盛り上がりは井村さんの真骨頂、ストコフスキーみたく見えました。 オーケストラは十分に制御されていて、金管楽器の練られた響きが素適でした。

続いて保科洋さんの「復興」、こちらは初めて聴く曲。 大太鼓の静かなトレモロによる開始、遠くからの地鳴りのような緊張感を伴って、不安気な響きによる開始。 真摯に曲に立ち向かうオケの集中力はすさまじく、徐々に響きを大きくしたかと思うとキレ良く力強い盛り上がり。 大太鼓の重い響きもあいまって轟音ともいえる激しい盛り上がりでした。 一転、中低弦による深い響きにコールアングレの醸し出す不安な表情、フルートなど他の木管も色調を同じにして、全体的に暗いトーンが続きましたが、オケの響きを巧く練り込んでいるので飽きさせません。 そしてまた激しく盛り上がったあと、響きの中に明るさが見えてきました。 たっぷりとしたヴァイオリンなど弦楽器の響きの豊かさと、トロンボーンとチューバの艶の乗った響きが素敵だった激しいコーダで全曲を締めました。

休憩後は、大曲のラフマニノフの交響曲第2番。 ウェットな響きが魅力的でロマンティックでありながらも都会的で洗練された演奏だったと思います。 予想では、井村さんの指揮なのでもっとダイナミックかつロマンティックな演奏になるかな、などと想像していたのですけれど。

第1楽章、冒頭より粘り気のあるウェットな弦の響きとたっぷりとした管楽器でややロマンティックな上々の滑り出し。 想いを乗せているけれどややセーブして淡々と進めていたでしょうか。 この楽章、長丁場ですものね。 引き締まったクライマックスもやや小ぶりで節度を感じ、終結もまた気張らずにコントラバスを鳴らしての着地。 真摯で緊張感を伴った演奏だったからでしょうね、拍手が湧きました。

第2楽章、疾走するヴァイリンに咆哮するホルン、切れよくスマートな開始。 ブラスの華やかな響きが色を添えてました。 たっぷりとしたヴァイオリンの響きで一息ついて、また疾走。 そして集中力を高めての転換、重く強く弦と管が一体となって進みます。 スネアが切り込んで、浮揚感のあるブラスが見事でした。

第3楽章の前にチューニングをしての仕切り直し。 ロマンティクな弦のアンサブルによる開始。 続く木管などよく整ってやや硬めの響きだったかな、淡々とした感じで曲を進めたようにも思いましたが、終始ヴィオラが味わいの深い響きが魅力的でした。

アタッカで終楽章に突入。 覇気ある響きによる開始、井村さんぐっとしゃがみ込んで伸び上がってリズミックに盛り上がってゆきます。 コントラバスの芯のある響きが心地よかった。 しなやかなヴァイオリンの響きを織り交ぜ、浮揚感のあるブラスで落ち着いてたっぷりとした音楽が続き、終結部の盛り上がりもダイナミックながら落ち着いたしっかりとした着地でした。

開演前、井村さんによるスピーチがあり、まずは 3.11 犠牲者の方への黙祷で始まって、曲目解説となりました。 前半プログラムは 3.11 であることより邦人作品を選ばれたとのこと。 復興と題された曲は、もともとは震災とは関係はなく委嘱元の(ヤマハ吹奏楽団の)苦難の50年を振り返っての標題だったそうですが、震災後は復興の言葉よりよく取り上げらるようになったとのこと。

終演後、井村さんご自身がロビーに立っての募金活動。 阪神淡路大震災を経験している(経験したが何も出来なかった無力感をバネに東日本大震災では精力的な活動をされている)井村さんらしい誠実な音楽で、心新たにしてこの日の音楽に向き合うことが出来ました。 皆さんありがとうございました。


以下、未稿