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ラベック姉妹のガーシュウィン

お遊びではなかったクラシックとジャズの境目(戻る


ラベック姉妹の代表盤であるガーシュウィンのレコード。 これが日本で出た1982年頃(録音は1980年)は美貌のピアノ・デュオとして絶大な人気があったラベック姉妹。 一発屋的な印象を残してどこかに行ってしまったようだが、インターネットで調べてみるとまだ活躍しているみたい。するとちょうど50歳くらいか・・・ この美貌はどうなっているか、なんてことにもちょっと興味がわいてくる。 そんな興味はさておいて、彼女らのガーシュウィンの録音については、ジャケットは覚えているのに、実際に耳にした記憶があまりないのである。 20年前に遡ると(帯広の学生時代)、雑誌(週刊FM)による知識が主体だからジャケットの記憶はあっても聴いた記憶が残っていないのには合点もいく(FM放送で断片を耳にしたような気はするけれどよく覚えていない)。 ということで、単に美貌を売りにしたなんとなくオチャラケのレコードという感じに思えていたのだが、昨年ディスクユニオンに通い始めたころに見つけて手にとったことがあった。 懐かしい感じがしたが、「あとで考えよう」と離したのだけれど、その直後に誰かさんに持って行かれて何故かとても口惜しかった。 そんなに欲しいとは思っていなくても、目の前で持っていかれると損したみたいに口惜しい・・・ だから今回見つけたこのレコードは迷わずに連れ帰ることにしたのである(300円)。
そんなちょっと不純な動機から持ち帰ったラベック姉妹だが、ラプソディ・イン・ブルーの見事な演奏に参ってしまった。 言われてみると、この曲の編曲はグローフェが行っているし、オリジナル版と表記されているガーシュウィンのピアノ・ロールによるレコード(M.T.トーマス指揮コロムビア・ジャズ・バンド)も持っているのだけど、このピアノ連弾版がガーシュウィン本来のオリジナルの4段譜によるものだということに(今更ながら)気付いたしだい。 そして、演奏についても、時には高揚して騒々しさを感じさせる演奏もあるオーケストラ版と違って、すっきりと纏っていて、見通しがとても良いのが何よりの魅力的だ。 お馴染みのメロディを初めて聴くかのような新鮮さがある。 それに何よりラベック姉妹のピアノがとても緊密に交じり合って響きあう。 そして時には対立しあうかのようで、とにかく聴き応えがあって楽しい。 ピアノ協奏曲ヘ調も、同様に見晴らしの良い演奏で、オケなしのよる迫力不足など微塵も感じさせない。 スィング感のある姉カティアと、しっかりと低部を支える妹マリエルの息のあったプレイが聞き物である。 しかし、楽曲的にラプソディ・イン・ブルーのほうが自在な曲想のぶんだけ聴き所が多いように思う。 ジャズとクラシックの橋渡しとしてのガーシュインを、お遊びではなく、きちんと(クラシック的でもあり、スィング感ももった)演奏したこの録音を超えるものは出てこないのではないだろう。 実に素晴らしいアルバムであった。 しかし逆の意味では、これほどまでのアルバムを30歳でつくってしまったことがラベック姉妹の大きな壁となってしまっていることも事実ではないだろうか。 そして今はフォルテ・ピアノでバッハも演奏しているらしいラベック姉妹が、また表舞台で華々しく復活することもあるのだろうか。 とにかく、枯淡の境地を見せて(聴かせて)くれる可愛いおばあちゃんデュオとなるまで頑張って欲しい・・・ そう思えてきた。