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クルト・レーデルのパッヘルベル&バッハ

偉大なる通俗名曲(戻る


今年の夏はことのほか暑い・・・と毎年言っているような気がするけれど、とにかく今年の夏も暑かったように思います。 おまけに自分の体力が年齢と共に消耗しているせいもあってか、何事にも集中力が欠如してしまっている感じです。 だから家でもじっくりとクラシック音楽のレコードを聴こうという気になりません(たまに聴いていても、何時の間にかに眠ってしまっています)。
そんなこともあって、最近ではディスク・ユニオンのクラシック中古レコード売り場に行っても、そこに紛れこんでいるムード音楽のレコードについつい手を伸ばしていたりします。 このレコードもそんな気分で捕獲しました。 200円だったのですが、多分これまでならクルト・レーデルの名前で手が止まっても、曲目を見て「ふん」と思って次のレコードに手が動いていたように思います(100円だったら買っていたかな・・・これでも買っていなかったかもしれませんね)。
さて、このレコードに収められているパッヘルベルとバッハの曲は、すべてクルト・レーデルさん自身の編曲によるものです。 ライナーによると、レーデルさんの編曲では、パッヘルベルのカノンには弦楽合奏によるものと管楽器を加えたものがあるそうですが、ここに収録されているのは弦楽合奏のものです。 いつもながらレーデルさんの音楽は、その曲に対する慈愛のようなものを感じさせてくれるのですが、特にこのカノンでは弦の響きが曲の進行とともに静かに高揚していくさまが本当に素晴らしい演奏になっていると思いました。 ここに収められている曲は通俗名曲と言われているものです。 変な例えになると思いますが、家庭用品に例えたならば、滅多に使わない特別なお客さま用の高価な食器ではなく、普段何気なく使うお茶碗みたいなものではないでしょうか。 それは高価でも華美でもないのだけれど、しっとりと自分の手に馴染んで飽きのこないもの、そんな感じのものがいいですね。 逆に普段よく使うものだからこそ、そんないい感じの物に出会ったならばもう他の物には取って換えられないような味わいの良さが出てくるように思いますが、どうでしょうか。 レーデルさんのこのレコードもそのような感じがするのです。 トッカータとフーガ・ニ短調など、ストコフスキー版のような華やかさは一切ありません。 淡々とオルガンの音を他の楽器に置き換えているだけのような感じさえします。 レーデルさんには原曲を超えようという野心や野望なんてものはこれっぽちも無いのでしょうね、きっと。 そっけないラッパの音を耳にするたびにそう思えて仕方ありません。 だからといって聴く価値が全く無い演奏かというと、それはまた聴き手それぞれの別の判断であると思います。
とにかく、このレコードをぼけっと聴いていると、どこそこのフレーズの処理はこうあるべきだ、この部分は全体の要になる部分だからもっと覇気を持って演奏すべきなのではないのか、ここではもうちょっとタメてから見得を切ったほうが面白いように思うけど・・・などと考えて音楽を聴くことが(バカみたいとは言いませんが)しんどい作業のように思えてきます。 音楽は文字通り音を楽しみであって、もっと気楽に日常的に存在すべきものなんですよ、とレーデルさんが教えてくれているような気がするレコードでした。