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ローラ・ボベスコ/珠玉のヴァイオリン小品集

とても自然な歌い廻しが魅力的(戻る

10月22日、時々立ち寄るサイトで見かけたローラ・ボベスコさんの訃報に唖然。 そのサイトでも書かれていたけれど、新聞各紙に訃報が載ったティボール・ヴァルガさんと同じ9月4日に亡くなっていたのに日本では全く報道されなかったことが不思議です。 個人的にはヴァルガさんよりも日本では人気があったと思うのですけれど・・・ 1980年の初来日時はプロモーターによる企画ではなく、日本各地に点在するファンの熱意によってなされたことがレコードの解説にも書かれていますしね。 とにかく1920年ルーマニア生まれで享年83歳、思いもかけず高齢だったのだなと思いましたが、ここにご冥福を祈りつつ彼女の小品集を味わいたいと思います。

この「珠玉のヴァイオリン小品集」と題されたレコード、彼女が1961年から住んでいたベルギーのFONIORという会社のIPGレーベルに録音されたものです。 録音年代は不明ですが、1980年に来日記念盤としてテイチクから発売されたもののようです。 のちにテイチクのOVERSEASレーベルでCD化もされたようですが今は廃盤でしょう・・・ テイチクはすでにクラシックから撤退してしまいましたしね。 しかしこんな素適なアルバムが忘れ去られのはちょっと(かなり?)勿体無いことではないでしょうか。 切なさを感じさせる甘い音色、立ち昇るような高雅な芳香をたたえた響き、泣きの入った歌い廻し、しかもそれが取って付けたようなものではなく実に自然な呼吸で心に染み入ってくる素適なアルバムです。

冒頭、ラフマニノフのヴァカリーズ、これはこのアルバムの白眉ともいえる演奏でしょう。 秘めた感情の高まりを切々と歌いあげ、今にも泣きだしそうなヴァイオリンの響きがたまりません。 つづくコレルリのテンポ・ディ・ガヴォックやパラディスのシチリア舞曲、グルッグのガヴォットでは暖かで優しい響きが心を和ませくれます。 これを書いている今、まさにそんな小春日和なんですが、そんな陽射にもよく似た軽やかなヴァイオリンが歌っています。 そしてヴュータンの夢想、冒頭はほの暗くじとっとした雰囲気ですが徐々にロマンティックな曲に変身させたあと憂いもたたえて叙情的、とても見事な歌いまわしの変化が味わえます。 本当にどの曲のどの演奏も自然で素晴らしい歌心に満ち満ちていますね。 未入手のフランクとルクーのソナタ集を手に入れたくなってきました。 素晴らしいヴァイオリニストであったローラ・ボベスコさん、慎んでご冥福をお祈りいたします。

ローラ・ボベスコ/珠玉のヴァイオリン小曲集
(テイチク:KUX-3191-PG)
A面
ラフマニノフ ヴォカリーズ
コレルリ テンポ・ディ・ガヴォッタ
ヴィニァフスキー 伝説曲 作品17
パラディス シチリア舞曲
サラサーテ サパティアード
B面
ラフ カヴァティーナ
グルック ガヴォット
ヴュータン 夢想 作品22
フォーレ アンデンテ
ラモス ガト(アルゼンチン舞曲)