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ローラ・ボベスコの《ラ・フォリア/弦楽合奏の楽しみ》

癒される弦の響き感謝(戻る

パッヘルベルのカノンに、不覚にも涙しそうになりました。 お馴染みの小品ではありますが、こんなにも優雅で気品のある演奏にしてしまうなんて・・・ 別の作品であるかのように錯覚してしまうほどです。 先年亡くなったローラ・ボベスコ率いるイザイ弦楽合奏団による演奏には気品があり、柔軟さと暖かさをもって心に染み入ります。 素晴らしい演奏に心癒されました。

レコファン渋谷BEAM店にある105円の投売りコーナー(ほとんどゴミ箱状態)より救出したレコードです。 発売時1,300円の廉価盤だったグラモフォン・スペシャルの1枚。 こんなところにローラ・ボベスコが居たとは知りませんでした。 1971年4月14〜16日、ブリュッセル音楽での録音と記載されています。

イザイ弦楽合奏団については、ジャケットの解説(門馬直美氏)によると、第2次大戦による戦災で破壊された文化を再建する一環としてベルギーで結成。 当初は「ブリュッセルのソリストたち(Solistes de Bruxelles)」と称し、1969年に改称されたそうです。 独奏首席奏者としてローラ・ボベスコ、11名の弦楽奏者と1名のチェンバロ奏者で構成されています。 バロックから現代作品まで幅広い作品を演奏し、絶えず埋もれた作品を発見して取り上げ、150曲以上の作品を演奏したとも記されています。

さてこのレコードでは5人の作曲家の6曲が収録されています。 順を追ってゆきますと・・・

A面1曲目にまずロッシーニ/弦楽のためのソナタ第3番ハ長調。 
ソナタとなっていますが、3楽章構成のディベルティメントですね。 ロッシーニ、12才の時に3日間で書き上げたとのことですが、陽気で屈託のない両端楽章、悲劇性もある中間楽章。 いずれも才気に溢れた音楽を上質なアンサンブルで心地よく聴かせてくれます。

2曲目と3曲目にはアルビノーニ/弦とチェンバロのためのアダージョ・ト短調弦と通奏低音のための5声のソナタ・ホ短調op5-9 の2曲。
アダージョが素晴らしいですね。 暗い響きによる導入部よりしっとり濡れたような高音弦が入ってきて、しみじみと聞き込んでしまいます。
5声のソナタは、5声の協奏曲とも記された3楽章構成の曲ですが、わずか4分半ほど。 アルビノーニの才能の高さを感じます。

B面第1曲目はイザイ/弦とチェンバロのためのパガニーニの主題による変奏曲
パガニーニの「24のカプリス」の第24番の主題により、どこかで耳にしたことのある旋律によるまる変奏曲で、ユジェーヌの息子ジャック・イザイによる編曲だそうです。 パガニーニらしい高度なテクニックを駆使した曲ですが、ハルモニクスなども柔軟に聴かせるボベスコ。 難しくても難しく感じさせない、ほんと巧いなぁ。

2曲目はジェミニアーニ/合奏協奏曲第12番ニ短調「ラ・フォリア」
主題と22の変奏を2本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、それに弦と通奏低音の編成でしっとりと歌い継がれてゆきます。 濡れたような柔らかな弦のアンサンブルが素敵です。 ハープシコードは目立ちませんけど、唯一ソロを弾く変奏の響きが柔らくて心に沁みました。

そして最後の3曲目がパッヘルベル/弦と通奏低音のためのカノンとジーク・ニ長調
原曲はオルガンのための作品ですね。 導入部をかなり遅めとし、入念に響きを重ね、叙情性と気品を兼ね備えた演奏としています。 決してお涙頂戴的な演奏ではなく、逆に清潔感も漂う凛とした感じの演奏なのですけれど、すっーと惹き込まれてしまいます。 そして何故か涙腺が緩んでしまいそうになるんです。 不思議な演奏です。

そしてそっと全曲を聴き終えると深い感動がこみ上げてきます。 こんな素晴らしいアルバムに巡り会えました。 感謝。