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コンヴィチュニー/VSOのロマンティック

その音があるべくしてそこに出てきている(戻る

フランツ・コンヴィチュニー。 僕がクラシック音楽を聴き始めたのは中学2年生のころですから、日本コロムビアのダイヤモンド1000シリーズのベートーヴェンの田園のレコードを買ってコンヴィチュニーさんとのお付き合いが始まってから30年以上になります。 僕にクラシック音楽の素晴らしさを教えてくれた人のひとりです。
そのコンヴィチュニーさんのブルックナーのロマンティックのレコード(コロムビア名曲ギャラリー・55/オイロディスク原盤)が 300円で投げ売られていたのですから救出するしかありませんよね。 しかもウィーン交響楽団を振った録音の存在には今まで気付きませんでしたのでこれはちょっと貴重かも・・・と思って家に連れて帰りました。

さっそく家に帰った夜にレコード針を降ろしてみたのですが、ボリュームを絞っていたこともあってか意外とサクサク進んでいくなぁ・・・というのが第一印象。 で、A面のみで切り上げましたけれど、翌日スレテオの前にしっかりと陣取ってボリュームを上げて聴いてみたところ随分と印象が随分と違うので吃驚しました。 

確かにテンポ設定など中庸かやや早めですね。 引きずるような部分は皆無なんですが、カラヤンやレーグナーのような流麗さとは違った、骨太な音楽が流れ出てきました。 特に後半の楽章の充実感はどう言ったらいいのでしょうか、音楽が自然に呼吸して進んでいるようです。 充分な咆哮もあるので、「自然に」と書くとあっさりしたものを想像されるかもしれませんが、その音があるべくしてそこに出てきているっていう感じがしました。

参考までにこのレコードの解説の門馬直美さんが次ぎのように書かれています。 実に要を得たものなので引用したいと思います。 

(コンヴィチュニーが頭の良い人間だということは)対位法の処理や重点のおきどころから、そうしたことがうかがえる。 それに加えて、テンポ設定にうまみがあり、そのテンポを基本にして、巧妙な間(ま)の感覚を生かし、あせったような感じのものにせず、悠容性をおく

昔のレコード解説は本当に参考になりますね。

確かにいずれの楽章もこんな感じなのですが、とくに終楽章はこれに加えて熱気というものを少し感じさせる始まりでした。 第1主題の呈示のあと盛り上がって第1楽章の第1主題が再現されるあたりなどグッときました。 しかし決してカッコをつけてキメるようなことなどないし、クライマックスのあとの全休止もほとんど止まりません。 音楽を先に進めようといった感じでしょうか。 純粋なブルックナー・ファンの方にはもっと粘って欲しいのかな、って思いますけどね、このような自然な流れがコンビチュニーらしさでしょう。
この第2主題への繋がりや、展開部での叙情的な部分と劇的な部分が交互に現れるところなどもごくごく自然に音楽が流れていきます。 そしてこの叙情的な部分の細かな描写がとても巧いのに耳を奪われました。 生命感を感じさせる音楽の源泉はこのような描写の妙にあるのではないか、とも思いました。 

そしてフィナーレはもっともっと盛り上がって欲しいような気もしましたけれど(多分CDだともっと歯切れが良いかもしれません、廉価盤LPではこのような部分はダンゴになって聞こえてしまいがちですので)、とにかく、とりたてて変わったことをしていないのに感動的な音楽となって締めくくられました。

しばらく頭の中で色々な主題がこだましていました。 満足しました。